子どもの「矯正治療」はいつから始めるべき? タイミングや小児矯正の必要性を歯科医が解説!
子どもの矯正治療を検討するうえで、気がかりなのは治療を始めるタイミングです。「まだ乳歯しか生えてないけど、治療を考えるべき?」「乳歯でも矯正できるの?」など、子どもの矯正に関する疑問を抱える人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、乳歯列期の歯並びの考え方や治療が必要なケース、具体的な治療法などを「みずた歯科医院」の楊先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
楊 義弘(みずた歯科医院)
目次 -INDEX-
子どもの矯正治療を考えるタイミングは? 注意したい乳歯の歯並びと将来のリスク
編集部
子どもの歯並びは、乳歯の生え始めの時期から気にする必要があるのでしょうか?
楊先生
歯は顎の成長に合わせて移動するため、乳歯の生え始めの場合はあまり歯並びを気にする必要はありません。ただし、子どもの歯並びは遺伝だけでなく、唇や頬、舌から受ける力にも影響します。したがって、歯並びが悪くなるような習慣や癖がみられたら、早い段階で一度歯科医に相談することをおすすめします。
編集部
矯正治療を考えるタイミングはいつ頃がおすすめですか?
楊先生
目安としては、乳歯が生えそろう3歳前後です。また、1歳6カ月児健診や3歳児健診で何か指摘された場合にも、早めに受診することをおすすめします。装置を使った治療が難しい場合でも、生活習慣や習癖の改善に関する指導を受けることで、歯並びが悪くなるのを未然に防ぐことができます。また、治療が必要な場合に、適切な治療開始時期のタイミングについてアドバイスが受けられるでしょう。
編集部
歯並びが悪くなる原因として、乳歯列期に保護者が気をつけるべき習慣や癖を教えてください。
楊先生
3歳を過ぎても続く指しゃぶりは要注意です。また、口が常に開いている「ポカン口」や、舌で無意識に歯を押したり、上下の歯の間から舌を出したりする「舌癖」にも気をつけましょう。さらに、舌が口の中で低い位置にある「低位舌」や、爪や唇を噛む癖も歯並びに悪影響を与えることがあります。これらの習慣や癖がみられたら、放置せずに歯科医院を受診しましょう。
編集部
そのほかに、注意したい点はありますか?
楊先生
「姿勢」も子どもの歯並びに影響するため、注意が必要です。とくに、小さなお子さんの場合は、靴のサイズにも目を向けてみてください。体に合ったサイズの靴を履かないと姿勢が崩れ、それが歯並びにも影響する恐れがあります。
編集部
乳歯の時期にみられる歯並びの問題は、将来どのような影響を与える可能性がありますか?
楊先生
乳歯の時期の問題は、今後の顎の発育や永久歯の歯並びに影響を及ぼす可能性があります。例えば、顎の発育が不十分で永久歯の生えるスペースが不足した場合、永久歯が正しい位置に生えてこられず、歯並びや噛み合わせが悪くなってしまうことがあります。そうすると、将来のむし歯、歯周病のリスクが高まるほか、咀嚼や発音にも支障をきたす可能性があるため、乳歯の早い時期に対処しておくことが大切です。
乳歯列期の矯正治療の必要性とメリット・デメリット
編集部
乳歯の時期から矯正治療が必要なのは、どのようなケースですか? 具体的な症状を教えてください。
楊先生
乳歯が生えそろう3歳頃に、反対咬合(受け口)や交叉咬合(下顎が片側にずれる)、開咬(前歯が噛み合わない)などの不正咬合がみられる場合は、矯正治療を検討する必要があります。これらの不正咬合は、放置すると永久歯の歯並びや顎の成長に悪影響を与える可能性があるため、早めの対応が大切です。
編集部
早期に矯正を始めることで、どのようなメリットがありますか?
楊先生
顎の骨の成長を活かした治療が可能なため、永久歯の歯並びを整えるだけでなく、骨格の正常な発達を促し、顔立ちを整える効果も期待できます。また、現時点で歯並びや噛み合わせに問題がなくても、歯並びを悪くする悪習癖(ポカン口、低位舌など)に早期に対応できるのも大きなメリットです。
編集部
乳歯の時期の矯正治療は、歯並び以外にも良い効果をもたらすのですね。
楊先生
はい。この時期に使用するマウスピース型の装置は、お口周りの筋肉のバランスを整える効果があります。唇や舌、頬から受ける力のバランスを整えることで、歯並びが悪くなるのを予防できるほか、呼吸や飲み込み(嚥下)を正常にする効果も期待できます。これらの装置は取り外しが可能なため、治療の負担が少ないのもメリットです。
編集部
反対に、矯正を遅らせることで生じるデメリットは何でしょうか?
