歯が溶ける?虫歯と酸蝕症の原因と対策
虫歯菌がつくりだす酸により、歯が溶けることで始まる虫歯。そのほかにも生活習慣が原因となって歯が溶けてしまう酸蝕症という症状があります。どちらも歯が溶けてしまうことには変わりありませんが、原因や対策方法が少し異なっています。それぞれ具体的に何が原因になっていて、歯を守るためにはどんな対策を取ればよいのでしょうか?知ったうえで気を付けながら生活することは、自分自身の歯を守ることにつながります。歯が溶ける?虫歯と酸蝕症の原因と対策について、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
柳 時悦 歯科医師 日本橋りゅうデンタルクリニック 院長
目次 -INDEX-
虫歯と酸蝕症のメカニズム
子供の歯から生え変わった大人の歯は一度虫歯になってしまったり、失ったりするともとには戻りません。普段から虫歯にならないよう心がけている人は多いでしょう。しかしそれでも虫歯になってしまう人も多いもの。
また、虫歯以外にも普段の習慣が歯を失うリスクにつながっている場合があります。虫歯と酸蝕症、それぞれのメカニズムについて説明していきます。
虫歯のメカニズム
虫歯も酸が歯を溶かしてしまうことから始まります。
まず、歯の表面などに付着した歯垢(プラーク)の中に存在する細菌が、飲食物の糖分を栄養に酸を作り出します。その酸が歯の表面のエナメル質を溶かし、より柔らかく深い象牙質、歯髄へと歯の溶けが進行することで虫歯が進行していくのです。
初期段階の熱い物や冷たい物を口にした時にしみることで気づけば良いのですが、歯の内側の神経まで症状が進行すると激痛を伴うようになります。
酸蝕症のメカニズム
酸蝕症も酸が歯を溶かしてしまいます。虫歯と異なるのは、その酸が酸性の飲食物や胃酸が原因となる点。普段、pH6.8から7.0の中性に保たれている口の中が酸性の状態にさらされることで、歯のエナメル質からリン酸カルシウムの結晶が溶け出してしまうのです。
通常は酸性の口の中を中性に戻す働きを唾液が果たしてくれているのですが、食べ物がずっと口に入っていたりちょこちょこ飲み物を飲んだりしていると中和されずに酸性の状態が続きます。そうすると、歯の溶けた表面を修復する再石灰化が間に合わなくなり、歯の溶けが進行してしまうのです。
虫歯の原因と対策
虫歯菌がつくる酸で歯を溶かしてしまう虫歯。どんなに歯を磨いても虫歯になってしまう人もいれば、それほど歯を磨かなくても虫歯にならない人もいますね。虫歯になる人は、虫歯になる条件をいくつか満たしている可能性があります。虫歯になってしまう原因と、虫歯にならないための対策について詳しく見ていきましょう。
虫歯になってしまう原因
虫歯ができるかどうかは、虫歯菌が口の中にいるかどうかが大きく影響します。
まず、虫歯菌の中で最もやっかいなミュータンス菌は、保護者から生後10ヶ月~36ヶ月くらいの間に感染します。感染した時に砂糖を多く摂取すると、さらに大量に定着しやすくなるのです。
そして、口の中に感染した虫歯菌は、歯の表面についた歯垢(プラーク)に棲みつき、糖分を栄養にして酸をつくることで虫歯になるのです。
歯をしっかり磨いているつもりなのに虫歯になってしまう人は、このプラークを除去しきれていない、虫歯菌を保有している可能性があります。
虫歯にならないための対策
虫歯は、いくつかの条件がそろうと発生します。その条件とは、虫歯になりやすい歯の質や噛みあわせ、歯並びである。歯垢をつくりやすい糖分などを多く摂取する食習慣である。歯垢を歯に付着させたまま長時間過ごしている。虫歯菌が旺盛な活動をしているなどがあります。
これらの条件を解消することが虫歯予防対策には有効です。歯磨きだけでなく歯間ブラシやフロスを使う、こまめなブラッシング、食習慣の改善などがすぐにできる対策になります。すべてを一度に解消するのは難しくても、一つずつ徐々にリスクを減らしていく努力をしましょう。
また、歯科医院などでアドバイスを仰ぐことや、定期的に受診してチェックしてもらうことも有効です。
酸蝕症の原因と対策
酸蝕症は生活習慣が原因となって歯を溶かしてしまします。虫歯と同じ対策では、かえって状況を悪くしてしまう場合がありますので注意が必要です。具体的に原因になっているものは何なのか、酸蝕症にならないための対策について詳しく見ていきましょう。
酸蝕症になる原因
酸蝕症の原因となるのは、柑橘系果物やスポーツ飲料、炭酸飲料、ワインなどの酸性の飲食物があります。酢を含んだドレッシングや健康に良いイメージのある黒酢も摂取しすぎには注意が必要です。一度口にしただけでただちに歯を溶かしてしまうわけではありませんが、チビチビ長時間にわたって口にしてしまった場合や口にすることが習慣となっている人は注意した方が良いでしょう。
そのほかにも反復性嘔吐や摂食障害などが習慣化している人も酸蝕症になっている可能性があります。胃酸は強い酸であるため、胃酸が逆流することで口腔内が酸性状態になるためです。
酸蝕症にならないための対策
酸蝕症は歯が酸性の状態に長くさらされることで発生しやすくなります。酸蝕症にならないための対策としては、酸性の飲食物の過剰摂取を控え、だらだら飲みやだらだら食べを避けるようにしましょう。酸性の強い飲食物を摂取した後や嘔吐してしまった後は、うがいをするかお茶などで中和しても良いでしょう。
ただし、ブラッシングには注意が必要です。酸性の飲食物摂取直後はエナメル質が柔らかくなってはがれやすくなっています。ブラッシングを行う場合は、摂取後30分以降を目安としてください。
歯に異変を感じたら早めに治療
虫歯は痛みがあったり歯がしみたりといった自覚症状がありますが、酸蝕症は自覚症状がない場合があります。気が付いたら歯が溶けてもろくなってしまっていた、なんてことになりかねません。歯が黄色くなったもしくは透明感が増した、歯が薄くなった気がする、歯の先が欠けたなど歯に異変を感じた場合は、早期に歯科医院を受診しましょう。虫歯も酸蝕症も放置していると歯を失うリスクにつながります。
早期の発見であれば、治療自体が薬の塗布などと簡単な内容で済む可能性がありますし、歯を失う可能性も低くなります。また、歯科医院を受診することで虫歯や酸蝕症の要因を知ることができれば、それ以上の進行を防ぐことにもつながります。
早期の受診と定期的な受診を心がけることが、自分の歯を守ることへの第一歩です。日頃から歯に良い習慣を意識した生活を送るのも良いでしょう
骨や歯はコラーゲン線維にアパタイトがつくことで作られます。
その構造が多少弱い、もしくは酸に侵食され易いというのは個人的な形質によるものもあると私は考えています。
歯が溶けてしまうような生活習慣がある方は大勢いらっしゃいますが、その影響が
目立つ方と目立たない方がいてこちらも個人差があると考えられます。
まずは、かかりつけの歯科医師にご相談いただくのが良いと思います。
監修ドクター:柳 時悦 歯科医師 日本橋りゅうデンタルクリニック 院長
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