マウスピース矯正のデメリット・メリット|ワイヤー矯正との違いや向いている症例も詳しく解説します
「マウスピース矯正が良いという話を聞くけど、実際はどうなんだろう」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際のところ、マウスピース矯正には多くのメリットがありますが、それと同時にデメリットも存在します。
この記事ではマウスピース矯正のデメリット・メリットについて細かくご紹介します。
従来のワイヤー矯正との違いと、マウスピース矯正・ワイヤー矯正それぞれに向いている症例まで具体的にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、透明度の高い素材で作られたマウスピースを歯に装着して、歯の間隔・傾きなどの歯並びを修正する矯正治療です。
一度作成したものをずっと使い続けるわけではなく、治療計画に合わせて交換しながら理想の歯並びに近づけていきます。
目立たないので、人と会って話したりする場合でも気づかれにくく、精神的負担の少ない矯正方法と言えるでしょう。
歯並びがコンプレックスの方・費用を押さえて矯正を始めたい方・出っ歯を治したい方などにもおすすめの治療法となっています。
ワイヤー矯正との違い
マウスピース矯正とワイヤー矯正は、ともに歯の矯正に使用される装置ですが、両者には違いがあります。
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して矯正しますが、歯に取り付けられたワイヤーを使用するワイヤー矯正と比べるとほとんど目立ちません。
また、ワイヤー矯正は矯正中に痛みを伴うことがありますが、マウスピース矯正は痛みがほとんどないという違いもあります。
矯正期間はワイヤー矯正とあまり変わりませんが、マウスピース矯正の方が通院頻度が少なく済みます。
その他の違いとして挙げられるのは、口腔内が切れやすかったり口内炎ができたりというトラブルです。ワイヤー矯正は金属でできているため自分で取り外せず、装着し続けなければならないために起こります。
一方マウスピース矯正は自分で取り外しができ、歯磨きなども矯正開始前と同様に行えるので、口腔内を清潔に保てます。口腔内が切れたりなどの心配も少ないのが特徴です。
マウスピース矯正のデメリットとは
ワイヤー矯正より気軽に使えるとして増えているマウスピース矯正ですが、当然のことながらメリット・デメリットがあります。
そこでまずは、マウスピース矯正のデメリットについてご説明します。
長時間装着する必要がある
マウスピース矯正は、1日20時間以上装着する必要があります。取り外しが容易であるというのがマウスピースのメリットです。
しかし、弱い力をかけ続けながら歯を矯正していくことが必要な歯列矯正では、簡単に外すことのできるマウスピースをなるべく外さずに長時間装着し続けなければなりません。
装着時間によってマウスピース矯正の治療効果が変わりますので、自分自身の努力も大切です。そして、長時間装着することで口腔内に汚れが溜まり、臭いが発生する可能性があります。
また、常に装着しているため、スポーツなどの日常生活に制限が出ることもマウスピースを長時間装着することに伴うデメリットです。
適用できない症例が多い
マウスピース矯正は、部分矯正・全体矯正のどちらにも対応していて、さらに抜歯を伴う矯正治療にも対応できるようになってきました。
多くの症例がマウスピース矯正の適用となっていますが、それでもすべての症例に対応できるわけではありません。適用できない症例があることもデメリットの1つです。
マウスピース矯正の適用でない症例についてご紹介します。
- 出っ歯(骨格のずれが大きい場合)
- クロスバイト(奥歯のかみ合わせがずれている場合)
- 左右非対称(真ん中が大幅にずれている場合)
ここでご紹介した症例は代表的なものですが、実際のところ本当に適用なのかそうでないかは歯科医師でないと判断できません。まずはご自身がマウスピース矯正の適用症例であるかを確認してください。
食事するごとに着脱・歯磨きが必要
