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サイトメガロウイルス感染症
高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

サイトメガロウイルス感染症の概要

サイトメガロウイルスは、口唇ヘルペスなどの原因となる「単純ヘルペス」や、水ぼうそうや帯状疱疹を引き起こす「水痘・帯状疱疹ウイルス」と同じヘルペスウイルス科に属します。一度感染すると体内に潜伏し続けます。多くの方は幼児期に感染しますが、基本的に症状は認めません。しかし、免疫が低下した状態になると再び活動を始め、重篤な症状を引き起こすことがあります。また、思春期以降に初めて感染をすると、「伝染性単核球症」とよばれる病気をきたすことがあります。さらに、妊娠中の女性が感染すると胎盤を通して胎児に感染することがあり注意が必要です。先天性サイトメガロウイルス感染症とよばれ、胎児に肝臓や脳などの問題が発生するリスクが高まることが分かっています。

サイトメガロウイルス感染症の原因

ひとつは「初めてサイトメガロウイルスに感染すること」です。もうひとつは免疫力の低下により、体の中で眠っていたサイトメガロウイルスが「再活性化すること」です。

サイトメガロウイルスの初感染

基本的には乳幼児期に感染し、症状はありません。しかし、胎児期に感染すると「先天性サイトメガロウイルス感染症」を起こします。また未熟児・早産児での感染も重症化しやすいです。さらに、思春期以降の初感染により、伝染性単核球症を発症することがあります。

サイトメガロウイルスの主な感染経路は以下です。

  • 唾液や尿
    感染したばかりの乳幼児の唾液や尿に触れることで感染する
  • 母乳
    母乳を介して赤ちゃんに感染する
  • 輸血
    感染者の血液や臓器を受け取った場合にも感染する
  • 性的接触
    大人同士の場合、性的な接触により感染が起こる

また、幼少期に感染をしなかった方が妊娠中にサイトメガロウイルスに感染してしまうと、胎盤を通してお腹の赤ちゃんに感染する可能性が高くなることもわかっています。

サイトメガロウイルスの再活性化

サイトメガロウイルスは感染すると、その後長い間体の中に潜んでいます。多くの場合はそのまま悪さをすることはありません。
ところが、臓器移植や骨髄移植・抗がん剤や免疫抑制剤の投与・AIDSの発症などで免疫力が低下すると急にウイルスが暴れ出すことがあります。

サイトメガロウイルス感染症の前兆や初期症状について

サイトメガロウイルス感染症の症状は感染もしくは再活性化した方の状態によりさまざまです。ここでは代表的な症状について見ていきましょう。

胎児期の感染(先天性サイトメガロウイルス感染症)

妊婦が妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染した場合、胎児にもウイルス感染が起こります。以下のような症状が現れることがあり、知的発達障害聴覚障害などの後遺症が残ることもあります。

  • 低出生体重
  • 肝脾腫
  • 小頭症(頭が異常に小さい状態)
  • 脳内石灰化(脳内に石灰が沈着)
  • 難聴

未熟児における感染

一般的に、新生児や乳児がサイトメガロウイルスに感染した場合は多くは無症状か軽症です。しかし、母乳などを介して未熟児に感染した場合は発熱や肝機能異常、重症の肺炎や腸炎などをきたします。さらには後遺症として発達の遅れをきたす可能性があることもわかってきました。

健常な成人の初感染

思春期やその後にサイトメガロウイルスに初めて感染した場合、「伝染性単核球症」という疾患をきたします。伝染性単核球症の主な原因は同じヘルペスウイルス科の「EBウイルス」ですが、5〜10%ほどはサイトメガロウイルスによるものです。発熱や喉の痛みに加え、首のリンパ節が腫れたり肝臓や脾臓が腫大したりといった症状が起こります。重篤な合併症は稀ですが、完全に良くなるまで2〜3週間ほどかかることも少なくありません。

免疫不全者の再活性化

造血幹細胞移植や臓器移植を受けた方、抗がん剤や免疫抑制剤で治療をしている方、HIVに感染している方などでは、サイトメガロウイルスの再活性化が起こることがあります。さまざまな臓器がターゲットとなるため、症状も多様です。以下に症状の例を示します。

