インプラント治療前に必要な「説明と同意」 これだけは歯科医に確認すべきこととは?

インプラント治療を検討する際、治療前の「インフォームドコンセント」は歯科医から十分な説明を受け、治療に対する理解を深める機会となります。どのような説明を受け、何を確認するべきか、インプラント治療前のインフォームドコンセントの様々な疑問を、本荘歯科クリニックの本荘先生に解説してもらいました。

監修歯科医師:
本荘 真也(本荘歯科クリニック)
目次 -INDEX-
インプラント治療前のインフォームドコンセントとは? 知っておきたい目的とメリット

編集部
インプラント治療におけるインフォームドコンセントは、どのような内容・目的で行われるのでしょうか?
本荘先生
インフォームドコンセントとは、「説明と同意」を意味します。インプラント治療では、治療にともなうリスクやメリット・デメリットなどを患者さんに詳しく説明し、ご理解いただいたうえで同意を得ることが重要です。さらに、インプラント以外の治療の選択肢についても丁寧に説明し、患者さん自身に最適な治療法を選んでもらいます。くわえて、治療後のケアや管理についても事前に説明を行い、長期的な視点で理解を深めてもらうことも心がけています。
編集部
治療前のインフォームドコンセントは、患者さんにとってどのようなメリットがありますか?
本荘先生
外科手術をともなうインプラント治療は、術後の痛みや腫れといった不快な症状が生じる可能性が高い治療です。さらに、治療後は20年、30年と長期にわたり、体の一部として使用することになります。そのため、治療後に「こんなはずではなかった」「想定していなかった」といったトラブルを防ぐためにも、事前に詳しい説明を聞き、理解しておくことは非常に重要です。治療の特徴や経過をしっかり理解しておくことで、安心して治療に臨めるようになります。
編集部
実際に、インフォームドコンセントで患者さんからよくある質問に、どのようなものがありますか?
本荘先生
最も多いのは「術後の痛みや腫れ」に関する質問で、次に多いのが「費用」に関する質問です。さらに、「治療後のトラブル」に関する質問も多くいただきます。近年はインターネットで検索すると、トラブルケースや治療がうまくいかなかった相談事例などの情報が散見されるため、この点を気にされる方も少なくないようです。そのため、「どのようなトラブルが起こりえるのか」「その発生率はどのぐらいか」など、治療後の不安について質問される方も多くいらっしゃいます。
インプラント治療前のインフォームドコンセントの実際:事前準備と確認のポイント

編集部
インフォームドコンセントに際して、患者さんは事前にどのような準備を行っておくとよいでしょうか?
本荘先生
インプラント治療が人工の歯を入れる治療だということは一般的に知られていますが、具体的な治療内容や細かい部分については、知らない点も多いと思います。したがって、事前にインターネットなどでインプラント治療について基本的な知識を得ておくことをおすすめしています。
編集部
そのような基本情報を、歯科医院で提供してもらうことも可能なのでしょうか?
本荘先生
歯科医院によっては、当院でも行っているようなインプラント治療の流れやメリット・デメリット、実際の治療例などをまとめた資料をお渡しすることもあります。このような資料やインターネットを活用し、ある程度の知識と治療の流れを事前に頭に入れておくと、説明が円滑に進められますし、患者さん自身の治療への理解も深まります。
編集部
インフォームドコンセントの際に、患者さんが持参したほうがよい資料などはありますか?
本荘先生
現在、服薬中の方は「お薬手帳」を持参してください。また、糖尿病や高血圧、心臓病、悪性腫瘍、骨粗しょう症などの全身疾患で通院している場合は、検査結果や現在の健康状態がわかる資料を持ってきてもらえると安心です。
編集部
インフォームドコンセントの際に、必ず歯科医に確認すべきポイントを教えてください。
本荘先生
まずは、「インプラント治療以外の選択肢」について十分な説明を受けることが大切です。入れ歯やブリッジ、歯の移植など、ほかの治療方法についてもしっかり確認しておきましょう。次に、「インプラント手術時のリスク」も重要なポイントです。血管や神経を損傷した場合にどのような影響があるのかなど、手術にともなう具体的なリスクを把握しておくことが大切です。くわえて、治療後の管理やメンテナンスの方法、治療後にトラブルが発生した場合の補償内容についても、事前に確認しておくことをおすすめします。
編集部
インフォームドコンセント後、治療の同意書にサインする前に家族や知人に相談するのは可能でしょうか?
本荘先生
もちろん、問題ありません。基本的に説明後に「すぐに決めてください」ということはありませんし、十分にご検討してもらう時間は設けています。ご家族で相談したり、ほかの歯科医院でセカンドオピニオンを受けたりしたうえで判断してもらうことは、治療の選択において非常に大切なことだと考えています。
編集部
一人で不安な場合、家族や知人に同席してもらってもよいのでしょうか?
本荘先生
こちらも全く問題ありません。とくに高齢者の場合は、ご本人が自覚していなくても認知症の問題が生じている可能性があります。したがって、年齢に関係なく不安を感じる場合は、ご家族やご友人に同席してもらうことをおすすめしています。
安心・安全なインプラント治療のために:インフォームドコンセントにおける歯科医院の取り組み

