インプラント治療は老後にデメリットがある?老後に不安を感じやすい理由を解説

インプラント治療を受けると、老後に何かデメリットがあるではないかと気になっていませんか?
インプラントは、天然の歯と近い見た目や機能を実現できる治療ですが、あくまでも人工の歯であるため、天然の歯とまったく同じように老後を過ごせるとは限りません。
インプラントの歯が老後にトラブルを起こすケースや、老後にインプラントを受ける際のデメリットなどを解説します。

監修歯科医師:
松浦 明(歯科医師)
医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック
出身大学
福岡歯科大学
経歴
1989年福岡歯科大学 卒業
1991年松浦明歯科医院 開院
2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任
資格
厚生労働省認定研修指導医
日本口腔インプラント学会認定医
ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医
所属学会
ICOI(国際口腔インプラント学会)
日本口腔インプラント学会
日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事
日本顎咬合学会 会員
日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員
目次 -INDEX-
インプラント治療後、老後に起こりやすいトラブルやデメリット

インプラント治療を受けた方は、老後に下記のようなトラブルやデメリットを感じる可能性があります。
加齢や全身状態の変化による影響
ヒトの身体は加齢によってさまざまな変化があります。その一つが糖尿病や心疾患、骨粗しょう症といった全身疾患で、身体の機能低下などによってさまざまな症状が引き起こされます。
こうした全身疾患の影響や、そもそも加齢によって体力が低下すると免疫力が下がるため、老後にはインプラント周囲炎などのトラブルが生じやすくなります。
インプラント周囲炎は早めに適切な対応を行わないと顎骨が溶かされてしまい、最終的にはインプラントの脱落などを引き起こす病気です。
インプラント周囲炎で治療した歯が抜けてしまった場合でも、若く代謝が活発な頃であれば骨造成などの治療を受けることで再度インプラント治療が行える場合がありますが、老後に歯が抜けてしまった場合は骨造成の対応が難しく、インプラント以外の治療への切り替えなどが必要です。
メンテナンスが難しくなる
老後はどうしても若い頃と比べて身体の自由が効かなくなるため、歯磨きなども自分で丁寧に行うことが難しくなります。そして、食後すぐに口腔内の汚れをきちんと除去できなくなると、蓄積された食べ残しなどによって細菌が増殖し、むし歯や歯周病、そしてインプラント周囲炎などにかかりやすくなります。
また、加齢に伴って体力が低下したり、足腰の自由が効かなくなると、定期的に歯科医院へ通ってメンテナンスを受けることも難しくなっていきます。天然の歯を長持ちさせるためだけではなく、インプラントの歯を良好な状態に保つためにも定期的な検診とメンテナンスは欠かせないため、加齢に伴って受診する頻度が少なくなると、歯が悪くなりやすい状況になってしまいます。
加齢に伴う顎の骨の変化
ヒトの身体は加齢に伴い全体的に代謝が落ちていくため、若い頃と比べ、顎骨の量も老後には少なくなります。インプラントは顎骨によって支えられているため、顎骨の厚みや密度が低下すると、十分に支えられなくなってインプラントが不安定になるリスクが高まります。
噛み合わせが合わなくなる
天然の歯は、顎骨の変化や噛む力などが日常的に加わり続けることで少しずつ移動し、そのときの噛み合わせに合うように、時間経過とともに歯並びが変化します。
一方で、インプラントの歯は顎骨に固定されているため基本的には動くことがなく、時間経過とともに噛み合わせにずれが生じてしまう場合があります。
噛み合わせがずれると特定の歯に強い負担がかかりやすくなり、むし歯や歯周病といったリスクが高まることから、歯を失いやすくなります。
インプラントの除去が難しい
健康上の理由や、顎骨の減少によりインプラントが不安定になってしまった場合など、何らかの理由でインプラントを除去する必要が生じた場合、インプラントを除去する手術が必要です。具体的には、総入れ歯などの治療を行いたいなどで、インプラントの存在が邪魔になってしまうような場合です。
インプラントは顎骨にオッセオインテグレーションという働きでしっかり結合しているため、天然の歯を抜くときのように簡単に引き抜くことができず、多くの場合で除去するためには歯肉の切開や骨を削るといった手術が必要になります。
老後にインプラントの除去手術を行う場合、手術そのものの身体への負担が大きく、安全性を十分に確保しながらの対応が難しいケースがあります。
インプラント治療を老後に受ける場合のデメリット

