歯列矯正で顔が長くなるって本当?原因や対策をご紹介します
歯並びを整えるために行われるのが歯列矯正ですが、矯正すると以前よりも顔が長くなるという話を耳にしたことはありませんか。
実際は、歯列矯正によって顔が長くなることはありません。ただし、歯列矯正を行うことによって、顔が長くなったように見えることはあります。
本記事では、歯列矯正を行うことによって顔が長く見える原因とその対処法について解説します。また、歯列矯正をすることで面長が改善しやすいケースについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
監修歯科医師:
坂本 輝雄(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科)
目次 -INDEX-
歯列矯正で顔が長くなるって本当?
歯列矯正で顔が長くなることはありません。歯列矯正は歯並びを整える治療方法で、顔の輪郭を変えることはありません。
しかし、歯の位置を移動させたり抜歯したりしたことで、顔が長くなったように見えることがあります。
それは歯があった位置を移動させたり、抜歯したりする影響からくるものと考えられています。
歯列矯正で顔が長くなる原因
では、歯列矯正によって顔が長く見える原因はどのようなものが考えられるでしょうか。
原因としては主に下記の4つが考えられます。
- 矯正の影響で人中が長くなったように見える
- 表情筋が衰えた
- 抜歯による影響
- 皮膚が余ってたるんで見える
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
矯正の影響で人中が長くなったように見える
人中とは鼻と口の間にある縦にのびた溝のことです。
人中が短いと顔が引き締まってスマートに見えますが、長いと鼻の下が間延びしたように見え、顔全体が長く見えてしまいます。
歯列矯正によって歯並びの位置が変化するため、それに伴い人中の長さにも変化が現れると考えられます。
また、歯列矯正は歯を矯正器具に固定して位置を動かしますが、器具の固定する強さが適切でなければ歯並びがかえって悪くなるケースがあります。
歯並びが悪くなると口と鼻の間が伸び、人中が長くなったように見えてしまうことがあります。
表情筋が衰えた
歯列矯正を始めると器具を設置したことによる痛みから、口を動かすのが辛くなり咀嚼できなくなることがあります。
口を動かさなくなると、表情筋が衰えて顔全体にたるみが生じます。そうすると、顔全体が長くなったように感じられるのです。
表情筋の衰えを防ぐ対策としては、マッサージを行ったり顔の運動を行ったり、顔の表情を豊かにすることが効果的です。
抜歯による影響
歯列矯正の治療で抜歯を行うケースもありますが、抜歯をしたことで顔が長く見える場合があります。
歯並びを矯正する上で歯列が著しく狭い場合、歯列の幅を広げるために抜歯して歯並びを調整します。
その際、歯並びを調整するためにスペースを確保する必要があり、歯を前に出しスペースを作ることが顔が長く見える原因の一つです。
抜歯自体は歯並びを整えるための手段の一つなので、必ずしも抜歯することが必要だとは限りません。
歯科医師から抜歯の提案があった場合、本当に必要かどうか他の方法はないかなど詳しく話し合ってから決めましょう。
皮膚が余ってたるんで見える
歯列矯正中や歯列矯正が終わった後によく見られるのが皮膚のたるみです。
特に前方へ突き出すような歯並びであったものを後方へ移動させると、以前の歯並びの状態で伸びた皮膚が余ってしまい、たるんで見えてしまいます。
皮膚のたるみはすぐには解消することが難しいため、表情筋を鍛えるなどして次第に引き締めるように心がけましょう。
歯列矯正で小顔になるケースもある?
