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歯の破折(はせつ)とは? 原因・症状・治療&予防法

 更新日:2023/07/26

こんにちは。日本歯周病学会認定歯周病専門医の飯島佑斗と申します。
「歯牙破折」という言葉はご存知でしょうか? 歯牙破折、歯の破折とは歯が折れてしまっているということを意味します。専門用語では歯冠破折歯根破折と言いますが、日々診療していく中では比較的高い頻度でみられる疾患です。では実際に歯の破折とはなんなのか、どういった治療が必要になるのか、今回は歯の破折というテーマでお話させていただきたいと思います。

飯島 佑斗

監修歯科医師
飯島 佑斗(飯島歯科医院・院長)

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東京歯科大学卒業。日本歯周病学会専門医。日本口腔インプラント学会専修医。飯島歯科医院 院長。

1. 歯の破折ってなに?

歯が折れてしまったことを歯の破折、歯牙破折と言います。歯牙破折と一言で言っても折れている場所や折れ方によってはいくつかに分類分けされます。

折れている場所による分類

歯冠破折:歯の歯冠と呼ばれる頭の部分だけが折れている状態
歯根破折:歯の歯根と呼ばれる根の部分が折れている状態
歯冠-歯根破折歯冠歯根が同時に折れている状態

折れ方による分類

横破折:歯が横方向に折れている状態
縦破折:歯が縦方向に折れている状態

また破折の中には完全には折れていないが細かな亀裂の状態の「クラック」と呼ばれるものもあります。

2. 破折は何が原因で起こるの?

歯牙破折はなぜ起こるのでしょうか?原因はいくつかあります。

1.外傷

外傷により歯に強い力がかかると歯牙破折を引き起こすことがあります。
その場合一番折れやすい部位は上の前歯が折れることが多いです。また外傷の場合は歯の破折だけでなく、歯が植っている歯槽骨からとれてしまう脱臼が起こることもあります。

2.歯軋りや食いしばりによる強い力

歯軋りや食いしばりなどの強い力により歯牙破折が起こることがあります。多くは元々治療されて歯自体の強度が弱くなった歯に力が加わり折れることが多いですが、中には全く削っていない未治療の歯に対しても破折が起こることもあります。
歯軋り食いしばりなどの無意識なうちに起こる力は通常の食事などでかみ合わせる力の約6倍にものぼると言われています。そのため通常食事などでかかる力では折れない歯でも折れてしまうことがあります。

3.根管治療などで大きく歯を削っている

根管治療(歯の内部の感染に対する治療)や虫歯により大きく歯を削って歯が薄くなっている状態に対して、力が加わった時に歯が折れることがあります。

4.かみ合わせの問題

かみ合わせの問題により特定の歯に集中して力が加わったりすることで歯が折れてしまうことがあります。元々のかみ合わせが悪いこともありますが、虫歯などの治療を多くされていることにより徐々にかみ合わせがずれていく場合もあります。

3. 歯が折れるとどのような症状が起こるの?

歯牙破折が起こると次のような症状が起こることが予想されます。
・歯が揺れる
・かむと痛い
・歯茎(歯肉)が腫れる
・歯茎(歯肉)から膿がでる
・何もしないでも痛みがある
・歯の周囲の骨が溶ける
以上のような症状が起こりますが自覚症状がなくレントゲンではじめて確認できることもあります。

4. 歯牙破折の治療方法は?

治療方法は歯の折れ方により様々です。

横破折

歯肉より上で折れている場合

折れている部分を補う治療で対応していきます。
歯の神経が露出している場合は神経を残せれば残し、場合によっては神経の治療が必要となる場合もあります。

歯肉より下で折れている場合

歯肉より下でも歯がどの部分で折れているかで治療法が変わります。ごく浅い部分で収まっていれば折れた破片を取り除き折れている部分を修復します。
比較的深い部分まで折れている場合には矯正治療により歯を引っ張り出して(矯正的挺出)修復していきます。また一度歯を抜歯して方向を変えて歯を戻す外科的挺出という方法もあります。そのような処置で対応できない場合には抜歯となる場合もあります。
また根の中央部から先のような深部で折れている場合には折れている歯を隣の歯と固定して3ヶ月程度様子をみます。歯の揺れが収まらなかったり、状態が悪い場合には抜歯となる場合もあります。

縦破折

歯が縦に折れてしまっている場合でもその折れている線がどこに到達するかで治療の方針が変わります。

歯肉より上まででおさまっている場合

折れている破片を取り除き修復します。歯肉より深部でも2mm程度まででおさまっている場合は同様に破片を取り除き修復します。

3mm以上の深さで折れていて骨の近く、骨の中まで折れている場合

矯正的挺出、外科的挺出などにより折れている部位を骨より上に引っ張りだして対応します。
骨の中でも深部に及ぶ場合は抜歯が適応になることが多いです。場合により接着歯牙再植という治療方法で対応できることもあります。しかし将来的に接着力がなくなり破折が再発してしまう場合もあります。

クラック

クラックの状態であればそのままにしておく、もしくは場合によりクラック部分を削り樹脂で接着することもあります。クラックは今後大きな歯牙破折に移行したり、クラックから虫歯の細菌が侵入し歯の内部で虫歯が拡がるリスクがあるため注意が必要です。

歯の破折を予防するために

外傷は仕方ないですが、それ以外の原因に関しては予防することが可能です。歯軋りなどの問題に対してはマウスピース自己認知療法(日中などは食いしばったりしないように意識する)にて予防し、かみ合わせに関しては必要と判断されれば、かみ合わせの改善を目的とした治療を行います。また治療により歯が薄くなってしまう問題に関しては定期的なメンテナンスにより治療介入しないように予防していく、万が一治療が必要になったとしても質の高い治療により再度治療に介入させないようにする工夫が必要となります。

5. まとめ

今回は歯の破折についてお話させていただきました。折れ方によっては抜歯になってしまうため破折を起こさないための予防が重要となってきます。その中でも特に重要なのは極力歯を大きく削らないことにあるかと思いますので、定期的なメンテナンスによりしっかりと虫歯などの予防をしていくのが大切かと思います。

この記事の監修歯科医師