楊先生
先ほどお話ししたように、歯並びを悪くする癖や習慣は、早めに改善しないと永久歯の歯並びを悪くします。例えば、ポカン口をそのまま放置すると、開咬や出っ歯になる可能性があるため注意が必要です。また、永久歯になってからの治療では、歯を抜いたり、外科手術をおこなったりなど、より大がかりな処置が必要になることがあります。さらに、年齢が上がるにつれ骨の硬さが増すため、治療期間も長くなる傾向があります。
乳歯の時期の矯正治療ではどんな装置を使う? 費用の目安も知りたい!
編集部
乳歯列期の矯正治療の方法や装置について教えてください。
楊先生
乳歯列期の矯正治療ではお子さんへの負担を考慮し、主に取り外しができるマウスピースタイプの装置を使用するのが一般的です。前歯の位置を調整する装置や、お口周りの筋肉を訓練したり、舌の位置や機能を改善したりする装置などがあります。
編集部
これらの装置は、どのように使用するのでしょうか?
楊先生
基本的に就寝時に装着してもらいますが、最初はトレーニングが必要です。装置に慣れるまでは起きている時に1時間以上装着し、徐々に寝ている間もお口に入れていく習慣を身につけるよう指導しています。
編集部
乳歯列期の矯正と従来の矯正では、治療方法にどのような違いがあるのでしょうか?
楊先生
乳歯列期におこなう矯正治療は、歯を直接動かすわけではありません。この時期の治療の主な目的は、顎の成長や周囲の筋肉の働きを正常にすることで、自然な歯並びの改善を促すことです。そのため、装置の装着時間も短く、お子さんの負担が少ないのが特徴ですが、一方で緩やかな治療法なので効果がでるまでに時間がかかることもあります。また、成長に合わせて治療計画を調整する必要があるため、定期的な通院と長期的な管理が重要になります。
編集部
乳歯列期の矯正治療には、どのぐらい費用がかかりますか?
楊先生
基本的に保険適用外なので、費用は受診する歯科医院によって異なります。治療期間や使用する装置によっても変動しますが、おおよその目安は20~40万円です。ただし、症状によってはこれ以上の費用がかかる場合もあるため、詳細については受診する歯科医院で確認してください。
編集部
矯正治療と並行して、保護者はどのようなことに注意すべきでしょうか?
楊先生
矯正治療中にとくに注意していただきたいのは、悪習癖の改善と口腔ケアです。指しゃぶりや舌癖などの悪習癖は、矯正治療の効果を妨げる恐れがあるため、ご家庭でも注意を払いながら改善に努めていただきたいと思います。また、治療中はむし歯予防のためのケアが欠かせません。毎日の丁寧な歯磨きに加え、歯科医院で定期的なチェックを受けることで、予防や早期発見につなげることができます。これらの点に注意することで、矯正治療の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
楊先生
お子さんに関しては矯正治療をする・しないに関わらず、小さい頃から歯科医院に通う習慣を身につけることが大切です。自分できちんとケアする習慣が身についていれば、多少歯並びが悪くても自分の歯を長く保つことができます。矯正治療の有無にかかわらず、ご家族皆さんで歯科定期健診を習慣化し、お子さんとご自身の歯の健康を守っていってほしいと思います。
編集部まとめ
乳歯の時期にはじめる矯正治療には、永久歯の歯並びを良くするだけでなく、お口周りの筋肉や顎の成長を正常に促す効果があるとのことでした。とくに、歯並びを悪くする習慣や癖(指しゃぶり・ポカン口・舌癖など)については、早めに対処しておくことで将来に起こり得るリスクを回避することができます。お子さんの歯並びが気になる場合は、3歳頃を目安に一度歯科医院で相談してみましょう。
医院情報
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アクセス | JR「武蔵境駅」 バスで10分 |
診療科目 | 歯科 |