口ゴボでも歯並びが良いなら矯正は必要ないのかを解説|口ゴボの原因や放置するリスク・矯正方法もご紹介
見た目がどうしても気になってしまう口ゴボですが、歯並びは良いという場合があります。この場合は矯正が必要ないのでしょうか?
実は、口ゴボにも様々なタイプがあります。それによって、歯列矯正をする必要があるのかどうかが変わるのです。
ここでは、歯並びが良い口ゴボにも矯正が必要なのかどうかとよく使われる矯正方法を解説します。原因や放置リスクについてもご紹介します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
口ゴボでも歯並びが良いなら矯正しなくてもいい?
口ゴボとは、口元のシルエットが膨らんでしまっている人のことをいいます。歯が生える向きが前に突き出してしまうことや口元の皮膚が厚いなどが原因です。
そのため、正面から歯を見ると見た目上は歯並びが気にならない事が多いです。しかし、だからといって矯正が不要というわけではありません。
口ゴボがもし歯が前突していることで起きている場合、前歯を折りやすくなったり奥歯への負担がかかりやすくなったりするリスクもあります。
ご自身がどんなタイプの口ゴボなのかによって、矯正を必要とするかどうかが変わってくるということです。
口ゴボでも歯並びが良く見える人の特徴
では、口ゴボでも歯並びが良く見える人にはどんな特徴があるのでしょうか?ここでは3つのタイプに分けて解説します。
上唇が出ているタイプ
まず上唇が出ていることで口ゴボに見える人です。これは遺伝が原因であることが多く、改善が難しい場合があります。
また、顎の皮膚や筋肉が薄すぎることで上唇が突き出て見える場合もこのパターンに当てはまります。どちらも顎の骨ではなく皮膚が原因です。
歯科矯正で改善するとなると、歯列矯正である程度口元を引っ込めるといった方法がとられます。また、美容整形での改善という選択肢もあります。
下顎が引っ込んでいるタイプ
下顎が引っ込んでいるタイプの口ゴボは、上下の顎の骨格が一般的な比率でないことが多いです。
下顎が引っ込んでいるタイプは、見た目的には上顎が突き出ているように見えます。上顎前突タイプです。
上顎の骨が狭いために下顎の骨が成長できなかったというケースが多くみられます。また、幼少期の食生活で顎が成長しきれなかったというケースもあります。
どちらのケースでも骨格が問題になっている場合が多いです。矯正治療よりも外科矯正によって顎の骨を切る手術が必要になる場合があります。
上下の顎が出ているタイプ
上下の顎が出ているタイプは、全体的に前歯が傾斜してしまっている人が多いです。歯の生える向きが前にいきすぎており、前歯が突き出すように生えています。
原因としては後天的なものが多いです。以下のような行為が原因だと考えられています。
- 幼児期の指しゃぶりが多かった
- 主に口呼吸をしている
- 舌で前歯を触ってしまう癖がある
- 爪を噛むことが多い
この場合は骨格ではなく歯の生える向きの問題なので、歯列矯正が有効です。ただし、癖が原因で前歯が前突してしまった場合は
元に戻ってしまう可能性があります。
その場合は、癖も改善する必要があります。
口ゴボの原因
