歯列矯正はどれくらいで変化を感じる?歯列矯正の種類や注意点について詳しく解説します
歯列矯正は長期に渡る治療として知られていて、かかる期間は年単位に及ぶものです。
長期に渡る治療では途中で挫けそうになることもあるかもしれませんが、実際に歯並びに変化が見られるとモチベーションの維持に繋がります。
この記事では、実際に治療を開始してからどれくらいの期間で歯並びに変化を感じることができるかということを中心に、歯列矯正の種類や注意点についても解説しています。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
歯列矯正はどれくらいで変化を感じる?
歯列矯正を開始してから実際に歯並びに変化を実感できるまでの期間には個人差が大きく、歯の動きやすさ・元々の歯並び・矯正装置の種類によっても左右されます。
上記のことをふまえて歯並びの変化を実感するまでにかかる平均的な期間は、治療開始から3ヶ月後〜6ヶ月後くらいであることが多いです。
およそ半年以内に多くの人が歯並びに変化を感じ始めますが、矯正治療自体には平均して2年〜3年の期間が必要となります。
歯列矯正は、長期的な治療としての心構えが必要です。
歯列矯正の種類
歯科矯正の種類として代表的な治療法は以下の3つです。
それぞれどのような治療法なのか、メリットやデメリットとともに解説していきます。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正では、歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる矯正装置を装着します。
ブラケットにワイヤーを通し、歯を動かしたい方向に適切な力をかけることにより歯を動かす仕組みとなっているのです。
歯の表側に矯正装置を装着することから「表側矯正」とも呼ばれています。
ワイヤー矯正では、ワイヤーを交換することで歯の動きを調整しながら歯列を整えていくのです。
ワイヤー矯正のメリットは、様々な歯並びに対応できる点と、一度付けたら取り外しが不要である点が挙げられます。
目視できるため、歯磨きがしやすいことも特徴です。
それに対してデメリットとして挙げられるのは以下の3点です。
- テ矯正装置が目立ちやすい
- 矯正装置を装着したことにより痛みが起こったり、口腔内に傷ができる可能性がある
- 食べかすの付着が目立つ
裏側矯正
歯の裏側にブラケットを取り付けてワイヤーを通し矯正治療を行う方法のことを、裏側矯正といいます。
ワイヤー矯正と同様に、歯を動かしたい方向にワイヤーで適切な力を加えて治療する方法です。
歯の舌側にブラケットを取り付けるので「舌側矯正」とも呼ばれています。
裏側矯正のメリットは、以下の3点が挙げられます。
- ワイヤー矯正と同じく矯正装置の取り外しが不要
- 外側からは矯正器具が見えないため見た目が気にならない
- 口元に物が当たった場合、矯正装置による口腔内への傷が付きにくい
それに対してデメリットとして挙げられる点は以下の6点です。
- ワイヤー矯正に比べ費用がやや高額
- 医師の技術力が必要
- 矯正装置が舌に当たり違和感を感じる
- 喋りづらかったり、食べづらかったりする可能性がある
- ワイヤー矯正と比べ、治療期間が長くなる
- 矯正装置が見えないため、歯磨きに時間がかかる
また裏側矯正の場合は対応できる症例が限られているため、症状によっては希望しても行えないケースが発生します。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明で目立ちにくいマウスピース型の矯正装置を使って歯列を整える方法です。
シリコンや3Dスキャナなどを使い歯型を採取し、ひとりひとりに合わせたオリジナルのマウスピースを作成します。
治療段階に合わせて異なる形のマウスピースを使用し、理想の歯並びへ向けて少しずつ歯を動かしていきます。
マウスピース矯正のメリットは以下の5点です。
- 目立ちにくい
- ワイヤー矯正と比べて痛みを感じにくい
- 着け外しができるので、歯磨きがしやすい
- 金属アレルギーを起こす心配がない
- 通院頻度を抑えることができる
またマウスピース矯正は金属製の装置ではないため、矯正装置が当たって口腔内に傷ができてしまうリスクを回避することができます。
デメリットは以下の3点が挙げられます。
- 適応できる症例に限りがある
- 自己管理が必要
- マウスピースの装着中は水しか口にすることができない
飲食をするたびに取り外したり1日20時間の装着管理をしたりと、ワイヤー矯正と比べると管理が面倒に感じることがあるかもしれません。
また元の歯並びによっては、マウスピース矯正を希望していても対応できないケースが発生します。
歯列矯正の注意点
歯列矯正はメリットばかりではありません。注意しておくべき点も存在します。
治療を始めてからこんなはずではなかったと後悔しないためにも、注意点をしっかりと理解したうえで治療に臨みましょう。
短期間では治らない
