矯正治療中は歯磨きが重要!重要な理由やワイヤー矯正で磨き残しが多い部分・歯磨きのポイントを詳しく解説
矯正治療中は、歯の隙間を意識した丁寧な歯磨きがとても大切です。
歯磨きをした後、歯の表面がツルツルに磨けていたら、歯磨き粉の爽やかさとともに満足感が湧いてきます。
しかし、主だった歯の歯垢が落とせても、僅かな隙間に食べかすや歯垢が残っていれば、虫歯や歯周病になる危険性は落とし切れていません。
矯正の痛みに耐えながらも、虫歯になってしまったらとても辛い心境になってしまいます。
本記事では、矯正治療中の磨き残しの多い注意すべき部分や、歯磨きのポイントをご紹介していきますので、是非参考にしてください。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
矯正中は歯磨きが重要
矯正治療中は、歯磨きがとても重要です。矯正装置を装着していると、歯の間に食物の食べかすが溜まりやすくなります。
食べかすは細菌である歯垢となって、虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。そのため、矯正装置を装着している時は、丁寧な歯磨きが大切です。
特に、歯の隙間や装置の間等に溜まった食べかすを取り除くことが重要です。歯科医の指導に従って、正しい歯磨き方法を行うようにしましょう。
矯正中の歯磨きが重要な理由
矯正装置をしたまま食事をすると、前歯や奥歯に食べ物が沢山詰まってしまうことが多くなります。小さな欠片になった食べ物は、ワイヤーの間やブラケット周辺に挟まり、なかなか落ちません。
歯の隙間に歯間ブラシを入れたら、思いがけないほどの食べ物が挟まっていた、ということもあります。
この様に、矯正中は口内に食べかすが残りがちですが、ここでは、細かい汚れを落とす歯磨きが大切な理由をご紹介します。
食べかす・歯垢が溜まりやすい
矯正治療中は、ブラケットやワイヤーに食べ物が挟まったりしやすくなっています。また、歯ブラシを当ててもブラシが届きにくいことで歯垢が溜まりやすい状態です。
更に、奥歯にはバンドと呼ばれるリング状の装置も取り付けられています。バンドの周辺は食べ物が詰まりやすいだけでなく、歯の隙間もあるため歯垢が溜まりやすいです。
そのため、ブラケットや奥歯周辺の歯ブラシの届きにくい場所は、矯正用フロス・タフトブラシ・歯間ブラシなどを使うと、磨き残しを防げます。
歯科医からの指導に従って、正しい歯磨きの方法で磨きましょう。
ブラッシングしづらくなる
矯正治療中は、矯正装置のワイヤーやブラケットの隙間に歯ブラシが届きにくくなるので、歯磨きがしづらくなります。
ブラケットなどの矯正装置がブラッシングの邪魔となり、歯ブラシがワイヤーやブラケットの隙間などの細かいところまで当たらないのです。
また、ブラケットにはワイヤーだけでなく、パワーチェーンといった道具を装着させるため、ブラケットを中心に歯の表面を覆うものが多くなります。
磨き残しがそのままとなれば、虫歯や歯周病を引き起こす原因になりますので、歯の間や矯正装置の周辺の細かい汚れを奇麗に落とすことが重要です。
虫歯・歯周病になるリスクが高い
矯正治療中は、矯正装置や歯の隙間の食ベかすや歯垢によって、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。
歯周病は、歯に歯垢が付着したまま長時間経過した際に、細菌が増殖して歯肉が炎症を起こすものです。
矯正治療中は、ブラッシングができていない場所に食べかすが溜まってしまっても、気が付かないこともあります。
そのまま放置すると、虫歯や歯周病が進行します。ブラッシングは歯の隅々まで奇麗にするようにしましょう。
ワイヤー矯正で磨き残しが多い部分
前項では、矯正装置であるワイヤーやブラケットによって食べかすが挟まりやすく、歯磨きが上手くいかないと虫歯や歯周病になることについてご紹介しました。
続いて、どの様な場所に特に磨き残しが多いのかを解説します。実際に歯磨きをする際は、以下の場所に特に気を付けて、汚れを落とすように心がけてみてください。
