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歯科矯正治療は保険適用される?適用条件や治療別の費用を解説

 公開日:2023/12/14
口元を指差す女性

歯科矯正治療は、歯並びや噛み合わせを正すためのものです。健康な口内環境を保つためだけでなく、見た目にも影響するため、生活の質(QOL)を上げるために重要な治療です。

しかし、費用が高額なので、保険が適用されるかどうか気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、歯科矯正治療が保険適用される条件や、保険適用外となる場合の費用相場について解説します。

さらに、費用の支払い方法や、医療費控除についても解説します。歯科矯正治療を検討している方やこれから治療を始める方は、ぜひ参考にしてください。

坂本 輝雄

監修歯科医師
坂本 輝雄(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科)

プロフィールをもっと見る
東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授

歯科矯正治療は保険適用される?

歯を見せる女性

歯科矯正治療は基本的に保険適用外とされています。しかし特例として、厚生労働大臣が定めた特定の疾患と原因に起因する歯科矯正治療については、保険適用される可能性があります。
保険適用される場合でも、すべての医療機関で保険適用された歯科矯正を受けられるわけではないので、注意が必要です。保険適用される歯科矯正治療を行える医療機関は、特別な届け出を出している医療機関に限られます。
厚生労働大臣が定めた特定の疾患は自立支援指定医療機関、顎変形症は顎口腔機能診断施設で保険対応が可能です。
保険適用が可能な歯科矯正治療が行える医療機関の確認は、地方厚生局のホームページに掲載されています。受診予定の医療機関が対象になっているかどうか歯科矯正治療を受ける前に確認しておきましょう。
保険適用されるかどうかは、個々の症状や状況によって異なります。必ず医療機関と詳しく相談し、具体的な治療方法と費用について確認してください。

歯科矯正治療が基本的に保険適用外なのはなぜ?

検討する女性

なぜ歯科矯正治療が基本的に保険適用外なのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。歯科矯正治療が基本的に保険適用されない主な理由は、病気の治療と考えられていないためです。
保険適用されない場合、自由診療での歯科矯正治療となるので、一般的に治療費が高額になりやすい傾向があります。その一方、治療目的と認められた場合や、特定の条件を満たす場合は保険が適用されます。保険が適用されれば、治療費が抑えられるでしょう。
以下で、歯科矯正治療がなぜ保険適用されないのかを詳しく解説します。

審美目的であるため

笑う女性

歯並びが悪いため、歯科矯正治療を受けようと考える方は多いのではないでしょうか。このような見た目を整えるための歯科矯正治療は、審美目的であると考えられます。
審美目的の歯科矯正治療は、日本の医療保険制度に基本的には含まれず、保険適用外です。その理由は、歯並びを整えるという行為は、何か特定の原因によってもたらされる身体的不自由を治療するわけではないからです。
保険適用されないので、審美目的の歯科矯正治療は自由診療となり、治療費は全額自己負担となります。そのため一般的に治療費は高額になってしまうでしょう。
このように保険適用されるかされないかは、個々の状況により異なります。歯科矯正治療を受けようと思っている方は、一度、歯科医師に相談してみることをおすすめします。

治療目的によっては場合は保険適用されることも

審美目的ではなく、特定の症状や原因の治療のために必要な歯科矯正治療を行う場合は、保険適用される可能性があります。例えば、噛み合わせの問題や、顎の成長異常に対する治療などは保険適用対象です。
保険適用の条件はさまざまであり、明確な線引きは存在しません。保険適用できるかを正確に知りたい場合は、具体的な症状や状況について歯科医師に問い合わせて、相談することがおすすめです。

歯科矯正治療の保険適用条件は?

