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PFAPA症候群
白井 沙良子

監修医師
白井 沙良子(医師)

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小児科医(日本小児科学会専門医)。慶應義塾大学医学部卒業。総合病院にて研修を修了し、現在はクリニックにて、様々な感染症やアレルギー疾患の診療、乳幼児健診、育児相談などを担当。オンライン医療相談、医療記事の執筆・監修、企業向けセミナーなども通じて「エビデンスに基づいた育児情報」を発信している。

PFAPA症候群の概要

PFAPA(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and adenitis)症候群は、乳幼児に発症する自己炎症性疾患です。
主に5歳までの幼児期に発症し、周期性発熱、アフタ性口内炎、咽頭炎、リンパ節炎の4つを主症状としています。

詳しい病態や原因は現在のところ不明ですが、通常は発症から4〜8年経った10歳ごろに自然軽快します。

PFAPA症候群の特徴は、6〜12ヶ月に3回以上(通常3〜8週間ごと)の発熱発作が繰り返されることです。発作時には39度以上の高熱が3〜6日続き、同時にアフタ性口内炎、咽頭炎、リンパ節炎のうち少なくとも1つの症状を伴います。
しかし、間欠期(発作と発作の間)には症状が完全に消失し、成長や発達への影響はないといわれています。

(出典:難病情報センター「免疫系疾患分野|周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA)(平成24年度)」)

発熱時の血液検査では、炎症値の上昇が見られるのが特徴です。
他の周期性発熱症候群や感染症などと症状がよく似ているため、血液データや臨床症状から鑑別することが重要です。

治療は主に薬物療法がおこなわれます。
予防にはヒスタミンH2受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)やロイコトリエン受容体拮抗薬、発作時はステロイド薬が使用されます。
ステロイド薬は即効性がありますが、発作と発作の間隔が短くなる可能性があるため注意が必要です。

症状が重度で日常生活に支障をきたす場合は、扁桃摘出術を検討することもあります。
扁桃摘出術は、全身麻酔のリスクや年齢、症状の程度などを考慮して慎重に検討する必要がありますが、多くの患者に発熱発作が見られなくなります。

PFAPA症候群

PFAPA症候群の原因

PFAPA症候群が起こる原因は明らかになっていません。

非遺伝性の自己炎症性疾患とされていますが、家族性に発症する症例も報告されています。

PFAPA症候群の前兆や初期症状について

PFAPA症候群の症状は、発熱から始まるケースもあれば、発熱の1〜2日前にアフタ性口内炎や咽頭炎、リンパ節炎の症状が見られることもあります。
これらの症状は解熱とともに回復することが多いです。

周期性発熱

周期性発熱は39度以上の高熱が突然出現して、3〜6日間持続する症状が規則的に繰り返し起こる状態です。
発熱は主に午後から夕方にかけて現れることが多く、倦怠感や食欲不振、寒気、頭痛、嘔吐などを伴うこともあります。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は口腔粘膜や舌の表面に複数発生する潰瘍で、5〜7割の症例で認められます。
潰瘍の大きさはさまざまで、わずかな痛みがあります。

咽頭炎

咽頭痛は6〜9割の症例で認められる症状で、喉に痛みや発赤が生じ、まれに扁桃腺に白い膿がたまることもあります。

リンパ節炎

リンパ節炎は約6割の症例で起こる症状で、首の左右に痛みを伴う腫れが生じます。

(出典:Japanese Journal of Clinical Immunology「PFAPAの診断と治療」

PFAPA症候群の検査・診断

PFAPA症候群は、主に血液検査や臨床症状の評価に基づいて診断されます。

血液検査では、発作時に好中球などの白血球やCRPなどの炎症所見が上昇しますが、同じ炎症所見のプロカルシトニンが上昇しないのが特徴です。
これらの炎症所見は間欠期には正常化します。

臨床症状では、主にPFAPAの診断基準に当てはまる項目を調べます。
PFAPAの診断基準には、周期的に繰り返す発熱発作や、アフタ性口内炎や咽頭炎などの特徴的な症状、間欠期の無症状、正常な成長と発達などが含まれます。

PFAPA症候群は、他の自己炎症性疾患や周期性発熱症候群との鑑別も必要です。
周期性好中球減少症や家族性地中海熱、高IgD症候群、若年性特発性関節炎などはPFAPA症候群と類似した症状を示すことがありますが、発熱の期間や発作と発作の間隔、関連症状、血液検査の炎症所見のパターンが異なります。

PFAPA症候群の治療

PFAPA症候群の治療は薬物療法による対症療法が基本となりますが、重症例では扁桃摘出術を検討する場合もあります。

薬物療法

薬物療法は、発熱発作の予防を目的とした間欠期の治療と、発作時の症状に対する治療の2つにわけられます。

予防的治療としては、シメチジンやロイコトリエン受容体拮抗薬などを定期的に投与することで、再発を抑制する効果が認められています。

発作時にはステロイド薬が有効であり、投与後、数時間以内に効果が見られます。
しかし、ステロイド薬の頻回な使用は、発作と発作の間隔を短縮させる欠点があるため、使用には注意が必要です。

扁桃摘出術

扁桃摘出術は、薬物療法でも十分な改善が見られず、症状が重度で発熱発作の頻度が非常に高い症例で検討されます。

高い有効性が報告されていますが、全身麻酔による体へのリスクなども考慮すると、特に幼児期においては慎重に検討する必要があります。

PFAPA症候群になりやすい人・予防の方法

PFAPA症候群の発症リスクが高い人や、確立された予防方法は明らかになっていません。
しかし、周期的に高熱が見られる場合は、早期に小児科を受診し、適切な検査を受けることが重要です。

診断がついた場合は、間欠期における薬物療法を指示通りにおこなって、発熱発作の予防に努めましょう。


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