ロゴボは歯科矯正で治る?原因・治療を解説
口元全体がゴボッと前に出ているように見える様から名付けられたといわれる口ゴボ。
美しさの基準とされるエステティックラインの反対を描いてしまうため、コンプレックスに感じている方も少なくありません。
しかし口ゴボに悩んでいる方でも歯科矯正という選択肢があることを、知らない方も多いのではないでしょうか?
本記事では口ゴボは歯科矯正で本当に治せるのか、原因と治療方法とともに解説していきます。
口ゴボを治療せず放置した場合についても解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
監修歯科医師:
坂本 輝雄(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科)
目次 -INDEX-
口ゴボは歯科矯正で治る?
口ゴボは歯科矯正のみで治る場合もありますが、原因によっては外科矯正も組み合わせなければなりません。
一般的に口ゴボと呼ばれる状態は、上顎が上顎前突(出っ歯)であるか、上顎と下顎がともに前突している上下顎前突を指します。
歯が前に前突している原因が歯並び・歯の傾斜角度の問題であれば、歯科矯正のみで治療が可能です。しかし歯並びに問題がなく、骨格そのものが前方に位置している場合は、外科矯正により骨の切除手術が必要となります。
外科手術を受ける場合でも術前に歯科矯正を受ける必要があり、手術の約6ヶ月〜2年前から矯正する期間が必要です。
口ゴボの原因
口ゴボの原因は大きく「骨格性」「歯槽性」の2つに区別されるほか、口元の習慣・癖が原因となるパターンもあります。
これらは単独で原因となる場合もありますが、複数の要因が合わさっている患者さんも少なくありません。
よく原因とされるものに以下があげられます。
- 遺伝
- 指しゃぶり
- 口呼吸
- 口元のさまざまな癖
ここからは上記4つの原因を解説していきます。
遺伝
骨格や歯並びは遺伝的要因もあるとされており、両親のどちらかが口ゴボなら遺伝によるものかもしれません。
遺伝が原因の場合でも歯科矯正による治療は有効です。日本人は歯に対して顎の骨が小さい傾向があり、収まりきらない歯が前方に押しやられることも原因の一つとされています。
指しゃぶり
幼少期に見られる指しゃぶりが長引くのも口ゴボの原因になります。
指しゃぶりは無意識下によるものが多く、骨格に問題がなくても日常的に加えられる圧力により後天的に上顎前突を誘発してしまいます。
また幼少期は顎の骨が成長するにつれスペースが広がり、歯が動きやすくなっている時期です。この時期に持続的に外部から圧力が加えられると、歯の位置や顎の形状に影響を及ぼす可能性が高くなります。
例えば、上下の前歯に指をくわえるスペースが出来てしまい、それにより上手く物を噛めなくなったという事例もあります。
口呼吸
呼吸は口ゴボと関係ないように思えますが、口呼吸も口ゴボの原因になることがあります。
口呼吸をしている状態は薄く唇が開いている状態であり、口輪筋がゆるんでいる状態です。
この筋肉がゆるんだ状態が続くと前歯を唇の内側に押しとどめる力が弱くなり、歯が前方に突き出しやすくなります。
口元のさまざまな癖
上記であげた原因のほか、日常生活で無意識に行っている習慣や癖が原因となることもあり、以下がその例です。
- 舌で内側から前歯を押してしまっている
- 舌を前歯で挟む癖がある
- 話すときに口元を突き出す癖がある
これらの癖は、治療後にまた元の状態に戻ってしまう「後戻り」を促進してしまう可能性があります。日常的にトレーニングを取り入れるなどの対策が重要です。
歯並びがいいのに口ゴボになるのはなぜ?
口ゴボで悩んでいる患者さんには「歯並びはキレイなのに」という方も少なくありません。こうした患者さんは正面から見た歯並びは問題がなく、横から見たときに気になるという方が多いようです。
この場合は歯並びではなく、歯の傾斜角度・骨格が影響しています。
「歯槽性」の原因に分類され、上顎に収まりきらなかった上顎前歯が前方に大きく傾いたため引き起こされます。この場合、骨格に問題がなければ歯列矯正のみで治療が可能です。
その際、前突した歯を内側に引き込むためのスペースを必要とするため、調整幅に適した歯を抜歯することもあります。
口ゴボの治療方法
前項で口ゴボの原因を解説してきましたが、治療方法はどのようなものがあるのでしょうか?