歯列矯正は治療に長い期間が必要です。
元の歯並びの状態・歯の動きやすさ・矯正方法によっても治療期間は変わってきます。
部分的に歯並びを矯正する部分矯正では3ヶ月〜1年程度、全体的な歯並びを矯正する全体矯正になると1年〜3年程度の期間が必要となってきます。
矯正期間が終わっても、動かした歯が後戻りしないように固定する保定期間が必要です。
保定期間には少なくとも矯正期間と同じくらいの期間を当てなくてはなりません。
つまり全体矯正の場合、矯正期間1年〜3年+保定期間1年〜3年の2年〜6年の期間が必要となってくるのです。
保険が適用されないことがある
歯列矯正は一部の症例を除き、保険診療の適応外となります。
歯列矯正は一般的に、歯並びを整え見た目を綺麗にするという性質が強いものとされているのです。そのため病的な診断がない限りは、保険適応とはなりません。
健康保険が適応されるケースとしては、以下の3つが挙げられます。
- 先天性の口腔内異常(指定された59の疾患)
- 顎変形症と診断された場合(顎の大きさ・形状・位置の著しい異常)
- 埋伏歯開窓手術の必要を伴う噛み合わせの異常
上記の条件を満たし、歯科医師による診断が下りた場合にのみ公的な保険を適用し矯正治療を受けることができます。
ただし公的保険を適用して矯正治療を受けることのできる医療機関は限定されているので、事前に調べておくとよいでしょう。
痛みを感じることがある
歯列矯正に伴い、口腔内に痛みを感じることがあります。
痛みの原因は大きく2つに分けることができます。
1つ目は、歯列矯正によって歯が動くことによる痛みです。
これは食事などで食べ物を咀嚼したときに感じることが多く、特に硬いものを食べたときに痛みが生じやすくなっています。
この痛みは矯正装置を装着した翌日から翌々日がピークとなることが多く、3日目以降は軽減し、1週間ほどでほとんど治まるケースが多いです。
ただし矯正治療では通院のたびに矯正装置を調整します。調整のたびに3日〜1週間程度の痛みが現れますが、調整の回数を重ねるごとに、痛みの程度も期間も緩和されます。半年後には調整後の痛みもほとんど感じなくなるでしょう。
2つ目は、矯正装置が口の中に当たって起こる痛みです。
ワイヤー矯正や裏側矯正の場合、歯に着けるブラケットの先が尖っています。
そのためブラケットの先が頬の内側や舌に当たって痛みが発生するのです。
またワイヤーが口腔内に刺さって痛みを感じることもあります。
ブラケットの角やワイヤーが当たって痛む場合は、ブラケットをシリコンなどで覆ったりワイヤーをカットしたりして対処することが可能です。
担当の歯科医に相談し、対処してもらいましょう。
歯列矯正のメリット
見た目がきれいになって自分に自信を持てるようになるだけではなく、口内環境が整って虫歯や歯周病になりにくくなるなど歯列矯正には多くのメリットが挙げられます。
具体的にどんなメリットが得られるのか、より具体的に詳しく見ていきましょう。
歯周病や虫歯になりにくい
歯列矯正で歯並びを整えると、歯周病や虫歯になりにくいというメリットがあります。
歯並びが整うことにより歯磨きがしやすくなり、プラーク(汚れ)の溜まりにくい口内環境を保ちやすくなるのです。
咀嚼機能の向上
歯列矯正により噛み合わせが正常な状態になると、咀嚼機能の向上を期待することができます。
咀嚼機能が向上すると、以下のメリットを期待することができます
- 胃腸へかかる負担を軽減することができる
- 唾液腺が刺激されやすくなり、唾液の分泌量が増えて口臭の減少につながる
- 特定の歯にだけ強い負荷がかかることがなくなり、歯ぎしりがなくなる可能性がある
しっかりと咀嚼してから食べ物を飲み込むことができるようになるので、口内だけでなく胃腸の状態を改善できる効果も期待できるのです。
口元・横顔が綺麗になる
歯の凸凹・受け口・出っ歯などが改善され歯並びが整うと、見た目がきれいに整います。
歯並びがきれいになることで、口元の印象がよりきれいに整うのです。
出っ歯や受け口が改善されると、前からの見た目だけでなく横から見た印象もきれいに整えることができます。
顔のバランスが良くなる
歯並びが改善されることにより、口元の印象だけでなく顔全体のバランスが良くなることが期待できます。
また歯並びへのコンプレックスが解消され、人前で歯を見せて笑うことへの抵抗感がなくなり、笑顔でいられる時間が増えると考えられます。
笑顔が増えることにより表情筋が鍛えられ、顔全体がキュッと引き締まった印象になっていくのです。
歯列矯正をする時の病院を選ぶポイント
歯列矯正をするときに重要なポイントのひとつに、治療を受ける病院選びを挙げることができます。
そのほとんどが自由診療となる歯列矯正では、病院ごとに治療にかかる料金が異なります。
また取り扱っている治療方法も病院によって異なりますので、自分に合った病院を選ぶようにしてください。
矯正の種類が豊富かどうか
矯正治療を受ける歯科を選ぶときは、複数の矯正装置を取り扱っている病院を選ぶようにしましょう。
