マウスピース型矯正で発音が悪くなる?原因と発音しにくい音、改善方法も解説

「マウスピース型矯正で発音が悪くなるって本当?」と悩み、治療に踏み出せない方は少なくありません。
マウスピース型矯正は、アライナーと呼ばれる透明なマウスピースを長期間装着して歯並びを整える方法です。
出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)、乱杭歯(叢生)などの不正咬合を改善でき、見た目と噛みやすさの両面でメリットがあります。
一方で、装着中にサ行が言いにくい、空気が漏れるなどの発音の変化を感じる方もいます。これは、歯列矯正中に起こりうるトラブルの一つです。
しかし、原因を知り正しく対処すれば大きな支障は少ないでしょう。
本記事では、マウスピース型矯正で発音が悪くなる原因や改善方法をわかりやすく解説します。読み進めることで、治療中も快適に日常生活を送れるでしょう。

監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
目次 -INDEX-
マウスピース型矯正で発音が悪くなる?

マウスピースを常に装着するため、仕事やプライベートで話しにくくならないかと不安を抱く方は少なくありません。人と話す機会がある場合、発音への影響が気になるのは自然です。
しかし、装着に慣れると発音が改善される傾向にあります。ここでは、どのような影響があるか、発音が悪くなったときに確認することを解説します。
マウスピース型矯正による発音への影響
マウスピース型矯正は歯全体を覆うため、舌の動きに影響を与え、サ行やタ行など一部の音は発音しにくくなることがあります。多くの場合、数日~数週間で慣れる傾向にあります。
マウスピース型矯正は、薄く透明で目立ちにくく、やわらかい素材のためお口の中を傷つけにくいことがメリットです。見た目や快適さの面では、安心感をもって治療を始められる治療といえるでしょう。
さらに、食事や歯磨きの際は取り外すため、これまで通り食事や歯磨きが可能です。
発音が悪くなったときに確認すること
滑舌に違和感を覚えたときは、まず次の点を確認しましょう。
- マウスピースの大きさは合っているか
- マウスピースが正しく装着されているか
- 指示通りの装着時間を守れているか
- 治療を始めてどのくらいの時間が経ったか
マウスピース型矯正に慣れるまでは、時間がかかることが一般的です。適切に装着していても2~3週間違和感が続く場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。
マウスピース型矯正で発音が悪くなる原因

マウスピース型矯正で発音が悪くなる場合、主に次のような原因が考えられます。
- マウスピースの装着方法を間違えている
- お口の中が乾燥している
- 歯列矯正器具が舌にあたっている
これらの原因について詳しく解説します。
マウスピースの装着方法を間違えている
マウスピースは正しく装着できていないと、お口の中のスペースが狭くなり、滑舌が悪くなることがあります。
実際、装着方法を誤るケースは珍しくありません。浮きやズレがあると、破損や変形の原因にもなるため、注意が必要です。
特に前歯部分はマウスピースが浮きやすいため、装着時はしっかりフィットしているか確認しましょう。
お口のなかが乾燥している

唾液はお口の中を潤し、会話や嚥下をスムーズにする役割があります。
お口の中が乾燥するドライマウスは、発音にも影響が出やすくなります。
次のような症状がないか、確認しましょう。
- しゃべりにくい
- 飲みにくい
- お口の中がネバネバしている
- お口の中に傷ができやすい
- 乾いた食品が食べにくい
- 舌に溝のようなしわができている
- 白い苔のような汚れが付着している
- 舌の表面がツルツルになる
- カンジダ菌が増えている
これらに当てはまる場合は、ドライマウスの可能性があります。
薬剤による副作用や口腔機能低下、ストレス、口呼吸などが考えられるため、医療機関で相談することが大切です。
歯列矯正器具が舌にあたっている
歯列矯正器具が舌にあたると、発音に支障をきたすことがあります。特に治療を始めたばかりでマウスピースに慣れていない時期は、その影響を受けやすいでしょう。
さらに、装着が不適切な場合や、治療の経過でお口に合わなくなった場合も原因となることがあります。例えば、サ行は舌先を前歯のすぐ後ろに近づけ、細いすき間から息を強く出すことで発音します。
しかしマウスピースがずれていると、舌先が本来の位置に触れられず、舌の動きが制限されるため、言葉が明瞭に発音しにくくなるでしょう。ナ行やラ行などほかの音も同様に発音しにくくなることがあります。
違和感を放置するとお口の中を傷つける恐れがあるため、気になる症状があるときは、早めに歯科医院で調整してもらうことが大切です。
マウスピース型矯正中に発音しにくい音