そもそも口ゴボはなぜなってしまうのでしょうか?主な原因として歯の向き・唇の厚さ・顎の軟組織の量という3つの要素があると考えられています。
歯の向きの影響
前歯の向きは、骨格によるものと後天的な要素の2つで変わります。
歯は骨のカーブに沿って生えています。しかし、歯の根っこが収まる部分が前に向いている場合、成長するにつれて前歯も前突してしまうのです。
この場合は骨格が原因なので、歯列自体は綺麗な場合が多いです。歯は前突しているため、前歯を折ってしまうリスクは残ります。
後天的に前歯が前突してしまっている原因として、舌癖や爪噛みが考えられます。1回1回の影響は些細なものですが、長年積み重なると前歯は徐々に前突してしまうのです。
この場合の口ゴボは歯列矯正での治療が期待できます。ただし、癖を直さないと後戻りする可能性があるため注意が必要です。
唇が分厚い
唇が分厚いことで口ゴボに見える場合もあります。この場合は骨格や歯自体には問題がないことが多く、歯列矯正が不要なことが多いです。
改善するには美容整形という手段もありますが、ダイエットや表情筋のトレーニングでもある程度の改善が見込まれることがあります。
唇が厚い原因として考えられるのは遺伝的な要因が主です。しかし、顔に脂肪がついていたり表情筋が弱すぎたりという場合でも唇が垂れて厚くなることがあるのです。
もし唇が厚すぎて口ゴボになってしまっている場合は、表情筋のトレーニングなども試してみると良いでしょう。
顎の軟組織が少ない
唇が厚いのに対し、上顎に比べて下顎の皮膚や筋肉が薄い場合でも口ゴボに見える場合があります。
上顎部分の皮膚と下顎部分の皮膚は基本的に同じくらいの厚さです。しかし、稀に下顎の皮膚のほうが薄い場合があります。
すると相対的に上唇が厚く見え、口ゴボに見えてしまうのです。この場合も表情筋のトレーニングや美容整形で改善する可能性があります。
口ゴボを放置するリスク
歯列矯正が必要ないように見える場合があるとしても、口ゴボは理想的なかみ合わせではないことが多いです。
口ゴボにはある程度のリスクがあります。主に発音・歯の病気・顎関節症といった3つのリスクです。
発音への影響
口ゴボは歯列が綺麗に見えてもかみ合わせが悪いことが多いです。そのため、口の開き方に影響が出ます。
口ゴボの場合、構造上舌や唇の動きに制限がかかることがあります。それにより滑舌が悪くなったり、発音に支障が出たりすることがあるのです。
また、上下の歯がかみ合わない場合があり、隙間から息が漏れます。こちらも発音に影響が出るため、口ゴボの人は注意が必要です。
虫歯・歯周病になりやすい
口ゴボの悩みがあると、唇がしっかりと閉じづらいと感じる人が多いです。それは上下のかみ合わせが悪いためです。
唇が閉じづらかったり、口呼吸が多かったりするとドライマウス状態となります。口の中が乾燥し、唾液の自浄作用がうまく働かなくなる状態です。
唾液がうまく働かないと口内の細菌が増えやすくなり、結果として虫歯や歯周病のリスクが高まります。
顎関節症になりやすい
口ゴボによるかみ合わせの悪さは、顎関節にも影響を及ぼします。かみ合わせが悪いと効率的に咀嚼ができません。
普段から効率的に咀嚼ができない状態だと、口の周りの筋肉がうまく発達せず、顎関節に負担がかかります。そのため、顎関節症になる可能性が高くなります。
口ゴボは自力で治せるの?
