「学校歯科健診」で子どもの歯並び・噛み合わせを指摘されたら歯列矯正すべき? 受診のタイミングを歯科医が解説
年1回の学校歯科健診では、むし歯の有無や歯ぐきの状態のほかに、歯並びや噛み合わせに関連した「歯列・咬合」という検査項目があります。学校歯科健診で歯並び・噛み合わせを指摘された場合、すぐに歯列矯正を検討したほうがよいのでしょうか?さらに、矯正歯科の受診のタイミングなどをしぶたに矯正歯科の渋谷先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
渋谷 直樹(しぶたに矯正歯科)
目次 -INDEX-
むし歯や歯ぐき・歯磨きの状態のほかに、学校の歯科健診では何をチェックしている?
編集部
学校の歯科健診では、どのようなことをチェックしているのでしょうか?
渋谷先生
まずは、今生えている歯の種類やむし歯の有無、治療の有無を診ていきます。次に、歯ぐきの状態や歯垢の付き具合、歯列・咬合、顎関節の状態をチェックします。このうち、歯並びや噛み合わせに関係しているのが「歯列・咬合」という検査項目です。
編集部
「歯列・咬合」では、具体的に何を診ているのでしょうか?
渋谷先生
「出っ歯(上顎前突)」「受け口(下顎前突)」と呼ばれる歯並びや、歯がガタガタした「叢生」など、一般に不正咬合と呼ばれる悪い歯並び・噛み合わせがないかをチェックします。そのほかに、上唇や舌の裏にあるヒダ(小帯)の位置や歯のすり減り具合、歯の位置の異常、永久歯の生えかわりなども合わせて診ていきます。
編集部
学校歯科健診の「歯列・咬合」の診断基準(結果から何がわかるのか)を教えてください。
渋谷先生
歯列・咬合は「0」「1」「2」の3段階で評価され、「0」は異常なし、「1」は定期的観察が必要、「2」は専門医による診断が必要、となっています。ただ、子どもの年齢によって「1」と「2」の判定をどうするかは難しいところで、実際に検査した学校歯科医によって判定も変わってくることが多いようです。
学校の歯科健診で子どもが歯並びや嚙み合わせを指摘されたらすぐに歯列矯正をするべき?
編集部
学校の歯科健診で子どもの歯列や咬合で何か指摘された場合、すぐに矯正歯科を受診したほうがいいですか?
渋谷先生
そうですね。あまり時間を置かずに、矯正歯科にご相談されることをおすすめします。歯並びや噛み合わせは成長期のうちに治しておくほうがメリットは大きいため、治療するか・しないか関わらず専門家の話を一度聞いておくのがベストだと思います。
編集部
学校歯科健診でとくに何も指摘されなかった場合(結果が「0」の場合)でも矯正歯科を受診したほうがいいケースもありますか?
渋谷先生
子どもの歯並びや噛み合わせは年齢とともに大きく変化するほか、学校歯科医によって判定も変わってきます。したがって、お子さんの歯並びで何か気になることがあれば、検診結果に関係なく矯正歯科で一度相談してみることをおすすめします。
編集部
学校歯科健診後、初めて矯正歯科を受診した日(初診時)はどのような検査を行うのでしょうか?
渋谷先生
矯正歯科医院のなかには、治療が初めての方を対象に無料相談(カウンセリング)を実施している医院があります。無料相談では現在の歯並びの状態を確認したうえで、「治療が必要なのか」「どのような治療が必要なのか」「治療するならいつ頃始めるのがベストか」などをお伝えしていきます。初回の受診で治療をするか・しないかの選択をせまることはないので、ぜひこのような無料相談を活用してみてください。
編集部
初回の受診(無料相談)で、治療期間や費用なども教えてもらえるのでしょうか?
渋谷先生
初回の相談で、おおまかな費用や治療期間の目安がわかります。それよりさらに詳しく知りたい、または治療をすぐに開始したい場合は、より精密な検査(有料)を実施していきます。
子どもの歯並び・矯正治療のQ&A 「指しゃぶり」はどう対処すべき? 矯正歯科は何歳から受診できる?