老後になってからインプラント治療を受けたい場合には、下記のようなリスクやデメリットがあります。
骨量の不足による治療の難しさ
上述のように、ヒトの身体は加齢によって代謝が低下していくため、老後は顎骨の量も減少します。インプラントは顎骨に対して人工歯根を固定する治療法であるため、骨の量が少なくなっていると、治療を行うことができません。
顎骨の量が少なくても、骨造成と呼ばれる治療を受ければ骨を増やしてインプラント治療が可能になる場合がありますが、骨造成はあくまでも患者さんの身体に備わっている、新しい骨を作る力を活用して行う治療です。新しい骨を作る力が弱くなっている老後の場合、骨造成に長い時間がかかったり、失敗したりするリスクが高まるため、やはり若い頃よりも治療が困難になるといえます。
外科処置による身体への負担が大きくなる
インプラント治療は、歯肉を切開して露出させた顎骨に穴をあけ、そこにインプラントを埋入するという手術によって行う治療です。こうした外科処置は身体に大きな負担がかかりやすく、老後の体力がなくなっている状態の方の場合は安全面を確保しながら治療を行うことが困難であるといえます。
術後の傷の治癒などにも時間がかかりやすいため、感染症をはじめとした手術後のトラブルも生じやすく、インプラント治療が失敗しやすい点も老後に治療を行う際のデメリットです。
持病などによるトラブル
老後になると、身体の機能低下や日常生活における負担の蓄積などによって、糖尿病や高血圧、心疾患などのさまざまな持病を抱えるリスクが高まります。
こうした持病があると、免疫低下によって感染が生じやすくなり、インプラント治療が失敗しやすくなります。
また、高血圧や心疾患などの持病がある場合は手術時に思わぬ出血などのトラブルが引き起こされる可能性があり、手術ができないという場合もあります。
骨との結合に時間がかかる
老後になって全身の代謝が低下している方の場合、新しい骨を作る能力が若い頃と比べて低下しているので、インプラントと骨の結合にも時間がかかりやすくなります。
ただでさえ長い時間がかかりやすいインプラントの治療期間が長引いてしまうため、治療期間中にむし歯や歯周病をはじめとしたトラブルが生じるリスクも高くなり、インプラント治療が失敗する可能性が高まるというデメリットがあります。
経済的な負担が大きい
インプラント治療は、事故で顎の大半を失ってしまった方の再建治療などの限られたケースでしか保険適用とならず、ほとんどの場合で自費診療による治療が行われます。
治療費の全額を患者さんが負担する必要があり、さらにいえばインプラント治療は歯科治療のなかでも手術を伴う大がかりな治療であるため、どうしても高額な費用がかかりやすいというデメリットがあります。
老後に治療を受ける場合、働き盛りの頃よりも収入が少ないという場合が多いため、インプラント治療の経済的な負担の大きさをデメリットと感じやすいといえます。
老後にインプラント治療を受けるメリット

