矯正歯科での3Dスキャンのメリットは?3Dスキャナーの種類や使用の流れを解説

矯正歯科に通う方のなかには、3Dスキャンについての説明を耳にした方もいるでしょう。初めて聞く機械であれば、メリットやデメリットなど不安に感じることも少なくありません。
本記事では3Dスキャンを用いる場合のメリットやデメリットのほか、3Dスキャンを使用した場合のマウスピース作製までの流れについても紹介しています。
歯列矯正以外の治療における活用事例にも触れていますので、すでに3Dスキャンを使用した治療を提案されている方だけではなく、歯科医院の選定段階の方にも参考になれば幸いです。

監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
目次 -INDEX-
矯正歯科の3Dスキャンとは

矯正歯科で用いられる3Dスキャンは、口腔内の状態を確認するための検査です。
具体的には、専用のスキャナーを使用してお口の中をなぞるように撮影し、データを取得していきます。3Dスキャンで取得したデータは治療計画を立てる際に活用するだけでなく、コンピュータ上で歯列模型のシミュレーションを行うといった方法で使われます。
これまで口腔内の型取りをする際には、印象材とよばれる素材をお口のなかに入れて、固まるまで待ってから取り出すという方法を使用していました。この印象材を使用して石膏で型を取って、治療計画に活用しています。
歯科医院がスキャナーを導入するためにコストがかかる点や、石膏の模型からデータに取り扱う型が変わる点など導入には高いハードルが存在しています。そのため徐々に取り扱いが増えている段階です。
3Dスキャンによる型取りにはさまざまなメリットがあるため、検討してみるとよいでしょう。
歯科用3Dスキャナーの種類

3Dスキャンによって口腔内のデータを取得する場合には、歯科用の3Dスキャナーを使用します。一般的に患者さんに説明があるような検査に用いられるスキャナーは口腔内スキャナーです。
一方でデスクトップ型スキャナーと呼ばれるスキャナーも存在します。これは従来の印象材と石膏模型を使用して取った型をデジタル化するために使用する機材です。
具体的に確認していきましょう。
口腔内スキャナー
口腔内スキャナーは、患者さんのお口の中をスキャンするための機械です。歯や歯列のデータを取得することができます。
口腔内スキャナーを患者さんのお口のなかに入れて撮影することで3Dデータを取得します。このデータをもとに歯列矯正で使用するマウスピース装置を作製するほか、咬合性の確認やシミュレーションを行うことも可能です。
口腔内スキャナーは、情報を取得するために光を投影してデータを取得します。その計測方式によって、スキャナーはさまざまに分類されます。
使う方式によって精度やデータの取得できる範囲に差があるため注意が必要です。具体的にはクリニックでご自身が3Dスキャンを活用してもらうことが可能かどうかを確認するとよいでしょう。
デスクトップ型スキャナー
デスクトップ型スキャナーは患者さんの口腔内の石膏模型をデジタルデータ化するスキャナーです。
型取りの手順自体はこれまでの印象材を使用した手順と変わりないため、すでにある物理的な模型をデジタルデータ化する場合に活用するケースも少なくありません。
患者さんとしてはこれまでと型取りの負担の面では変わりがないため、デスクトップ型スキャナーを活用している歯科医院では、あまりメリットを享受できないといえるでしょう。
とはいえ石膏模型は保管場所が膨大となるだけでなく、模型そのものの劣化もあるため、過去のデータを長期保存できる点もメリットの一つです。
矯正歯科の3Dスキャンのメリット

