セラミックのインレーやクラウン、歯医者が教える寿命を長持ちさせる方法
見た目が美しいだけでなく、機能面でも優れているとして、近年、セラミックのインレーやクラウンを選択する人が増えています。しかしセラミックは銀歯など保険適用の治療と違い、割れたり欠けたりすることもあると聞きます。一体どのように手入れをすれば寿命を延ばすことができるのでしょうか。医療法人きしもと歯科医院の岸本博人先生に教えてもらいます。
監修歯科医師:
岸本 博人(医療法人きしもと歯科医院 院長)
1993年大阪大学歯学部卒業、1997年大阪大学大学院歯学研究科歯学臨床系修了(歯学博士)。2001年大阪府高槻市に「きしもと歯科医院」を開院。日本口腔インプラント学会代議員、日本障害者歯科学会会員、大阪口腔インプラント研究会理事。一般歯科全般だけでなく、口腔外科、予防歯科、ホワイトニングなど高品質の医療を提供。「誰でもなんでも気軽に相談できる歯医者さん」として、地域医療に貢献している。
セラミックインレー、セラミッククラウンとは?
編集部
セラミックインレー、セラミッククラウンとはなんですか?
岸本先生
インレーとは簡単にいえば詰め物のこと、クラウンとは被せ物のことです。むし歯治療で削ったとき、歯の欠損部分を補う必要があります。そのとき、欠損部分が小さければ詰め物をして歯に蓋をします。欠損部分が大きければ、歯全体を被せ物で覆います。インレーやクラウンをセラミックで作ったものが、セラミックインレー、セラミッククラウンということです。
編集部
インレーやクラウンの素材は、ほかにもあるということですよね。
岸本先生
そうです。インレーやクラウンを作る際には、セラミックのほかにもさまざまな素材を使用します。保険が適用できるものでいえば、硬質レジン(強化プラスチック)というものもありますし、クラウンなら金銀パラジウム合金という、いわゆる「銀歯」の選択肢もあります。
編集部
硬質レジンや銀歯に比べて、セラミックはどう違うのですか?
岸本先生
いろいろな違いがありますが、まずは、見た目の問題があります。銀歯は口のなかで銀色が目立つので、見た目を気にする人はいます。硬質レジンは、治療当初は白くて美しいのですが、時間の経過とともに黄ばみが生じますし、すり減りも出てきます。
編集部
セラミックはそうした経年劣化が生じないのですか?
岸本先生
セラミックは茶碗などに使われる陶器と同じ素材であり、汚れが付着しにくいという特徴があります。セラミック製のインレーやクラウンと一口にいっても、実際にはさまざまな種類がありますが、特にオールセラミックと呼ばれるものは美しさが際立っています。これは100%セラミック素材でつくるインレーやクラウンで、汚れがつきにくく、見た目がすぐれているという特徴があります。
セラミック、銀歯など、素材の違いによる寿命の差
編集部
セラミック製のインレーやクラウンと、銀歯など金属製のものとでは、寿命の違いはあるのですか?
岸本先生
まずお話ししておきたいのが、インレーやクラウンが長持ちするかどうかは、口の中のコントロール次第であるということです。たとえば、天然歯とインレーやクラウンの隙間に磨き残しがあれば、そこからむし歯になってしまい、インレーやクラウンの寿命は短くなってしまいます。また、噛む力がとても強い人は、インレーやクラウンが欠けてしまうこともあります。これらはセラミックでも、銀歯でも同じこと。「口の中のコントロールをしっかり行う」「噛む力が強すぎない」という条件下では、セラミックや銀歯など、素材の違いによる寿命の差はほとんどありません。
編集部
その条件下なら、セラミックでも銀歯でも寿命に違いはないのですね。
岸本先生
ただし、先ほど硬質レジンのお話をしましたが、これはセラミックや銀歯に比べて寿命が短くなりがちです。なぜなら、硬質レジンは経年劣化をしていく素材だからです。長く使うとすり減ったり、欠けたりすることがあるので、大体10年くらいで作り直す人が多いでしょう。
編集部
セラミックの場合、欠けたり割れたりすることがあると聞きましたが。
岸本先生
確かに、少し前までは「セラミックは強度が弱点」とされ、銀歯などに比べて欠けやすかったり、割れやすかったりしていました。しかし今は技術が向上し、強度の心配はほとんどありません。特に、人工ダイヤモンドといわれるジルコニア製のインレーやクラウンは強度が高く、奥歯など噛む力が強い場所にもよく用いられています。
編集部
セラミックが割れたり欠けたりすることは、あまりないのですね。
岸本先生
ただし、セラミックとプラスチックを掛け合わせたハイブリッドセラミックと呼ばれるものは、100%セラミックで作ったインレーやクラウンに比べて強度が劣るため、あまり強い力をかけると、欠けたり割れたりすることがあるので注意が必要です。
編集部
セラミックか、銀歯か、どちらを選ぶか決めるときには、寿命の問題というより見た目の問題で考えて良い、ということですか?