  • 全身症状
    発熱・だるさ・節々の痛み・筋肉痛
  • サイトメガロウイルス肺炎
    乾いた咳・息苦しさ
  • サイトメガロウイルス腸炎
    腹痛・吐き気や嘔吐・下痢・下血
  • サイトメガロウイルス網膜炎
    視力低下

サイトメガロウイルス感染症の疑いがある場合は、一般内科の受診が勧められます。患者さんがお子さんの場合は小児科受診をしましょう。
妊婦や胎児に関する場合は、産婦人科での診察が必要です。移植後、抗がん剤や免疫抑制剤使用中、HIV患者さんの場合は主治医に相談してください。症状に応じて、眼科や消化器内科などの専門科を紹介されることもあります。

サイトメガロウイルス感染症の検査・診断

サイトメガロウイルス感染症の検査は、患者さんの免疫状態や症状、感染経路を考慮して行われます。以下は主な検査方法ですが、状況に応じて選択したり、組み合わせたりして判定します。

血清学的検査

血液検査により、サイトメガロウイルス抗体の有無や量を測定します。検出される抗体の種類により、最近の感染なのか過去に感染している状態なのかを判断する材料になります。

サイトメガロウイルス分離検査

尿・咽頭ぬぐい液・血液などを検体として、サイトメガロウイルスが増殖するかを確認します。ヒトの細胞にウイルスを加えて、サイトメガロウイルスに特有の細胞の変化が見られるかを調べる方法です。

サイトメガロウイルス抗原血症検査

血液中にサイトメガロウイルスに感染している細胞がどのくらいいるかを判定する検査です。感染状況や病勢の進行具合を把握することができます。感染が進行する前に陽性となるため、治療開始や終了のタイミングを判断するのに役立ちます。

核酸増幅(PCR)法

血液などの検体からサイトメガロウイルスのDNAを検出する方法です。感度が高いため、感染の有無を早期に把握でき、治療効果のモニタリングにも適しています。

症状に応じた検査

腸炎が疑われる場合は大腸内視鏡、肺炎が疑われる場合はCT、網膜炎が疑われる場合は眼底検査など症状に応じた検査が行われることがあります。腸炎などではさらに組織を一部採取して顕微鏡で観察する病理組織学的検査を行い、感染細胞の特徴があるかを調べます。

サイトメガロウイルス感染症の治療

サイトメガロウイルス感染症の治療は、患者さんの症状や免疫状態によって異なります.健康な方の伝染性単核球症では解熱薬を中心とした対症療法のみで改善します。脾臓が腫れていると破裂するリスクがあるため、当面激しい運動は控えましょう。一方、重篤な症状の場合や免疫が低下している患者さんには、抗ウイルス薬の使用が一般的です。副作用は薬剤によって異なりますが骨髄抑制(血液を作る骨髄に影響して白血球などが減ってしまうこと)や腎機能障害、血中のミネラルの異常などがあります。治療中は定期的な血液検査が必要です。

サイトメガロウイルス感染症になりやすい人・予防の方法

これまでサイトメガロウイルスにかかったことのない妊婦さんのお腹の赤ちゃんは先天性サイトメガロウイルス感染症のリスクがあります。予防としては、お母さんがかからないようにすることが重要です。主に小さな子どもの唾液や尿からの感染が多いです。妊娠中に子どものお世話をする必要がある時は、こまめに手洗いをしてください。ご自身の子どもでも食べ物や飲み物の共有は避け、キスをするときも唇や頬以外のところにしましょう。また、未熟児は母乳から感染することが多いです。授乳については産婦人科・小児科の先生と相談しましょう。再活性化を予防することは難しいため早期発見が重要です。疾患や治療のため免疫力が低下している方は、体調不良時には早めに主治医に相談しましょう。リスクによっては体内のウイルス量が増えてきていないか、血液検査で定期的にモニタリングすることもあります。

関連する病気

  • 免疫不全状態(HIV/AIDS)

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