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インプラントの歯ぐきが下がった…再受診すべき? インプラント治療後の「歯肉退縮」の原因や予防法を歯科医が解説

 公開日:2023/10/02
インプラントの歯ぐきが下がった…再受診すべき? インプラント治療後の「歯肉退縮」の原因や予防法を歯科医が解説

インプラントは「治療の終わりが新たな始まり」とよく言われます。費用や時間をかけて入れたインプラントを長く良好な状態に維持するためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。今回はそのヒントの1つとして、インプラント治療後に起こり得る「歯肉退縮」の原因や予防法などについて、「入江歯科クリニック」の入江先生に解説していただきました。

入江 陽一

監修歯科医師
入江 陽一(入江歯科クリニック)

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神奈川歯科大学卒業。1998年、神奈川県横浜市に「入江歯科クリニック」を開院、後に医療法人陽高会として法人化。治療のゴールを「治療後もしっかり噛めること」とし、一人ひとりのお口の状況に合わせたオンリーワン治療を徹底している。インディアナ大学医学部解剖学顎顔面頭蓋部臨床解剖認定医、国際口腔インプラント学会DGZI認定医、日本顎咬合学会認定医。

インプラント治療後に歯ぐきが痩せる・下がる「歯肉退縮」の原因を歯科医が解説

インプラント治療後に歯ぐきが痩せる・下がる「歯肉退縮」の原因を歯科医が解説

編集部編集部

インプラント治療後に歯ぐきが痩せたり、下がったりすることはあるのでしょうか? また、その場合、どのような症状が表れますか?

入江 陽一先生入江先生

インプラントを入れた後、しばらくして歯ぐきが痩せる・下がるといった「歯肉退縮」が起こり得ます。歯ぐきが下がってくると、フィクスチャーと呼ばれるネジの部分が歯ぐきから透けて見えるほか、ネジそのものが表に露出してしまうケースもあります。

編集部編集部

インプラント治療後に歯ぐきが下がってしまう原因として、考えられるのは何でしょうか?

入江 陽一先生入江先生

一番多いのは、インプラントが歯周病になるケース(インプラント周囲炎)です。インプラントは人工物なのでむし歯にはなりませんが、日々のセルフケアやメンテナンスを怠ると歯周病になります。インプラントを埋め込んでいる骨が歯周病によって溶けてしまうと、骨の裏打ちがなくなってしまうため、歯ぐきが下がってしまいます。とくに、歯周病で歯を失ってインプラントを入れた人は、もともと歯周病菌の保有率が高いため注意が必要です。インプラント治療後に歯ぐきが下がる原因では、ほかにも「埋入ポジションが悪い」「もともと歯ぐきが薄い」「歯ぎしり・食いしばり」が考えられます。

編集部編集部

「埋入ポジションが悪い」というのは、どういうことでしょうか?

入江 陽一先生入江先生

これは術者側の問題ですが、インプラントを正しい位置に埋入していないと、治療後に歯ぐきが下がることがあります。とくに、上の前歯はもともと骨の厚みが薄く、インプラントのポジションや角度が少しでも悪いと、歯肉退縮が起こりやすいため注意が必要です。これにはあらかじめ理想的な位置を設定し、その設定したポジション通りにインプラントが埋入できるかがキーポイントになります。上の前歯の歯肉退縮は審美面に大きく影響するため、術前の治療計画はより慎重におこなう必要があります。

編集部編集部

もともと歯ぐきが薄い人も、治療後に歯ぐきが下がりやすいのでしょうか?

入江 陽一先生入江先生

歯ぐきが厚い人に比べると、歯ぐきの薄い人は正しいポジションに埋入しても10年、20年と時間が経つにつれて歯ぐきが下がりやすい傾向があります。これはインプラントに限らず、天然歯でも起こり得ることです。ただ、上の前歯などの審美エリア以外で歯ぐきに炎症がなければ、多少歯ぐきが下がってもとくに問題はありません。

編集部編集部

「歯ぎしり・食いしばり」で歯肉退縮が起こるのはなぜでしょうか?

入江 陽一先生入江先生

歯ぎしりや食いしばりでインプラントに強い力が加わると、インプラントの根元を取り囲む骨に歪みが生じて一部が溶けてしまうためです。したがって、歯ぎしりや食いしばりがあるとわかっているケースについては、就寝中に「ナイトガード」という専用のマウスピースの装着が必須となります。

インプラント治療後に歯ぐきが下がったら治療は必要? 下がった歯ぐきは元に戻せる?