歯列矯正によって顔が長くなる原因についてみていきましたが、反対に小顔に見えるケースもあります。
歯並びが前方へ突き出すような傾斜がかかっている状態だと歯列矯正では後方へ移動させる治療が行われます。
その場合、前歯等が前方に突き出していたことで盛り上がっているように見えた口元がスッキリした印象に変わり、小顔に見えるのです。
他にも歯列矯正によって顎の位置の変化が生じた場合は顔全体がシャープになることもあり、小顔になったように感じられるでしょう。
面長が改善しやすいケース
不正咬合は歯並びが不揃いであったり、上下の歯がちゃんと噛み合わないことです。
この不正咬合の状態から歯を正常な位置へ戻すには、矯正器具を使って力を加え歯を移動させます。
矯正器具で力を加えると、歯を支える骨を覆っている歯根膜を圧迫して押された側に骨を吸収する破骨細胞が現れます。
破骨細胞によって生み出された隙間には骨を作る骨芽細胞が生成されるため、新たな位置に歯が移動することで矯正できるのです。
不正咬合による面長は、治療することで改善できる可能性があります。
不正咬合の種類は、下記の5つが主によく見られます。
- 出っ歯
- 乱ぐい歯
- オープンバイト
- 受け口
- 口ゴボ
それではそれぞれのケースについて原因や症状を詳しくみていきましょう。
出っ歯の場合
出っ歯は上顎前突と呼ばれ、上の前歯が前に突出していたり、上の歯並び全体が前に出ている状態です。そのため、口元が前に出ているような印象を受け、顔が長く見えます。
出っ歯の原因としては、顎が小さかったり、正常な位置よりも後ろにあったりすることが挙げられます。
また、出っ歯の症状として、口を閉じにくい、唇を切りやすい、下の前歯で上の歯茎を傷つけてしまうなどがあります。
出っ歯を治すには前歯を後ろに移動させる必要がありますが、隙間を作るために他の歯を抜歯することもあります。
前歯が後退することで口元が前に出ている印象を抑えることができるため、面長を改善できます。
乱ぐい歯の場合
乱ぐい歯は叢生(そうせい)とも呼ばれ、歯並びがデコボコしている状態です。
このデコボコ具合によっては顔が長く見えることがあります。乱ぐい歯となる原因は、骨の大きさとそれぞれの歯の大きさとのアンバランスによって生じます。
乱ぐい歯は歯磨きが難しく、歯ブラシが行き届かないことも多いです。
そのため、汚れが残りやすく、むし歯や歯槽膿漏の原因になることもあります。
乱ぐい歯は、デコボコになっている歯並びをなだらかになるように矯正する治療方法があります。
デコボコな歯並びを整えることで、顔が長く見えていた状態が解消できます。
オープンバイトの場合
オープンバイトとは開咬といい、前歯が噛み合わない状態を指します。
オープンバイトの理由として、5歳以降も指しゃぶりを続けていたり、舌の悪い癖があったり、口呼吸であったりすることが考えられます。
オープンバイトの方は歯列が前方へ出てしまっていることから、顔が長く見えてしまうでしょう。
オープンバイトの症状としては、前歯が噛んでも隙間が生じることで、前歯で食べ物を噛みきれなかったり、正しい発音で話せなかったり、口呼吸になったりします。
治療法としては上下の顎の成長をみながら、矯正をしていきます。
しっかり噛み合わせられるようになると、前歯の位置が正常な位置に戻るので、面長も解消されます。
受け口の場合
受け口とは下の歯が上の歯よりも前に出ている噛み合わせの状態をいいます。下の歯が前に出ていることで顔が長く見えます。
受け口の原因としては、上下の前歯が前方へ傾いている、下の顎が大きいもしくは小さいためです。
受け口の症状としては食事の際にうまく噛めなかったり、聞き取りにくい話し方になってしまうことです。
下顎の大きさが上顎の大きさと合っていない場合は、顎の骨の成長によって変化するため、成長が進むと顔が長く見えるのが解消されます。
治療としては上下の前歯を動かしたり、顎の骨の発育を調整したりします。
口ゴボの場合
口ゴボとは上下顎前突といい、口を閉じた状態で横から見たときに口元が盛り上がって見える状態のことをいいます。
鼻先よりも唇が前に出ているため、顔が長く見えてしまいます。
口ゴボの原因としてはもともと出っ歯であったり、上下の顎が前方へ突き出していたり、前歯が大きかったりするためです。
治療としては出っ歯同様上下の前歯を歯列矯正によって後方へ移動させ、傾斜を緩やかにします。
前歯の傾斜が調整されることで口元の盛り上がりが解消されるのと同時に、顔が長く見える印象もなくなります。
歯列矯正で顔が長くなることへの対策は?
