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歯がしみる「知覚過敏」の原因や症状、治療法を歯科医が徹底解説

 更新日:2023/03/02
歯がしみる「知覚過敏」の原因や症状、治療法を歯科医が徹底解説

冷たいものが歯にしみると「むし歯かも?」と心配になりますが、同じような症状の疾患に「知覚過敏」もあります。とはいえ、むし歯ではないから安心というわけではなく、知覚過敏も放置してしまうと思わぬトラブルに見舞われる可能性もあるようです。今回は知覚過敏の原因や症状、放置するリスク、治療法などを「佐藤歯科医院」の佐藤先生に解説していただきました。

佐藤 正賢

監修歯科医師
佐藤 正賢(佐藤歯科医院)

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昭和大学歯学部卒業。昭和大学歯科病院冠橋義歯学講座入局。その後、昭和大学藤が丘病院、東京都内歯科医院に勤務。2003年、東京都品川区に「佐藤歯科医院」を開院。従来の歯科治療に加え、むし歯・歯周病の原因となる生活習慣の改善にも力を入れ、再発や再治療の防止に努める。日本歯科人間ドック学会(現・ジャパンオーラルヘルス学会)認定医。日本補綴歯科学会、日本歯周病学会の各会員。

歯がしみる「知覚過敏」とは? 知覚過敏の原因・症状を歯科医が解説

歯がしみる「知覚過敏」とは? 知覚過敏の原因・症状を歯科医が解説

編集部編集部

歯磨き粉のCMなどでもよく耳にする「知覚過敏」とは、どのような状態のことを指すのでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

知覚過敏の正式名は「象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)」と言い、冷たいものや熱いものを口に入れたときに出る「歯がしみる」といった症状が代表的です。そのほかにも、甘いものや酸っぱいものを食べたときや寒い時期に空気を吸ったときに歯がしみたり、歯ブラシが当たったときに痛みを感じたりすることがあります。

編集部編集部

むし歯でも似たような症状はありますが、むし歯と知覚過敏とは何が違うのでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

歯の表面は「エナメル質」という人間の体の中で一番硬い組織で覆われており、外部からの刺激をシャットアウトしています。エナメル質が削れて内側の象牙質からダイレクトに神経へ刺激が伝わって症状が出るというメカニズムは、むし歯も知覚過敏も基本的には同じです。むし歯の場合は細菌の酸によってエナメル質が溶けた結果、刺激が象牙質に伝わり症状を引き起こします。ただし、むし歯以外にもエナメル質が削れて症状を引き起こすことがあり、これを一般に「知覚過敏」と呼んでいます。

編集部編集部

エナメル質のバリアが取れてしまう原因は、むし歯以外だと何が考えられますか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

1つは、不適切なブラッシングや歯周病、加齢などにより歯ぐきが下がる「歯肉退縮」です。歯の根っこ(歯根)の表面にはエナメル質がないため、歯ぐきが下がって根っこの一部が露出するとしみたり、痛みが感じやすくなったりします。そのほか、歯にヒビが入ったり、歯質が欠けたりした場合にも、知覚過敏の症状を伴うことがあります。ただ、実際に臨床で診ていると、むし歯や歯肉退縮、歯質の欠損などの異常はないのに「歯がしみる」というケースも少なくありません。

編集部編集部

歯や歯ぐきに異常がないのに歯がしみるのはなぜでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

知覚過敏で意外と盲点なのは、「噛み合わせ」です。じつは、知覚過敏の多くは歯の神経の一部に炎症を起こしており、その炎症が原因で神経が過敏になって歯がしみたり、痛みが出たりします。その炎症を起こすきっかけの1つが、噛み合わせの異常なのです。噛み合わせによる過度な力が原因で神経に炎症が起こると、神経が過敏になって普段しみないものがしみてしまうと考えられています。

編集部編集部

では、歯ぎしりや食いしばりも知覚過敏を引き起こしやすいのでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

そうですね。歯ぎしり・食いしばりのほかにも、近年はTCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)という、上下の歯を日常的に接触させている人が多くみられます。歯は通常、食事や会話などで上下の歯が接触するのは1日20分程度です。その時間を大幅に超えて持続的に上下の歯が接触してしまうと、歯に過度な力が加わって神経に炎症が生じて、知覚過敏を引き起こす可能性があります。

知覚過敏を放置するとどうなる? どうやって治せばいい?

