「インプラント」「入れ歯」「ブリッジ」の選び方を歯科医師に聞く “歯を守る観点”から見る判断基準とは

歯を失ったとき、「インプラント」「入れ歯」「ブリッジ」のどれが自分に合った治療か迷う人は少なくありません。一見似たように見える治療でも、じつは隣の歯をどれだけ守れるかであったり、10年後のトラブル予防に大きな差が出たりすることがあります。隣の歯を大きく削る必要がある治療もあれば、まったく削らずに済む治療もあり、選び方次第で、今残っている歯の寿命が変わってしまうことも。そこで今回は、それぞれの治療法の特徴やメリット・デメリット、後悔しないための治療選択のポイントについて、渋谷マロン歯科Tokyo院長の佐藤先生に詳しくお話を伺いました。
※2025年11月取材。

監修歯科医師:
佐藤 年彦(渋谷マロン歯科Tokyo)
治療法の違いと選び方の基本

編集部
はじめに、「インプラント」「入れ歯」「ブリッジ」はそれぞれどのような治療法なのか教えてください。
佐藤先生
「入れ歯」は取り外し可能な人工歯で、歯ぐきや残っている歯にバネをかけて支える方法です。「ブリッジ」は両隣の歯を削って土台にし、その上に橋のように人工歯を固定します。インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に被せ物を装着する治療法です。どの治療も歯を補うことはできますが、何を支えにするかが異なるため、見た目や噛み心地、周囲の歯への負担、耐久性に違いが出てきます。
編集部
それぞれの治療法には、どのようなメリット・デメリットがありますか?
佐藤先生
入れ歯やブリッジは保険診療でも対応できる場合が多く、初期費用を抑えやすいという利点があります。ただし、入れ歯は装着時の違和感が出やすく、ブリッジは健康な歯を大きく削る必要があり支えとなる歯への負担も大きくなります。インプラントは隣の歯を削る必要がなく、自分の歯に近い噛み心地と見た目が期待できます。骨の状態が良ければ、奥歯が1本だけ失われたケースなど、ブリッジや入れ歯では対応しづらい場面でも単独で治療が可能です。自由診療のため費用面が強調されがちですが、条件次第でブリッジより費用を抑えられるケースもあります。
編集部
治療法を選ぶ際の基準や選ばれる理由にはどのようなものがありますか?
佐藤先生
見た目や噛む力、長期的な安定性を重視する方はインプラントを選ばれる傾向があります。一方で、短期間で終わらせたい、初期費用を抑えたいという場合には、入れ歯やブリッジが選択肢に入ります。ただし、本当に重要なのは「今ある歯をどれだけ守れるか」という視点です。健康な隣の歯を大きく削るブリッジより、削らずに済むインプラントの方が、残っている歯の寿命を延ばせるケースも少なくありません。また、抜歯や補綴に進む前に、根管治療でどこまで歯を残せるのかを丁寧に診てくれるかも大切です。長期的な視点で一緒に考えてくれる歯科医師に相談することをおすすめします。
残っている歯や骨への影響

