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親知らずの腫れは抜歯が必要? 放置して悪化した場合のリスクなどを歯科医が解説

 公開日:2025/06/05
親知らずの腫れは抜歯が必要? 放置して悪化した場合のリスクなどを歯科医が解説

「親知らずが腫れているけど、そのうち自然に治るかもしれない」と様子をみている方も多いのではないでしょうか? しかし、親知らずの腫れを放置すると、思わぬリスクにつながることがあります。そこで、親知らずが腫れる原因や放置するリスク、受診のタイミングなどを、練馬関町かんけ歯科・矯正歯科の菅家先生に聞きました。

菅家 康介

監修歯科医師
菅家 康介(練馬関町かんけ歯科・矯正歯科)

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日本大学歯学部歯学科卒業。東京大学大学院医学系研究科外科学専攻修了。東京大学医学部附属病院助教や三井記念病院での勤務を経て、練馬関町かんけ歯科・矯正歯科を開業。幅広い世代が安心して通える歯科医院を目指し、精密検査による正確な診断と再発予防に重点を置く。歯科ドックなど予防にも力を入れ、生涯にわたる健康維持をサポートしている。日本口腔外科学会認定医、日本口腔科学学会暫定認定医。医学博士。

なぜ、親知らずは腫れる? 原因と放置するリスク

なぜ、親知らずは腫れる? 原因と放置するリスク

編集部編集部

親知らずはなぜ腫れやすいのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

親知らずの腫れの多くは「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」という炎症によって起こりますが、その主な原因は「清掃不良」です。親知らずはおおよそ18歳から20歳ぐらいに生えてくる永久歯ですが、一番奥に位置するため歯ブラシの毛先が届きにくく、どうしても磨き残しが多くなります。そのため、細菌感染を起こしやすく、これが腫れる原因となります。

編集部編集部

親知らずが腫れやすい人の特徴を教えてください。

菅家 康介先生菅家先生

親知らずが横向きや斜めに生えている方は、物理的に歯ブラシが当たりにくく、汚れが残りやすくなります。さらに、その部分に歯周ポケットができると細菌がたまりやすく、腫れにつながることがあります。くわえて、免疫力が低下している場合も注意が必要です。親知らずの腫れは細菌による炎症が原因であるため、体の戦う力が弱まると細菌に対抗できず、炎症が起こりやすくなります。

編集部編集部

親知らずの腫れは、どのような経過をたどるのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

智歯周囲炎の初期症状としては、親知らず周囲の腫れや出血、軽い痛み、違和感などが挙げられます。最初はそれほど強い症状ではありませんが、次第に腫れや痛みが増してくると「何もしていなくても痛い」「口が開けにくい」「あごにまで痛みが広がる」といった状態に進行することがあります。顎関節症だと思って受診された方が、じつは親知らずが原因だったというケースも少なくありません。痛みの原因がわかりにくいこともあるため注意が必要です。

編集部編集部

その腫れや痛みを放置すると、さらに症状は悪化していくのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

親知らずの腫れを放置することは、じつは非常に危険です。急に発熱したり、あご全体に大きく腫れが広がったりすることもあります。とくに注意が必要なのが「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれる状態です。親知らずは通常、骨の中に埋まっていますが、炎症が進むと頬や舌の粘膜など、周囲の軟らかい組織まで広がってしまうことがあります。

編集部編集部

「蜂窩織炎」に至ると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

蜂窩織炎が進行すると、口が開かなくなったり、首のあたりまで腫れが広がったりすることがあります。重症化すると呼吸や飲み込みが困難になるケースもあるため注意が必要です。実際、私が大学病院にいたころは、呼吸障害を起こして気管切開をおこなうような事例もありました。重篤になると命に関わる可能性もあるため、親知らずの腫れを軽視せず、できるだけ早めの受診をおすすめします。

親知らずの腫れ、自然には治らない? 受診のタイミングと腫れているときの注意点

親知らずの腫れ、自然には治らない? 受診のタイミングと腫れているときの注意点

編集部編集部

親知らずの腫れが自然に治まることもあるのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

体の免疫力によって一時的に症状が治まることはありますが、それを「治った」と考えるのは危険です。炎症の根本的な原因が残っていれば、また腫れがぶり返す可能性が高いといえます。一度症状が落ち着いたとしても、問題が解消されたわけではないので注意が必要です。

編集部編集部

そうすると、親知らずが腫れた場合はすぐに歯科医院を受診したほうがいいのですね。

菅家 康介先生菅家先生

はい。まずは専門家の指示を仰ぐことが大切です。ご自身で判断してしまうと、思わぬ重症化を招く恐れがあります。とくに痛みが強い場合や、腫れが顔や首にまで広がっている場合は緊急性が高いため、早めの受診が必要です。

編集部編集部

親知らずが腫れているときにやってはいけないこと、避けるべきことはありますか?