治療中、特に発音しにくい音は以下のとおりです。
- サ行
- ラ行
- タ行
- ナ行
- 英語の「th」や「sh」の発音
サ行やラ行は舌先を使って発音し、タ行やナ行は舌を上顎につけて発音します。英語のthやshの発音も舌の位置が重要です。
マウスピースを装着していると舌の動きが制限されるため、お口の中に違和感を覚え、このような音が発音しにくくなることがあります。
例えば、サ行が「タ行」に近い音に聞こえたり、ラ行が「ダ行」に近くなったりします。そのため会話や英語学習、接客など話す機会がある場面では、違和感を覚える方が少なくありません。
マウスピース装着時の発音に慣れるまでの期間

マウスピース装着時の発音に慣れるまでの期間は、個人の感じ方やお口の状況に左右されます。一般的には、3日~1週間ほどで違和感が軽減し、自然に会話できるようになるでしょう。
装着したばかりの頃は、フィット感が強く締め付けられる感覚に悩まされる場合があります。舌の動きが制限されて発音しにくくなりますが、時間の経過とともに自然に慣れていくでしょう。
また慣れるスピードには、装着時間の長さも関係しています。マウスピースは、1日20時間以上装着することで、大きな効果が得られる治療法です。
装着時間が安定している方ほど、発音の違和感にも早く順応しやすい傾向があります。
さらにマウスピースは、1~2週間ごとに新しいものに交換する必要があり、その直後は一時的に違和感を覚える可能性があります。しかし、慣れるまでの期間は回を重ねるごとに短くなっていくでしょう。
このように、発音の違和感は一時的なものであり、1ヶ月ほどで自然と解消されるケースが一般的です。
多少の違和感は残ることもありますが、日常会話には影響はないでしょう。発音を気にして話すことを控えるのではなく、むしろ積極的に話すことが効果的です。
マウスピース型矯正による発音のしにくさを改善する方法

マウスピース型矯正による発音のしにくさを、できるだけ早く改善したいと感じる方は少なくありません。
特に、接客業や会議中に人前で話す機会が多い方は、発音のしにくさが仕事に影響することも考えられます。
ここでは、発音を改善するために試せる方法を紹介します。発音のしにくさに悩む方は、試してみましょう。
マウスピースの装着方法を見直す
まず、マウスピースの装着方法が正しいか確認しましょう。上下を逆に装着してしまうケースは少なくありません。
マウスピースは、前歯部分が大きいほうが上側、小さいほうが下側です。前歯から奥歯に向かって指で押さえながら、軽くはめ込むように装着します。
ただし、マウスピースの種類によっては、裏表や上下の判別が難しいこともあります。初めて使用する際は、歯科医院で正しい装着方法をしっかり説明してもらうことが基本です。
しかし、説明が不十分でトラブルになるケースも増えています。そのため、適切に説明が受けられるか、歯列矯正に経験豊富な歯科医師が在籍しているかなどを確認したうえで、歯科医院を選ぶことが大切です。
装着方法が曖昧なまま使用すると、発音がさらにしにくくなる可能性があります。さらに、歯列矯正の効果が十分に得られず、治療期間が延びてしまうこともあるため注意しましょう。
発音のトレーニングを行う

発声練習には、パタカラ体操や早口言葉、あいうべ体操が効果的です。
パタカラ体操では、次のポイントを意識して発音することで、唇や舌を使う筋肉が鍛えられます。
- パ:唇に力を入れる
- タ:舌の先に力を入れる
- カ:舌の奥に力を入れる
- ラ:舌の先をしっかり上げる
早口言葉の例は次のとおりです。
- パ:赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ
- タ:この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた
- カ:赤巻紙青巻紙黄巻紙
- ラ:ラクダに乗るのは楽だろうか苦だろうかそりゃこちらは楽だがラクダは苦だろう
早く発声するよりも、お口を大きく動かし、はっきりと発音することが重要です。
さらに、あいうべ体操ではお口を大きく「あ・い・う・べ」と動かします。1セット4秒前後のゆっくりとした動作で、1日30セット(3分間)を目指します。
毎日楽しみながらトレーニングに取り組むことが大切です。
お口周りや舌のトレーニングを行う
定期的にトレーニングを行うことで唇や頬、お口周りや舌の筋力が鍛えられ、唾液の分泌や舌の動きが滑らかになります。
ここでは主に3種類のトレーニングを紹介します。
まず、唇を中心としたお口の体操です。最初に「ウー」と言いながらお口をすぼめ、その後「イー」と横にお口を開きます。唇の筋肉をしっかり意識して行いましょう。
次に、唇と頬の体操です。頬を膨らませた後、うがいをするように左右交互に頬を動かします。
大さじ1程度の水をお口に含ませるとやりやすくなりますが、慣れればなくても問題ありません。うがいをする際の動きを意識して、筋肉をしっかり使うことが大切です。
最後に、舌の体操(舌圧訓練)です。舌を左の頬の内側に強く押し付けた後、自分の指で舌の先を頬の上から押さえます。
指に抵抗するように、舌を頬の内側にゆっくり押し付けます。左右それぞれ10回繰り返すと、舌の筋力がバランスよく鍛えられるでしょう。
潤滑クリームやチューイーの使用を検討する