歯並びの状態によっては顔が長く見える状態を解消できるケースがあることを解説してきました。
では歯列矯正で顔が長くなることへの対策として、どのような方法があるのでしょうか。
対策方法は下記の4つが挙げられます。
- 精密検査やカウンセリングをしっかり行ってくれる歯科医院を選ぶ
- すぐに相談できる先生を見つける
- 通院しやすい距離の歯科医院を選ぶ
- 表情筋の衰えに注意する
それぞれの対策方法について詳しくみていきましょう。
精密検査やカウンセリングをしっかり行ってくれる歯科医院を選ぶ
精密検査やカウンセリングをしっかりと行ってくれる歯科医院を選びましょう。
歯列矯正は一朝一夕で治療が終わることはなく、長い時間をかけて徐々に歯を移動させます。
そのため、長期間治療した後に歯並びが改善しなかったということがないように、初診の段階で精密な検査を実施してもらいましょう。
検査の後は、結果を元にどのような治療が必要か、治療方法にはどんな選択肢があるのかを詳しくカウンセリングしてもらいます。
一方的に歯科医師が決めた治療方法を進めてきたり、相談できない状態のまま治療が始められるような医院であれば注意が必要です。
歯科医師と治療の方向性を共有した上で歯列矯正を始め、面長になることを防ぐためにも異常が感じられた場合に気軽に相談できる歯科医院を選びましょう。
すぐに相談できる先生を見つける
顔が長くなるのを防ぐ対策として、すぐに相談できる先生を見つけることがあります。
歯列矯正を始めてすぐの頃は器具の固定された状態に慣れなくて、痛みを感じる方もいます。
そのときに、気軽に相談できる先生がいると不安が解消されやすいでしょう。
多忙を理由に断られたり、気軽に相談できる雰囲気でない場合、歯列矯正を始めて異常が発生しても相談できずに更に状態を悪化させてしまうケースもあります。
直接来院して相談しにくい場合は電話やメールなどで伝えることも可能ですので、事前にオンラインでの連絡も可能かどうかを確認しておきましょう。
通院しやすい距離の歯科医院を選ぶ
通院しやすい距離の歯科医院を選ぶと、定期的にメンテナンスへ通うようになり、矯正の状態を都度確認してもらえるため、顔が長くなるのを防げます。
歯列矯正は長期にわたる治療が必要で、定期的に矯正の状況を診てもらう必要があります。
ですが、通院する歯科医院が遠くて自宅から電車やバスを乗り継がないと辿り着かないようなところにあると、定期的に足を運ぶのが億劫です。
歯列矯正は矯正の途中の定期メンテナンスを怠ると、歯並びが改善しないことがあります。
矯正のやり直しになってしまうと、更に費用もかかり、治療期間も延びてしまいます。
歯列矯正の技術が確かな歯科医院を探すことはもちろんですが、通院しやすさも考慮することをおすすめします。
表情筋の衰えに注意する
顔が長く見える原因の一つに表情筋の衰えがあります。歯列矯正を行うと食事がしにくくなったり、矯正器具を見せたくなかったりして表情筋を使う機会が少なくなるためです。
表情筋が使われなくなると顔にたるみが出て、下に垂れ下がってくるため、顔が長く見えてしまいます。表情筋を鍛えることで顔のたるみなどを防ぐことができます。
例えば舌を回したり、上下左右に伸ばしたりする運動や大きく口を開けながら母音を発音する運動などが効果的です。
歯列矯正中は矯正器具が舌にあたってやりにくいこともありますが、意識して行うと顔が長く見えるのを防げます。
理想的な人中の比率はどのくらい?
顔が長く見える原因にも挙げられていた人中の長さですが、理想的な人中の比率は鼻から口先までと口先から顎先が1:2がベストだといわれています。
そのため、人中自体の長さだけで顔が長く見える訳ではなく、顎の縦の長さも口元全体の印象に大きく影響します。
人中を短くする施術もありますが、顎まわりをスッキリさせるマッサージなどでも人中を短く感じさせることが可能です。
編集部まとめ
本記事では、歯列矯正で顔が長くなる原因や対策について紹介しました。
出っ歯・乱ぐい歯・オープンバイト・受け口・口ゴボのように前方に歯が出ている不正咬合を歯列矯正することで面長が解消するメリットがあります。
しかし、歯列矯正の治療の影響により歯並びの変化や表情筋の衰え、抜歯や皮膚のたるみなどで人中が長く見えてしまうデメリットがあるでしょう。
このように、歯列の状態によって矯正すると顔の長さにも変化を及ぼすといえます。また、歯列矯正の費用は自費診療になるため、不正咬合で80万円〜120万円(税込)程度です。
まずは歯列矯正の精密検査やカウンセリングを丁寧に行い、定期的なメンテナンスにも足を運びやすい歯科医院を探すことから始めてみましょう。