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前歯だけ部分矯正できる?適応条件や費用、治療の注意点などを解説

 公開日:2026/02/13
部分矯正 前歯だけ

前歯の歯並びは、お口を開いたときに最初に目に入りやすく、見た目の印象に大きく関わります。そのため「前歯だけを整えたい」「全体の歯列矯正までは必要ないのでは?」と考える患者さんも少なくありません。前歯だけを対象とする部分矯正は、条件が合えば治療の選択肢となりますが、すべてのケースに適応できるわけではない点に注意が必要です。このコラムでは、前歯の部分矯正が可能となる条件や、治療にかかる費用の目安について、歯科医師の立場から医学的に整理して解説します。

宮島 悠旗

監修歯科医師
宮島 悠旗(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
・出身大学
愛知学院大学歯学部
・経歴
2005年 愛知学院大学卒業 歯科医師免許取得
2006年 東京歯科大学千葉病院 臨床研修医修了
2006年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 入局
2010年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 卒業 歯学博士取得
2011年 東北大学大学院歯学研究科 口腔発育学講座 顎口腔矯正学分野 助教就任 
日本矯正歯科学会認定医取得
2014年 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス開業
2017年 著書『国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の「デンタルケア」-』出版(幻冬舎)
2021年 著書『歯並び美人で充実人生:幸せを呼ぶゴールデンスマイル』出版(合同フォレスト)
2022年 (株)オーティカインターナショナル/オーティカプロモーション myobrace® 認定講師就任
・資格
歯科医師免許、歯学博士(東北大学)、日本矯正歯科学会認定医
・所属学会 ほか
日本矯正歯科学会所属、invisalign® DIAMOND Status、 myobrace® 認定講師

前歯だけの部分矯正ができる適応条件

前歯だけの部分矯正ができる適応条件
前歯のみを対象とした部分矯正は、歯列矯正のなかでも適応が限られる治療方法です。見た目の乱れが前歯に集中している場合であっても、歯列全体や噛み合わせ、顎との位置関係を総合的に評価しなければ、適切な治療とはいえません。前歯の部分矯正は、あくまで歯列全体のバランスが保たれていることを前提に成立する治療であり、精密検査をもとに慎重な判断が必要となります。以下では、一般的に前歯の部分矯正が検討される代表的な条件について解説します。

前歯のすきっ歯や軽度のガタつきのケース

前歯のあいだにすき間がある状態や、歯がわずかに重なっている程度のガタつきであれば、部分矯正が検討されることがあります。とくに、歯の傾きが小さく、歯を動かす距離が限られている場合には、前歯だけの移動によって歯並びが整う可能性があります。このようなケースでは、歯列全体を大きく動かす必要がないため、部分矯正が治療の選択肢となります。

ただし、見た目として軽度に見える歯並びであっても、歯根の位置や傾きが大きい場合には注意が必要です。歯は歯冠だけでなく、歯根を含めて骨の中を移動するため、内部の状態によっては想定以上の移動が必要となることがあります。そのため、口腔内の見た目だけで判断せず、レントゲン検査などをもとに歯の位置を正確に把握することが欠かせません。

矯正後の後戻りや軽度の出っ歯があるケース

過去に歯列矯正を受けた経験があり、現在は前歯のみが後戻りしている場合も、部分矯正が検討されることがあります。このようなケースでは、奥歯の噛み合わせが安定しており、前歯の位置だけを調整すれば歯列全体のバランスが保たれることが前提条件となります。後戻りの範囲が前歯に限局している場合には、部分的な歯の移動で対応できる可能性があります。

また、軽度の出っ歯についても、歯の傾斜をわずかに調整することで改善が見込める場合があります。ただし、出っ歯の原因が顎の骨格にある場合には、歯の位置だけを動かしても根本的な改善にはつながりません。そのため、歯の傾きによるものか、顎の形に由来するものかを見極めたうえで、治療方法を選択する必要があります。

奥歯の噛み合わせに問題がないケース

前歯だけの部分矯正では、奥歯の噛み合わせを大きく変えることはできません。そのため、上下の奥歯が正しい位置で噛み合っており、噛み合わせのバランスが安定していることが重要な条件となります。奥歯は噛む力を支える役割を担っており、そのバランスが崩れている状態で前歯のみを動かすと、噛み合わせ全体に影響が及ぶおそれがあります。

