

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
風疹(三日ばしか)の概要
風疹(三日ばしか)は、風疹ウイルスによって引き起こされる急性の感染症です。 発疹・発熱・リンパ節の腫れを主な症状としますが、三日ばしかとも呼ばれるとおり、一般的には3日間程度で症状が軽減します。 しかし、妊娠初期の妊婦さんが感染するとお腹の赤ちゃんに影響を与えるおそれがあります。 妊婦さんの感染の影響から、お腹の赤ちゃんが風疹ウイルスに感染してしまうと、死産もしくは流産となることや、先天性風疹症候群と呼ばれる病気をもって産まれることがあります。このため、妊娠を考えている女性や妊婦さんは、風疹に対して特に注意が必要です。 風疹ウイルスは感染力が高く、飛沫感染や接触感染を通じて他人に広がるため、感染予防対策が重要となります。 ワクチン接種が最も有効な予防策とされており、定期的な予防接種が推奨されています。風疹(三日ばしか)の原因
風疹の原因は、風疹ウイルスへの感染です。 風疹ウイルスは、患者さんの鼻水や痰などの中に含まれており、咳やくしゃみによって人から人へと感染します。 また、飛沫が付着した物に触れることでも感染する場合があります。 風疹の流行は春先から初夏にかけて、3〜10年ごとに起こっています。 風疹は幼児や小学校低学年の子どもによく見られる病気ですが、最近ではワクチンを接種していない成人での感染も増えています。 風疹は、ウイルスに感染してから2〜3週間で症状が出はじめますが、症状の出る数日前からすでにウイルスの排出は始まっているため、無症状であっても他人に感染させるおそれがあります。風疹(三日ばしか)の前兆や初期症状について
風疹の初期症状として、38度前後の発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなどが見られます。 特に、耳の後ろから首にかけて腫れが見られることが特徴です。 子どもの場合、初期症状はごく軽いか症状が出ず、風疹の感染に気がつかないこともあります。 一方、成人ではこれらの症状が1〜5日間続きます。 他に風疹の特徴的な症状として、赤い発疹が出ることもあります。 発疹は顔から出始めて、胸やおなか、手足へと急速に広がっていきます。 この発疹は、発熱とほぼ同時に現れて数日から1週間持続しますが、ほとんどの場合あとを残さずに消えていきます。 風疹において最も深刻な問題は、妊婦さんへの感染とお腹の赤ちゃんへの影響です。 特に、妊娠20週頃までの女性が風疹に初めて感染すると、高い確率でお腹の赤ちゃんにも影響が及びます。 その場合、子宮内でうまく赤ちゃんが成長できずに亡くなってしまうこともあります。 また、産まれた赤ちゃんに先天性の心疾患、白内障、難聴などの先天性風疹症候群の症状がみられることもあります。 先天性風疹症候群に感染した赤ちゃんは生後何ヶ月間にもわたって風疹ウイルスを排出するので、周りの赤ちゃんへうつさないような感染対策が必要となり、母子への負担も大きくなります。 これらの症状がみられた場合、子供なら小児科、大人なら内科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。風疹(三日ばしか)の検査・診断
風疹の診断は、血液検査によって行われます。 まずは、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどから風疹を疑います。 そして他の発疹を伴う病気と区別するために、血液検査を行います。 血液検査には、風疹ウイルスに対する抗体の量を調べる抗体検査と、風疹ウイルスそのものの存在を確認するPCR検査があります。 また、先天性風疹症候群を診断するためには、妊婦さんに風疹の症状がなかったかどうかを確認することに加えて、赤ちゃんの健康状態を確認する必要があります。風疹(三日ばしか)の治療
風疹は、特に子どもでは軽症で済む場合が多く、自然に回復することが期待されます。 成人では発疹や発熱の続く期間が子どもより長く、関節痛もひどくなる傾向にあるので注意が必要です。 また、ごくまれに血小板減少症や脳炎などの合併症を引き起こすおそれもあります。 そのため、一度風疹と診断された後でも、3日以上熱が続く、ぐったりしていて元気がないなどの様子があれば再度医療機関を受診しましょう。 風疹には特効薬がないため、治療は主に対症療法が中心となります。 発熱には解熱剤、関節痛には鎮痛剤を使うなど、つらい症状を軽減するための治療を行います。 妊婦さんが風疹に感染した場合、お腹の赤ちゃんの状態を確認するとともに、他の妊婦さんなどへの感染を防ぐ必要もあります。 妊娠中に風疹を疑う症状が出たり、周囲で風疹にかかった人がいる場合には、まずはかかりつけの産科医院に指示を仰ぐようにしてください。風疹(三日ばしか)になりやすい人・予防の方法
風疹にかかりやすい人として、ワクチン接種を受けていない人、過去に風疹にかかったことのない人が挙げられます。 風疹の予防にはワクチン接種が有効です。 風疹ワクチンは現在定期接種として行われており、1歳前後と小学校入学前の2回接種が推奨されています。 成人でも、過去に風疹にかかったことがない場合や、ワクチン接種歴が不明、ワクチンを1回しか接種していない場合などは、予防接種を受けることを検討してください。 特に妊娠を望む女性は、妊娠前にまず風疹の抗体があるかどうかを確認し、必要に応じてワクチンを接種することが大切です。 ただし、風疹ワクチンは生ワクチンであり、妊娠中に接種することはできません。 そのため、妊娠を希望している女性は妊娠前に抗体検査と予防接種を済ませる必要があります。 また、接種後少なくとも2〜3ヶ月は妊娠を避けるようにしてください。ワクチン接種の重要性
風疹の予防において、ワクチン接種は大変重要な役割を果たします。 ワクチン接種により約95% の人が風疹ウイルスへの免疫を獲得できるといわれています。 また、多くの人がワクチンを摂取することで集団免疫が形成され、風疹の流行を抑制する効果も期待されます。 日本において、風疹の予防接種には主に麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)が使われています。 麻疹・風疹混合ワクチンは、風疹単独のワクチンと同様に風疹の予防効果があり、同時に麻疹に対する免疫も獲得することができる有用なワクチンです。 妊娠を計画している女性だけではなく、パートナーや妊婦さんの周囲にいる人など、みんなで適切に風疹ワクチンを接種することが、ご自身の健康や周りの妊婦さん、お腹の赤ちゃんを守ることにつながります。風疹流行時の対策
風疹ウイルスは感染力が高いため、流行が発生した場合はすぐに適切な対策をする必要があります。 特に、学校や職場などで集団生活をしている人は、風疹を疑う症状が現れた場合速やかに医療機関を受診しましょう。 風疹に感染した患者さんは、他人への感染を防ぐために隔離が推奨されます。 幼稚園や学校は発疹が消えるまで休まなくてはいけないので、登園・登校のタイミングについても主治医と相談してください。 家庭内においても、感染者と他の家族との接触は最小限に抑えるよう努めましょう。 また、妊娠中の女性は、風疹の感染リスクをできるだけ低くするために、人混みを避ける、不要不急の外出を控えるなどの注意が必要です。関連する病気
- 麻疹
- 先天性風疹症候群
- 発熱
参考文献




