子どもの矯正治療後に歯並びを「後戻り」させたくない! 何に気をつけたらいい?
子どもの歯列矯正を始めるにあたり、「キレイになった歯並びが後戻りしたら…」と心配される保護者も多いのではないでしょうか。そこで、小児矯正後に起こる後戻りの原因や予防法、ご家庭でできるケアについて、津田沼すずき矯正歯科の鈴木先生に解説してもらいました。
監修歯科医師:
鈴木 正能(津田沼すずき矯正歯科)
目次 -INDEX-
小児矯正治療後に起こる「後戻り」とは? 治療後に歯並びが元に戻ってしまう原因やメカニズムについて
編集部
矯正治療後の「後戻り」とはどのような状態のことをいうのでしょうか?
鈴木先生
後戻りとは、矯正治療で歯並びを整えた後、しばらくして元の歯並びに戻っていく状態のことをいいます。
編集部
なぜ、治療後に「後戻り」が生じてしまうのでしょうか?
鈴木先生
これには大きく3つの原因が考えられます。1つは、矯正治療後に歯が元の位置に戻ろうとする力によるもの、もう1つは歯並びに影響を与える癖や習慣によるものです。これにくわえ、小児矯正の場合は、子どもの骨格の成長によって後戻りが生じることもあります。
編集部
1つ目の原因「歯が元の位置に戻ろうとする力」について、もう少し詳しく教えてください。
鈴木先生
矯正治療で歯が理想的な位置に動いても、その段階ではまだ、骨や粘膜、歯周靭帯など歯の周りの組織はその位置に適応した状態にありません。例えるなら、指の力でゴムが引き延ばされているのに近い状態といえます。そのため、矯正装置が外れると、これらの組織には元の状態に戻ろうとする力が働きます。その力に引っ張られるように歯も動いてしまうのが、後戻りの主な原因です。この現象は大人、子どもに関係なく、「矯正治療をすれば必ず起こるもの」と捉えておいたほうがいいでしょう。
編集部
2つ目の「歯並びに影響を与える癖や習慣」とは、具体的にどのような癖や習慣のことをいうのでしょうか?
鈴木先生
指しゃぶりや下唇を噛む癖、口呼吸、低位舌(舌の位置が低い)、舌突出などの舌癖、横向き寝・うつぶせ寝、などが挙げられます。歯は舌や頬、唇から受ける力の中心にバランスをとって並ぶため、どちらか一方の力が強い、あるいは弱くなると、歯並び全体が乱れていきます。例えば、下唇を噛む行為は下の前歯を内側に、上の前歯を前方に傾ける力が働きます。このように、矯正治療をしても口周りの筋肉の使い方が正常でないと、治療後に後戻りする可能性が高くなります。
編集部
3つめの「骨格の成長による後戻り」はいかがでしょうか?
鈴木先生
子どもの場合は治療後も骨格が成長するため、これに関しては防ぎようがないことも多々あります。ただ、成長による後戻りに関しては、事前にご家族の歯並びや骨格から予測を立てることができるため、その可能性が高い場合は治療前にきちんとその旨をお話ししています。
小児矯正後の後戻りを防ぐには? 具体的な対策とリテーナーの使用法について
編集部
小児矯正治療後の後戻りを防ぐためには、どのような対策が必要でしょうか?
鈴木先生
後戻りを防ぐうえで一番重要なのは、保定をしっかり行うことです。具体的には、保定期間中に使用する「リテーナー」という装置を指定された時間、決められた期間の間、正しく装着することが、後戻りを防ぐ一番の近道となります。
編集部
「リテーナー」とはどのような装置か、種類や特徴などを教えてください。
鈴木先生
リテーナーは矯正治療後の歯並びを固定し、安定させるために使用する装置で、「固定式」と「取り外し式」の大きく2種類があります。固定式は歯の裏側に細いワイヤーを貼り付けて、歯並びを固定します。取り外し式は、大人の矯正治療でも使用される一般的なリテーナーにくわえ、子どもの場合は上下一体型のマウスピースを使用することもあります。
編集部
どのタイプのリテーナーを選択するかは、個々の患者さんによって異なるのでしょうか?
鈴木先生
そうですね。とくに、子どもの場合はまだ成長の途中だったり、永久歯がまだ萌出途中であったりすることも少なくありません。このような場合、大人のように完全に固定してしまうと、以後の成長を妨げる可能性があります。そのため、子どもの保定(リテーナー)に関しては後々の成長を加味して、ある程度「あそび」を持たせながら歯の位置を安定させることが重要となります。
編集部
リテーナーは1日に何時間、どのぐらいの期間使用するのですか?
鈴木先生
一般に、治療後1年間は食事・歯磨き以外はできるだけ装着してもらいます。治療後、1年が経過したら就寝中のみの使用など時間を短縮していきますが、ここには成長も関わってきますので、定期的な観察を続けながら使用頻度を決定していきます。
小児矯正治療後の「後戻り」で保護者ができること、ご家庭での注意点を歯科医が解説
編集部
小児矯正治療後の後戻りを防ぐために、保護者が心がけるべきことは何でしょうか?
鈴木先生
まずは、リテーナーの使用を徹底させることが大切です。使用時間はもちろんのことですが、この際、とくに保護者に注意していただきたいのは、「適切に装着できているか」という点です。取り外し式のリテーナーの場合、装置が所定の位置にはまるように出来ていますが、浮きがあるまま使用するなど、適切な装着が出来ていないと、時間が経つにつれ歯が動き始めます。また、歯が動き出すと所定の位置にリテーナーをはめることができていても部分的にきつさを感じるようになります。そのため、装置の着脱の際は「どこかきつくなっているところはないか」をよくチェックしてみてください。
編集部
治療後の後戻りを防ぐうえで、気をつけたい生活習慣・食習慣があれば教えてください。
鈴木先生
矯正治療を介して、お子さんが持っている歯並びに影響しそうな癖や習慣は保護者もある程度把握されていると思います。したがって、その点について保護者からも本人にきちんと説明して、悪い癖や習慣が継続していないかをご家族で見守っていくことが大切です。
編集部
もし、治療後に後戻りが生じた場合、どのように対処したらよいでしょうか?
鈴木先生
まずは早めに歯科医院を受診し、後戻りの状態を確認してもらってください。軽度の後戻りであれば、再度リテーナーの装着や調整で対応できる場合があります。後戻りの程度によっては再治療となるケースもありますが、初回の矯正治療よりも短期間で治せるのが一般的です。後戻りは早期に発見し、適切な処置を受けることが何より肝心です。少しでも異常に気づいたら、速やかに歯科医院を受診するようにしましょう。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
鈴木先生
矯正治療で動かした歯は、時間をかけてその位置に定着していきます。歯を動かす治療が終わった後も治療終了ではなく、リテーナーの使用は治療の一環として大切なものになります。また唇や舌の癖は、歯に不必要な力を加えますので、改善することが歯並びの安定につながります。MFT(口腔筋機能療法)というお口の癖を改善するトレーニングもありますので、お子様の癖がどうしても治らないとお困りの保護者様は、先生に相談をお勧めします。
編集部まとめ
矯正治療後の後戻りは大人・子どもに関係なく、治療を受けた方であれば誰にでも起こりえる現象です。その予防策に「リテーナーの使用の徹底」「歯並びに影響する癖や習慣の改善」の大きく2つがあります。いずれの対策も小児矯正の場合は保護者の管理が不可欠となりますので、本記事を参考に、治療後の後戻り対策をご家族で取り組んでみてください。
医院情報
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診療科目 | 歯科、矯正歯科 |