歯間
ワイヤー矯正装置の場合、歯間は磨き残しが多い場所です。ブラケットやワイヤーがあるために、歯間まで歯ブラシが届きにくいためです。
残った食べかすや歯垢は、長時間そのままにしていると、虫歯や歯周病を引き起こす原因です。
また、ワイヤー矯正ではバンドといって、矯正装置を奥歯にリングの様にかけて矯正装置を強固に固定する方法があります。
バンドは奥歯の上から被せるために、奥歯と奥歯の間に隙間が発生します。バンドによってできた隙間は、特に歯ブラシが届きにくく汚れが残りやすい場所です。
バンド周辺の歯間は、歯間ブラシで歯間の隙間の汚れをかき出しましょう。
ブラケット装置周辺
ワイヤー矯正装置の場合、ブラケット装置周辺に食べかすが溜まりやすく、更に磨き残しが多い場所です。
ワイヤーにも食べ物が挟まりやすいため、ブラケット装置周辺には食べかすが詰まりやすい環境になっています。
ブラケット周辺のブラッシングは、正面から歯ブラシを当てるだけでは汚れの除去がしづらいです。ブラケットの上下とワイヤーの間、それぞれ分けて歯ブラシをしましょう。
ブラケットは、上・下からと別々の角度で磨く必要があります。また、ワイヤーとブラケットの隙間はタフトブラシなどのピンポイントで小さな箇所を洗い落とせるものを使用します。
歯と歯茎の間
歯と歯茎の間は、磨き残しが多くなる部分です。歯と歯の間の上にかかったワイヤーによって、歯茎にもブラシが当たりにくくなるためです。
歯と歯茎の境目となる部分にも、磨き残しがあると歯垢はできてしまいます。そのため、歯ブラシをする際には、歯茎にも掛かるように歯ブラシを当てることが大切です。
ワイヤーの奥の歯茎にブラシが届くようにするためには、ブラケットとワイヤーを避けるようにして、歯ブラシの角度を変えると良いでしょう。
矯正中の歯磨きのポイント
矯正治療中に虫歯や歯周病となるか否かを決めるのは、歯ブラシを行うご自身のブラッシングの方法と歯磨きの頻度です。
歯と歯磨きは、生涯に渡り付き合っていくものです。歯垢を溜めない歯磨きの方法が習慣化すれば、矯正治療が終わった後にも、長期的に健康的な歯を維持していくことができます。
続いて、歯ブラシの種類や角度をご紹介します。是非、丁寧な歯磨きの方法を習慣化しましょう。
毛先をあてる角度
矯正中の歯磨きのポイントとして、歯ブラシの毛先をあてる角度が大切です。ブラケットの周りを磨くときは、歯ブラシを45度程度傾けてブラケットに沿うようにして磨きます。
ブラケットの上部と下部に分けて、それぞれ両方を磨きましょう。
また、ブラケットの表面もブラッシングが必要です。歯に対して毛先を垂直にあてるようにし、横から歯に沿って磨くようにしましょう。
角度を変えた上下からのブラッシングと、垂直にあてて磨くブラッシングの両方を行います。
使うブラシの種類
矯正中の歯磨きには、タフトブラシがおすすめです。タフトブラシは毛先が細いため、ワイヤーやブラケットの間の隙間の汚れも落とすことができます。
また、毛が柔らかいため、歯茎を傷つけにくく、安全に歯磨きができることもメリットです。タフトブラシには硬さに種類があり、柔らかいものや普通などを選択できます。
通常は普通の硬さを選ぶと良いでしょう。歯茎が歯肉炎などで弱い場合は柔らかめを選びましょう。更に、歯ブラシには山形ブラシやU字ブラシなど、矯正装置のブラッシングに適した歯ブラシもあります。
U字型ブラシは毛先の真中の列だけ低くできており、U字型の毛先で矯正装置にフィットして磨くことができるものです。
また、山形ブラシは歯と歯茎の間などの狭い部分を磨く場合に適したものです。
矯正用フロスも使用する
矯正中の歯磨きには、フロスを積極的に活用しましょう。タフトブラシでも取り切れない、ワイヤーやブラケットの周辺に残っている食べかすを取り除くことができます。
フロスには、矯正用フロスが便利です。矯正用フロスであれば、柄がついているので矯正装置をしたまま、手を汚すことなく歯の汚れを落とせます。
