インプラントの寿命を歯科医が解説 耐用年数と長寿化メインテナンス・寿命後の交換について
せっかく終えたインプラント治療。できるなら、インプラントの寿命を延ばし、再手術などが起こらないようにしたいものです。一体、インプラントの耐用年数はどれくらいなのでしょうか。また、どうすれば長持ちさせることができるのでしょうか。喜田歯科医院院長の喜田先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。
※写真はイメージです(以下同)
監修歯科医師:
喜田 晃一(喜田歯科医院)
目次 -INDEX-
インプラントの寿命は20年?ブリッジや入れ歯と比較して平均寿命・耐用年数はどれくらい?
編集部
インプラントの寿命はどれくらいですか?
喜田先生
現在、日本ではチタン製のインプラント治療が一般的ですが、国内でこの治療が普及してからまだ30〜40年ほどしか経過していません。そのため、インプラントの耐用年数については、明確な答えが得られていません。ただ、世界的には40年程度の経過症例が見られています。
編集部
ブリッジや入れ歯と比較すると、インプラントの耐用年数は長いのですか?
喜田先生
口の中の状態にもよりますが、インプラント治療の10年生存率(10年後も問題なく使えているかどうか)は95%程度という報告があります。同じく入れ歯は50%程度、ブリッジは90%程度とのことでした。
編集部
ブリッジや入れ歯に比べるとインプラントの方が長持ちする傾向とのことですが、一生使えるというわけではないのですか?
喜田先生
インプラント体は、チタンやチタン合金という素材で作られていて、非常に高い強度を誇ります。しかし、インプラント治療に限らず、どの治療も人工物を用いるため、管理が行き届いていれば長持ちしやすくなりますし、逆に管理が行き届いていなければ傷む可能性が高くなります。インプラントが永久的に使えるかどうかは、一概に述べることができません。
インプラントの寿命を延ばす方法 メインテナンスで耐用年数は延びる? 前歯・奥歯でもつ年数に違いは?
編集部
インプラントの寿命を延ばすには、どのようなことを心がければ良いでしょうか?
喜田先生
まずは、特に不具合はなくても定期的に来院してチェックしてもらうことが大切です。とりわけ、歯周病やむし歯があると感染が起きやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高くなります。インプラント周囲炎は、インプラントの寿命を縮める大きな原因の一つです。そのため、定期的に歯科医院で検診を受けることが必要です。
編集部
ほかにはありますか?
喜田先生
喫煙、歯ぎしり、食いしばりなどもインプラントの寿命を縮める原因になります。特に歯ぎしりや食いしばりは、インプラントを破損してしまうリスクが高くなります。また、喫煙する習慣があると歯ぐきの血流が悪くなって歯周病にかかりやすくなります。そうした習慣や癖がある人は改善することが必要です。
編集部
喫煙も良くないのですね。
喜田先生
基本的には、インプラント治療を行う前に禁煙をしていただきます。喫煙習慣があるとインプラント治療が難しくなりますし、治療後もインプラント周囲炎のリスクが高くなるからです。さらに、治療後も禁煙を継続することを推奨しています。
編集部
インプラントを長持ちさせるために、ずっと気をつけていなければいけないのですね。
喜田先生
インプラントだけに限らず、口の中の良好な状態を維持するためにも、定期検診は有効と考えられています。それから、インプラント治療を終えたからといって、それで治療が完全に終了したわけではありません。インプラント治療を終えたあとも、場合によっては噛み合わせの調整をしなければなりませんし、一旦被せ物を取り外して中の状態を確認しなければならないケースもあります。
編集部
一旦被せ物を取り外すのは、どんなケースですか?
喜田先生
例えば、被せ物の中ネジが緩んでいる被せ物とインプラントの間に汚れが挟まっている、インプラント周囲炎が進んでいるといったケースです。そのため、インプラント治療は「人工歯根を埋め込み、被せ物をつけたら終わり」ではなく、管理も治療の一環と考えた場合、その後もずっと続くことを覚えておいていただければと思います。
編集部
インプラントの寿命は、前歯や奥歯など、どこにインプラント治療を行うかによっても耐用年数は変わるのですか?
喜田先生
噛む時には前歯より奥歯の方が強い力がかかりますから、インプラント治療では前歯に比べて奥歯の方が、太いインプラント体や長いインプラント体を使用することもあります。前歯と奥歯ではあまり寿命に差異はないと言われていますが、治療の際にはそうしたことまで細かく配慮する必要があります。
インプラントの寿命が来たらどうする? 歯科で交換・再手術が必要? 保証は効くの?
編集部
インプラントが寿命を迎えるとどうなるのですか?
喜田先生
インプラントと顎の骨の結合が外れてしまったり、口腔内の状態が悪化してインプラント周囲炎が進んでしまったり、インプラントそのものが過大な力によって破損したりします。その場合、インプラントの除去や再手術が必要になってきます。
編集部
再手術では新しいインプラントに交換するのですか?
喜田先生
傷んだインプラントを除去して、骨の治りに応じて交換を検討する場合があります。インプラントの寿命は、先生によって考え方がばらつくかもしれませんが、日本口腔インプラント学会の基準に基づくと、インプラント周囲の骨がとけてなくなり、動揺がでてきた場合には除去する可能性が高くなります。そうでない場合は、温存療法が行われる可能性もあります。
編集部
再手術できないケースもあるのですか? 保証は効きますか?
喜田先生
骨が大幅になくなっているなどのケースでは、再手術が難しいこともあります。いずれにしても、再手術は初めての手術よりも困難な場合が多くなります。信頼できる歯科医師にお願いするようにしましょう。なお、保証が効くかどうかは歯科医院によって異なりますので、確認してみましょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
喜田先生
ときどき、「インプラントを埋め込み、被せ物を被せたら治療は終了」といって、その後のメインテナンスまで行ってくれない歯科医院もあるという話を耳にします。しかし、口の中の環境はライフステージに合わせて変化するもの。そのため、治療を終えたあともずっとメインテナンスに関わってくれるのが、本来のかかりつけ医だと考えます。よく、「信頼できる歯科医師はどうやって見つければ良いのですか」と質問を受けることがありますが、まずはカウンセリングを利用して、歯科医師との相性を確認したり、「説明が丁寧か」「誠意を持って対応してくれるか」などをチェックしたりすると良いでしょう。場合によってはセカンドオピニオンやサードオピニオンを受けるのも有効です。また歯科医師の技術の高さの目安としては、日本口腔インプラント学会に所属し、専門医などの資格を取得しているかどうかも判断材料として役立つでしょう。
編集部まとめ
インプラント治療は時間もお金もかかる治療。患者さんの負担も大きくなりますから、治療を受ける前にはきちんと知識を蓄え、しっかり準備することが必要です。すべてを歯科医師に任せるのではなく、患者さん自身も主体的に治療に取り組みたいですね。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |