歯列矯正で舌に口内炎ができる理由とは?痛みを和らげる方法と予防策

歯列矯正を始めてから、「舌に口内炎ができて喋るのも食べるのも辛い……」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。矯正装置が舌に当たる違和感や痛みは、毎日の生活に大きなストレスを与えかねません。
本記事では歯列矯正で舌にできる口内炎について以下の点を中心に紹介します。
歯列矯正で舌にできる口内炎について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
歯列矯正の治療中に舌に口内炎ができる原因

矯正治療中に口内炎ができる原因は何でしょうか。以下で解説します。
①矯正装置が舌や口腔粘膜に当たる
矯正治療中の口内炎は、矯正装置やワイヤーが舌や口腔粘膜に当たり、擦れや傷が生じることで起こります。なかでも治療開始直後はお口の中が装置に慣れておらず、刺激を受けやすい時期です。
ワイヤー矯正では装置が粘膜に接触しやすく、マウスピース型矯正でも縁が当たって炎症につながることがあります。舌や粘膜の赤みや腫れ、熱感、水ぶくれなどがみられる場合はカタル性口内炎の可能性があります。
装置が当たる部分を調整すると、数日で改善するケースが多いとされています。
②栄養バランスの乱れ
矯正治療中は装置による違和感や食事のしにくさから、栄養バランスが偏りやすくなります。こうした栄養不足、なかでもビタミンB2の不足は、アフタ性口内炎を引き起こす要因の一つとされています。
アフタ性口内炎は、白く丸い潰瘍状の病変が特徴で、周囲が赤く縁取られるように見えるとされています。主な関連要因としては以下が挙げられます。
●ビタミンB2などの栄養不足
●疲労の蓄積
●ストレスの増加
●睡眠不足による免疫力低下
多くの場合は10日ほどで自然に改善するとされていますが、長引く場合や繰り返す場合には、ほかの疾患が関与している可能性もあるため注意が必要です。
③金属や素材によるアレルギー反応
矯正治療で使用される金属や素材に対してアレルギー反応が起こると、アレルギー性口内炎を発症する場合があります。金属アレルギーのある方に見られやすく、装置や被せ物などが接触している部分を中心に、舌や口腔粘膜が赤く腫れるのが特徴です。触れている箇所にヒリつきや違和感を覚える場合もあり、炎症が持続するケースもみられます。
また、口腔内だけでなく、手足に腫れやかゆみといった全身症状が現れることもあるとされています。
矯正装置装着後にこれらの変化が見られた際は、使用素材との適合性を確認することが重要です。
④細菌・ウイルスなどによる感染
矯正治療中は装置周囲に汚れがたまりやすく、口腔内の衛生状態が乱れることで、細菌やウイルスの影響を受けやすくなります。
代表的なものの一つがカンジダ性口内炎で、もともと口腔内に存在するカンジダ菌が増殖し、炎症を引き起こします。粘膜の発赤や白い膜の付着が見られるのが特徴です。
また、ウイルス性口内炎はヘルペスやクラミジアなどの感染が関与し、水ぶくれができた後に破れて、かさぶた状に変化します。かゆみを伴う場合もあります。
矯正装置の装着によって清掃が難しくなる時期は、こうした感染性口内炎の発症にも注意が必要です。
⑤ 話す・飲み込む動作で舌が繰り返し擦れる
矯正治療中は歯の位置や噛み合わせが変化する過程にあり、舌の動きとの接触バランスも変わりやすくなります。その結果、会話や嚥下のたびに舌が歯や装置周囲に繰り返し触れ、慢性的な摩擦刺激が生じることで口内炎につながる場合があります。
なかでも尖った歯や不適合な被せ物、詰め物の縁が鋭くなっている場合は、舌側面を傷つけやすくなります。
また、歯並びの傾きによって舌の収まる空間が狭くなると、接触頻度が高まり炎症が起こりやすいとされています。
ほかにも無意識に舌で歯列や頬の内側を触れる癖、軽く噛んでしまう動作、歯ぎしりや強い食いしばりも刺激要因となり、同じ部位に再発を招く可能性があります。
歯列矯正による舌の口内炎の痛みを和らげる方法

矯正治療中に舌に口内炎ができてしまった場合は、以下のような方法を検討してみましょう。
歯列矯正用のワックスを使用する
矯正装置のこすれによって舌に口内炎が生じている場合は、歯列矯正用ワックスの活用が痛みの緩和に役立ちます。
ワックスは粘土のようにやわらかい素材で、装置の尖った部分や角を覆うことで、粘膜への直接的な刺激を軽減します。主に通院中の歯科医院で入手でき、応急的な保護材として用いられます。
使用時は、米粒大にちぎって指先でやわらかくし、口内炎付近の装置に密着させます。あらかじめ歯磨きを行い、水分を拭き取っておくと付着しやすくなります。装置と粘膜の摩擦が抑えられることで、痛みの軽減だけでなく、傷の悪化や再発の予防にもつながります。食事前の使用も有効とされています。
歯科医院で矯正器具を調整する
歯列矯正用ワックスを使用しても痛みや口内炎が改善しない場合は、矯正装置そのものの調整が必要となることがあります。ワイヤーの端が長い、ブラケットの位置が粘膜に当たりやすいなどの状態では、刺激が続き炎症が治りにくくなります。このような場合、歯科医師が装置の形状や位置を整えることで、口内炎の原因となる接触の軽減につながります。
痛みによって会話や食事など日常生活に支障が出ている場合は、無理に我慢せず早めの相談が大切です。
また、症状が長引く、あるいは10日以上改善しない場合には、別の疾患が関与している可能性も考えられるため、病院を受診しましょう。
口内炎用の市販薬を使用する
矯正治療中に生じた舌の口内炎には、市販の口内炎用薬を活用する方法もあります。炎症を抑え、痛みを軽減する目的で使用され、症状の程度や部位に応じて剤形を選択できる点が特徴です。
主な種類としては、患部に塗布して保護膜をつくる軟膏タイプ、口内炎に直接貼り付けて傷口を覆うパッチタイプ、薬剤を噴霧して広範囲に作用させるスプレータイプなどがあります。
なかでもパッチタイプは外部刺激から患部を守りながら成分を浸透させやすく、スプレータイプは舌の奥など手が届きにくい部位にも使用しやすいとされています。痛みが強い場合は、鎮痛成分を含む製品を選ぶことも一つの方法です。
刺激の強い食品を避ける
舌に口内炎があるときは、日々の食事内容にも配慮することが痛みの軽減につながります。香辛料を多く含むカレーやキムチ、酸味の強いレモン類、熱い料理などは患部を刺激しやすく、炎症の悪化や痛みの増強を招くことがあります。そのため、口当たりがやわらかく、とろみのある食品を選ぶことが勧められます。
例えばシチューやリゾット、茶碗蒸し、ヨーグルト、ゼリーなどは粘膜への刺激が少なく、食事時の負担を抑えやすいとされています。
また、冷たすぎる飲み物も刺激となる場合があるため、常温の水やぬるめのお茶を選び、水分補給をこまめに行うことも大切です。
会話や食事中の舌への刺激を減らす
舌の口内炎を和らげるためには、日常動作のなかで生じる物理的な刺激を減らすことも重要です。会話や食事の際、舌が歯や補綴物に繰り返し触れる状態が続くと、炎症の悪化や治癒の遅れにつながります。
歯の欠けによる尖りや、被せ物や入れ歯の縁の段差などがある場合は、歯科医院で表面を滑らかに整える処置を検討しましょう。
こうした調整によって慢性的な接触刺激が軽減され、再発予防につながるケースもあります。
歯列矯正中の舌の口内炎を予防する方法

私生活を見直すと、口内炎の予防につながります。以下で詳しく紹介します。
丁寧な口腔ケアを行う
矯正治療中は装置周囲に汚れが付着しやすく、磨き残しが増えることで細菌が繁殖しやすい環境になります。口腔内の不衛生は口内炎の発症要因の一つとされており、清潔な状態を保つことが予防につながります。なかでも就寝前や食後は、装置のすき間や歯と歯茎の境目まで意識して丁寧に歯磨きを行うことが大切です。
加えて、殺菌成分を含む歯磨き粉の使用や、マウスウォッシュによる洗口も口腔内環境の維持に役立ちます。
外出時にはキシリトール配合のガムを取り入れる方法もあります。
日常的な口腔ケアを継続することで、むし歯や歯周病、口臭の悪化予防と併せて、口内炎のリスク低減にもつながります。
バランスよく栄養を摂取する
舌の口内炎を予防するうえでは、日々の食事から栄養をバランスよく摂取することが重要です。栄養の偏りは粘膜の健康維持に影響し、炎症を起こしやすい状態につながります。
なかでもビタミンB群やビタミンCは粘膜の代謝や修復に関与し、不足しないよう意識したい栄養素です。
ビタミンB2は牛乳や卵、納豆、緑黄色野菜などに、ビタミンB6は肉や魚、バナナ、大豆製品などに含まれます。
また、鉄分や亜鉛、タンパク質も口腔内の健康維持を支える栄養素とされています。
歯列矯正中は食べにくさから食品が偏りやすいため、やわらかい食事を取り入れつつ、さまざまな食材を選び、必要に応じて補助的な栄養補給も検討しましょう。
十分な睡眠をとる
舌の口内炎を予防するためには、日常生活における休養管理も重要な要素です。
睡眠不足が続くと免疫力が低下し、細菌やウイルスへの防御機能が弱まりやすくなります。その結果、口内炎が発症しやすくなるだけでなく、風邪など全身の不調につながる可能性も高まります。
こうしたリスクを抑えるためには、規則正しい生活リズムを意識し、6〜8時間程度の睡眠時間を確保することが望ましいとされています。
また、睡眠の質を整えるためにも、就寝前のストレッチや、寝る直前までスマートフォンを使用しないといった工夫も行ってみましょう。
ストレスを溜めない
舌の口内炎を予防するうえでは、心身のストレス管理も欠かせません。矯正治療は長期間におよびやすく、装置による違和感や痛み、食事のしづらさなどから心理的負担を感じやすい環境にあります。ストレスが蓄積すると免疫機能が低下し、口内炎が生じやすくなるだけでなく、肌荒れなど体調面にも影響が及ぶ可能性があります。
そのため、日常のなかで意識的に気分転換の時間を設けることが大切です。
趣味を楽しむ、軽い運動を取り入れるなど、自身に合ったリフレッシュ方法を見つけることが、ストレスの発散につながります。
予防的に矯正用ワックスを活用する
歯列矯正用ワックスは、口内炎ができた後の対処だけでなく、あらかじめ刺激を防ぐ目的にも活用できます。矯正装置を装着した直後や、ワイヤー調整を行った後は粘膜が擦れやすいため、早い段階から使用することで傷の発生を抑えられる可能性が高まります。
装置の角ばった部分や、舌や粘膜に当たりやすい箇所に事前に覆うように使用しておくことで、摩擦による損傷の予防につながります。
就寝前に使用すれば、睡眠中の無意識の舌の動きによる刺激軽減も期待できます。
歯列矯正中に舌の口内炎を悪化させない食事のポイント