インプラント治療後に歯ぐきが下がったら治療は必要? 下がった歯ぐきは元に戻せる?

編集部編集部

インプラント治療後に歯ぐきが下がった場合、治療は必要なのでしょうか?

入江 陽一先生入江先生

まずは歯ぐきが下がった原因を究明して、その原因に対する治療が必要になります。例えば、歯周病が原因で歯ぐきが下がった場合は、歯周病治療で歯ぐきの炎症を食い止め、それ以上進行しないようにすることが大切です。

編集部編集部

原因に対する治療をおこなえば、下がった歯ぐきは元に戻るのでしょうか?

入江 陽一先生入江先生

残念ながら、その可能性は低いでしょう。歯周病治療は炎症を抑えることはできても、歯ぐきや骨を再生するのは困難です。原因に対する治療はあくまで進行を食い止めるもので、歯ぐきを元通りに戻すのはまた別の治療となります。

編集部編集部

前歯の歯肉退縮は審美面の問題があると思うのですが、その場合はどのような治療が必要になりますか?

入江 陽一先生入江先生

インプラントのポジションが悪くて歯肉退縮を起こしているケースでは、そのインプラントを除去して骨を作り直すところからやり直す必要があります。しかし、そうなると患者さんの負担も大きくなるため、前歯部のインプラントについては最初の治療の段階で治療計画を綿密に立て、慎重に進めていくことが重要だと思います。

インプラント治療後に歯ぐきが下がる・痩せるのを防ぐためにできること

インプラント治療後に歯ぐきが下がる・痩せるのを防ぐためにできること

編集部編集部

インプラント治療後の歯肉退縮を防ぐためには、どのような点に注意が必要でしょうか?

入江 陽一先生入江先生

インプラント治療後の歯肉退縮を防ぐためには、インプラントを入れる前にその原因の元を断ってお口の環境を整えておくことが肝心です。そのために、まずは「なぜ歯を失ったか」という点をよく考える必要があります。なぜなら、歯を失うにはそれなりの原因があり、その原因こそが次にインプラントのトラブルを引き起こす火種になるからです。

編集部編集部

歯を失った根本の原因を、インプラント治療を始める前に改善しておくことが重要なのですね。

入江 陽一先生入江先生

そのとおりです。とくに歯周病で歯を失った場合、残っている歯の歯周病が改善していないと、インプラントに歯周病菌が感染して炎症を起こし、歯肉退縮になってしまいます。したがって、インプラント治療を始める前に歯周病治療をしっかりおこない、インプラントにとって最適な口腔環境を整えることが、治療後の歯肉退縮を防ぐ上でとても重要です。加えて、治療後はセルフケアをしっかりおこない、歯科医院の定期メンテナンスも欠かさず継続していきましょう。

編集部編集部

そのほかに、注意しておきたい点はありますか?

入江 陽一先生入江先生

治療を始める前に、歯肉退縮を含めたインプラント治療後のリスクについて担当医から話を聞いておくことも大切です。「自分の場合はどんなリスクがあるのか」「歯ぐきが下がることもあり得るのか」などを直接聞いてみて、しっかり答えてくれる歯科医院であれば信頼できると言えるでしょう。インプラントのメリットばかりでなく、デメリットもしっかり把握して、納得した上で治療をはじめるようにしてください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

入江 陽一先生入江先生

どんな治療にもリスクを伴いますので、歯科医の説明にただ頷くだけでなく、わからないこと・不安なことなどは遠慮せずに質問しておきましょう。ただし、その場合は患者さんもインプラントに関する知識をある程度身に着けておく必要があります。本記事がその参考の1つとして、みなさんの役に立てば幸いです。

編集部まとめ

インプラント治療後の歯肉退縮は、インプラントの歯周病をはじめ、歯ぎしりや食いしばりなどが原因で起こる場合があります。インプラント治療を始めるにあたっては、これらの原因に対する治療をしっかりおこない、お口の環境を整えておくことが重要とのことでした。そのほかに、もともと持った歯ぐきの性質(歯ぐきが薄い)で歯肉退縮が起こりやすい人もいらっしゃいます。治療前に自身にそのようなリスクはないかも、担当医によく確認しておきましょう。

医院情報

入江歯科クリニック

入江歯科クリニック
所在地 〒231-0843 神奈川県横浜市中区本郷町2-45-2 福島ビル2F
アクセス JR根岸線「山手駅」 徒歩10分
JR横浜線「山手駅」 徒歩12分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師