口ゴボを矯正治療なしで治す方法はあるのでしょうか?結論から言うと、矯正治療や美容整形以外で治す方法はほとんどありません。
骨格や歯の前突が原因の場合、自力で治そうとすると無理に圧力を加えてしまい歯やその周りを傷めてしまうことがあります。
また、矯正装置のように持続的に力を加えることは困難です。そのため、歯並びがかえって悪くなったり一時的に良くなったように見えたりしてもすぐに戻ってしまいます。
そのため、自力での治療は困難です。歯科医に相談するようにしましょう。
ただし、唇が厚かったり顎の軟組織が問題だったりする場合、口の周りの表情筋トレーニングやダイエットで改善できる場合があります。
それもトレーニングやダイエットをやめてしまうと元に戻る可能性があるため、やはり自力での治療は困難といえるでしょう。
口ゴボの矯正方法
では、口ゴボを治すために用いられる矯正治療は具体的にどんなものがあるのでしょうか?よく使われるのはワイヤー矯正・マウスピース矯正・セラミック矯正の3種類です。
場合によってはこの3種類の治療のうち複数の治療を併用することもあります。どの治療が合うかは患者さんによって変わるため、担当医とよく相談しながら進めましょう。
ワイヤー矯正
口ゴボの矯正治療で最も多いのがワイヤー矯正です。マルチブラケット装置とも呼ばれています。幅広い症例に対応可能で、口ゴボにも多く使用される矯正方法です。
現在では標準的な表側矯正の他に裏側矯正もあります。表側矯正は標準的なワイヤー矯正です。歯の表面にワイヤーを装着します。
お子さんの場合は取り外し式のものをよく使うため、歯磨きなどの影響が出ることが少ないです。しかし大人の場合はほぼ固定式のものを使用します。
それに対して、裏側矯正は歯の裏側にワイヤーを装着する矯正方法です。外から見えづらいですが、幅広い症例に対応可能なのは表側矯正と同じです。
ほとんどの症例では抜歯を行い、前歯を引っ込めるスペースを作ってからワイヤーを装着します。これにより、前突した前歯をきれいな歯並びのままで引っ込めることが可能です。
マウスピース矯正
軽度の口ゴボの場合、マウスピース矯正が有効な場合があります。
口ゴボは前歯が突出している場合が多いので、引っ込めるにはその分だけ歯を移動させるスペースが必要です。
矯正の際に抜歯を行うのは、歯を引っ込めるためのスペースを作るためです。そのため、多くの場合は抜歯が必要になります。
しかし軽度の口ゴボの人は、歯を1つ1つ少しだけ削り、わずかにスペースを空けるだけで歯列が動かせる場合があります。この場合はマウスピース矯正が可能です。
また、マウスピース矯正とワイヤー矯正を併用することもあります。歯を引っ込めるスペースを確保した後、前半はマウスピース、後半はワイヤー矯正を行うという手法です。
これによってワイヤー矯正の期間を極力減らし、生活への影響を少なくすることが可能です。
セラミック矯正
セラミック矯正は歯を削り、セラミックを被せる治療法です。これによって歯の大きさを理想的なものにし、歯並びも調整することが可能です。
ただし、元々あった歯を削ることになるため、歯の寿命が短くなる可能性があります。また、極端な前突の場合は効果が少ない治療です。
なぜかというと歯の生え方から治す治療ではないからです。前突している場合、歯の生え方や骨格が問題になっていることが多くなります。
しかし、セラミック矯正は歯の生え方に対しては特に何も影響しません。そのため、比較的重度の口ゴボには向いていない治療法といえるでしょう。
口ゴボが気になるなら歯科医に相談してみよう
口ゴボは原因によっては美容整形の分野となることがあります。しかし、そうだとしても口ゴボが気になるなら一度歯科医に相談してみましょう。
なぜ歯科医に相談するかというと、矯正治療を行っているクリニックには顔の骨格を見ることが可能なレントゲンを導入していることが多いからです。
口ゴボには唇・骨格・歯の向きなど複数の要因があります。そのため、まずは歯の専門家に診察してもらうことで、どうやったら治るのかがわかるのです。
まずは何が原因でご自身の口ゴボが起きているのかを知ることが大事になります。口ゴボが気になるのであれば歯科医に相談するほうが良いでしょう。
編集部まとめ
口ゴボは歯並びこそ綺麗に見えても、かみ合わせが悪いことに変わりはありません。かみ合わせが悪いと、将来的に顎関節や歯自体に影響が出る可能性があります。
そのため、口ゴボはいずれ治す必要がある不正咬合といえるでしょう。もし治したい場合は、自力での治療は行わず歯科医に相談するようにしましょう。
歯科医に相談することで、ご自身がどんな原因で口ゴボになっているかも診断してもらえます。それによって治療の糸口が見えてくるでしょう。
治療の際は治療方針を歯科医とよく相談して、納得のいく方法で治療を進めるようにしましょう。
参考文献