チェック

歯科矯正治療は基本的に保険適用外ですが、特定の条件を満たす歯科矯正治療は保険適用の対象となるケースがあります。特定の条件とは以下のとおりです。

  • 厚生労働大臣が定める疾患が原因の噛み合わせの問題
  • 前歯や小臼歯の永久歯が3本以上生えてこないことによる噛み合わせの問題
  • 顎変形症の手術前・手術後の歯科矯正治療

これらの条件を満たし、治療を受ける医療機関が特別な届け出を出している場合、保険が適用されます。これらの条件をそれぞれ詳しく解説していきますので、歯科矯正治療を受けようと考えている方は、参考にしてください。

厚生労働大臣が定める疾患が原因の噛み合わせ

厚生労働大臣が定める疾患が原因で噛み合わせに問題が生じ、日常生活に影響を及ぼす場合、その治療には医療保険が適用される可能性があります。 厚生労働大臣が定める疾患とは、以下のものです。

  • 唇顎口蓋裂
  • ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)
  • 鎖骨頭蓋骨異形成
  • トリーチャー・コリンズ症候群
  • ピエール・ロバン症候群
  • ダウン症候群
  • ラッセル・シルバー症候群
  • ターナー症候群
  • ベックウィズ・ウイーデマン症候群
  • 顔面半側萎縮症
  • 先天性ミオパチー
  • 筋ジストロフィー
  • 脊髄性筋萎縮症
  • 顔面半側肥大症
  • エリス・ヴァンクレベルド症候群
  • 軟骨形成不全症
  • 外胚葉異形成症
  • 神経線維腫症
  • 基底細胞母斑症候群
  • ヌーナン症候群
  • マルファン症候群
  • プラダー・ウィリー症候群
  • 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む)
  • 大理石骨病
  • 色素失調症
  • 口腔・顔面・指趾症候群
  • メビウス症候群
  • 歌舞伎症候群
  • クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
  • ウイリアムズ症候群
  • ビンダー症候群
  • スティックラー症候群
  • 小舌症
  • 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群・尖頭・合指症を含む)
  • 骨形成不全症
  • フリーマン・シェルドン症候群
  • ルビンスタイン・ティビ症候群
  • 染色体欠失症候群
  • ラーセン症候群
  • 濃化異骨症
  • 6歯以上の先天性部分(性)無歯症
  • CHARGE症候群
  • マーシャル症候群
  • 成長ホルモン分泌不全性低身長症
  • ポリエックス症候群
  • リング 18 症候群
  • リンパ管腫
  • 全前脳胞症
  • クラインフェルター症候群
  • 偽性低アルドステロン症
  • ソトス症候群
  • グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
  • 線維性骨異形成症
  • スタージ・ウェーバ症候群
  • ケルビズム
  • 偽性副甲状腺機能低下症
  • Ekman-Westborg-Julin 症候群
  • 常染色体重複症候群
  • その他顎・口腔の先天異常

これらの疾患で噛み合わせの問題が生じている場合は保険が適用されます。自由診療を受ける前に、まずは受診予定の歯科医師に問い合わせてみてください。

前歯・小臼歯の永久歯が3本以上生えてこないことによる噛み合わせ

前歯・小臼歯の永久歯が3本以上生えてこないことによる噛み合わせの問題に対する歯科矯正治療も保険が適用されます。前歯とは、正面から見て左右3本の歯で、中切歯・側切歯・犬歯を指します。
小臼歯は前歯からみて奥2本の歯のことです。第1小臼歯と第2小臼歯の2本を指します。この上下左右の計10本のうち、永久歯が3本以上生えてこず、噛み合わせに問題が出ていると認められた場合は保険が適用となります。
自分では判断できない場合もありますので、気になる場合は歯科医師に問い合わせるのがおすすめです。

顎変形症の手術前・手術後の歯科矯正治療

顎変形症の矯正のために行われる手術前・手術後の歯科矯正治療も保険の適用対象です。顎変形症とは、主に上顎と下顎の形状や大きさが通常と異なる状態を指します。
上顎と下顎のバランスが悪いため、噛み合わせに影響が出たり、顔全体の形が変形したりする可能性があります。遺伝的な要素が大きいと考えられていますが、具体的な原因は不明です。
顎変形症の手術前後には、たいていの場合歯科矯正治療が推奨され、この治療は保険適用の対象となります。しかし、治療方法や治療を受ける医療機関によっては保険適用外の場合もあるので、事前の確認が必要です。

自由診療の場合の治療別の費用の目安は?

