スウェーデン式の削らないむし歯治療「カリソルブ」ってどんな治療なの?

公開日:2021/09/05  更新日:2021/09/23

歯科先進国スウェーデンで広く導入されている「カリソルブ」。はたして、どのようなバックグラウンドから開発された治療方法なのでしょう。医師の利便性を図ったものなのか、患者の予後に寄与するものなのか。日本スウェーデン歯科学会の理事でもある朝波先生に伺ってみました。

朝波 惣一郎先生

監修歯科医師
朝波 惣一郎(歯学博士・日本スウェーデン歯科学会理事)

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東京歯科大学卒業。ドイツへの留学経験をもち、各大学に招請されているインプラント治療の第一人者。日本口腔外科学会口腔外科専門医・指導医。日本有病者歯科医療学会指導医・顧問。日本小児口腔外科学会監事。日本顎顔面インプラント学会指導医・監事。日本スウェーデン歯科学会理事。西麻布口腔外科インプラントセンター長。

どのようなむし歯に対して用いられるのか

どのようなむし歯に対して用いられるのか

編集部編集部

歯科医院独特のエンジンやタービンの振動、音にかなり抵抗があります。

朝波先生朝波先生

おそらく、「削られて痛かった思い」がトラウマとしてあるのでしょう。しかし昨今では、削らなくてもむし歯を除去する方法があります。薬品でむし歯になった部分を“溶かす”ことができるようになったのです。これにより、「再発が怖いから、患部を大きく削っておこう」という過侵襲も防げるようになってきました。

編集部編集部

たしかに「削らない治療」という言葉が散見されてきました。

朝波先生朝波先生

「削らない治療」と言っていますが、エンジンやタービンを使わないだけで、手作業でひっかいてむし歯を取り除く処置などはすることがあります。むし歯を薬品で溶かすにしても、溶かす量の少ないほうが確実ですからね。したがって、「溶かすお薬だけでむし歯治療を完結できる」ということではありません。あくまで、プロセスの1つです。

編集部編集部

そのむし歯を溶かす薬が、カリソルブだと?

朝波先生朝波先生

ほかに、殺菌効果をもたせた歯の詰め物である「ドックベストセメント」などが有名ですね。穴の大きく開いたむし歯の場合、溶かすだけでは、構造的に脆弱です。そこで、再発防止も兼ねつつ、詰め物としてのセメントで補強します。

編集部編集部

だとすると、大きな穴の残るようなむし歯は、カリソルブが向いていないのでは?

朝波先生朝波先生

そういうことになります。カリソルブの適応は、穴が開いたとしても、レジンなどで簡単に“埋められる”程度の初期むし歯です。大きな穴の開いたむし歯に対しては、最終的に、被せ物や詰め物による処置が必要になります。

思っているほど簡単には選べない治療方法

思っているほど簡単には選べない治療方法

編集部編集部

カリソルブによる治療を、患者が指定することはできるのでしょうか?

朝波先生朝波先生

たしかに、カリソルブを検索して来院される方はいらっしゃいます。しかし、麻酔をして神経を取るほどの重篤なむし歯には、カリソルブが向いていません。ですから、指定していただいてもいいのですが、対応できないことがあります。

編集部編集部

耐えられないほどの痛みがあるとき、溶けるまで待っていられないと思うのですがどうでしょう?

朝波先生朝波先生

その通りです。なので、そうした症例には、別の治療方法を検討します。痛み止めとカリソルブを併用することも考えられますが、現実的な方法とはいえないでしょう。冷たいモノに敏感になったり、溶けるのを待っている間にむし歯が歯の根っこの先端まで進んでいったり、さまざまな弊害が考えられます。

編集部編集部

気になる費用についても教えてください。

朝波先生朝波先生

保険は使えず自費診療になります。各医院によって差のあるところですが、1歯5000円から1万円あたりが相場でしょう。カリソルブを扱うには講習会への出席が必要ですので、単純な薬科代とは言いきれません。技術料込みといったところでしょうか。

編集部編集部

保険の治療と併用する場合、費用体系はどうなるのでしょう。

朝波先生朝波先生

「混合診療」のケースですよね。日本の制度上、保険診療と自費診療を組み合わせると、全ての治療行為が“自費扱い”となります。一部例外はあるものの、治療方法を選択する際の重要な観点になるでしょう。自己負担額の低さを優先するとしたら、保険診療の枠組みの中から選んでいただくしかありません。

「医者嫌い」のハードルを下げる動機としては十分

「医者嫌い」のハードルを下げる動機としては十分

編集部編集部

“なるべく”削らない治療方法としては、ほかにどんな進め方があるのですか?

朝波先生朝波先生

一例としてオゾン療法を取り入れている歯科医院が散見されてきました。お薬のような液体ではなく、気体でむし歯を溶かす進め方ですね。こうした「患者さんの負担が少ない治療方法」は、いままで怖くて治療を受けいれられなかった方の希望になるでしょう。ただし、現在のところ、自費診療になります。

編集部編集部

歯科医院によって治療選択肢に違いがあるのは、どうしてでしょう?

朝波先生朝波先生

それぞれ、歯科医師が「一番良い」と考えているからでしょうね。ただし、治療方法が先にアリキではないと思います。結局は削ることになったとしても、「信頼できて納得のいく医院」を選んでみてください。その先生が必要だと思えば、自分では扱っていない治療方法の受診先も紹介してくれるでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

朝波先生朝波先生

カリソルブは、歯科恐怖症の方やお子さんを治療の場へ迎え入れる方法として、大変に有効な手段だと考えています。加えて、「カリソルブで治せるうちにむし歯を発見してもらおう」という機運が高まれば、歯科予防にも結びついてきます。この機に、スウェーデンの先進的な考え方を、みなさんも身につけてみてください。

編集部まとめ

例えば道路工事が必要なとき、工事後の大きな穴をそのまま残しておくと危険です。きちんと平らに埋め戻す必要があるでしょう。その意味でカリソルブは、埋める手段というより、小さな穴を開ける手段なのでした。しかも、使えるタイミングや症例が限られます。むし歯に限らないことですが、ほとんどの病気は、早期であるほど治療選択肢の幅がもてるようです。触れ込みにある「削らない」に注目するのではなく、「削る必要のない段階で治療に取り組む」という本来趣旨に立ち返ってみてください。

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西麻布口腔外科

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