マウスピース矯正は、食事ごとに着脱することが必要です。装着したまま食事をすると、食べかすが付着することで細菌が繁殖しやすいからです。
食事前にはマウスピースを取り外し、食事が済んだあとはマウスピースを装着する前に歯を磨き、口腔内を綺麗にすることが重要となります。
歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、歯についた汚れがそのままマウスピースに付き、細菌などを繁殖させて虫歯・歯周病のリスクを高めてしまいます。
このようにマウスピース矯正は、食事するごとに着脱・歯磨きが必要というデメリットがありますが、マウスピース矯正をスムーズに進めていくためにもしっかりと行いましょう。
歯槽骨から歯根が出るケースがある
マウスピース矯正は、歯を移動させて歯並びを整えるために優れた効果を発揮します。
しかし無理な矯正計画を進めた場合、移動した歯の位置に歯を支える骨がなかった際は歯茎が下がってしまい、歯槽骨から歯根が出ることがあります。
これは、歯を傾斜移動(歯根はそのままで歯の上側を移動させること)ではなく、歯体移動(歯全体を移動させること)させるためです。
マウスピース矯正をする場合は、歯科医師のもとで事前にCTなどで歯を支える骨の厚みなどを確認し、移動方向を把握した上で治療計画を立てて進めていくようにしましょう。
奥歯が噛み合わないケースがある
マウスピース矯正中、歯を移動させることで歯列が整うと歯の形状や位置が変化し、それによって咬合面が変化して奥歯が噛み合わなくなるケースが出てきます。
矯正中は常にマウスピースを装着しているので、マウスピースを破損しないようにと強く噛むことが少なくなると奥歯が下がってしまい、噛み合わなくなることもあります。
さらに、奥歯が噛み合わないと歯痛や頬痛を引き起こし、別の治療が必要になることもあるのです。
マウスピース矯正をする前には歯科医師に歯と口の中の状態を調べてもらい、奥歯が噛み合わなくならないように、適切な矯正方法を提案してもらうことが重要です。
万が一、奥歯が噛み合わなくなった場合でも、時間の経過とともに噛めるようになることもあります。また、咬合治療などを受けることで噛み合わせを整えることもできます。
不安な場合は歯科医師に相談するようにしましょう。
マウスピース矯正のメリット
デメリットはおわかりいただけましたか。
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正に比べて日常生活がしやすいことから、選択する方も増えています。
次はメリットをご紹介します。詳しくみていきましょう。
矯正器具が目立たない
歯列矯正というと、金具を歯に取り付けて矯正するというイメージが多く、その見た目からなかなか治療に踏み切れない方もいます。
しかしマウスピース矯正は、ワイヤーを使わずに軽くて透明なマウスピースを使用しますので、矯正中も器具が目立ちません。歯を気にすることなく、笑顔で人との会話を楽しめます。
金属アレルギーでも治療を受けられる
マウスピースは、プラスチックなどの非金属素材で作られているため、金属アレルギーがある方・「アレルギーが出るのではないか」と不安な方でも安心して使用することができます。
矯正器具の金属が理由で歯列矯正を諦めていた金属アレルギーの方にとっては、大きなメリットになります。
取外しができる
マウスピース矯正に使用するマウスピースは取り外しが可能です。
マウスピースは、長時間装着してすることが必要ですが、飲食・歯磨きの際にはマウスピース・歯を清潔するために取りり外しが必要となります。
また、取り外しができることでワイヤー矯正では難しかった細かな部分の歯磨きも可能となり、口腔内を清潔に保つことが可能です。
スポーツなどのアクティビティをする際にも、必要時にはマウスピースを取り外せるので、日常生活に支障をきたすことなく矯正治療の継続が可能です。
歯の脱落の心配がない
矯正により長期間持続的に矯正の力がかかり歯が移動されると、歯根が吸収されて歯が短くなるリスクがあります。
それを歯根吸収といいます。特にワイヤー矯正時に多い症例です。
