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【矯正医が警鐘】マウスピース型矯正は「魔法の装置」ではない ワイヤー矯正との比較や選ぶ際の注意点

 更新日:2024/01/19
【矯正医が警鐘】マウスピース矯正は「魔法の装置」ではない ワイヤー矯正との比較や選ぶ際の注意点

装置が「目立たない」「取り外しができる」と人気の高いマウスピース型矯正ですが、その一方で、近年は安易な治療によるトラブルも増えています。ワイヤー矯正とマウスピース型矯正、実際のところどちらを選ぶのが利点は多いのでしょうか。そこで、ワイヤー矯正と比較したマウスピース型矯正のメリット・デメリット、治療を選ぶ際の注意点などをかすや矯正歯科の糟谷先生にお聞きしました。

糟谷 周吾

監修歯科医師
糟谷 周吾(かすや矯正歯科)

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鶴見大学歯学部卒業。同大学歯学部歯科矯正学講座の診療科助手・臨床助手、矯正歯科専門医院での勤務を経たのち、かすや矯正歯科を開院。わかりやすい説明とコミュニケーションを大切に、安心して矯正治療が受けられる診療室を目指す。日本矯正歯科学会認定医、世界舌側矯正歯科学会(WSLO) 認定医。

ワイヤー矯正とマウスピース型矯正を徹底比較 「仕上がり」「治療期間」「治療中の痛み」にどんな違いがある?

ワイヤー矯正とマウスピース型矯正を徹底比較 「仕上がり」「治療期間」「治療中の痛み」にどんな違いがある?

編集部編集部

はじめに、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正の装置の違いや特徴を教えてください。

糟谷 周吾先生糟谷先生

ワイヤー矯正は「ブラケット」という装置を一つひとつ歯の表面に接着剤で貼り付けて、そこにワイヤーを橋渡しのようにして装着します。いわゆる従来型の矯正装置で、ワイヤーの滑りや摩擦を利用して歯を並べる方法です。これに対し、マウスピース型矯正はあらかじめシミュレーションした歯の動きにあわせてマウスピースを複数枚作製します。それを1日20時間以上装着し、1~2週間ごとに新しいマウスピースと交換しながら歯を動かしていきます。

編集部編集部

両者の「仕上がり」に違いはあるのでしょうか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

ワイヤー矯正は治療法がすでに確立している一方で、マウスピース型矯正はいまだゴールの基準が明確でなく、その評価も難しいのが現状です。専門家レベルでいうと、マウスピース型矯正は症例を選ぶ必要がありますし、ワイヤー矯正ほど綺麗にならないケースも多くあります。

編集部編集部

治療期間はどうでしょうか? ワイヤー矯正とマウスピース型矯正で何か違いはありますか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

これも「どこまで治すか」によって異なりますが、ゴールが同じであれば両者で治療期間の差はありません。「マウスピース型矯正のほうが早い」という話もよく聞かれますが、矯正を専門的に診てきた者から見るとどちらも同じ治療期間が必要だと考えます。ただ、歯を抜かない軽度な歯並び矯正では、マウスピース型矯正のほうが早い場合もあります。

編集部編集部

治療中の痛み(歯が動く時の痛み)はどうでしょうか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

基本的に、マウスピース型矯正のほうが痛みは少ないようです。マウスピース型矯正は歯の動くスピードも緩やかなので、新しい装置に交換した日は多少の痛みを感じても、次の日には治まっていることがほとんどです。これに対してワイヤー矯正は装置を調整後、3日から1週間ほど痛みが続く場合があります。

ワイヤー矯正と比較したマウスピース型矯正のメリット・デメリット

ワイヤー矯正と比較したマウスピース型矯正のメリット・デメリット

編集部編集部

ワイヤー矯正と比較した場合、マウスピース型矯正にはどんなメリットがありますか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

一番は「装置が目立ちにくい」点だと思います。また、ワイヤー矯正と違い、マウスピース型矯正は患者さんの手で装置が外せるため、「歯が磨きやすい」「食事がしやすい」などが患者さんにとってはメリットかもしれません。

編集部編集部

では反対に、ワイヤー矯正と比較した場合のデメリットやリスクを教えてください。

糟谷 周吾先生糟谷先生

治療実績がまだ少なく、明確なエビデンスがない点だと思います。ワイヤー矯正はすでに何十年も行われてきた手法で、治療法のエビデンスも確立されています。一方で、マウスピース型矯正はまだ歴史が浅く、その効果を正しく評価できるエビデンスもありません。したがって、専門家も手探りの状態で治療を進めているのが実状で、症例を慎重に選んでいく必要があります。