口ゴボの治療方法は「そもそも口ゴボになっている原因は何なのか?」を事前の検査で明らかにしてから決定されます。
一般的に用いられる治療方法は以下の5つです。
ここからは上記の治療方法5つを解説していきます。
ワイヤー矯正
最もポピュラーな歯科矯正がワイヤー矯正です。マルチブラケットとも呼ばれ、小さな金具(ブラケット)を直接歯の表面に貼り付け、そこにワイヤーを通すことで歯並びを矯正します。
歯科矯正といえばこの治療方法を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
審美性の観点からはあまり好まれるものではありませんが、歴史もあり信頼性の高い治療方法です。
舌側矯正(裏側矯正)
舌側矯正(裏側矯正)は歯の裏側に金具を取り付け、そこにワイヤーを通すため、人に気づかれにくいメリットがあります。
リンガルブラケットとも呼ばれます。構造はワイヤー矯正と同じですが、歯の裏面で施術するため特別な訓練を必要とし、どこの歯科矯正でも受けられるものではありません。
裏側に金具を取り付けるため以下の懸念点があります。
- 滑舌が悪くなる
- 舌に傷がつく
- 歯磨きがしにくい
しかし反面、表側に金具をつけた際よりも唾液による自浄作用があるためむし歯にはなりにくいともいわれています。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正は透明な型を歯列にはめて矯正をしていく治療方法です。歯科医師の治療計画に基づき複数の型が作成され、段階を追って型を変更することで理想の歯列へと矯正していきます。
この治療方法はマウスピースが透明で目立たないことから人気がありますが、患者さんご自身が治療計画を遵守して進める必要があります。
1日の装着時間はが20時間以上と長い点、難しい治療には対応できない点がデメリットです。
セラミック矯正
セラミック矯正とは患者さんの自然歯を削り、上からセラミック製の義歯をかぶせる治療方法です。
歯の移動期間なども必要ないため簡単に短期間でキレイな歯と歯並びが手に入ります。しかし健康な歯も削ってしまうため、ご自分の歯を長く残したい患者さんには不向きの治療方法といえるでしょう。
また歯周病や老化により歯茎が下がってしまった場合、不自然に見えてしまうデメリットがあります。
部分矯正で治る場合もある
口ゴボの治療は全体矯正が一般的とされていますが、以下の条件に合えば部分矯正で治る場合もあります。
- 骨格に問題がない
- 歯が前方に傾斜しているが角度は小さい
- 歯が移動できるスペースがある
部分矯正で治療する場合は前歯8本のみを治療することが多いです。全体矯正に比べて費用を抑えることはできますが、充分なスペースがないと後戻りしやすくなってしまいます。
口ゴボの治療の費用相場
前項では口ゴボの治療方法を解説しましたが、各治療法の費用相場はいくらなのでしょうか?
矯正治療の場合、一般的には公的医療保険の対象とならない場合が多く、全額自己負担となるため費用は高額になります。
これは医療保険の原則として、日常生活に支障をきたすものが対象とされているからです。
歯科矯正は美容を目的とした医療行為とみなされることが多く、口ゴボの治療も審美性の優先と捉えられます。しかし日常生活に支障があると認められれば、保険が適用されることもあります。
口ゴボで歯科矯正を検討されている方は担当の歯科医師に相談してみてください。保険の対象となれば医療費控除を受けることもできます。
ここからは前項であげた5つの治療方法について、全額自己負担となった場合の費用相場について解説していきます。あくまで目安であり、実際の金額は担当の歯科医師にご相談ください。
ワイヤー矯正の場合
ワイヤー矯正を表側に施術した際の費用相場は約60〜130万円(税込)です。
ワイヤー矯正とは伝統的な歯並びの矯正の方法で、歯の表側に歯列矯正の装置を装着することで歯を正しい位置に動かしていく治療方法です。このワイヤー矯正の治療に必要な金額は患者さんの口腔状態や治療期間により金額に差がでます。
一般的には、治療の重症度・使用する矯正装置の種類・治療期間によって矯正費用の総額が異なってきます。
例えば、使用する矯正装置では金属の目立ちやすいブラケットではなく、見た目を重視した目立ちにくいセラミックやプラスチック製を選んだ場合にはより多くの費用がかかります。
上記の金額には実際に取り付けるブラケットやワイヤーなどの装置代のほか、検査代やメンテナンス代も含まれています。