奥歯にズレや高さの問題がある場合には、前歯だけを整えても噛みにくさが残ることがあり、結果として全体矯正が必要となるケースもあります。そのため、前歯の見た目だけでなく、噛み合わせ全体の状態を評価したうえで部分矯正の適応を判断することが重要です。

歯を動かすスペースが十分に確保できるケース

歯を整えて並べるためには、歯が移動するためのスペースが必要です。前歯の部分矯正では、歯列の幅や歯の大きさ、顎の大きさのバランスをもとに、無理なく歯を動かせるかどうかを判断します。歯を削らずにスペースを確保できる場合や、ごくわずかな調整で対応できる場合には、部分矯正が検討されることがあります。

前歯だけの部分矯正にかかる費用の目安

前歯だけの部分矯正にかかる費用の目安
前歯の部分矯正は、治療対象が限定されるため、歯列全体を動かす矯正と比べて費用を抑えられる傾向があります。ただし、実際の費用は使用する装置の種類や歯の移動量、治療計画の内容によって幅があります。検査や調整の内容も含めて総合的に判断する必要があります。

ワイヤー矯正の場合

ワイヤーを用いた前歯の部分矯正では、上下いずれか、または前歯数本のみを対象として装置を装着することが多く、歯列全体の矯正に比べて治療工程が簡略化されます。そのため、費用は数十万円程度を目安とするケースが一般的です。ただし、歯の移動が複雑になる場合や、調整回数が増える場合には費用が上がることもあります。

ワイヤー矯正は歯に直接力を加える方法であるため、歯の動きが明確にコントロールしやすい点が特徴です。一方で、装置が歯の表側に装着される場合、お口を開けたときに見えることや、装着初期に違和感を覚えることがあります。こうした点も含めて費用と治療内容のバランスを考えることが大切です。

マウスピース型矯正の場合

マウスピース型矯正による前歯の部分矯正では、治療計画にもとづいて作製されたマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かします。前歯のみを対象とした計画であっても、シミュレーション作成や装置作製の工程が必要となるため、費用はワイヤー矯正と同程度、またはやや高くなることもあります。

マウスピース型矯正では、取り外しが可能である点が特徴ですが、その反面、決められた時間を守って装着し続けることが治療結果に大きく関わります。装着時間が不足すると計画どおりに歯が動かず、追加の調整が必要になる場合もあり、結果として費用が変動することもあります。

全体矯正との費用差

歯列全体を対象とした矯正では、前歯だけでなく奥歯や噛み合わせの調整も行うため、治療期間や工程が増え、それに伴って費用も高くなる傾向があります。一方、前歯だけの部分矯正は治療範囲が限られるため、費用面での負担が軽減される点が特徴です。

ただし、費用の差だけに注目して部分矯正を選択すると、治療目的と合わない結果になることもあります。前歯の見た目を整えることが目的なのか、噛み合わせを含めた歯列全体の改善が必要なのかを明確にしたうえで、歯科医師と相談し、適切な治療方法を選択することが重要です。

前歯の部分矯正における治療期間と通院の目安

前歯の部分矯正における治療期間と通院の目安
前歯の部分矯正は、歯列全体を対象とする歯列矯正と比べ、動かす歯の本数や範囲が限られています。そのため、一般的には治療期間や通院回数を抑えられる傾向があります。しかし、実際の治療期間は一律ではなく、歯の移動距離や歯根の向き、歯を支える骨の状態、さらに顎との位置関係など、複数の要素が関わって決まります。見た目の乱れが軽度であっても、歯根の長さや形状、歯槽骨の厚みや高さ、噛み合わせの状態によっては、想定より期間を要することもあります。ここでは、使用する装置の違いに着目し、治療期間と通院の目安を整理します。

ワイヤー矯正の場合の治療期間と通院目安

ワイヤー矯正による前歯の部分矯正では、歯の表面に装置を装着し、ワイヤーの力を利用して歯を少しずつ移動させます。前歯のすきっ歯や軽度の傾きといったケースでは、治療期間は数ヶ月から1年程度が一つの目安となります。ただし、歯の根が骨の中でどの方向に動く必要があるかによって、歯の動き方には差が生じます。歯は単純に横へ動くのではなく、歯根を含めて位置が変化するため、身体の反応に合わせた調整が必要です。