編集部編集部

つまり、矯正を専門的に診てきた先生方から見ると「ワイヤー矯正のほうが予後も確実で安心」ということでしょうか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

治療をする側の観点ではまさにその通りです。マウスピース型矯正は症例の選択を誤ると、ワイヤー矯正よりも時間がかかったり、場合によってはうまく治らなかったりする場合もあります。その点でいうと、治療法がすでに確立しているワイヤー矯正はどんな歯並びでも対応できますし、不安要素も少ないのがメリットだと思います。

結局どちらを選べばいい? ワイヤー矯正とマウスピース型矯正で迷った時の選び方のポイント

結局どちらを選べばいい? ワイヤー矯正とマウスピース型矯正で迷った時の選び方のポイント

編集部編集部

以上の内容をふまえると、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正で迷った場合にどのように選ぶのがいいのでしょうか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

まずは、自身の歯並びが本当にマウスピース型矯正で治せるのか、理想通りの歯並びになるのかを担当医によく確認することが重要です。マウスピース型矯正の良い所やメリットだけしか言わない先生は注意してください。そのうえで、「治療中に装置を目立たせたくない」「ワイヤーをつけたくない」というご希望があれば、マウスピース型矯正を選ぶのも方法の1つだと思います。

編集部編集部

マウスピース型矯正を選ぶ決め手は、やはり「治療中の見た目」ということでしょうか?

糟谷 周吾先生糟谷先生

多くはそうだと思います。一方で、マウスピース型矯正は装置の取り外しや交換など、装置の管理のほとんどが患者さんに委ねられるため、患者さんの協力なしでは治療ができません。したがって、自分で装置を着けたり外したりするのが煩わしいと感じる方は、ワイヤー矯正をおすすめします。

編集部編集部

自己管理に自信がない場合は、ワイヤー矯正のほうがいいわけですね。

糟谷 周吾先生糟谷先生

ワイヤー矯正は一度装置をつけてしまったら、あとは歯科医に任せておけばいいですからね。ただでさえ治療期間が長い矯正治療は、患者さんのモチベーションも1年程度しか持たないといわれています。したがって、マウスピース型矯正を選ぶ際は最後まで自分でやり遂げる覚悟を持って臨んでいただきたいと思います。

編集部編集部

「装置が自分で外せる」というのも一長一短なのですね。

糟谷 周吾先生糟谷先生

マウスピース型矯正は「食事の時に装置が外せる」というのが利点の1つに挙げられますが、正しくは「飲食する時は原則装置を外さなければならない」です。友人と外で食事をする時も装置を外して食後につけ直す必要があるし、たとえばデパ地下の試食などは安易に手を出せなくなります。治療中の見た目だけのためにそこまで頑張れるのか、努力できるのかもよく考えておく必要があります。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

糟谷 周吾先生糟谷先生

マウスピース型矯正はあたかも魔法の装置のように取り上げられることが多く、メリットだけに惑わされて安易に治療を選んでしまう方も少なくないようです。しかし、マウスピース型矯正もワイヤー矯正も装置自体はただの道具の1つに過ぎず、実際に治療の成果を大きく左右するのはそれを操る術者(歯科医)の技量にほかなりません。矯正治療を受ける際は診断が確実で、矯正治療に熟練した矯正歯科医を探すことが重要です。「安い」「早い」「キレイ」など聞こえの良い言葉だけでなく、治療のデメリットやリスクもきちんと説明してくれる矯正歯科医を選んでいただきたいと思います。

編集部まとめ

マウスピース型矯正は治療中に装置が目立たないというメリットの一方で、ワイヤー矯正に比べると実績が少なく、治療できる症例も限られることがわかりました。ワイヤー矯正とマウスピース型矯正、いずれの治療を選ぶにしろ重要なのは実際に治療をする歯科医の知識やスキル、治療実績です。矯正歯科を選ぶ際はこれまでの治療実績や矯正歯科認定医・専門医の有無などをよく確認のうえ、矯正治療に熟練した歯科医を選ぶようにしましょう。

医院情報

かすや矯正歯科

かすや矯正歯科
所在地 〒662-0075 兵庫県西宮市南越木岩町5-23 アスカビル2F
アクセス 阪急甲陽線「苦楽園口」駅西口より徒歩3分
診療科目 矯正歯科

この記事の監修歯科医師