歯並びや噛み合わせによって、治療に向いている矯正装置と向いていない矯正装置があります。
また矯正治療の途中で、使用している矯正装置では充分な効果が得られないことが発覚するケースも存在します。他の矯正装置を使用してリカバリー対応が可能なことは、病院を選ぶ際のポイントになるのです。
より効果の高い治療を受けるためにも、自身の歯並びや噛み合わせに合った矯正器具を選ぶことができる歯科を選びましょう。
具体的な費用や期間を明示しているか
歯列矯正は基本的に自由診療となり、治療費が高額となるケースが多くを占めています。
事前に具体的な費用や期間を明示している歯科を選ぶようにしましょう。
矯正治療中は矯正装置の費用の他に、月に1回程度の通院時に再診料や装置の調整料といった追加費用が発生することが多いです。
再診料や調整料も歯科によって様々です。治療を開始してから追加料金が予想以上に膨らんでしまうといったことが起こらないように、治療開始前には必ず具体的な料金を確認しておきましょう。
治療にかかる期間についても、事前に確認しておくことで矯正前後のライフスタイルの調整をすることが可能になります。
矯正のメリット・デメリットについての説明はあるか
歯列矯正を受ける際には、メリット・デメリットについてしっかりと説明をしてくれる歯科を選びましょう。
使用する矯正装置によって矯正期間・費用・違和感の感じ方などが異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分に合った矯正方法を選択することが大切です。
歯列矯正のカウンセリングを受けよう
歯列矯正の検討をし始めたら、まずはカウンセリングを受けてみましょう。
カウンセリングでは、歯列矯正に関する疑問や不安を解消し、費用や治療期間についても歯科医師から説明を受けることができます。
カウンセリングにかかる費用は歯科医院によっても異なりますが、無料〜5,000円程度で受けることができるところが多いようです。
少々費用がかかってしまうかもしれませんが、カウンセリングは複数の歯科医院で受けることをおすすめします。
なぜなら、歯科医師の考え方や歯科医院の治療方針によって治療方法が異なるからです。
また歯列矯正は自由診療のため、費用についても歯科医院によって大きく異なります。
複数の歯科医院でカウンセリングを受けて費用面や治療方法などを比較検討し、自分に合った所で治療を受けるようにしましょう。
歯列矯正の期間について把握して選ぼう
治療を受ける歯科医院を選ぶ際は、矯正にかかる期間についても把握しておくようにしましょう。
治療期間は歯並びの程度や目指すゴールによっても異なりますが、通常はカウンセリング時におおよその目安が提示されます。
将来引っ越しする可能性があったり、進学・転職・結婚などでライフステージが変わったりする可能性がある場合は、事前に相談しておきましょう。
自身のライフステージに合わせて、無理なく治療を行うことができる矯正方法を選択することも大切です。
編集部まとめ
歯列矯正は、治療を始めておよそ3ヶ月後〜6ヶ月後くらいまでに多くの人が歯並びの変化を実感することができるでしょう。
しかし矯正の完了までには長期に渡る治療が必要となってきます。
長期に渡る治療の先を見据えて自分に合った歯科医院と治療法を見つけることは、矯正治療を成功に導くためにもとても重要です。
歯並びが気になって歯列矯正を検討し始めたなら、まずは複数の歯科医院でカウンセリングを受けてみることをおすすめします。
参考文献
- 矯正歯科治療について|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- カスタムメイドのアライナー型矯正装置(マウスピース型矯正装置)に対する本会の見解|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 治療期間・費用(成人)|公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会
- 矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 矯正歯科治療について|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 治療の開始時期・治療方法(成人)|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 公益社団法人日本臨床矯正歯科医会のオルソドンティストがめざす「矯正歯科治療」とは|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 歯並びが正常かどうか、専門機関で相談だけでも受けられますか?|公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 矯正歯科治療は、どこで受けるのがよいですか?|公益社団法人 日本矯正歯科学会
参考サイト