「マウスピース型矯正装置」は面倒くさがりには不向き? 向いている人･向いていない人の特徴を歯科医が解説!

森崎先生

一番わかりやすい言い方をすると「抜歯をしない矯正治療」に向いています。もちろん、抜歯をしても適応できるケースはありますが、咬み合わせが深いケースやガタつきが大きい歯並び、口元の突出が大きいケースは不向きです。加えて、歯の移動量が大きい出っ歯や受け口、ガミースマイルも適応外となります。まとめると、歯の移動量が少ないケースには向いていますが、移動量が多い場合はワイヤー矯正の方が適しています。

森崎先生

矯正治療は通常、抜歯をしてガタつきを整え、そこから前歯を下げて咬み合わせを作るという流れで進めていきます。つまり、移動量が少ないケースほど咬み合わせを作る工程のボリュームが大きくなるわけです。咬み合わせの微調整はミクロ単位で精度が求められるため、人の目よりもコンピュータを活用できるマウスピース型矯正装置の方が、より迅速かつ正確に対応できると考えます。

森崎先生

年齢に関係なく治療は可能です。子どもの場合は一期治療から使用できますし、高齢者でもご自身の歯が残っていて、歯周病などの問題がなければ適応できます。

森崎先生

人前に出るような仕事をしている人は、マウスピース型矯正装置が向いていると思います。装置が目立ちにくく、自分で取り外せるのは大きな利点です。一方で、自己管理が苦手な人、面倒くさがりの人には不向きな治療と言えるかもしれません。

森崎先生

マウスピース型矯正装置は、1日20時間以上の装着や交換時期などを患者さん自身に管理していただく必要があります。歯科医の指示通りに装着できなかったり、意思が弱くてつけ忘れが多くなったりすると、治療が進まないだけでなく結果にも影響してしまいます。したがって、自己管理が苦手な人は、一度つけたら外せない固定式のワイヤー矯正の方が確実に治療を進めることができるでしょう。

森崎先生

一概には言えませんが、例えば歌手の人はマウスピース型矯正装置だと発音しづらいことがあります。一方で、吹奏楽など吹く楽器の演奏に関しては、どの装置でも大きな差はないでしょう。スポーツについては接触の多いコンタクトスポーツの場合、衝突の際に口の中を傷つけるリスクの少ない「マウスピース型矯正装置」や「裏側矯正」の方が適していると思います。

森崎先生

マウスピース型矯正装置だけでなく、ワイヤー矯正もおこなっている歯科医院がおすすめです。ワイヤー矯正ができる先生は総合的な判断力が高いため、マウスピース型矯正装置だけでは対応できないケースでも安心して任せることができるでしょう。また、歯科医師の経歴も重要です。認定医や専門医の資格がなくても上手な先生はいますが、大学病院や矯正専門医のもとで経験を積んでいる先生の方が安心です。加えて、最初から最後まで同じ先生が担当してくれるかも重要なポイントとなるでしょう。

森崎先生

マウスピース型矯正装置は全ての歯を自由に動かせるわけではないため、最終的なゴールがある程度制限されます。そのため、レントゲン分析をおこない、医学的に正しい歯の位置を見極めたうえで「どちらの方法が適切か」を判断することが大切です。マウスピース型矯正装置のみを扱う歯科医院のなかには、このような分析をしないまま「噛んでいるように見せるだけの治療」をおこなっているケースもあるため注意が必要です。

森崎先生

通院が年に1回程度で、最初と最後しか先生と会わないような大型チェーン店も少なくありません。その間の要望や調整が先生に直接伝えられず、スタッフ任せにしているケースもあります。そのため、やはり毎回同じ担当医が診てくれる体制の方が安心でしょう。

森崎先生

近年は、マウスピース型矯正装置に関する詐欺や倒産のニュースを受けて、ワイヤー矯正を希望する患者さんも増えています。安心して治療を受けるためには、多店舗展開ではなく、しっかりと地に足をつけて診療している歯科医院で治療を受けることをおすすめします。

森崎先生

繰り返しになりますが、マウスピース型矯正装置を希望する際はワイヤー矯正にも対応でき、正確な診査・診断ができる歯科医院を選ぶことが大切です。マウスピース型矯正装置は手軽で目立ちにくいという点が魅力的ですが、決して“魔法の装置”ではないことはあらかじめよく理解しておきましょう。正しい診断に基づいて、どちらの治療法がご自身の歯並びに適しているかをしっかり説明してくれる歯科医院であれば安心です。装置ありきではなく、正確な診断から治療法を提案してくれる歯科医院をぜひ選んでください。