歯科医療におけるレーザー治療の効果
パソコンのディスク読み取りや家電などでも用いられ、今や私たちにとって身近なものにもなったレーザー。実は、このレーザーを用いた治療を歯科医院で受けることができるのをご存知でしょうか。止血や痛みを抑える目的で、さまざまなレーザー機器が開発され、活用されています。ここでは、レーザー治療の目的やその使われ方、機器の種類などについて、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
遠藤 精一 歯科医師 遠藤歯科医院 院長
目次 -INDEX-
歯科医療におけるレーザー治療
レーザー治療というのは、なかなか耳慣れない言葉かもしれません。これは、ある「単一の波長」でできたレーザー光線を照射することで、何らかの治療効果を出す方法のこと。このレーザー治療が、歯科医用にも活用されています。ここでは、レーザー治療についての基本的な知識と、レーザー治療の主だった効果についてご説明しましょう。
レーザー治療とは
レーザー治療は、レーザー光線を歯や歯茎に当て、虫歯や歯周病といったお口の中の疾患を治療したり、口臭などの症状を予防したりする方法です。虫歯や歯周病の治療と言えば、従来、歯を削ったり抜いたり、麻酔をかけたり切開したりといった方法が主でしたが、患者に痛みを与えることも少なくありませんでした。そこで、レーザー機器を用いた治療方法が考案され、これまでより痛みを抑えることができるようになったのです。通常、レーザーを照射し、そのエネルギーが組織に吸収されると、当該部分が一瞬で高温になり、水分が消失したり蒸発したりします。歯科用レーザーは、パルス状になった1回の照射時間をごく短くし、エネルギー量をコントロールすることで、組織の温度の上昇や痛みを抑えています。レーザー治療では、回転器具で削る際のような振動がまったくないことや、麻酔を用いなくても痛みがないことが多いなど、これまで振動や痛みが原因で歯科医院を避けておられた方にぴったりの治療法です。レーザー治療によって、これまでの不安感や恐怖心が取り払われれば、無理なく治療を受けられるようになるかもしれません。ただし、レーザー治療は現在、保険診療ができないものが多く、自由診療になる場合もありますのでご注意ください。
レーザー治療で期待できる効果とは
レーザーには、固体レーザー(ヤグレーザー)、ガスレーザー(炭酸ガスレーザー)などでさまざまな種類があります。それぞれで得意分野が少しずつ異なりますが、歯科用レーザーに期待できる主な効果は、殺菌効果や止血効果、麻酔効果、歯の切削効果などです。レーザーを用いることで、瞬間的に温度を上げ、細菌などを蒸発させることができ、殺菌効果につながります。さらに、レーザーによって組織が瞬時に蒸発することで、歯肉を切った際にも出血しにくくなる止血効果が生れます。また、麻酔をしなくてもできる治療の範囲が広がり、歯を削るように穴を空けることも可能です。ただし、歯を切削する場合には、回転器具で削るよりも時間がかかります。
レーザー治療が用いられる症状
レーザー治療には殺菌効果や止血効果、麻酔効果、切削効果などがあり、レーザー機器も多くの種類が開発されているため、歯科医療においても幅広い症状に適用することができます。ここでは、歯科医療においてレーザー治療が適用可能な症状について見ていきましょう。
虫歯治療とその予防、歯周病治療
レーザー治療は、虫歯治療やその予防、歯周病治療に適用することができます。歯の表面にあるエナメル質にレーザーを当てると、エナメル質はその構造を変化させます。耐酸性が増し、歯を溶かす酸に強くなるため、虫歯予防の効果も高まるのです。さらに、初期の虫歯にレーザーを照射すれば、虫歯の進行を抑え、再石灰化が促進される効果が期待できます。レーザーを照射した歯にフッ素を塗布すれば、フッ素を取り込みやすくなるため、その意味でも虫歯の進行を抑えることができるでしょう。少し進行してしまった虫歯の場合は、レーザー治療で悪いところだけを切除すれば、歯をできるだけ残す治療が可能になります。麻酔効果があるため、患者の物理的・精神的な負担を軽減できるというのも大きな効果でしょう。さらに、歯周病菌を除去したり、歯周ポケットの中を消毒することもでき、歯周病の治療にも有効です。虫歯治療や歯周病治療の場合は、レーザー機器の種類によって保険内診療が適用されます。
口内炎の治療、口臭の予防
レーザー治療は、歯肉や口腔粘膜などの治療にも効果があります。口内炎などにお悩みの場合は、レーザーを照射することで、治療時間を短くすることができ、痛みを抑えることもできます。さらに、殺菌効果があるため、口臭予防にもつながります。
審美治療
レーザー治療を応用すれば、歯茎の黒ずみを除去したり、切開することもできます。歯肉の黒ずみにレーザーを照射することで、ピンク色の歯肉に生まれ変わることもあります。およそ1週間から10日ほどで、鏡を覗き込むのが嬉しくなるでしょう。さらに、表面麻酔もしくは無麻酔で、歯肉の整形を出血することなく行えるのもレーザー治療の特徴です。
レーザー治療のメリット・デメリット
どの治療方法においても、そのメリット・デメリットをしっかり把握したうえで、治療に臨むことが重要です。ここでは、レーザー治療のメリット・デメリットを確認していきましょう。
レーザー治療のメリットとは
