歯周病予備軍とはどういう人? 知っておきたい予防対策と歯科医院選びのポイントを解説
歯周病は自覚症状がほとんどないまま進行し、気づいたときには重症化していることも珍しくない病気です。歯周病を発症しやすい、いわゆる「歯周病予備軍」とはどのような人なのでしょうか? その特徴や発症を防ぐうえでの対策、歯科医院選びのポイントなどを、歯周病治療専門クリニックSPIDOの辻先生に解説してもらいました。
監修歯科医師:
辻 翔太(歯周病治療専門クリニックSPIDO)
目次 -INDEX-
歯周病予備軍ってどんな人? 発症しやすい人の特徴やリスク因子について
編集部
「歯周病予備軍」とは一般に、どのような人のことをいうのでしょうか?
辻先生
まず、歯周病という病名は「歯肉炎」と「歯周炎」の2つをあわせた総称ですので、ここでは“歯周炎の予備軍”(以下、歯周病予備軍と表記)という前提でお話ししたいと思います。実際のところ、歯周病予備軍という人がどういう人かというのは、半分ぐらいしかわかっていません。つまり、半分ぐらいの人は歯周病を進行させる何らかのリスクを抱えている一方で、残り半分の人は何が要因かはわからないまま歯周病が進んでいるのが実状です。
編集部
では、わかっている範囲での歯周病予備軍の特徴やリスク因子などを教えてください。
辻先生
歯周病の主原因は「バイオフィルム」というバイ菌の塊です。この塊が口内に存在するか・否かがまず大きなポイントになります。簡単にいうと、口内にこのバイオフィルムがなければ歯周病は発症しません。したがって、この主原因(バイオフィルム)が存在することを前提にお話しすると、歯周病を進行させる2次的な要因は複数存在しています。これらを大きくわけると、「全身的な要因」と「局所的な要因」の2つがあります。
編集部
2次的な要因のうち、「全身的な要因」について詳しく教えてください。
辻先生
最もリスクが高いのは、「過去に歯周病にかかったことがある人・治療をして治った人」です。くわえて、「喫煙習慣のある人」「全身疾患のある人」はリスクがあると考えられます。ただし、全身疾患については、それぞれの病気によってどのぐらい関係が深いかは異なるため、すべての病気が一様にリスクがあるわけではありません。歯周病ともっとも関係が深い病気では「糖尿病」が代表的です。
編集部
では、「局所的な要因」にはどのようなものがありますか?
辻先生
局所的要因は、たくさんありますが、代表的なのは歯の位置異常です。具体例を挙げると、叢生(そうせい/歯が部分的に重なっている状態)の人は、重なりあっている部分にプラークがたまりやすく、さらに歯磨きもしづらいのでリスクが高くなります。また、歯と歯の間にすき間が空いているオープンコンタクトもリスクになります。そのほかに、歯が斜めに傾いている、倒れているなども局所的な要因に挙げられます。
なぜ、歯周病は成人に多い? 歯周病を発症しないためにできること
編集部
日本では「成人の8割が歯周病」という話をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか?
辻先生
「成人の8割が歯周病」というのは少々大げさな表現だと思います。実際の統計をみても、歯周病にかかっている成人の割合は50%程度、2人に1人くらいの割合です。
編集部
なぜ、歯周病は成人に多いのでしょうか?
辻先生
発症するまでの期間や発症してから進行するスピードが遅いことが要因の1つです。例えば、インフルエンザや風邪といった感染症は、ウイルスが体内に入ってから発症までが数日と短く、治るのも比較的速いのが特徴です。一方で歯周病は、口内に細菌が入ってきても、1、2日歯を磨かなかった程度で発症することはありません。
編集部
つまり、発症や進行に時間がかかるから、結果的に成人に多いということでしょうか?
辻先生
はい。普段から歯をきれいに磨いている人が仮に全く歯磨きをしなくなった場合、歯ぐきが腫れる初期の段階(歯肉炎)になるまでに、約3週間はかかります。さらに、そこから本格的な歯周病(歯肉炎)に進行するのはもっと長い期間を要します。このように、歯周病は数か月・数年かけてゆっくり進行していくのが特徴です。
編集部
では、歯周病の発症や進行を防ぐために、私たちは普段、どのような点に注意したらよいでしょうか?
辻先生
歯周病の発症を防ぐうえでは、ご家庭でのセルフケアと歯科医院のケアの両方が不可欠です。どちらか一方が欠けても、歯周病の発症を防ぐことはできません。さらに、歯周病の予防や治療では、個々の患者さんのやる気・モチベーションも非常に重要となります。歯周病を予防しよう・治そうという意欲こそが、発症や進行を防ぐ大きなカギとなります。
歯周病の発症予防には定期健診が不可欠 予備軍が知っておきたい歯科医院選びのポイントとは?
編集部
歯周病の予防における、歯科医院選びのポイントを教えてください。
辻先生
まずは、しっかりと検査を行ってくれる歯科医院を選ぶことが大切です。例えば、歯周ポケット検査では1点だけでなく6点を測定する、専門的な用語でいうと「歯周精密検査」を行ってくれる歯科医院が望ましいといえます。
編集部
そのほかの検査についてはいかがでしょうか?
辻先生
レントゲン検査も重要です。数本単位で写す小さいレントゲン(デンタル)を14枚法や10枚法で撮影してくれる歯科医院がおすすめです。これらの検査は、日本歯周病学会で専門医の資格を取得する際にも必須となっています。レントゲン検査のほかに、口腔内の写真を撮影しているかもチェックしてみてください。
編集部
レントゲンのほかに、口腔内写真もポイントなのですね。
辻先生
患者さんからすると「なぜ写真を撮るのか」と疑問に思われるかもしれませんが、これは単に記録を残すだけでなく、治療の評価にも使われます。このような記録が残っているということは透明性も高いといえますし、処置や治療の質を保障する1つの指標にもなります。
編集部
そのほかに、注目しておきたいポイントはありますか?
辻先生
ブラッシング指導の質も重要だと思います。どこが磨けていないかを教えてくれる、その部分の正しい磨き方を指導してくれることも大切ですが、実際のところ、1回の指導だけで上手に磨けることはほとんどありません。したがって、何度も繰り返し磨き残しをチェックし、指導してくれる歯科医院が理想的です。患者さんの歯磨きスキルが向上するまで、根気よく指導してくれる歯科医院をぜひ選んでいただきたいと思います。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
辻先生
お口の中は自分では十分に見ることができないため、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことが大切です。歯科医院は決して楽しいところではありませんし、美容院のように行ったらスッキリする場所でもありませんが、検査だけであれば痛みをともなうこともほとんどありません。歯周病は顎の骨が溶ける病気で、表面からはその様子が見えないため、レントゲン検査で正確な状況を把握することが肝心。すでに、定期的に通院されている方も油断はせず、健診を継続していただきたいと思います。
編集部まとめ
歯周病は成人に多い疾患ですが、その予備軍の特徴については不明な点も多いようです。主な原因はバイオフィルム(細菌の塊)で、喫煙や糖尿病などの全身的要因と、歯の位置異常などの局所的要因が発症や進行を後押します。発症を防ぐうえではご家庭でのセルフケアにくわえ、歯科医院での定期健診の双方が必須となります。定期的な専門家のチェックを受けながら、健康な歯と歯ぐきを維持していきましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯周病・インプラント治療 |