「子どものうちに歯列矯正をすると良いワケ」を歯科医が解説 治療の開始タイミングや費用も知りたい
子どもの歯並びが気になりつつも「歯列矯正はまだ早い」とそのままにしていませんか? 子どもの歯列矯正は大人の治療にはないメリットが沢山ありますが、その恩恵を受けられる期間が限られています。そこで子どものうちに歯列矯正をはじめるメリットやタイミングについて、ブライト矯正歯科院長の清﨑先生に聞きしました。
監修歯科医師:
清﨑 丈司(ブライト矯正歯科)
目次 -INDEX-
子どものうちから歯列矯正をはじめるメリットとは? デメリットはない?
編集部
歯列矯正は基本的に「年齢の制限はない」と聞きますが、それでも子どものうちにはじめるほうがよいのでしょうか?
清﨑先生
歯列矯正は3~4歳頃から大人まで、歯を支える骨や組織の状態に問題が無ければ治療可能ですが、やはり子どものうちに治療をはじめたほうがいいでしょう。子どもの歯列矯正の特長は歯並びと一緒に骨格も整えやすいことですが、その骨格が変えられるのも中学1年生ぐらいまでです。それまでの間に歯並びの受け皿となる土台(骨格)をしっかり整えられると、完璧に近い治療ができる可能性が高まります。
編集部
「骨格が整えられる」とは具体的にどのような治療で、どんなメリットがあるのでしょうか?
清﨑先生
1つは、上下のあごの位置関係が変えやすい点です。例えば、「しゃくれ」や「受け口」と呼ばれる歯並びでは、前に突き出た下あごに合わせて上のあごを前に出してあげるとしゃくれた状態の改善を見込めます。大人の場合はこのような治療ができないため、症状によっては骨を切ったり削ったりする外科手術が必要になります。しゃくれや出っ歯をあごの位置を変えて治療できるのは、成長途中にある子どもの間だけです。
編集部
ほかにも、子どものうちに歯列矯正をはじめるメリットはありますか?
清﨑先生
歯列の幅を広げて永久歯の生えるスペースが作れるのも、子どもの歯列矯正の大きなメリットでしょう。大人の歯列矯正では歯列の幅は変えにくいため、歯を並べるスペースが足りない場合は抜歯をしてスペースをつくることが多くなります。一方で子どもの場合は、歯を並べる受け皿のほうを大きくしやすいため、抜歯をせずに治療できる可能性が高くなります。
編集部
子どもの歯列矯正には成長を活かしたメリットが沢山あるのですね。とはいえ、子どもの時期から歯列矯正をするデメリットやリスクはないのでしょうか?
清﨑先生
大人の歯列矯正と比べて治療期間が長いのがデメリットの1つです。さらに、子どもの場合は治療の協力が得られにくいのもデメリットといえます。例えば、子どもの歯列矯正では取り外し式の装置をよく使いますが、装置がしっかりはまっていなかったり、嫌がって装着しなかったりすると効果がでません。したがって、子どもの歯列矯正は本人だけでなく、家族全員が協力して歯並びを治すという意識を持つことが重要になります。
子どもの歯列矯正は何歳から? どのタイミングではじめるのがベスト?
編集部
子どもの歯列矯正とは、具体的に何歳から何歳までが対象となるのでしょうか?
清﨑先生
おおよそ6歳から永久歯が生えそろう12~13歳頃までが治療の対象となります。しゃくれや受け口では3歳頃から治療をはじめる場合もあります。
編集部
永久歯が生えそろってからでは遅いのでしょうか?
清﨑先生
永久歯がすべて生えそろった段階で、大人の歯列矯正とほぼ同じ治療になります。あごの位置を変えたり、歯列の幅を広げたりする子どもならではの治療は乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」にしか行うことができません。
編集部
成長を活かした歯列矯正を受けるためには、遅くても何歳までに治療を始めたほうがよいのでしょうか?
清﨑先生
骨格を整えたり治したりするのにも2年ほど期間を要するため、遅くとも8~9歳頃には治療を開始しておくほうがよいでしょう。子どもの歯列矯正は時期を逃してしまうと、大人の歯列矯正とほぼ変わらない治療になってしまうため注意が必要です。
編集部
治療をはじめるベストな時期を逃さないために、どのような点に注意したらよいでしょうか?
清﨑先生
1歳6か月児健診や3歳児健診、就学時健診などで歯並びについて何か指摘されたら、間を置かずにすぐに矯正歯科に相談するのがよいでしょう。そうすると「もう少し待っていいですよ」「すぐに治療を始めたほうがいいですね」など、治療をはじめるタイミングについてのアドバイスが受けられます。
編集部
「子どもの歯並びで少しでも気になることがあったら、すぐに相談」ということですね。
清﨑先生
歯並びが綺麗かどうかに関わらず、6歳になったら一度矯正歯科で歯並びを診てもらうことをおすすめします。矯正歯科では当院のように無料相談を実施しているクリニックもあるので、このような矯正相談をぜひ活用していただければと思います。
編集部
乳歯の時期に注意しておきたい歯並びはありますか?
清﨑先生
乳歯の歯並びで歯と歯の間にすき間がない場合は、永久歯の歯並びが悪くなる可能性があるため注意が必要です。それ以外にも「下あごが出ているな」と思ったら3~4歳頃に一度矯正歯科を受診するのがベストでしょう。
費用はどれくらい? 保険は適用できる? 子どもの歯列矯正で知りたいこと
編集部
子どもの歯列矯正に保険は適用できるのでしょうか? また、保険が適用できない場合の費用の目安を教えてください。
清﨑先生
生まれつき6本以上歯が無いケースなどの厚生労働省が定める疾患や手術を伴うあごの変形症に起因する矯正治療で保険が適用できますが、それ以外のケースは基本的に保険が適用できません。費用の目安としては30~50万円くらいです。一方で、美容目的ではない矯正治療の費用については、医療費控除の対象となります。
編集部
「医療費控除」とは、どんな制度でしょうか?
清﨑先生
自分や家族の医療費が1年間で10万円を超えた場合、一定の所得控除が受けられる制度です。治療にかかった費用や交通費(公共交通機関)などが控除の対象となります。確定申告の際に所定の手続きを行えば、支払った税金の一部が返ってきます。
編集部
子どもの歯列矯正はどれぐらい期間がかかりますか?
清﨑先生
子どもの歯列矯正は永久歯が生えそろう12~13歳ぐらいまでなので、6~8歳頃から始めたとしたら4~6年ぐらいが治療期間の目安となります。比較的症状が軽く、部分的に歯並びを整えるケースであれば1~2年ほどで治療が終了するケースもあります。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
清﨑先生
子どもの成長を活かした歯列矯正ができる期間は5~6年と短く、その時期を逃してしまうと大人と同じ治療になります。大人の歯列矯正で抜歯や外科手術が必要になるケースのなかには、子どものうちに治療しておけばそれらを回避できたケースも少なくありません。したがって、お子さんの歯並びで少しでも気になることがあったら、できるだけ早い段階で矯正歯科に相談してください。
編集部まとめ
矯正治療をはじめるのに年齢の制限はありませんが、子どものうちに始めておくほうがメリットは大きいようです。まだ成長過程にある子どもの場合は、あごの位置関係を変えたり歯列の幅を広げたりすることで抜歯をせずに歯並びが治せる可能性も高くなります。ただし、このような治療ができる期間は限られるため、健診等で歯並びに関して何か指摘されたら、早めに矯正歯科で相談しておくのがベストでしょう。
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診療科目 | 歯科 |