通院の頻度は、ワイヤーの調整や歯の移動状況を確認する目的で、概ね1ヶ月前後に1回となることが多いです。通院時には、歯の動きだけでなく、歯茎の状態や装置による刺激が生じていないかも確認します。調整後は一時的に違和感や痛みを覚えることがありますが、症状が強く続く場合や噛みにくさを感じる場合には、早めに歯科医師へ相談することが大切です。

マウスピース型矯正の治療期間と通院目安

マウスピース型矯正による前歯の部分矯正では、段階的に形の異なる装置を装着し、少しずつ歯を移動させていきます。歯並びの乱れが軽度で、歯の移動量が限定的な場合には、治療期間は数ヶ月から1年程度が目安となります。ただし、マウスピース型矯正では、計画どおりに装置を使用できているかどうかが治療の進行に大きく関わります。

通院は、治療計画の進行確認や歯の動きの評価を目的として、1〜2ヶ月に1回程度となることが一般的です。ワイヤー矯正に比べると通院間隔がやや長くなることもありますが、その分、患者さん自身が装着時間を管理する役割を担います。指示された時間を守らずに装着すると、歯が計画どおりに動かず、結果として治療期間が延びる可能性があります。そのため、歯科医師の説明を十分に理解し、治療の目的や進行状況を共有しながら取り組むことが重要です。

前歯だけの部分矯正を行う際の注意点

前歯だけの部分矯正を行う際の注意点
前歯の部分矯正は、歯並びの状態によっては有効な治療方法となりますが、歯列全体のバランスや噛み合わせを十分に考慮せずに行うと、治療後にさまざまな問題が生じる可能性があります。歯は一本ずつ独立して存在しているわけではなく、顎や周囲の歯、筋肉との関係のなかで機能しています。そのため、前歯のみを動かす治療であっても、お口全体への影響をとらえたうえで慎重に判断することが重要です。

噛み合わせが悪化するリスクがある

前歯だけを対象とした部分矯正では、奥歯の位置や高さを大きく調整することができません。そのため、もともとの噛み合わせの状態によっては、前歯の位置を変えることで上下の歯の接触関係が変化し、噛みにくさや違和感を覚えることがあります。前歯は、噛み切る動作だけでなく、奥歯へ力を伝える役割も担っているため、その位置の変化が噛み合わせ全体に影響を及ぼすことがあります。

また、噛み合わせのズレは、特定の歯に負担が集中する原因となることもあります。長期的には、歯や歯茎への負担だけでなく、顎周囲の筋肉の緊張につながることもあるため、事前の検査によって噛み合わせの状態を詳細に確認し、部分矯正が適しているかを慎重に判断する必要があります。

後戻りしやすいケースがある

前歯の部分矯正では、治療によって歯を動かしたあとも、歯が元の位置に戻ろうとする力が働きます。これは、歯を支える骨や周囲の組織が、元の歯並びを記憶しているためです。特に、歯の移動量が大きい場合や、歯を支える組織が安定しにくいケースでは、後戻りが起こりやすくなります。

また、過去に歯列矯正を受けた経験があり、その後に後戻りが生じている場合も注意が必要です。このようなケースでは、歯並びが乱れる原因が残っていることもあり、治療後の保定が不十分だと再び歯が動いてしまう可能性があります。前歯の部分矯正は、歯を動かすことだけでなく、その状態を維持する段階まで含めて治療と考えることが重要です。

h3:適応外のケースで無理に行うとトラブルが生じる可能性がある
顎の骨格に由来する歯並びの乱れがある場合や、歯を並べるためのスペースが明らかに不足している場合には、前歯の部分矯正は適していないことがあります。本来は歯列全体を調整する必要があるケースで部分矯正を行うと、歯に過度な力がかかり、歯根や歯茎に負担が生じることがあります。

無理な歯の移動は、歯茎が下がる原因となったり、歯の安定性に影響を及ぼしたりすることもあります。見た目の改善だけを目的として治療を進めるのではなく、歯列全体や顎との関係を踏まえた診断を行い、長期的な視点で問題が生じにくい治療方法を選択することが欠かせません。

まとめ

前歯の部分矯正は、条件が合えば治療期間や通院の負担を抑えつつ歯並びを整えられる選択肢となります。一方で、噛み合わせや歯列全体との関係を考慮せずに行うと、後戻りやトラブルにつながることもあります。治療期間や注意点を正しく理解したうえで、歯科医師による検査と説明を受け、自分の歯並びに合った治療方法を選択することが重要です。

この記事の監修歯科医師