矯正歯科で3Dスキャンを活用するとどのようなメリットがあるでしょうか。
ここではさまざまなメリットを紹介します。従来、口腔内の型取りをする場合には、印象材をお口のなかに入れて固まるまで時間をおくという方法で行っていました。
3Dスキャンを活用すると、型取りのプロセスが大きく変化するためメリットを得ることができます。3Dスキャンについて検討している場合には、メリットをイメージしてみるとよいでしょう。
型取り時間の短縮
3Dスキャンを活用しない従来の型取りは、印象材という材料をお口のなかに入れて固め、剥がして型とする方法を用いて行っていました。
この方法では印象材が固まるまでの時間を待つ必要があったため、患者さんにとっては苦痛や負担を感じることも少なくありませんでした。
3Dスキャンを活用する場合には、スキャナーを使ってデータを収集するため、印象材を使用する方法と比較して短時間での作業が可能です。またすぐにデータを取得することができるため、治療のスピードの向上にもつながります。
さらにデータを用いて噛み合わせのシミュレーションを行うこともできるため、より広範囲で活用できるようになりました。
不快感の軽減
3Dスキャンを活用しない従来の型取りでは、印象材をトレーに詰めた状態でお口のなかに入れます。印象材が固まるまで待つ必要もあるため、吐き気を催すなどの不快感を覚えることも少なくありません。
歯列矯正の場合には、口腔内全体の型取りを必要とするケースがあります。一部の治療箇所のみの型取りを必要とする通常の歯科治療と比較して、広範囲での型取りを必要とするため、不快感が強くなりがちです。
3Dスキャンを使用した型取りの場合にはスキャナーを当てていくだけなので、吐き気を催すといった不快感を取り除きやすいといえるでしょう。またスキャナーを当てる方法であれば、長時間にわたって大きくお口を開けておく必要もありません。
これらの点から、不快感を軽減できる点が大きなメリットといえるでしょう。
精度の向上

3Dスキャンを活用した型取りは、その精度が従来の印象材を使用した型取りと比較して高いこともメリットです。
印象材を取り除く際には、変形や収縮が起きがちです。それらのデメリットを3Dスキャンの場合には回避することができるといえるでしょう。また印象材を用いる型取りの場合には、印象材を石膏に流し型を取ります。石膏の硬化の際にも収縮が起きやすいため、型取りにさまざまな技術が必要です。
3Dスキャンを活用する場合にはこれらの素材の変化を加味する必要がありません。
そのためより精度の高いデータを取得することができ、歯列矯正に生かせるというメリットがあります。
歯型データの保存
3Dスキャンで取得した歯列データは、データとして保存することが可能です。もちろん従来の印象材を使用した型取りでも、石膏模型を保管することは可能でした。
ただこの場合には保管場所を取られるデメリットや、石膏が劣化してしまうリスクがあるため、保存期間が限られるという特徴がありました。
3Dスキャンで取得したデータは、保管場所や劣化というデメリットを回避することができます。そのため長期間にわたってデータを保存することができ、治療完了後のメンテナンスや再治療の際に活用することが可能です。
またデータの保管により、技工所との連携がスムーズになるメリットもあるでしょう。
矯正歯科の3Dスキャンのデメリット

歯列矯正で3Dスキャンを使用する場合、基本的には患者さんの負担が軽減するためメリットがあるといえるでしょう。一方でいくつかデメリットがあるため、紹介します。
ここで紹介するデメリットは、どちらもスキャンできない可能性があるという特徴があります。そのためまずはかかりつけの歯科医院で3Dスキャンに対応しているかを確認してみるとよいでしょう。
スキャンできない症例もある
患者さんの口腔内の状態や治療する場所によっては、スキャンできないケースがあります。以下のようなケースではスキャンできない可能性があるため注意が必要です。
- 口腔内の狭い場所や複雑な場所
- スキャナーの光が到達できない歯肉縁下などの場所
- 金属の修復物や粘膜など、光の透過率の異なる場所
このような場合には光の反射などの条件でうまくデータを取得できない可能性があるため、スキャンできないと判断される可能性があるといえるでしょう。
ただしスキャンに用いられる三次元計測法にはさまざまな方法があるため、用いる方法によってはスキャンできる可能性もあります。まずはかかりつけの矯正歯科で治療に対応しているかを確認してみることをおすすめします。
3Dデータに対応している技工所が限られる
3Dスキャンに対応している技工所が限られるという点も、デメリットといえるでしょう。
歯科医院では院内で技工物を作製する院内技工のほか、歯科技工所に矯正装置の製作を委託しているケースもあります。このようなケースでは、矯正歯科だけでなく技工所でも3Dスキャンデータに対応している必要があります。
矯正歯科によっては症例によって技工所を分けているといった場合も少なくありません。歯列矯正に3Dスキャンを活用しようと検討している場合には、対応しているかは事前に確認しておくとよいでしょう。
矯正歯科での3Dスキャンからマウスピース作製までの流れ

