「歯周病の検査はなぜ重要なのか」ご存じですか? 検査内容と大切さを歯科医師が解説
歯周病は多くの方がそのリスクを抱えながらも、その存在に気づかないまま日常生活を過ごしています。しかし、放置すると歯の喪失につながるほか、近年は全身の健康にも影響を及ぼすため、最大の警戒が必要です。歯周病を早期発見するために歯周病検査がいかに重要か、またその具体的な検査の内容をデンタルクリニックアレーズ銀座の中村竜彦先生に解説してもらいました。
監修歯科医師:
中村 竜彦(デンタルクリニックアレーズ銀座)
目次 -INDEX-
歯周病検査は定期的に受けたほうがいい?受けないとどんなリスクがある?
編集部
歯周病の検査は歯医者さんで定期的に受けたほうがいいのでしょうか?
中村先生
そうですね。やはり定期的に受けていただいたほうがいいと思います。その理由は、歯周病という病気は発見が遅れやすく、何か症状が表れる頃には病状がかなり進行していることが多いからです。いざ歯医者さんに来てみたら自分が思っていた以上に深刻な状態になっていて、抜歯に至るようなケースも少なくありません。したがって、とくに症状がない時期から検査を受けてご自身の歯周病の状況を把握し、定期的な変化を確認していくことが重要です。
編集部
歯周病検査を一度も受けたことがない、あるいはずっと受けていないと、どのようなリスクがありますか?
中村先生
歯周病検査を受けないことのリスクはいくつかあります。1つは、先にもお話ししたように、自身が気づかないうちに病気が進行してしまうことです。歯周病は、過去の厚生労働省の調査結果では15歳以上の約8割が罹患していると言われた病気でもあり、「世界でもっとも蔓延している病気」としてギネス記録にも認定されています。歯周病を自覚している方や病状を把握している方が少ないのが現状です。表面化した時には想像以上に進行しているのが歯周病の特徴なので、検査を受けないことは「自身の歯が残せなくなる」可能性があがるという点でも大きなリスクになります。
編集部
そのほかのリスクについても教えてください。
中村先生
近年でいうと、全身疾患におけるリスクも無視できません。歯周病は糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、アルツハイマー型認知症、非アルコール性脂肪性肝炎など、様々な病気の発症や進行に関連している可能性があることが知られています。そういった病気の改善に歯周病治療が有効であることもわかってきているので、今後はこのような全身に対するリスクも大きくなってくると思います。また、妊娠中の女性に関しては歯周病がある方は8倍も早産になるリスクがあると言われており、注意が必要です。ほかに、最近多いのは歯周病による口臭のリスクです。人から指摘してもらいにくく、ご自身では気づかないことが多いので、歯周病の状態を把握し、治療しないと口臭は改善されません。
歯周病の検査では何をする? 検査内容や手順を歯科医が解説
編集部
歯周病では、具体的にどのような検査を行うのでしょうか?
中村先生
検査内容は歯科医院によって様々ですが、一般に広く行われているのは「歯周ポケット検査(プロービング検査)」「レントゲン検査」「プラーク付着率の検査」「動揺度検査」の4つだと思います。
編集部
歯周ポケット検査(プロービング検査)は、どのような検査なのでしょうか?
中村先生
歯と歯ぐきの間にできる「歯周ポケット」の深さを測る検査です。プローブという細い金属製の器具を歯周ポケットの中にゆっくり挿入して、プローブの目盛を読んで深さがどれくらいかを見ています。それと同時に、プローブを挿入した際に出血するか・しないかも確認しています。
編集部
その検査で、歯周病の何がわかるのでしょうか?
中村先生
歯周病によって、どのくらい歯ぐきや骨が破壊されているかがわかります。歯周病は進行するにしたがって骨の破壊も大きくなるので、歯周ポケットが深いということはそれだけ歯周病が重度に進行していると判断できます。出血に関しては、まさに今その部分に炎症が起きて、体が戦っている様子を示しています。プロービング時の出血については近年、日本歯周病学会も重要視しており、出血する部位はより歯周病のリスクが高いと判断しています。
編集部
レントゲン検査では、歯周病の何がわかるのでしょうか?