レーザー治療のメリットの第一は、出血の抑止効果です。歯茎や粘膜の治療においても、出血をほぼ抑えることができ、治療部位を目でしっかり確認できるため、治療の精度が上がります。出血を抑えることがまた、予後を良好にすることにもつながります。さらに、歯茎の炎症に際しては、炎症を起こした組織を取り除くことができ、腫れや痛みなどの不快感を和らげることも可能です。さらに、歯を削る際の振動や音がないことも、患者の恐怖心を取り除くことにつながるでしょう。
レーザー治療のデメリットとは
一方で、レーザー治療のデメリットは、歯を正確に切削することが難しい点にあります。回転器具のように正確に削ることはできず、歯に被せ物をするときや、金属をはめ込むために用いられることはほぼありません。虫歯で歯を削る際は、その進行が初期の場合に限られます。虫歯が進行し、大きくなってしまった場合は、レーザーと注射麻酔、回転器具などを併用するのが一般的です。また、もう1つのデメリットが、従来の治療に比べて治療時間がかかることです。適用できる治療が限られていることや、保険が適用されず、自由診療となることが多いのも、患者にとってはデメリットでしょう。
歯科用レーザーの種類と治療内容
歯科治療に用いるレーザーにはいくつかの種類があります。レーザー機器によって、レーザーの性質が異なり、治療内容も異なってきます。そのため、かかりつけの歯科医院にどのようなレーザー機器が設置されているかによって、受けられる治療も変わってきます。ここでは、レーザー機器の種類と治療内容をご説明しましょう。
炭酸ガスレーザー
炭酸ガスレーザーは、日本の歯科医院で最も普及しているレーザー機器です。周辺の組織に影響を与えず患部だけに作用させることができ、歯科医療での適用範囲が最も大きなレーザー機器だと言えます。歯茎や粘膜を切ることが可能で、止血にも優れた効果が期待できます。現在では、虫歯の予防や歯茎や粘膜の切開、止血といった外科処置、歯周病や口内炎の消炎治療、根管治療、メラニン色素沈着の除去、傷口の消毒など多くの治療に用いられています。ただし、歯周病の治療には効果がありませんので、ご注意ください。
Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザー
エルビウムヤグレーザーは、水で冷却しながらレーザー光を用いる器機で、熱の発生を抑えることが可能です。そのため、痛みをより抑えることができます。虫歯を削ったり、顎の骨を削ったりする際にその効果を発揮するとされてきました。外科手術や虫歯治療、虫歯予防、歯石除去、歯周病や口内炎の消炎治療、根管治療などに活用されており、歯周病において効果があると認められているのは、このエルビウムヤグレーザーだけです。組織表面にだけエネルギーが集中するので、安全性が高いのも特徴です。保険診療として認められる可能性があるのもエルビウムヤグレーザーだけで、歯科医院への導入も進んできました。
Nd:YAG(ネオジムヤグ)レーザー
ネオジムヤグレーザーは、止血効果が優れていることがその特徴です。そのため、顎の骨や歯茎、粘膜を切るといった外科手術に有効で、医療全般で広く使用されてきました。外科手術、虫歯予防、根管治療、傷口の消毒などに適用され、その麻酔効果も注目されています。
半導体レーザー
半導体レーザーには2種類あり、それぞれで治療内容や効果も変化します。粘膜や歯茎の腫れ、炎症、痛みなどの緩和を目的とする治療で用いられますが、種類によっては、虫歯の探査や診断ができるものもあります。低出力タイプは、傷口の消毒や口内炎の消炎治療、知覚過敏の治療、虫歯の探査、診断などに用いられ、高出力タイプは、外科手術、歯周病や口内炎の消炎治療、根管治療、歯茎の黒ずみの除去、傷口の消毒などに用いられています。
その他のレーザー
その他にも、ホワイトニングに用いられるアルゴンレーザー、鎮痛や消炎効果に優れたヘリウムネオンレーザーなど多くの種類があります。
より効率的な歯科医療のためのレーザー治療
レーザー治療は、痛みを抑え、必要な部位だけ歯を削ることができる治療方法です。患者の物理的・精神的な負担を軽減するという意味でとても優れた治療方法だと言えますが、その種類によって治療内容が異なるため注意が必要になります。歯科医院で導入されているレーザー機器の中でもっとも一般的なのは炭酸ガスレーザーで、歯茎の切開や切除に用いられてきました。保険診療に適用されるのは、レーザー機器の中ではエルビウムヤグレーザーのみです。虫歯治療や歯石除去、切開、歯周病治療などに用いられています。治療の目的や費用などに応じてレーザー機器を使い分ける必要がありますが、歯科医院によっては、患者のニーズに応じたレーザー機器を導入していない可能性もあり、レーザー治療を希望される方は、カウンセリングの段階で、その目的や使用方法などを確かめていくことが重要です。
歯科医院によって、使用するレーザーは違っており、また患者さんの状態によっても使い分ける場合があります。
当院で使用している半導体レーザーの場合は、歯肉の消毒・殺菌、腫れてしまった歯肉を切り取るのがおもな治療です。歯肉の治療に使用するため麻酔はある程度必要ですが、止血効果が高いため、出血が少なく傷口の直りが早いという特徴があります。
また、器具の先端が細いタイプもあり、根幹治療の際にも消毒に使用しております。
これは半導体レーザーにしか出来ない使用方法です。
まずは専門家にご相談頂き、しっかりとした治療内容の説明を受けたうえで
安心して治療を受けていただければと思います。
監修ドクター:遠藤 精一 歯科医師 遠藤歯科医院 院長
レーザー治療でおすすめの歯医者さん 関東編
遠藤歯科医院
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