菅家 康介先生菅家先生

腫れているときに血流がよくなると、症状が悪化しやすくなります。そのため、長時間の運動やアルコールの摂取は避けたほうがよいでしょう。また、腫れているときに無理に強く磨くと歯ぐきが傷ついてしまい、かえって症状を悪化させる原因になります。気になるからといって指で触ったり、押したりするのもよくありません。炎症を広げないためにも、安静を心がけることが大切です。

親知らずが腫れたら抜くべき? 抜歯する・しないの考え方

親知らずが腫れたら抜くべき? 抜歯する・しないの考え方

編集部編集部

親知らずの腫れで受診した場合、歯科医院ではどのような対応をおこなっていますか?

菅家 康介先生菅家先生

まずはレントゲンを撮影して、親知らずの位置や深さなどを確認します。そのうえで、抗生物質や痛み止めを処方し、炎症を抑えることから始めます。炎症が強い状態で抜歯をおこなうと、腫れがひどくなったり、蜂窩織炎のリスクが高まったりする恐れがあります。そのため、まずは炎症を抑えて、細菌の数をある程度コントロールしてから、安全なタイミングで抜歯をおこなうのが基本です。

編集部編集部

親知らずが腫れたり痛んだりしたら、やはり抜歯が必要でしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

必ずしもすぐに抜歯が必要というわけではありません。親知らずの生え方によっては、セルフケアや歯科医院での管理が可能な場合もあり、そのようなときは経過観察を選ぶこともあります。もちろん、私たちとしては再発リスクを考慮して抜歯をおすすめしますが、抜歯に抵抗を感じる患者さんも少なくありません。したがって、まずはお薬などで対応し、「再発したら抜歯を検討しましょう」とお話をするのが一般的です。

編集部編集部

親知らずは抜歯をしても、処置後に腫れや痛みが出ると聞きますが、これらの症状はどのぐらい続くものなのでしょうか?

菅家 康介先生菅家先生

腫れのピークは通常、抜歯の翌日~2日目あたりと言われています。その後は徐々に落ち着いてきますが、多少のタイムラグがあります。痛みに関しては、抜いた直後が一番強く出やすく、そこから徐々に軽くなっていきます。個人差はありますが、概ね1週間ほどで痛み止めが不要になることが多いです。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

菅家 康介先生菅家先生

親知らずの抜歯に不安を感じる方は多いと思いますが、腫れや痛みが出ているのにそのまま放置すると、かえって大きなリスクにつながることがあります。まずはかかりつけの先生に相談し、今後どうするかをしっかり考えておくことが大切です。また、親知らずの抜歯は年齢が上がるにつれて骨が硬くなり、難易度が上がる傾向があります。そのため、症状がある場合はできるだけ若いうちに、早い段階で対応することをおすすめします。

編集部まとめ

親知らずは、磨きにくさや生え方の問題から炎症を起こしやすく、放置すると腫れが周囲に広がり、重篤な症状に発展する危険性があります。とくに、「蜂窩織炎」は命に関わるケースもあるため、軽視は禁物です。一時的に症状が治まっても、根本的な原因が残っていれば再発するリスクは高くなります。したがって自己判断で様子をみたりせずに、早めに歯科医に相談することが大切です。違和感や腫れを覚えたら、我慢せず歯科医院を受診しましょう。

医院情報

練馬関町かんけ歯科・矯正歯科

練馬関町かんけ歯科・矯正歯科
所在地 〒177-0051 東京都練馬区関町北5丁目10-7
アクセス 西武新宿線「武蔵関」駅より車で4分
西武新宿線「東伏見」駅より車で3分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師