潤滑クリームやチューイーを活用することで、マウスピース装着時の話しにくさをできるだけ抑えることが可能です。
チューイーとはシリコンゴム製のやわらかい棒で、マウスピースを歯列に密着させるために使われます。
使用方法は、マウスピースを装着した後にチューイーを奥歯から前歯にかけてゆっくりと噛むだけです。1回につき5分間ほど行い、1日に1~2回使用すると効果的です。
特に前歯部分はマウスピースが浮きやすいため、丁寧に噛むことを意識しましょう。
ただし、マウスピース型矯正を始めたばかりのタイミングや交換直後は、痛みを感じる場合があります。噛む力を調整しても改善しない場合は、歯科医院で相談することが大切です。
マウスピース型矯正以外の歯列矯正が発音に与える影響

歯列矯正にはマウスピース型矯正以外にも、さまざまな治療方法があります。
発音に影響を与えるかどうかは、装着する場所によって異なります。
ここでは、代表的な治療法の特徴と発音への影響について解説するため、確認しましょう。
表側ワイヤー矯正
表側ワイヤー矯正は装置の種類が豊富で、多くの症例に対応できる方法です。お口の状態に合わせてワイヤーの太さを変えることで、矯正力を調整し歯列を整えます。
治療実績が豊富にあり、発音への影響が少ないことがメリットです。その一方で、装置が目立ちやすく、お口の中の衛生管理がしにくいというデメリットもあります。
装置の突起部分が粘膜にあたると、口内炎を起こすこともあるため慎重な調整が必要です。
裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正(舌側矯正)は、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着することで、装置が目立ちにくいのが特徴です。
歯の裏側はエナメル質が厚く唾液による自浄作用も働くため、むし歯になりにくいといわれています。スポーツや楽器演奏の邪魔になる可能性が低いでしょう。
しかし、舌に装置が触れるためサ行・タ行・ラ行の発音に影響が出やすく、慣れるまで時間がかかる点は注意が必要です。
さらに、適応できない症例があり、治療費が高額になりやすい点がデメリットです。
部分矯正
部分矯正は、「前歯だけを歯列矯正したい」という要望に柔軟に対応できる方法です。歯列矯正範囲が限定的なため、費用が抑えつつ短期間で治療を終えられるのが特徴です。
発音への影響はほとんどなく、すきっ歯や出っ歯など、ピンポイントで改善に向いています。特にサ行の中でもスやシなど、息が漏れる音はすきっ歯の改善で明瞭に発音できるケースもあります。
ただし、全体的な噛み合わせの調整が必要な場合には適さないため、事前に歯科医師と十分に相談することが大切です。
編集部まとめ

歯列矯正は、自分の歯で楽しく食事をしたり、笑顔で過ごしたりする際に効果的な治療法です。そのなかでもマウスピースは、透明で目立ちにくく、取り外しができる特徴があります。
一方で、慣れるまでは違和感を覚え、発音が悪くなる方は少なくありません。その理由として、正しく装着できていないことやお口の中が乾燥していること、歯列矯正器具が舌にあたっていることが考えられます。
ただし、マウスピースを装着し始めの頃に発音の悪さに悩んでいた方も、使用しているうちに症状は改善することがほとんどです。
マウスピース型矯正は、1日20時間以上正しく装着することが大切です。目安として3週間以上使用しても症状が改善しない場合は、歯科医師に相談しましょう。
参考文献