中村先生
レントゲン検査にもいくつかの種類があり、小さいレントゲンや大きなレントゲン、さらにCT検査など、それぞれで見えるものや情報量が異なります。主に確認できるのは歯を支える骨の状態で、骨がどこにどの程度残っているのか、どのような形状で破壊されているのかが把握できます。さらに、レントゲン検査では、力による炎症の問題が生じていないかもある程度確認することが可能です。歯周病の進行は「力」とも関係しており、噛み合わせや歯並びによって特定の部位に過度な力がかかると、それが原因で重症化してしまうことも少なくありません。特に力が修飾因子として働いているであろう部位は、そこだけ周囲と比べて垂直的に骨が吸収している所見が認められます。そのほかに、歯石の付着具合もレントゲンでわかることがあります。
編集部
「プラーク付着率」「動揺度」はそれぞれどんな検査なのでしょうか?
中村先生
プラーク付着率の検査は、いわゆる「磨き残し」がどのぐらいあるかを調べる検査です。プラークが染まる薬液を使って、どこが磨けていないかを患者さんにも確認してもらいます。自分では磨いているつもりでも意外と磨けてないことは多いので、正しいブラッシング法を指導して、それをセルフケアに活かしてもらいます。動揺度検査はピンセットなどを使って歯をゆすりながら揺れ具合を調べる検査です。揺れ幅や揺れる方向で3段階の評価をし、歯周病の重症度の目安にします。
編集部
以上の検査のほかに、歯周病の病状を知るうえで有益な検査はありますか?
中村先生
クリニックによっては「細菌検査」を行っているところもあります。歯周病の原因菌はいくつか存在しており、なかでも「レッドコンプレックス」と呼ばれる菌は悪性度が高い菌として知られています。自身のお口にどの種類の菌が住み着いているかで、重症化のリスクや将来的なリスクがわかるのが細菌検査の特徴です。そのほかに、お口の中の写真を撮って歯ぐきの腫れ具合や治療による改善具合を診たり、歯型模型で歯並びの状態を確認したりします。
歯周病検査後のステップ 検査結果を治療や予防にどう役立てる?
編集部
以上の歯周病検査が一通り終わったら、その後はどのような流れで進んでいくのでしょうか?
中村先生
まずは患者さんに検査結果を報告し、現在の状況や治療内容、治療スケジュールなどを説明していきます。その後はブラッシング指導や歯石除去などの基本治療を行い、ステップごとに先述の検査を再度行って改善具合を評価します。
編集部
歯周病検査でとくに異常はなく、治療も必要がない場合、検査結果を今後どのように活かしたらよいでしょうか?
中村先生
歯周病の検査では、現時点でのリスクや将来的なリスクをある程度把握することができます。自身のお口にどんなリスクがあるかを知ることで、そのリスクに応じたセルフケアや生活習慣の改善が可能です。仮に今は問題がなくても、お口の状態は全身的な問題や加齢によって変化するため、定期的に検査を受けながら今後起こりうるリスクに対応していくことが、歯周病を予防するうえでは非常に重要となります。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
中村先生
歯周病は多くの人が持っている一方で、「サイレントディジーズ(沈黙の病)」といわれるように、自身ではその存在に気づきにくいという特徴があります。この病気は進行すると口臭が強くなったり、食事が困難になったりするなど、生活の質(QOL)に直結する深刻な影響をもたらします。したがって、早い段階で検査を受けて現在の状況やリスクを把握し、適切に対処していくことが肝心です。お近くの歯医者さんで歯周病検査を受け、お口の健康を守っていきましょう。
編集部まとめ
歯周病はギネス記録に載るほど罹患者が多い一方で、自身が歯周病であることを自覚している方はまだまだ少ないようです。症状に乏しい歯周病は発見が遅れやすく、気づいた時には手遅れになっているケースもめずらしくないため、早め早めの対策が重要となります。「私は大丈夫」と思わずに、ぜひ定期的な歯周病検査を習慣づけていきましょう。
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診療科目 | 歯科 |