老後のインプラント治療は手術による身体への負担が大きい点などがデメリットとしてある一方で、老後になってからでもインプラント治療を受けることで、下記のようなメリットがあります。
噛む力を維持しやすい
インプラントは、天然の歯と同じように、歯槽骨に対してしっかりと固定することができる人工歯です。歯を失ってしまった場合の治療法には、インプラント以外にも入れ歯やブリッジといった治療法がありますが、特に入れ歯の場合は歯を安定させにくいことから、噛む力が低下しやすいという特徴があります。
噛む力が低下してしまうと、食事内容に制限などが生じてしまい、好きな食事を楽しめなくなってしまう場合があるでしょう。
なお、ブリッジは歯を失ってしまった場所の隣にある歯に歯科用接着剤で固定するため、しっかりとした安定感が得られ、噛む力を維持しやすい治療です。
しかし、ブリッジの場合は、ブリッジを固定するために使用する両隣の歯に負担がかかりやすくなり、天然の歯が損傷したり、抜けたりしてしまうリスクを高める可能性があります。
天然の歯が抜けるような状況につながると、噛み合わせが悪くなって噛む力も低下してしまいます。
インプラントの歯の場合は歯が独立した構造のため、ほかの歯に負担をかけるなどの影響が生じにくく、長期的に噛む力を維持しやすいといえます。
コミュニケーションを楽しみやすい
インプラントとセラミックの人工歯による治療は、天然の歯と近い、美しい見た目を実現しやすいという特徴があります。
まるで歯の欠損がなかったかのように自然な見た目を実現可能であるため、自分の口元に自信を持ちやすく、コミュニケーションを楽しみやすいといえます。
また、歯が抜けている箇所があると発音も不自然になってしまいますが、インプラントは入れ歯のように必要なタイミングだけ装着するのではなく、常に歯が存在している状態のため、突然話しかけられたとしても、きれいな発音で言葉を返しやすい点がメリットです。
健康寿命を延ばせる
厚生労働省は80歳になっても20本以上の歯を残せるようにするという8020運動を行っていますが、これは高齢になっても歯が残っていてしっかり噛める状態なら、栄養バランスの取れた食事を行いやすく、健康寿命を延ばせるという考えなどから行われているものです。
インプラントの歯は天然の歯ではありませんが、仮に天然の歯を失ってしまったとしても、インプラントでしっかりと噛める歯を手に入れることで、8020を達成している場合のように、長く健康でいやすいといえます。
また、ヒトは強い力を発揮しようとする際に強く噛みしめるという動作を行うため、インプラントの歯を入れて強く噛めるようになると、全身の筋肉に力を入れやすくなります。これによってスポーツなども楽しみやすくなり、これも健康寿命を延ばせる要因の一つです。
老後のデメリットを抑えやすいインプラント治療

老後にインプラント治療を受ける場合、手術による身体の負担が大きいことや、顎骨の減少によりそもそも治療の適応ではなくなってしまうことなどがデメリットとして挙げられます。
しかし、下記に紹介するような治療法であれば、身体への負担を抑えながら治療を行いやすく、老後に治療を受ける際のデメリットを抑えやすいといえます。
オールオン4
オールオン4は、インプラントとブリッジの組み合わせによって行う治療で、前歯から奥歯までのすべての歯がない方が治療の適応となります。具体的には、顎骨に4本または6本のインプラントを埋入し、それを土台として前歯から奥歯まですべての歯がそろったブリッジを取り付け、全体の噛み合わせを改善します。
老後にすべての歯を失った際に行う治療としては総入れ歯がありますが、総入れ歯は口腔内での安定感が低く、どうしても噛む力が弱くなりがちです。
一方、インプラントは強く噛みやすいのですが、すべての歯をインプラントにしようとすると、手術による身体的な負担や、経済的な負担が大きく現実的ではありません。
オールオン4であれば、インプラント治療自体は4本または6本という少ない本数で済むため、患者さんにかかる負担は小さく、それでいてしっかりと安定した噛み心地を実現することができます。
インプラントオーバーデンチャー
オールオン4がインプラントとブリッジの組み合わせであるのに対し、オーバーデンチャーはインプラントと入れ歯の組み合わせによる治療です。
埋入した数本のインプラントを支えにして固定可能な入れ歯を用意し、入れ歯でありながら安定感のある強い噛み心地を実現します。
ザイゴマインプラント
ザイゴマインプラントは、オールオン4の一種で、インプラントを顎骨ではなく、その上にある頬の骨に固定する治療法です。
長いインプラントで頬の骨に固定するため、老後などで顎骨が少なくなっている方でも治療を受けることができます。
頬骨に固定する治療であるため、ザイゴマインプラントは上顎のすべての歯がなくなっている場合に行える治療法です。
まとめ

老後になってからインプラント治療を受ける場合、手術による身体への負担や、術後の回復の遅さなどから、治療を成功しにくい点がデメリットとして考えられます。
一方、インプラントを受けた方が老後を迎えた場合、適切なケアが行いにくくなるなどのリスクはありますが、治療を受けていることによるデメリットはあまりないといえるでしょう。
ただし、何かしらの理由でインプラントを除去しなければならない場合には、老後になるとインプラント除去の手術も身体への負担になるため、インプラント治療がデメリットと感じる可能性があります。
とはいえ、インプラント治療を受けることにはさまざまなメリットがあり、健康寿命を延ばすためにもとても役立つ利用ですので、治療に興味がある方は、まず一度歯科医院を受診して、自分に合ったインプラント治療が可能かどうか、歯科医師とよく相談してみるとよいでしょう。