歯根吸収を起こすと歯が短命となり、歯周病などが進行してしまうと歯が脱落してしまうことがあります。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べると矯正の力のかかり方が違うので、歯の脱落の心配がないといわれています。
ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない
痛みの感じ方には個人差がありますが、マウスピース矯正は一般的に、ワイヤー矯正に比べて痛みが少ないというメリットがあります。
ワイヤー矯正は、ワイヤーを使用して歯を動かし矯正する方法ですが、ワイヤーは歯を直接圧迫してしまうので痛みを引き起こしやすいです。
一方で、マウスピースは軽い素材で作られた装置を使用して歯を少しずつ移動させるため、ワイヤー矯正に比べて矯正力による痛みが少ないというメリットがあります。
装着開始時には多少の痛み・違和感があっても、徐々に気にならなくなることがほとんどです。
どうしても痛みがある場合は、自分でマウスピースを外して歯科医師に相談できますので安心です。
マウスピース矯正が向いている症例
マウスピース矯正は、主に以下のような例に向いているとされています。
- 出っ歯(上顎前突):上の前歯が前方に突出しており、口を開けたときに目立ってしまう状態。
- 八重歯・乱ぐい歯(叢生):歯が凹凸に生えている状態を叢生(そうせい)といい、顎に対してすべての歯が並ぶスペースが不足している状態。
- 受け口(反対咬合・下顎前突):下の前歯(または下顎)が上の前歯よりも突出し、上下の噛み合わせが逆になっている状態。
- すきっ歯(空隙歯列):歯と歯の間に隙間が空いている状態。
- 開咬:上下の前歯の間に隙間ができて、きちんと噛み合わせができない状態。
- 過蓋咬合(噛み合わせが深い):噛み合わせが深すぎて下の歯がほとんど見えない状態。
ご紹介したような症例をお持ちでも、実際にマウスピース矯正をする際には、歯並びだけでなく口腔内の環境や生活習慣なども考慮する必要があります。
歯科医師による詳しい診断が必要です。
ワイヤー矯正が向いている症例
ワイヤー矯正は、ほとんどの症例に対応することができますが、主に以下のような症例に向いています。
- 抜歯を伴う矯正治療で、歯の移動距離が大きくなる場合
- マウスピース矯正では適応が困難な場合
- マウスピース矯正で治せるが、治療期間が長くなる場合
- 面倒臭がりでマウスピースの装着・お手入れなどに自信がない場合
ワイヤー矯正は、マウスピースで矯正することが困難な症例でも効果を発揮し、歯並びを矯正できます。
ただしワイヤー矯正は痛みがあり、装着期間が長いことが特徴です。装着には歯科医による詳しい診断が必要なため、ご自身に合った方法を検討しましょう。
マウスピース矯正とワイヤー矯正を併用するケースもある
場合によっては、マウスピース矯正とワイヤー矯正を併用することもあります。
マウスピースによる矯正治療を中心に行い、マウスピースでは対応が困難な箇所(歯の移動距離が長いなど)にワイヤー矯正を併用します。
この2つの矯正方法を併用することで、それぞれのメリットを生かした治療ができ、さまざまな症例に対応できるようになるのです。
マウスピース矯正で注意すべきこと
マウスピース矯正をスムーズに進めていき成功させるために、注意しなければならない点がいくつかあります。
それでは詳しくご説明しましょう。
食後や装着前は必ず歯磨きをする
マウスピース矯正をしている場合は、装着前や食後には必ず歯を磨き、口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯を磨いて歯の表面を清潔にしておかないと、マウスピースに食べかす・糖分・ステインなどの汚れがついてしまいます。
歯を磨くことで口腔内の細菌や食べかすを取り除き、虫歯・歯周病ようぼうになりますので、忘れないようにしてください。
食事する際は必ず外す
食事する際には必ずマウスピースを外すことが重要です。