編集部
インフォームドコンセントで患者さんの理解度を深めるために、説明の際に工夫されていることはありますか?
本荘先生
インフォームドコンセントの前に治療に関する資料を見てもらい、大まかな流れやメリット・デメリットについて事前に理解してもらえるようにしています。そのうえで、治療前に撮影したレントゲンやCT、口腔内写真、模型といった資料を見せながら説明を行うことで、より分かりやすく理解を深めてもらうように工夫しています。
編集部
インフォームドコンセントの際、患者さんの理解度をどのように確認されていますか?
本荘先生
説明の際はその都度、質問やわからない点がないかを確認しながら進めています。また、インフォームドコンセント後、実際の治療に入る前にもう一度カウンセリングを実施し、患者さんに不安や疑問点がないかの最終確認を行っています。
編集部
そのほかに、インフォームドコンセントに際して気をつけていることはありますか?
本荘先生
以上のような十分なインフォームドコンセントを行えば、「説明を聞いていない」といったトラブルはほとんど発生しないと思います。ただ1つ難しいのは、実際にインプラントを装着してみないとわからない感覚も多いという点です。説明ではできるだけ治療後のイメージをお伝えするように努めていますが、歯が入っている感覚や最終的な見た目などは、やはり治療後でないと実感できないことが多々あります。そのため、この点を事前にどこまでイメージしてもらえるかが課題だと考えています。
編集部
その点について、具体的に何か工夫されていることはありますか?
本荘先生
同じような症例の患者さんの治療前後の写真を見せて、実際の仕上がりや見た目を確認してもらいます。ただし、これは患者さんの個人情報を扱うことになりますので、その点についてもインフォームドコンセントの際にきちんと説明し、必ず同意を得るようにしています。具体的には、治療後の写真やレントゲン資料を、お名前やお顔を伏せた状態でほかの患者さんへの説明や学会などで使用する可能性があることを伝えています。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
本荘先生
インプラント治療は「治療したら終わり」ではなく、その後20年、30年と長期にわたって向き合っていく治療です。そのため、事前にしっかりと説明を受け、リスクやメリット・デメリットを十分に理解したうえで治療を受けることが大切です。もし、ご不安やお悩みのある場合はセカンドオピニオンを活用するなどして、信頼できる歯科医院で治療を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
インプラント治療前のインフォームドコンセントは、治療のリスクやメリット・デメリット、治療後の管理方法など、重要な説明を受ける大切な機会です。治療費用や術後の痛み、治療後のトラブルへの不安などについて、歯科医院では写真や資料を活用した丁寧な説明を心がけています。20年、30年と付き合っていくインプラントだからこそ治療前に十分な説明を受け、納得したうえで治療を選択していくことが重要です。不安なことや疑問点などは遠慮なく歯科医に相談し、納得のいく治療を選択していきましょう。
医院情報
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アクセス | JR山陰本線「鳥取」駅より車で5分 |
診療科目 | 歯科、小児歯科 |