知覚過敏を放置するとどうなる? どうやって治せばいい?

編集部編集部

知覚過敏をそのまま放置すると、どのようなリスクがありますか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

先ほども少しお話ししましたが、知覚過敏では多くの場合で歯の神経に炎症が起こります。最初は一部だけですが、そのまま放置してしまうと炎症が神経全体に広がって激しい痛みを伴うようになります。ここまで進行すると歯の神経を残すのも難しくなるので、症状が軽くても放置せずに早い段階で歯科を受診していただきたいです。

編集部編集部

知覚過敏では、どのような治療をおこなうのでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

一般的におこなわれているのは、しみる部分にしみ止めの薬を塗ったり、露出した部分をコーティングしたりする治療です。ただ、噛み合わせが原因で起こる知覚過敏では、噛み合わせの調整も重要になります。しみ止めやコーティング剤を塗布しても症状が消えないケースの中には、噛み合わせの調整によって症状が改善するケースもなかにはあります。

知覚過敏にならないための予防法・歯磨きなどのセルフケアをご紹介

知覚過敏にならないための予防法・歯磨きなどのセルフケアをご紹介

編集部編集部

知覚過敏を予防するために、セルフケアではどのようなことに注意したらいいでしょうか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

知覚過敏の原因で多い歯肉退縮は、不適切なブラッシングが元で生じるケースも多くあります。したがって、ブラシが「かため」の歯ブラシや、粒子の大きい歯磨き粉は避けるようにしましょう。さらに、歯ブラシの持ち方にも要注意です。柄を手の平で握るような持ち方(パームグリップ)は力が入りやすくなります。歯ブラシは柄を鉛筆の持ち方(ペングリップ)で持つようにして、一度に2本ずつ、コンパクトに歯を磨くようにしましょう。

編集部編集部

そのほかに、気をつけておきたいことはありますか?

佐藤 正賢先生佐藤先生

普段から歯ぎしり・食いしばりのある人は、就寝時に装着する専用のマウスピース(ナイトガード)を歯医者さんで作ってもらうことをおすすめします。一方で、歯ぎしり・食いしばりに関しては、自分では気づかないケースも少なくありません。ただ、歯ぎしりや食いしばりをしている人の口の中には特徴があるので、歯科医であればある程度それを推測することができます。したがって、何か気になる症状があれば一度歯医者さんで診てもらうのが安心でしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

佐藤 正賢先生佐藤先生

知覚過敏は日常生活でよくある症状の1つですが、「いずれ治るだろう」という油断は禁物です。しみる症状が気になる場合は時間をおかずに歯科を受診して、歯や歯ぐきの状態、噛み合わせ、歯ぎしりの有無などをチェックしてもらうようにしてください。あわせて、正しいブラッシングの方法もアドバイスしてもらうと、むし歯・歯周病の予防にもつながるでしょう。

編集部まとめ

冷たいもの・熱いものが歯にしみる知覚過敏は、歯ぐきが下がる歯肉退縮のほかにも、噛み合わせが原因で生じるケースもあるようです。とくに気にならないからといって放置しておくと、症状がさらに悪化して痛みを伴うほか、最悪の場合は歯の神経を残せなくなってしまう恐れもあります。したがって、症状が気になったら早めに歯科医院を受診して、異常がないかチェックしてもらいましょう。

医院情報

佐藤歯科医院

佐藤歯科医院
所在地 〒141-0022 東京都品川区東五反田1丁目12-12 落合ビル1F
アクセス JR・都営浅草線「五反田駅」 徒歩1分
診療科目 歯科

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