編集部
子どもの歯並びが悪くなる原因を教えてください。
渋谷先生
遺伝的な要因と環境的な要因の2つが考えられます。ご家族に歯並びや噛み合わせの悪い方がいる場合は、子どもの歯並びも悪くなる可能性があります。また、指しゃぶりや舌を突き出す癖があると、奥歯で噛んでも前歯が当たらない「開咬(かいこう)」という状態になることがあります。
編集部
子どもの歯並びについて、保護者は普段どのような点に気をつけておけばよいでしょうか?
渋谷先生
まずは、お子さんの歯並びが少しでも気になる場合は、一度矯正歯科に相談されるのが最善の方法だと思います。また、先ほどの「指しゃぶり」に関しては、歯並びが気になるという理由で無理に止めさせる必要はありません。必要以上に子どもに指摘してしまうと、かえって逆効果になるため注意が必要です。
編集部
「指しゃぶり」が気になるからといって、保護者が神経質になりすぎるのもよくないということでしょうか?
渋谷先生
おっしゃる通りです。指しゃぶりは不安な精神状態を落ち着かせるための行動なので、無理にやめさせるとお子さんの不安感が増大して逆効果になります。指しゃぶりが歯並びに影響するのは乳歯列の一部の時期だけですし、保育園や幼稚園などで周りのお友達がしていないのをみることなどで自然にやめることがほとんどです。なので、あまり神経質になる必要はないと思います。
編集部
小学生になっても「指しゃぶり」が続く場合はどうしたらよいでしょうか?
渋谷先生
小学校入学前後、上の前歯が生えてきた段階になっても続けているようだと上顎が狭くなったり、上の前歯が前側に傾いたりすることがあります。その場合は矯正歯科に一度相談し、取り外し式の装置を使って改善することも検討していただければと思います。
編集部
子どもの歯並びが気になったら、何歳ぐらいから矯正歯科を受診できますか?
渋谷先生
基本的に何歳からでも受診できますので、気になったら早めに矯正歯科に相談してみましょう。歯並びが悪くなる要因(クセ・習慣)が早めにわかると、正しいアプローチの仕方の指導やサポートをしてもらえます。また、矯正治療が必要な場合は、適切なタイミングで治療を始めることができます。一方で、すべての歯が永久歯に生えかわってから受診すると、子どもの成長を活かした治療が難しくなるため注意が必要です。遅くても下の前歯の永久歯が生えてくる頃(小学校入学前後)までには、矯正歯科で一度歯並びや噛み合わせを診てもらうことをおすすめします。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
渋谷先生
近年は子育てと仕事に追われる忙しい生活の中で、お子さんのお口の状態にまで気が回らず、知らない間にむし歯になってショックを受ける保護者の方も少なくありません。また、子どもの場合は年齢が上がるにつれ、食習慣や生活習慣の変化によりむし歯のリスクが急に高くなってしまうこともあります。したがって、早いうちから通いやすい「かかりつけ歯科医」を見つけ、定期的にチェックやクリーニングを受けておくと安心でしょう。そのなかでもし、お子さんの歯並びで気になることがあれば矯正歯科にご相談されるといいと思います。
編集部まとめ
学校歯科健診で歯並び・噛み合わせを指摘されたら、なるべく時間を置かずに矯正歯科を受診するほうがいいようです。矯正歯科の受診が初めての場合は、初回の「無料相談」を活用してみてください。また、学校歯科健診は学校歯科医によって判断が分かれる場合があります。したがって、検診でとくに指摘を受けていなくても、お子さんの歯並びが気になったら矯正歯科で一度ご相談されることをおすすめします。
医院情報
所在地 | 〒154-0003 東京都世田谷区野沢3-31-7 ロイジェント世田谷野沢1F |
アクセス | 東急田園都市線駒沢大学駅 徒歩14分 |
診療科目 | 一般歯科、小児歯科、矯正歯科 |