編集部
ブリッジや入れ歯は、周囲の健康な歯にどのような影響を与えるのでしょうか?
佐藤先生
ブリッジは両隣の歯を大きく削って被せ物を被せ、その歯に失った歯の分の力も負担させる治療です。そのため支えとなる歯の神経が弱かったり、根の周囲にトラブルが起きたりするリスクが高くなります。入れ歯はバネをかけた歯に横からの力が繰り返し加わるため、長く使うほど歯が揺れてきたり、歯周病が進みやすくなったりすることがあります。また、入れ歯は噛む刺激が骨に十分伝わらず、顎の骨が少しずつ痩せていくことも問題のひとつです。
編集部
インプラントは、残っている歯の寿命を減らさないといわれますが、その理由を教えてください。
佐藤先生
インプラントは人工歯根を顎の骨に直接埋め込むため、噛む力をインプラント自体と周囲の骨で受け止めることができます。歯を抜いて何も入れずに放置すると、抜いた部分の骨は縦にも横にも痩せてしまいますが、インプラントを適切に入れることで、その部位の骨のボリュームを保ちやすくなります。また、隣の歯を支えにしたり大きく削ったりする必要がないため、元の自分の歯の形をできるだけ変えずに済み、周囲の歯への負担を増やさないまま噛み合わせを回復できます。こうした理由から「残っている歯を守る治療」として位置づけられることが多いのです。
編集部
自分の歯をできるだけ長く使い続けるためには、どのように治療法を選ぶことが理想でしょうか?
佐藤先生
どの治療にもメリットとデメリットがあるため、今だけよければいいではなく、10年後・20年後に自分の歯がどれだけ残っていてほしいか、という視点で選ぶことが理想です。具体的には、まず歯を抜かずに残せるかどうか、根管治療や被せ物のやり直しでどこまで回復できるかを検討します。そのうえで抜歯が必要になった場合は、健康な歯をなるべく削らない方法、噛み合わせが安定しやすい方法を選ぶことが重要です。治療法の選択だけでなく、定期検診やメンテナンスで治療を繰り返さない状態を保つことが、結果的に歯を長持ちさせ、トータルの医療費を抑えることにもつながります。
見た目・噛み心地・メンテナンスの違い

編集部
見た目や噛み心地の違いは、治療法によってどのような違いがありますか?
佐藤先生
見た目・噛み心地ともに、もっとも天然の歯に近づけやすいのはインプラントです。1本ずつ独立しているため、歯と歯の間にフロスを通しやすく、歯ぐきとの境目も自然な形態に近づけやすいのが特徴です。ブリッジは3本まとめて1つの被せ物として作とが多いため、色や形をそろえやすい利点がありますが、土台の歯に負担が集中しやすくなります。入れ歯は取り外しができる分、装着時の異物感が出やすく、硬いものを噛んだときに沈み込むような感覚が気になる方も少なくありません。総合的に見て噛み心地と清掃性を両立しやすいのはインプラントと言えるでしょう。
編集部
治療後のメンテナンスや通院頻度にはどのような差がありますか?
佐藤先生
入れ歯は使ううちに歯ぐきの形が変わるため、定期的な調整や作り直しが必要で、通院頻度は比較的多くなりがちです。ブリッジも支えている歯がむし歯や歯周病になりやすいため、定期検診と専門的なクリーニングが欠かせません。インプラントも入れたら終わりではなく、毎日の丁寧なブラッシングと歯科医院でのメンテナンスが不可欠です。一般的には3〜6カ月に1回程度のチェックを推奨しますが、本来はその方の磨き残しの量や歯周病リスクに応じて間隔を決めるべきです。どの治療法でも「治療が終わってからがスタート」という意識を持つことが大切です。
編集部
長く快適に歯を使うために、自分自身で意識すべきことはありますか?
佐藤先生
一番のポイントは痛くなってから歯科医院に行くのではなく、違和感が出る前から通うことです。多くの方は症状がはっきり出てから受診されますが、その時点ではむし歯や歯周病がかなり進行していることが少なくありません。毎日のセルフケアでは歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスの併用が重要です。加えて定期的に歯科医院で染め出しをおこない、自分の磨き残しを目で見て確認しながらブラッシング指導を受けると、ケアの質が大きく変わります。インプラント・ブリッジ・入れ歯のどれを選んだとしても、「自分の歯をできるだけ長く残す」という意識で治療とメンテナンスに向き合うことが、長期的な口腔の健康と快適な噛み心地を守る近道です。
編集部まとめ
今回の取材を通じて、治療法の選択が将来の口腔環境に大きく影響することを改めて実感しました。どの治療にもメリットと注意点がありますが、重要なのは今の状態だけでなく、10年後・20年後の健康を見据えて選ぶことが重要とのことです。歯科医師との対話を大切にし、自分のライフスタイルや価値観に合った治療法を選択することが、生涯にわたる口腔の健康につながります。本稿が、読者の皆様にとって自分に合った治療を選ぶきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報
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| 診療科目 | 小児歯科、歯科、歯科口腔外科、矯正歯科 |
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