医師

自由診療とは、医療保険の適用範囲外の診療を指します。歯科矯正治療は基本的に保険適用外です。そのため、多くの治療が自由診療となります。
自由診療には、さまざまな治療法を試せるというメリットがあります。しかし、治療費に関しては注意が必要です。自由診療は、保険が適用されないので、一般的に治療費が高額になる傾向があります。
ここでは、歯科矯正治療で主に用いられる自由診療の費用目安について説明します。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正の費用目安は、約60〜100万円(税込)です。ただし、自由診療に該当するため、実際の治療費は医療機関によって大きく異なります。
ワイヤー矯正は、歯の表面に金属製のブラケットを取り付け、そのブラケットに金属製のワイヤーを通すことで歯を移動させる一般的な矯正方法です。最もよく行われる手法で、成人矯正ではオーソドックスな手法です。
ワイヤー矯正のメリットとしては、汎用性がある・舌の邪魔にならない・他の治療法と比べリーズナブルなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、矯正装置が外側から見える・口が閉じにくいなどがあります。 デメリットが気にならない場合は、費用や効果の面から考えておすすめの手法です。

舌側矯正(裏側矯正)

矯正

舌側矯正裏側矯正)も自由診療の一つです。そのため治療費は各医療機関により異なります。一般的な費用の目安はおよそ110〜180万円(税込)となっています。
舌側矯正裏側矯正)は、ブラケットを歯の裏側に取り付けることで、矯正器具が外側から見えなくなる治療法です。他人に矯正していることが気づかれにくく、見た目への影響が少ないことがメリットです。
しかし、舌側矯正裏側矯正)では、特殊な装置の使用と歯科医師の技術力が必要になります。そのため、一般的なワイヤー矯正と比べて、費用が高くなる傾向があります。
舌側矯正裏側矯正)は見た目への影響が少ない反面、治療費が高額になる可能性を理解した上で選択することが重要です。

部分矯正

部分矯正は、10万円(税込)から始められる医療機関もあり、比較的安価な治療方法です。自由診療のため、医療機関により治療費用は異なります。一般的には10〜30万円(税込)が費用目安になります。
部分矯正は、対象の歯のみを動かす治療方法です。1本から始められるので、治療期間・費用・痛みを抑えたい場合には、おすすめの矯正方法となります。特定の歯だけに問題がある方は、是非部分矯正を検討してみてください。

マウスピース矯正

マウスピース

マウスピース矯正は、アライナー矯正とも呼ばれる矯正方法です。部分的な矯正か全体的な矯正かで費用は異なりますが、一般的な費用の目安は30〜100万円(税込)となっています。ただし、自由診療のため、医療機関によって費用は異なります。
マウスピース矯正は、専用のマウスピースを作成して口内に装着する矯正方法です。歯の移動に伴って、順次マウスピースを取り替えて矯正していきます。
見た目への影響が少なく、ポリウレタン製の素材を用いるので、金属アレルギーの方でも心配なく利用できるのがメリットです。一方、毎日長時間装着する必要がある上、歯を大きく動かしたい場合には向かない治療方法となります。
自身の状況に応じて適した矯正方法を選択することが重要です。予算を把握し、歯科医師と相談して、最適な方法で治療方法を選んでください。

歯科矯正治療の支払い方法は?

受付

歯科矯正治療は基本的に保険適用外で、多くの場合自由診療です。自由診療の場合、治療費は全額自己負担のため、費用が高額になる傾向があります。
しかし、一度にすべての費用を支払う必要はありません。医療機関によりますが、一般的には無理なく支払いができるように、さまざまな支払い方法が用意されています。
ここでは、歯科矯正費用の一般的な支払い方法について解説します。さまざまな支払い方法を理解して、無理のない範囲で歯科矯正治療を検討しましょう。
ただし、具体的な支払い方法は、医療機関によって異なります。歯科矯正治療を受けようと考えている方は、事前に医療機関に確認してください。