舌側矯正(裏側矯正)の場合
ワイヤーを歯の裏側に取り付ける舌側矯正(裏側矯正)は、約120〜200万円(税込)と高額です。伝統的な歯科矯正の方法であるワイヤー矯正よりも費用が高額であるのは、見た目とその難易度にあります。
舌側矯正(裏側矯正)を行う場合、矯正装置は歯の裏側に取り付けるため見た目上の問題が少なく、周囲に気づかれることなく治療を行える点が大きなメリットです。
しかし、矯正装置の取り付けを歯の裏側で行うため、通常の方法よりも高度な精度と技術が必要となります。
このように舌側矯正(裏側矯正)は見た目がよいかわりに、高額の費用がかかる治療方法でもあります。そのため、審美的に敏感な人にとっては非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。
マウスピース型矯正の場合
マウスピース型矯正は透明のマウスピースを装着することで歯の矯正を行なう方法で、自分自身で自由に取り外しができることが特徴的です。
マウスピース型矯正の費用相場は約80〜100万円(税込)と、ワイヤーを表・裏側に取り付けるよりも安価です。
この費用は全体矯正を行った場合であり、部分的にマウスピース型矯正をした場合は約10〜40万円(税込)とさらに安価になります。
ただし、マウスピース型矯正は自分自身で自由に取り外しができるというメリットがありますが、それゆえに歯科医師が指示する使用方法を守る必要がある点には注意が必要です。
歯科医師の指示に従わなかった場合には、治療効果の低下や治療期間の延長が生じて、その結果として治療にかかる費用もより高くなる可能性があります。
マウスピース型にもいくつかブランドがあり、歯科医師が推奨するものから選ぶのが安全です。メーカーによっては自分で型を取るタイプの商品もありますが、あまりおすすめできる方法ではありません。
個人で型を取ったマウスピース型は歯科医が作成したものよりも精度が劣っており、歯列矯正の効果を十分に得られない可能性があります。
安物買いの銭失いとなる可能性があるので、マウスピース型矯正は自分でやろうとするのではなく、できるだけ歯科医師に依頼して作成するようにしましょう。
セラミック矯正の場合
自然歯を削りセラミック製の義歯を被せるセラミック矯正の費用相場は、1本あたり約5〜20万円(税込)です。
セラミックにも種類があり、グレードによって金額が異なるため費用は変わってきます。また入れる本数・抜歯にともなう抜髄をするかどうかでも費用は変わってくるため、歯科医師に見積もりを依頼しましょう。
部分矯正の場合
部分矯正に必要な費用の目安は約40万円(税込)です。部分矯正は歯並び全体を動かすのではなく、歯の一部分だけを動かす矯正の方法です。治療の範囲が狭いため、その分だけ費用自体も抑えられる治療方法となっています。
ただし、治療の範囲や使用する矯正器具によって費用は変動します。一般的に、上下の歯の両方を治療するよりも、上下のいずれか一方のみを矯正する場合の方が費用が少ないです。
また、使用する矯正器具ごとの費用相場は以下のとおりです。
ただし、個々の状況によって費用は大きく変わるため、詳しくは診察を受けた歯科医師にお尋ねください。
口ゴボを放置するとどうなるの?
さまざまな原因によって引き起こされる口ゴボですが、治療せずに放置するとどうなるのでしょうか?一般的に口ゴボの患者さんは、唇を完全には閉じにくい傾向があります。
それにより口腔内が乾燥しやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まることも。
また以下のようなリスクを負いやすいとされています。
- 顔面にケガを負った際に前歯を損傷しやすい
- 上唇の内側を下顎前歯で傷付けてしまう
- 奥歯や顎に負担がかかり顎関節症を誘発する
- 滑舌が悪くなる
- 食べ物を上手く噛み切れない
- 歯並びがより悪くなる
これらの健康問題はロゴボの治療を遅らせるほど深刻化する可能性があります。そのため、ロゴボの症状が見られた場合には、早期に歯科医師に相談することが重要です。
編集部まとめ
口ゴボを治したい患者さんにとって、歯科矯正は非常に有効な治療方法です。
ですが根本的な原因は何なのか、ご自身で判断するのは誤った認識に繋がりかねません。
また治療せずに放置した場合の影響も、素人では測りかねることでしょう。
まずは歯科医師に相談し、適切な診断を受けるようにしましょう。
参考文献