実は怖い歯周病!その予防方法とは?
厚生労働省が行った平成26年の調査によると、歯周病の患者さんは年々減少傾向にあるものの20代で7割、30~50代で8割、60代では約9割が歯周病であるとされています。
歯周病と聞くと歯あるいは口の中だけの病気と思われるかもしれませんが、歯周病は身体全体に影響を及ぼす可能性のある怖い病気なのです。
歯周病の予防とはどのようにすればよいのか、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
松下 秀一郎 歯科医師 松下歯科クリニック 院長
目次 -INDEX-
歯周病という病気
まずは今回のテーマでもある歯周病とはどのような病気なのか、詳しくご紹介します。
歯周病とは細菌感染によって引き起こされる炎症性の病気です。
歯と歯肉の境目である歯肉漕というところが十分に磨けていないと、そこに細菌が多く蓄積し、その結果、炎症を起こして腫れてしまいます。
この時、痛みを伴わないのが一般的です。
この状態が進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目はどんどん深くなっていきます。
最終的に歯の根元の骨が溶け、このことにより歯がぐらつき、やがて抜歯に至る可能性を含む病気なのです。
歯周病の原因は?
歯周病の原因は口の中にいる細菌です。
口の中にはそもそも300~500種類ほどの細菌が存在しているといわれています。
この細菌は歯磨きが不十分であったり、糖分を過剰に摂取したりすると、歯に付着し固まります。
これが歯垢です。
歯垢には1㎎あたり約10億個もの細菌が住み着いています。
ただし、全ての菌が悪さや、歯周病を引き起こすわけではなく、歯周病を発症させる菌はある程度決まっているとされています。
また、歯垢をうがいのみで落とすことは困難ですが、丁寧にブラッシングをすることで落とすことができます。
この歯垢は放置していると固くなり、歯石という状態になります。
歯石になってしまうとブラッシングでも落とすことは難しく、専門的な器具を使った治療が必要となります。
歯周病の進行過程
健康的な歯茎は薄いピンク色をしていて、歯磨きなどの刺激では出血せず、歯と歯の根元にも歯肉が入り込んでいる状態です。
しかし、歯周病が進行すると歯肉炎という状態になり、歯茎は赤くなり、歯磨きのみで出血しやすくなります。
最終段階ともいえる歯周炎になると歯茎は赤紫色となり、歯磨きをすると出血するだけでなく膿が出ることもあります。歯と歯の間に隙間ができて物が挟まりやすくなるもの特徴です。
また歯周病を進行・悪化させる因子としては、歯ぎしりやかみしめ、食いしばり、不規則な食生活、合わない入れ歯の使用、喫煙、ストレス、遺伝、ホルモンバランスなどがあります。
こんな人は歯周病に要注意!
歯周病の諸症状に心当たりがある、あるいは歯周病かどうかが気になる場合は以下をチェックしてみてください。
- 歯磨き中に出血する
- 朝起きた時に口の中がねばねばする
- 口臭が気になる
- 歯茎がかゆい、痛い
- 歯茎が赤く腫れている
- 硬いものが噛みにくい
- 歯が長くなった気がする、前歯が出っ歯になった
- 歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
このうち6つ以上の項目に該当すると歯周病になっている可能性があります。
3つでも歯周病予備軍と思われるため注意しましょう。
歯周病によって起こりうる怖い病気
歯周病と聞くと歯あるいは口の中の病気と考えがちですが、実は歯周病は全身に渡って怖い病気を引き起こす原因にもなりかねないのです。
歯周病は私たちの身体にどのような影響を与えるのでしょうか。
狭心症、心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化で血管が狭くなることによって血液が流れにくくなり、その結果として心臓に栄養や酸素が送られなくなって発症します。
実はこの病気に歯周病が関係しているといわれています。
血管内に侵入した歯周病菌が血液の流れに乗って冠状動脈に到着すると、動脈硬化を誘発する物質を出します。
するとプラークという脂肪性の沈着物質ができ、血液の流れが悪くなるのです。
これは、実際に心筋梗塞で亡くなった方の死亡解剖から発見されています。
歯周病であることによって心筋梗塞や狭心症となるリスクは、歯周病でない人よりも1.15~1.24倍高まるとされています。
脳梗塞
心筋梗塞や狭心症と同じメカニズムで、脳の血管も歯周病によって詰まりやすいとされています。
歯周病菌が血液の流れによって動脈内に入り、動脈内でプラークを形成すると、心臓で形成したプラークが脳血管まで血液の流れによって運ばれてしまい、脳梗塞となるのです。
歯周病である人は、歯周病でない人よりも脳梗塞の罹患率が2.8倍高まるとされています。
糖尿病
歯周病によって歯茎に炎症を起こすと、サイトカインという物質が身体から出てきます。
このサイトカインのうちの一部は血糖値を低下させる作用を持つインスリンの働きを阻害します。
そのため常に口の中で炎症が起きている歯周病患者は血糖コントロールが悪くなり、糖尿病になりやすい、あるいは糖尿病を悪化しやすいとされています。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、食物や飲み物が食道ではなく誤って気管に入ることによって引き起こされます。
歯周病の患者さんは歯周病によって口の中の菌の量が普通の人より多いため、誤飲リスクも高まります。
この他にも、骨粗鬆症や早産等の病気のリスクがあり、ただの口の中の病気であると侮ってはいけないことが分かります。
歯周病の予防方法
日本では年々減少傾向にあるとはいえ、各年代で罹患している人の割合が多い歯周病。歯周病の予防はどのように行っていけばよいかをご紹介します。
歯垢の管理をまめに行う
歯周病菌は歯垢の中に溜ります。
そのため、歯垢を管理していくことが重要となります。
歯垢はうがいでは落とすことができませんが、ブラッシングで落とすことができます。
そのため、毎日丁寧にブラッシングをすることで、歯垢を落とし、歯周病を予防することができます。
とはいえ、歯の形や並び方は人それぞれであり、自己流のブラッシングでは落とすことが難しい汚れもあるかもしれません。
そのため、歯科衛生士や歯科医師などの専門家に歯磨きの方法を指導してもらうのも良いでしょう。
定期的な歯科検診
虫歯の有無だけでなく、歯垢や歯石チェックに歯科検診を利用するというのも良い方法です。
歯石や歯垢の除去は、歯科でその日のうちに行ってもらえます。
専門的な治療と日々のケアを併用することで、より歯周病の予防が期待できます。
禁煙をする
喫煙者が歯周病にかかる割合は非喫煙者と比べて約2~8倍も高いとされています。
喫煙によってニコチンを摂取すると、そのニコチンが歯周組織の微小血管を収縮させてしまい、歯垢など細菌の影響を受けやすくなることが原因とされています。
歯周病が気になるという方は、禁煙も予防方法として効果が期待できます。
日々のケアで歯周病予防
口の中や歯に対してだけでなく全身に影響を及ぼす可能性のある歯周病。
歯周病を予防するために日ごろからしっかりとケアを行い、更には専門家の力も借りて効果的に歯周病を予防しましょう。
自分の歯でものを食べられる高齢者の多くは、歯周病を発症しておらず、歯周病患者は早い段階で自分の歯が抜ける傾向にあります。
若いうちから歯の健康に気を使うということは将来の健康に直結するといっても過言ではありません。
高齢になっても自分の健康な歯でものを食べられるように、日ごろからケアを心掛け、歯周病を予防していきましょう。
歯周病の治療で最も大切なのは、患者さんと医師の二人三脚で行うこと。
院内でのオフィスケアとご家庭でのホームケア、このいずれかが欠けてしまっても、思うように進みません。
医師からの指導やアドバイスをホームケアに反映させていくことが重要です。
そもそも歯周病が発症したということは、生活の中の何かがきっかけとなり、現状に至ったものと考えられます。
日ごろの習慣を改めるのは大変かもしれませんが、そこが頑張りどころです。
私たちもサポートいたしますので、ぜひ、意識を改め、長い目で取り組んでいきましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助道具を使うだけでも違ってきます。
できるところから一歩一歩進めてみてはいかがでしょうか。
監修ドクター:松下 秀一郎 歯科医師 松下歯科クリニック 院長
歯周病治療でおすすめの歯医者さん 関東編
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