装着したまま食事をすると、歯・マウスピースの間に食べ物が挟まって菌が繫殖し、虫歯・歯周病・歯肉炎などの問題を引き起こします。
また、装着したまま固いものを食べるとマウスピースを強く噛んでしまうのでマウスピースに傷が入ったり、破損したりするので気を付けましょう。
装着時間を守る
マウスピース矯正をしている場合、装着時間を守ることが重要です。
1日20時間以上の装着時間が必要になるので、食事・歯磨きなどの必要最小限以外はマウスピースを装着しておかなければならなくなります。
指定された装着時間を守らないと、歯並びの調整がうまくいかなくなり、噛み合わせの悪化・後戻り・歯根の露出などのトラブルが発生する可能性もあります。
その場合、治療期間も費用もさらにかかり、身体的・精神的・経済的にかなりの負担がかかってしまうことになるでしょう。
これを防ぐためにも決められた装着時間を守ることが重要です。
マウスピースの手入れを忘れずに行う
使用するマウスピースの手入れも忘れてはいけません。手入れには、マウスピースの洗浄・消毒・保管が含まれます。
マウスピースに付着した食べ物・飲み物によるステイン・タバコのニコチンなどの汚れをほっておくと、虫歯・歯周病をはじめとして口腔内トラブルの原因となります。
トラブルを起こしてしまうと、そちらの治療が優先となり、矯正治療期間が長引いてしまうこともあるのです。
それを防ぐためにも、毎日の手入れをしっかりと行っていきましょう。
マウスピースを紛失・破損した場合はすぐに歯科医へ連絡する
マウスピースを紛失・破損した場合は、すぐに歯科医へ連絡することが重要です。
紛失した場合は新しいマウスピースを作成しなければならず、破損した場合は修理をすることが必要であり、どちらも早めに連絡して対応しましょう。
歯科医師の指示のもとで適切な対応をとれば、歯並びに影響はありません。
注意点としては、破損したマウスピースを接着剤でつけるようなことは行ってはいけません。また、再製作・修理などは保険の適応ではないので、費用がかかってしまいます。
マウスピースが紛失したり、破損したりしないように外しているときには必ず専用ケースに入れるようにしましょう。
マウスピース矯正を検討しているなら歯科医へ相談
マウスピース矯正を検討している場合は、歯科医に相談することがおすすめです。
歯科医は、歯並びや口腔内の状態を診断し、個々に適した矯正方法を提案してくれます。
また、治療開始前にカウンセリングを行ってくれるので、矯正についての疑問や不安を解消できます。
矯正には治療期間や費用などがあるため、歯科医による詳しい説明を受けることで、自分に適した矯正方法を選べるでしょう。
まとめ
マウスピース矯正のデメリット・メリットについて詳しくお伝えしました。
マウスピース矯正は、見た目・使用しやすさなどからもおすすめの矯正方法です。
まずは「装着時間の長さ・着脱の手間・噛み合わせ不良などのデメリット」や「目立たない・着脱の手軽さ・日常生活への影響などのメリット」を知りましょう。
それらを納得した上で、ご自身の状態にあった矯正方法を選ぶことが大切となります。
この記事がマウスピース矯正を検討中の皆さんのお役に立てたら幸いです。
参考文献
- 矯正歯科|昭和大学歯科病院
- マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(インビザライン)とは|昭和大学歯科病院
- マウスピース矯正のメリット・デメリット | ワイヤー矯正との比較表付き|歯科矯正ロードマップ
- インビザラインの失敗例7パターンと失敗を回避する5つの対策|歯科矯正ロードマップ
- 矯正歯科|東北大学病院
- 矯正歯科|大阪歯科大学附属病院
- 矯正中のお手入れ|烏丸十条マス歯科・矯正歯科
- こんな時どうする?矯正用マウスピースを無くした・割れた等のトラブル!|医療法人真摯会 まつもと歯科
- インビザライン中の食事・飲み物について|医療法人真摯会 まつもと歯科
- インビザラインとワイヤー矯正の併用治療を詳しく解説|インビザラインのみの治療が難しい症状もご紹介|You矯正歯科
- 矯正歯科|医療法人松栄会まつうら歯科