矯正用フロスは幅が狭く、先端の柄が外側へカーブする形をしています。そのため、片側の柄をワイヤーの下をくぐらせることができるところが特徴です。
反対側の柄を歯の裏側へと通して、前後へ動かせば歯間と歯茎の汚れが除去できます。矯正用フロスは歯科医から購入することができます。
購入を希望の際は担当の歯科医に相談してみましょう。
矯正中の歯磨きの注意点
毎食の歯磨きはとても大切です。しかし、丁寧な歯磨きが大事だとわかっていても、思い通りに行かないこともあるでしょう。
その場合は、うがいをして口の中を奇麗にしたり、だらだら食べる事を避けるなど、生活の中で歯を守る心がけを忘れないようにしましょう。
続いて、毎食後の歯磨きの心がけと、うがいの習慣化をご紹介します。
毎食後歯磨きをする
矯正治療中は、毎食後の歯磨きがとても大切です。矯正装置をつけていると、口内の歯垢は通常の2~5倍程にもなるといわれています。
矯正装置をしている場合は、食べかすが残りやすい状態です。歯磨きをしないと、通常以上に歯垢や口内細菌の増殖が加速してしまいます。
また、歯垢は長時間放置すると石灰化して歯石となります。歯石の元となる歯垢は細菌です。歯石は細菌の塊であり、歯周病を引き起こす原因となります。
歯垢が歯石になるまでの時間は、人によって様々ですが、歯垢の沈着から最短で2日です。毎食の歯磨きをすることで、これらのリスクを回避するように心がけましょう。
難しい場合はうがいをこまめにする
出社した時の昼食や友人との食事の際は、なかなか毎回の歯磨きができない場合もあることでしょう。
その場合は、うがいをするだけでも、矯正装置に絡まった大き目の食べかすを洗い流すことができます。
ただし、歯の表面にこびりついた歯垢は、水の流れだけでは取り除くことはできませんので、次のタイミングでしっかりと歯ブラシをしましょう。
また、うがいと合わせて、虫歯や歯周病予防のうがい薬があれば口臭予防にもつながります。
矯正治療中に虫歯や歯周病かもと思った場合は
矯正治療中に虫歯や歯周病が疑われる場合は、すぐに歯科医に相談し、治療を受けることが重要です。
ワイヤー矯正治療中に虫歯になった場合は、一度装置を取り外して治療を行います。ですので、治療が終了するまでは矯正治療は一時中断します。
マウスピース矯正の場合は、治療の時だけマウスピースを外せるので治療はしやすいです。虫歯の進行度によって、矯正を一時中断するかどうかを判断することになります。
ワイヤー矯正・マウスピース矯正、いずれの場合も進行が進むと虫歯や歯周病の治療による中断の時間も増えていきます。
症状が現れた場合は早めに歯科医へ相談しましょう。
矯正中のの歯磨きが上手くいかない場合は
矯正中の歯磨きが上手くいかない場合は、以下のような対処方法があります。
- 歯科医に相談する
- 矯正治療用のフロスやブラシを使う
- 歯磨きの時間と頻度を増やす
まずは歯科医に相談し、歯磨きの方法や使用するブラシ・フロスの選び方などの指導を受けましょう。
歯磨きが困難な部分については、先述した通り、矯正治療用のフロスやブラシを使用することで、歯の間やワイヤーに挟まった食べかすを効果的に除去できます。
そして、一番簡単にできる対処方法としては、歯磨きの時間と頻度を増やすということです。
歯磨きは、通常のブラシ・タフトブラシ・フロスや歯間ブラシといった、複数のブラシを使って時間をかけて丁寧に磨くことも大切です。
歯磨きの頻度が朝と夜だけの方は、昼の後にも歯磨きの習慣をつけるなど、回数を増やしてみましょう。
編集部まとめ
丁寧な歯ブラシの習慣は、矯正治療中だけにとどまらず、今後の人生においてもずっと大切なことです。
矯正治療中は装置周辺に食べかすが残りやすいために、非常に細かい部分までの歯磨きが必要になります。しかし、一度習慣化すれば、完璧な歯磨きをずっと継続する術を手に入れられます。
長期的に健康的な歯を維持するためには、歯の隙間までしっかりと磨く歯磨きが大切です。
歯ブラシ・フロス・タフトブラシなどの様々なアイテムを駆使し、奥歯の隙間までピカピカに磨き上げる様に心がけましょう。
参考文献