

監修医師:
吉川 博昭(医師)
カーニー複合の概要
カーニー複合は、皮膚、心臓、内分泌系などに良性の腫瘍が多発することが特徴の遺伝性疾患です。症状として、ゼリー状の良性腫瘍である「粘液腫」や、ほくろやそばかすに似た「皮膚色素斑」があらわれることが知られています。また、内分泌機能が亢進し、ホルモン産生が過剰になる場合もあります。
カーニー複合は、1985年に名付けられた比較的新しい疾患概念で、海外では750例以上が報告されています。日本国内の正確な患者数は不明ですが、2023年時点で約50症例の報告があります。
出典:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター カーニー複合(指定難病232)
カーニー複合の原因は、遺伝子の異常と考えられています。関与している遺伝子は、特定されている遺伝子のほかにもあると推測されていますが、詳細はまだ解明されていません。治療法としては、発生した腫瘍に対する外科的手術や、内分泌機能を抑える薬物療法などの対症療法が中心となります。
症状があらわれる年齢には個人差がありますが、診断時の平均年齢は20代とされています。一部の症例では若年での死亡例も報告されていますが、腫瘍の治療がうまくいけば、通常の寿命を全うできると考えられています。そのため、腫瘍の早期発見と早期治療が重要です。
カーニー複合の原因
カーニー複合は特定の遺伝子異常が原因とされており、現在「PRKAR1A」という遺伝子が関与していることが明らかになっています。「PRKAR1A」遺伝子は、腫瘍の発生を抑える働きをもつ遺伝子ですが、異常があると細胞の増殖が制御できなくなり、腫瘍ができやすくなると考えられます。
「PRKAR1A」遺伝子以外にも、関与している可能性のある遺伝子があると推測されていますが、詳細はまだ明らかになっていません。
カーニー複合の前兆や初期症状について
カーニー複合では多種多様な症状がみられますが、初期にあらわれやすいのが皮膚の色素沈着(皮膚色素斑)です。
この色素沈着にはさまざまな種類がありますが、典型的なものは、淡い褐色から黒色のほくろ、そばかすに似た色素沈着です。新生児期から全身にみられ、次第に数が増えていきますが、青年期以降は徐々に目立たなくなることが多いとされています。
また、カーニー複合の特徴として「粘液腫」とよばれるゼリー状の良性腫瘍が発生しやすいことが挙げられます。粘液腫は、皮膚、乳房、骨など、あらゆる部位に発生することが知られていますが、とくに心臓にできる「心粘液腫」は約70%の患者にみられると報告されています。
腫瘍そのものは良性であることが多いものの、心臓に発生すると、動悸や息切れ、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。さらに、腫瘍が血管をふさぐと血栓ができ、命に関わる危険性もあります。
カーニー複合では内分泌系にも腫瘍ができやすく、ホルモンの産生が過剰になることがあります。とくに、副腎皮質の腫瘍(原発性色素沈着性結節性副腎皮質病変)は、約半数の患者で15歳以前に発症すると報告されています。
副腎皮質に腫瘍ができると、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌され、異常な体重増加や高血圧、血糖値の上昇などの症状があらわれることがあります。小児期に発症した場合は、最初の症状として肥満や成長の遅れがみられることが多いとされています。
さらに、下垂体や甲状腺、精巣、乳房に腫瘍が発生すると、先端肥大症や女性化乳房、思春期早発症などの症状がみられることがあります。
これらの症状は、他の病気でもみられることがあるため、カーニー複合と気づかれにくいことがあります。また、症状は生まれつきみられる場合もありますが、見過ごされることも多く、カーニー複合と診断される平均年齢は20代であることが一般的です。
カーニー複合の検査・診断
カーニー複合の診断は、症状の特徴や家族歴をもとに行われます。皮膚や心臓、乳房、骨、副腎、下垂体、甲状腺、精巣など、さまざまな部位に症状があらわれるため、それぞれの症状に応じて、画像検査、血液検査、尿検査、病理検査などを組み合わせて診断されます。
心臓や乳房、精巣、甲状腺などの異常が疑われる場合は、超音波検査やMRIなどの画像検査を行い、腫瘍の有無や大きさ、位置などを確認します。必要に応じて、腫瘍の一部を採取し、顕微鏡でくわしく調べる病理検査を実施することもあります。
副腎や甲状腺に腫瘍がある場合には、血液検査でホルモン値を測定することが重要な診断材料となります。ホルモンの過剰分泌が確認されれば、カーニー複合の可能性が高まります。
また、カーニー複合に特徴的な症状があり、家族に同じ病気をもつ人がいる場合は、診断の決め手になることが多いです。遺伝子検査を行い、PRKAR1A遺伝子の異常が確認されれば、確定診断となります。
カーニー複合は症状が多岐にわたるため、診断までに時間がかかることも少なくありません。早期診断のためには、内科、皮膚科、小児科、泌尿器科などが連携し、総合的に評価することが重要です。
カーニー複合の治療
カーニー複合を根治させる治療法は確立されていないため、外科的手術や薬物療法など、症状に応じた対症療法が行われます。
腫瘍が発生した場合には、外科的手術で腫瘍を取り除くことが一般的です。とくに、心臓の腫瘍(心粘液腫)は、血栓による突然死のリスクが高いため、早期の手術が推奨されます。
また、ホルモンの過剰分泌など、内分泌機能に異常がみられる場合には、ホルモンの分泌を抑える薬物療法を行います。
カーニー複合は、一度治療を受けても新たな腫瘍が発生する可能性があるため、定期的な検査と経過観察が欠かせません。適切な治療と症状管理を継続すれば、健康な人と同じように寿命まで生きられる可能性が高いと考えられています。
カーニー複合になりやすい人・予防の方法
カーニー複合は遺伝性の疾患であるため、家族に同じ病気の人がいる場合は発症リスクが高まると考えられています。カーニー複合の約70%が両親のいずれかが発症していることが報告されていますが、約20%は突然の遺伝子変異によって発症すると考えられています。
カーニー複合を予防する方法は確立されていませんが、家族にPRKAR1A遺伝子の変異が確認されている場合は、遺伝子検査を受けることで早期発見が可能です。
腫瘍の発生を完全に防ぐことは難しいですが、定期的な検査を受け、異常がみつかった際には早期に治療を行うことが重要です。
参考文献