もし矯正治療中に口内炎ができてしまった場合は、食事の際に以下のポイントを意識してみましょう。
硬いものを食べたり食べ物を噛みちぎらない
食べ物を前歯などで噛みちぎる動作は、矯正装置に強い負荷がかかり、外れや破損を招く要因につながります。装置へ加わる力を抑えるためにも、あらかじめ料理を一口大に切り分けてから食べるようにしましょう。
さらに、氷や飴のように硬度の高い食品を噛む行為も、同様にトラブルの原因となり得ます。
無意識に噛んでしまう習慣がある場合は、飲み物に氷を入れないようにする、飴を控えるといった日常的な工夫が大切です。
一度にお口に入れる量は少なめにする
一度に多くの食べ物を口腔内に入れると、咀嚼時に装置へ加わる力が強まり、舌や粘膜を巻き込みやすくなります。なかでも舌側矯正の場合は装置が歯の内側に位置するため、食べ物と一緒に舌を噛んでしまう可能性が高まりやすい点に注意が必要です。
負担を軽減するには、食べ物を小さく分け、一口量を控えめにしてゆっくり噛みましょう。口腔内に適度な余裕をもたせることで圧力が分散され、痛みの増強を防ぐ効果が期待できます。
また、左右均等に噛む意識を持つことも粘膜損傷の予防につながります。
詰まった食べ物を放置しない
矯正治療中は装置の構造上、食べかすが引っかかりやすく、なかでも舌側矯正では内側に付着するため気付きにくい傾向があります。詰まりをそのままにしておくと細菌が増殖し、口内炎やむし歯の発生要因となるだけでなく、異物の圧迫によってワイヤーが変形する可能性も否定できません。
食後はうがいを行い、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて装置周囲まで丁寧に清掃しましょう。
外食時に備えて歯ブラシと歯間ブラシを携帯しておくと、詰まりが生じた場合でも対応でき、炎症や痛みの悪化予防につながります。
まとめ

ここまで歯列矯正で舌にできる口内炎についてお伝えしてきました。歯列矯正で舌にできる口内炎の要点をまとめると以下のとおりです。
- 矯正治療中に口内炎ができる原因には、矯正装置やワイヤーの接触による擦過傷、栄養不足や免疫低下、金属アレルギー、細菌やウイルス感染のほか、噛み合わせの変化や舌の反復的な摩擦刺激が挙げられる
- 口内炎の痛みを和らげるには、歯列矯正用ワックスで装置の刺激を緩和するほか、器具の調整や市販薬を活用したり、刺激の強い食品を避けたり、会話や食事時の舌への接触を減らすことが大切である
- 口内炎を予防するには、丁寧な口腔ケアと栄養バランスのいい食事、十分な睡眠、ストレス管理が基本で、ワックスの予防使用や食事量の調整、食べ物の詰まり除去などの生活面の工夫も重要
矯正治療中にできる舌の口内炎は、お口のケアと生活習慣の見直しにより、負担の軽減につながります。違和感や痛みが続く場合は自己判断せず、早めに歯科医師へ相談しましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献