現金一括払い

現金一括払いは、治療費を全額まとめて現金で支払う方法です。この方法で支払うと、後々の支払いを気にすることなく、治療に専念できます。 また金利や手数料もかからないので、支払総額は安くなります。経済的に余裕があり、先々の支払いに悩みたくない方は、この方法がおすすめです。 一度に大きな金額を支払う必要があるので、支払いの前にはしっかりと支払い可能な金額か検討しておきましょう。

分割払い

分割払いは、治療費を複数回に分けて支払う方法です。一度に大きな金額を支払わなくてよいので、支払い計画を立てやすくなります。一括払いが困難な場合や、手元に現金を残しておきたい場合には、有効な方法です。
ただし、分割払いでは手数料が発生する可能性があります。その場合、支払総額が一括払いよりも高くなるので、注意が必要です。
すべての医療機関が分割払いに対応しているわけではありません。また、分割払いが利用できる場合でも、各医療機関により手数料や分割回数が異なります。
分割払いを希望する場合は、事前に詳細を確認してください。

クレジットカード払い

クレジットカード払いも医療機関によっては可能です。一括で支払う方法と、分割で支払う方法があります。クレジットカード払いを選択すると、カード会社によっては、ポイントを貯められるという利点もあります。
クレジットカード払いの魅力の一つは、現金をすぐに支払う必要がない点です。そのため、支払いの計画を立てやすくなります。
ただし、分割払いを選ぶ際には注意が必要です。分割払いでは、手数料がかかる可能性があります。結果的に、一括払いよりは支払い総額が多くなるでしょう。
さらに、すべての医療機関がクレジットカード払いに対応しているわけではありません。クレジットカード払いを希望する際は、事前に確認が必要です。
各カード会社の規定も確認し、自分の状況に適した支払いプランを検討してください。

デンタルローン

デンタルローンは、歯科治療専用のローンです。治療費を長期にわたって分割払いするための方法で、利用することにより、一度に大きな金額を用意する必要がなくなります。通常のローンと同様に審査がありますが、手続きは簡単です。
デンタルローンを利用すると、長期にわたる分割払いができるので、支払い計画を立てやすくなります。ただし、金利が発生するので、支払総額が一括払いよりも高くなる点には注意が必要です。
デンタルローンを希望する際には、返済計画をしっかりと立て、無理のない範囲で利用しましょう。

歯科矯正治療は医療費控除が利用できる

医療従事者

歯科矯正治療は、一定の条件下で、医療費控除の対象となります。医療費控除とは、年間に支払った医療費が一定の金額を超えた際に、所得控除を受けられる制度です。
子供の歯科矯正治療はほとんどの場合、医療費控除の対象となります。一方、大人の歯科矯正は、審美目的の場合は対象外となる可能性が高いです。ただし、大人の場合でも歯科医師が必要と判断した場合は、医療費控除の対象となります。
医療費控除が適用された場合は、歯科矯正治療の費用だけでなく、通院にかかった交通費も医療費控除の対象です。治療費や通院にかかった交通費のレシートや領収書は、大切に保管しておきましょう。
控除の対象となるかどうかは、個々の状況により異なります。自己判断ではなく、歯科医師に問い合わせることが重要です。また、具体的な控除額も支払った医療費の総額や所得により異なります。 控除を利用する際には、税務署や税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

編集部まとめ

歯科医院

歯科矯正治療は基本的に保険適用外ですが、場合によっては保険適用の対象になる場合もあります。個人では判断が難しいので、歯科矯正治療をこれから受ける方は、歯科医師に相談してみましょう。

保険適用外の場合は、自由診療となります。さまざまな治療方法がありますが、治療費が高くなる傾向がありますので、自身の状況にあった支払い方法を検討してください。

歯科矯正治療にかかった費用は医療費控除の対象となる場合もあります。条件を満たしている場合は、レシートや領収書を保管しておくとよいでしょう。

大きな金額が必要になる歯科矯正治療ですが、知識を持っていれば保険が適用できたり、医療費控除が受けられたりします。また、支払い方法によっても、経済的な負担は変わってくるでしょう。

歯科矯正治療を検討されている方は、歯科医師と相談し、最適な方法を選択してください。本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

この記事の監修歯科医師