実際に矯正歯科で3Dスキャンを活用する場合の治療の流れを解説します。
マウスピース型矯正を行う場合、歯列矯正装置を作製する工程で口腔内を精密に記録する必要があり、その際に3Dスキャンを活用することが一般的です。
マウスピースを作製するまでのどの段階で3Dスキャンを活用するのか、確認してみるとよいでしょう。
口腔内のスキャン
まずは口腔内をスキャンして、状態を確認します。この作業は治療の種類や期間を決めるうえでも重要な作業です。
3Dスキャンを使用する場合には、スキャナーでデータを取得します。取得したデータはその場で確認することも可能です。
モニターでの3Dデータチェック

3Dデータを実際に確認しながら、今後の治療計画を立てていきます。歯科医院によって異なりますが、データを患者さんが見ることができるケースもあるため、気になる方は確認してみるとよいでしょう。
データをチェックし患者さんと相談しながら治療方法を決定します。特に長期間にわたる歯列矯正では、患者さんの納得した状態で治療を開始することが重要です。
データの送信とシミュレーション依頼
外部の技工所でシミュレーションを実施する場合やマウスピースの作製を行う場合には、データを送信し技工所で作業をします。
3Dスキャンで取得したデータをもとに、咬合性のシミュレーションを行うこともあります。実際にマウスピースを作製する前の確認段階のため、疑問点があれば早急に解消するとよいでしょう。
マウスピースの作製

3Dスキャンで取得したデータをもとに、マウスピースを作製します。このマウスピースを装着することで、理想の歯並びに近づけていきます。
矯正装置を装着してからしばらくは違和感や不快感を伴うこともありますが、2週間前後で慣れてくるため様子を見るとよいでしょう。
実際の治療期間は大人の場合で数年間と長期にわたるため、定期的な通院が必要です。経過を確認しながら、診察を継続します。
歯列が理想の状態に近づいたら、マウスピース装置を外して保定装置を装着し安定させます。具体的な診察の流れは治療計画によるため、事前に確認しておきましょう。
矯正治療以外での歯科用3Dスキャナーの活用例

歯科用3Dスキャナーは、歯列矯正以外にも使用されることがあります。具体的な活用事例としては、インプラント治療のほか、詰め物や被せ物の製作といったケースで活用されることがあります。
共通する点としては、失われた歯の機能を補う治療という点が挙げられるでしょう。それぞれの患者さんのお口の状態や治療状況に合ったものを製作するために活用されます。
インプラント治療
インプラント治療とは患者さんの顎の骨に人工歯根を埋め込む治療です。むし歯や歯周病で自分の歯を失った場合に用いられます。
口腔内スキャナーで口腔内の状況を解析し、上部構造の作製に活用した事例があります。スキャンをすることで、CADソフトウエアを用いた設計やデジタル咬合器によるシミュレーションにも活用が可能です。
歯列矯正と同じくスキャンできない歯があるといったデメリットもあるものの、技工の工程の簡略化や、苦痛の軽減といったメリットがある方法です。
詰め物や被せ物の製作
日本では口腔内スキャナーを用いた型取りは、これまで公的医療保険の適用ではありませんでした。しかし2024年6月からは一部の治療が保険適用となったこともあり、3Dスキャンの使用される幅が広がっています。
歯科治療における詰め物や被せ物の製作では、印象材をお口のなかに入れ固まるまで待つ必要があったため、不快に感じる方が少なくありませんでした。
口腔内スキャンを用いると不快感から解放されるだけでなく、すぐにデータ化することができるので、患者さんとも情報を共有できるケースもあります。
そのため治療状況を視覚的に把握できることにもつながるといえるでしょう。
編集部まとめ

本記事では3Dスキャンを用いた歯科治療について紹介しました。
3Dスキャンに限らず、歯科治療では口腔内というデリケートな部分でさまざまな機械を用いるため、不安に感じる方が少なくありません。
メリットやデメリットだけでなく、実際の治療についても参考になれば幸いです。
参考文献




