歯科医院の衛生面が気になる! 院内チェックポイントを紹介
今ほど、衛生面に注目が集まっている時代はないのではないでしょうか。とくに歯科医院では、口の中に器具を出し入れします。つまり、口の粘膜をリスクにさらしている頻度が多い医療機関と言えるのです。はたして、我々素人が実際に目で見て判別できるチェックポイントはあるのでしょうか。「つくばデンタルクリニック」の渡邉先生が回答します。
監修歯科医師:
渡邉 直子(つくばデンタルクリニック 院長)
東京歯科大学卒業。2019年、茨城県つくば市に「つくばデンタルクリニック」を開院。「患者の声」を大切にしたインフォームドコンセントに注力している。日本歯周病学会専門医、日本糖尿病協会認定登録歯科医、厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導医。
施設面で気にすべきポイントは?
編集部
昨今、コロナ禍で衛生環境に注目が集まっています。
渡邉先生
そうですね。歯科医院においても、受診時に体温チェックをしているところが増えてきています。加えて、「手指衛生、3密の回避、換気」は必須です。ただし、今回は「新型コロナウイルスから離れた一般論」について言及させてください。
編集部
わかりました。衛生面というと、見た目の清潔さが気になります。
渡邉先生
院内が定期的な清掃がなされているかどうかですよね。これは、床やサッシの手すりなどを見ればわかると思います。積もったホコリが空中へ舞うと、やがて患者さんの口から吸いこまれてしまうかもしれません。そして、ホコリの中には当然、色々な菌やウイルスが潜んでいます。
編集部
そう考えると、絨毯が敷いてあるとホコリがたまるので不衛生ですよね?
渡邉先生
そうかもしれませんね。どちらかと言えば、ツルツルした床の方がホコリをためにくいです。また、待合室のイスや家具類にも同じことが言えます。レザーやビニール、プラスチックのようなお手入れしやすい素材がカギになるかもしれません。さらに言えば、生花を置くのも最低限でいいように思います。
編集部
院内に置いてある雑誌類や子ども用のおもちゃも気になります。
渡邉先生
患者さんに待っていただくことを考えると、完全に排除するのも考え物です。とくにお子さんは、じっとしていられないですからね。実際、アルコールでおもちゃを消毒している医院も多いと思います。棚やおもちゃにホコリがたまっていなければ、その歯科医院の「清掃や消毒が行き届いている」と考えていいのではないでしょうか。
器具の衛生面でチェックしておきたいことは?
編集部
歯科医師の使う器具なども感染源になると聞きます。
渡邉先生
そのとおりです。そこでタービンなどの滅菌・殺菌対策が必須となるわけですが、患者さんからしたらチェックのしようがないですよね。そのため、歯科医院のホームページやパンフレットなどを注視してみてください。理想的なのは「ビニールなどのパッケージを、患者さんの目の前で破って用いる体制」なのですが、タービンをいちいちパッケージングしない滅菌器もあるので、なんともいえません。やはり、ホームページやパンフレットなどを確認しましょう。
編集部
新型コロナウイルスでは空気中の飛沫が問題とされていますが、むし歯菌などは大丈夫なのでしょうか?
渡邉先生
むし歯菌や歯周病原細菌も例外ではありません。とくに、歯を削ったり、歯石を取ったりするときに水がお顔にしぶきのように飛散するのを経験されている人も多いかと思います。その中にも、むし歯菌や歯周病菌が含まれていると考えるべきです。ですから、ユニットごとに「周辺の空気を吸い込むバキューム装置」が必須です。縦型のエアコンのような機器を見かけたら、それが「口腔外バキューム」です。
編集部
個人的には、治療中に座るイスが気になってしまいます。
渡邉先生
「ユニット」のことですね。ユニットは比較的「意識をしやすい箇所」なので、お手入れが行き届いていると思います。それよりも気にすべきは、ユニットに付属しているライトです。ほかの患者さんのお口を触った手で、そのままライトに触れているとしたら、ライトに菌やウイルスが付着しかねません。患者さんごとに手袋を替えるといった、何かしらの対策が歯科医院には求められるでしょう。
編集部
ほかにも、設備面で知っておいた方がいいことはありますか?
渡邉先生
当院では、タービンの先に取り付けるドリル類を患者さんが替わるたびに、「セットで収納したケースごと」取り換えています。使ったドリルだけ取り換えていると、使用頻度の低い器具がそのまま放置されてしまうんですよね。
どうやって歯科医院を選べばいい?
編集部
こうした院内のチェックを目的とした「見学だけ」って、してもいいのでしょうか?
渡邉先生
正直、あまり聞きませんね。日中は診療していますし、現実的ではないと思います。やはり、初診時やホームページでチェックしてみて、気にかかるところがあったら転院するのが一般的です。
編集部
ドクターはスゴ腕なのに施設が残念だったら、やりきれないですよね?
渡邉先生
そのようなことはないと思いますよ。今まで見てきたことは「どの医療機関でも最低限、おこなわれていること」だと信じています。それよりも「歯科疾患に関して、丁寧な説明と適切な治療がなされているか否か」が問われる印象です。
編集部
衛生面は、歯科医院選びの一部にすぎないということですか?
渡邉先生
はい。患者さんの口コミなどを見ると、「スタッフの優しさ」などが人気のようですが、これもまた難しい観点ですよね。総じて、衛生・診療・ホスピタリティなどの総合力によって歯科医院の真価が問われるのであって、部分的な見方だけで評価するのはもったいないです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渡邉先生
昨今、衛生面が気にかかるご時世ではありますが、どのような歯科医院でも一定基準は満たしているはずです。一般の店舗などと違って、医療機関というだけで厳しいハードルが課せられています。その点は、どうか安心していただきたいですね。これから歯科医院選びをするとしたら、衛生面も含めた広い視点でチェックしていただけたらと思います。
編集部まとめ
施設全体の注意点は、ホコリをためにくい素材や建材であること。また、器具の注意点は、見た目でわかりにくいため、ホームページやパンフレットで確認すること。ただし、衛生面は歯科医院選びの側面でしかありません。自分の疾患ときちんと向かい合って解決へ導いてくれることが、何よりも重要な観点です。
医院情報
所在地 | 〒305-0044 茨城県つくば市並木3丁目10−6 |
アクセス | つくばエクスプレス「つくば駅」からバスで20分 |
診療科目 | 歯科 |