岸本先生
確かに、素材そのものの寿命はセラミックも銀歯も変わらないのですが、ひとつ、気をつけてほしいのがむし歯になるリスクです。銀歯そのものは強度が高いのですが、銀歯は汚れがつきやすく、むし歯になりやすいという欠点があります。そのため、先述の条件が満たされず、寿命は3〜5年が一般的といわれています。保険適用外になりますが、治療した状態を長くキープしたいなら、セラミックを選択することをおすすめします。
歯医者が教えるセラミックの寿命を伸ばす方法
編集部
セラミックのインレーやクラウンを、一生使い続けるにはどうしたら良いのでしょうか?
岸本先生
確かにセラミックはプラークや着色が付きにくいという特徴を持ちますが、特にハイブリッドタイプの場合、局所的に強い衝撃を受けると、割れたりヒビが入ったりすることがあります。そのため、硬いものを食べるときには注意が必要です。
編集部
セラミックの治療を行う場合、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか?
岸本先生
歯ぎしりや食いしばりの癖がある人は、銀歯がいい場合もありますが、必ずしもセラミックをあきらめる必要はありません。ただし、ジルコニアやオールセラミックのように硬いものを入れると、それがストレスになって、一層、歯ぎしりや食いしばりがひどくなることもありますし、噛み合わせたときに対となる歯にダメージを与えることもあります。その場合は、ハイブリッドのセラミックを入れることをお勧めします。同時に、歯ぎしりや食いしばりを治すため、噛み合わせの治療も行ったほうが良いでしょう。
編集部
治療後は、どんな点に注意してメンテナンスをしたら良いでしょうか?
岸本先生
歯ブラシが硬すぎたり、ブラッシングの力が強かったりすると、歯ぐきが下がって被せ物の根っこが見えてしまうことがあります。そのため、歯磨きをするときは柔らかめのブラシを使い、力を入れすぎずに磨くようにしましょう。
編集部
自宅でのケアだけでなく、クリニックにも通院した方が良いのでしょうか?
岸本先生
確かにセラミックは汚れがつきにくいというメリットがあるものの、自宅での歯磨きだけではどうしても磨き残しが出てしまうこともあります。バイオフィルム(細菌など微生物の集合体)が口腔内に定着するまで3か月かかると言われています。そのため、少なくとも3か月に1度はクリニックへ通い、歯石を除去してもらったり、歯ぐきの健康状態を確認してもらったりすると良いでしょう。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
岸本先生
機能面だけを考えれば、銀歯など金属を使っても、セラミックを使っても、あまり大差はありません。しかし、セラミックのインレーやクラウンを使用すると、口腔環境に対する意識が高まり、口のなかがきれいに保たれることが多いように思います。確かにセラミックによる治療は保険適用外なので治療費がかさみますが、前歯や下の奥歯など、他人から見えやすい部分だけでもセラミックで治療を行うと、口のなかをきれいに保とうという意識が芽生えるはずです。最後まで自分の歯で食べられるように、セラミックのインレーやクラウンによる治療を検討してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
保険適用の銀歯などに比べて、高額な治療費がかかることもあるセラミック製のインレーやクラウン。せっかく作ったものなので、できるだけ長く大事に使い続けたいですね。正しくメンテナンスをすれば「一生もの」になることもあります。歯科医師と相談し、適切な素材を選択し、正しくメンテナンスしていきましょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科、小児歯科、口腔外科 |