小児歯科の診療で見つかる過剰歯の治療
「過剰歯」とは、どんな症状を指す言葉なのでしょうか。小児歯科では、よく見られるのですが、どのような状態を指し、どんな検査や治療がおこなわれているのでしょう。「埋伏過剰歯」との違いはどんな点にあるのでしょう。
お子さんの歯の成長を妨げてしまうこともある「過剰歯」について、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
佐藤 秀雄 歯科医師 医療法人三方良歯ヒデ歯科クリニック 院長
目次 -INDEX-
余分な歯がはえてくる
通常の大人の歯の数より余分にはえたり、隠れていたりする歯のことを「過剰歯」といいます。具体的にどのような症状や種類があるのでしょう。ここでは、過剰歯とはどういうものなのか、それにどんな影響が出てくるのかを見てみます。
通常より歯の本数が多い
通常の本数より余計にある歯のことを言いますが、乳歯で20本、永久歯で32本が通常の歯の本数です。過剰歯は、上あごの正中(真ん中)にあることが多く、1本のこともありますが、2本もぐっていることも。歯の形が普通と少し違うので、形の異常や歯並び、痛みなどで気づくことが多いです。
およそ、3割から5割くらいにみられる症状で、年齢も3歳くらいからと、小児歯科では一般的といえます。歯列の妨げにならないようであれば、経過観察で様子をみますが、抜歯などの処置が必要なこともありますので、まずは歯科を受診して検査を受けます。
過剰歯の影響
個々によってその状態はさまざまです。レントゲンで確認されていても生えてこないこともあれば、生え始めたところが細菌感染をおこすといった害をおよぼすこともあります。特に不快な症状がないからといってほうっておくと、すきっ歯になってしまったり、永久歯の発育自体を妨げてしまったりするなど、将来の歯への影響が考えられます。
また、歯が前後逆に生えてくる「逆生歯」の場合や、埋まったままの過剰歯があごの骨の異常の原因を作る可能性も。こまめにお子さんの口の中をチェックし、定期的な小児歯科受診を心がけましょう。
歯茎の中にうもれた埋伏過剰歯
「埋伏過剰歯」とは、埋もれた状態の過剰歯のことです。逆性歯であると「逆性埋伏歯」といいます。正中離開(すきっ歯)が、奥歯が生えても閉じない場合などに疑われることがあります。埋もれているので、レントゲン撮影で確認、診断を確定します。
順性過剰歯と同様に、影響がないと判断された場合はそのまま経過観察することもありますが、通常の治療では、抜歯した後、矯正治療で隙間を閉じて歯列を整えていきます。
埋伏過剰歯の影響
ほうっておくと一生「すきっ歯」のままになってしまったり、永久歯がはえる妨げになったりする場合もあるので、治療では抜歯をすすめられることが多いです。小さいお子さんの抜歯と聞くと、身構えてしまうかもしれませんが、永久歯への影響も考慮して、抜歯時期は慎重に決められますので歯科医師とよく相談して治療を進めていきましょう。
近くにある永久歯が虫歯になるなどして、歯根に感染を引き起こしたりすると感染してしまうことが。歯を失ってしまうことにもなりかねませんので、歯科受診はとても重要です。
診断法と治療
過剰歯の治療には、正確な診断が必要です。どのような検査が有効なのでしょう。歯科の治療では欠かすことのできない画像診断ですが、必要な診断方法を見ていきます。
レントゲン撮影による診断
過剰埋伏歯であるかどうかは、レントゲンをとって診断します。虫歯治療でレントゲンを撮ってみたら、たまたま見つかるという事もあります。過剰歯は、あごや歯の成長によって動いてしまうこともあるので、深いところに移動してしまうと、抜歯が難しくなってしまいます。
また、永久歯に影響を及ぼすと、変なところから永久歯がはえてくる可能性もあります。的確な処置をおこなうためには、より高度な診断が必要になります。
歯科用CTによる検査
歯科用CTによる検査では、過剰埋伏歯の位置を正確にとらえることができるため、手術が必要な状態の場合はとても有効です。位置の誤差がほとんどないので、難しい症例などでも、より正確に短時間でおこなうことが可能になります。大学病院などでは、歯科用CTでの検査がおこなわれることも多くなっています。
抜歯による治療
過剰歯の治療では、抜歯を勧められることが多いです。何かの原因で感染すると、周りの歯にも影響してしまうからです。しかし、抜歯することにも永久歯に影響をおよぼすリスクがあるので、時期は担当医師と相談しながら、慎重に決められます。周りの永久歯の位置や根の部分の成長を見ながら、時期を決めていきます。
抜歯した後には、骨ができて歯並びも多少は解消しますが、矯正が必要になることがほとんどです。位置や向きなどによっては、歯茎を切って抜歯するといった処置が必要なこともあるため、口腔外科を紹介されることがあります。
手術による治療
邪魔をして永久歯がはえてくることができない状態の歯茎の切開術や、深いところに埋まっている埋伏過剰歯を抜歯するために、手術が必要なことがあります。こういった処置が必要と判断された場合には、口腔外科での治療が一般的です。
術後には、止血シーネという、傷を保護するマウスピースのようなものを装着します。そのまま食事をすることも可能なので、つけていたほうが傷口も食事の妨げにならず、お子さんも過ごしやすいです。術後のケアはかかりつけの歯科医師がおこなってくれることもありますので、きちんと受診して、その後の永久歯の様子を見ていきましょう。
診断や治療でかかる診療科
過剰歯の治療では、歯並びが大きく関係してくることもあるので、矯正歯科にかかることが多いです。すきっ歯の矯正に行ったら、埋伏過剰歯が見つかった、ということも。
抜歯や手術の必要性が生じたときに、口腔外科での処置を考えると、矯正歯科と口腔外科の両方を標榜している歯科にかかる方法、もしくは、まずは矯正歯科にかかり、必要な状態であれば、外科的処置のできる病院を紹介してもらうなどの方法もとられています。
口の中の状態によって変わるさまざまな治療法
治療を受けるお子さんの年齢や口の中の状態で治療方法が違ってきます。永久歯への影響があるかどうか、また生え方などによって、「経過観察」「抜歯」「手術」といった方法がとられます。
すべて抜かなければならないということではなく、専門医に定期的に診察してもらうことで、抜かなくてもいい状態なのか、抜いて永久歯が正しくはえてくるように誘導していくのかを判断するのが一般的。
お子さんの口の中の変化に早く気づくためにも、こまめなチェックと定期健診が重要です。特に不快な症状がないからと、ほうっておくと悪い状態に陥ることがあります。自分で勝手に判断せず、気になることがあれば、必ずかかりつけの歯科医に相談し指示を仰ぎましょう。
本人も気づかずに、変な所に歯が生えてきたことで気づくケースが多く
普通のレントゲンでは分かりにくいので、CTを撮ることで正確な位置や生えている方向を把握して治療することが望ましいと考えています。
抜歯や手術などの治療法を選択する場合もありますし、永久歯に影響がなければ経過を見ていく場合もあります。しっかりとした治療方針を立てることができますので、CTを完備している医院を選ぶとよいでしょう。
監修ドクター:佐藤 秀雄 歯科医師 医療法人三方良歯ヒデ歯科クリニック 院長
小児歯科でおすすめの歯医者さん 関東編
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