

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
ギテルマン症候群の概要
ギテルマン症候群(Gitelman症候群、ギッテルマン症候群)は、腎臓で体内のミネラルバランスを保つ働きに異常が生じる先天性の尿細管機能障害です。
通常、腎臓は血液中の余分な水分や不必要な老廃物を、尿細管などの器官を通じて尿中に排泄させ、体内の水分量や電解質を正常に保つ働きを持ちます。しかしギテルマン症候群では、腎臓の尿細管に異常が生じることで、体内で必要なカリウムやマグネシウムが少なくなり、血液がアルカリ性に傾きます(代謝性アルカローシス)。
ギテルマン症候群の原因は両親から遺伝子の異常を受け継ぐことです。症状は脱力感や手足のしびれ、多飲、頻尿などです。症状の程度や出現時期は個人によってさまざまで、乳幼児期に現れるケースもあれば、成人まで無症状のケースもあります。
適切な治療を続ければ予後は良好で、重い合併症が出るケースはまれです。

ギテルマン症候群の原因
ギテルマン症候群は、主に「SLC12A3」という遺伝子の異常によって起こります。
SLC12A3遺伝子は、腎臓で体に必要な物質を尿から血液に戻す役割を持つタンパク質を作る働きがあります。。SLC12A3遺伝子の異常によってこのタンパク質の正常な働きが得られないと、体に必要なカリウムやマグネシウムが尿と一緒に外に排出され、さまざまな症状を引き起こします。
ギテルマン症候群は、両親から変異した遺伝子を受け継いだ場合に発症します。
ギテルマン症候群の前兆や初期症状について
ギテルマン症候群はまったく症状がない人から、日常生活に影響が出る人までさまざまです。多くの場合、症状は学童期以降にあらわれ始めますが、乳幼児期から症状が出る人や、成人後に初めて発覚する人もいます。
よく見られる症状としては、塩分への強い欲求があり、塩辛いものや漬物、塩味のお菓子などを好む傾向があります。カリウムの不足による疲れやすさや筋力低下も代表的な症状で、とくに激しい運動をした後に強く感じることが多いです。
マグネシウム不足による手足のしびれやけいれんも特徴的な症状です。手や口の周りがピリピリしたり、ひきつったりすることがあります。
また、ミネラルバランスの影響によって血圧が低くなり、めまいや立ちくらみを感じることもあります。
他にも、強い喉の渇き、頻尿、関節の痛み、成長の遅れ、不整脈などが起こることがあります。症状はゆっくりと進行するケースが多く見られますが、一部では重症化するケースもあります。
ギテルマン症候群の検査・診断
ギテルマン症候群の診断は、臨床症状の確認のほか、血液検査、尿検査によって行われます。
血液検査では、低カリウム血症、低マグネシウム血症、代謝性アルカローシスなどが認められます。尿検査では、カルシウムの排泄量が低値を示すのが特徴です。これらの値は、類似疾患であるバーター症候群との鑑別にも必要になります。
最終的には、遺伝子検査でSLC12A3遺伝子に異常が認められた場合に確定診断となります。
ギテルマン症候群の治療
ギテルマン症候群の治療では、体で不足している栄養素(カリウムとマグネシウム)を補い、症状の緩和を目指します。
不足している栄養素を補うために、塩化カリウムや塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの薬が投与されます。マグネシウムは下痢を起こすことがあるため、少ない量から始めて少しずつ増やしていきます。薬剤のほか、カリウムやマグネシウムを多く含む食品の摂取も推奨されます。
これらで改善が見られない場合は、カリウムの排出や炎症を抑えたり、体内の塩分バランスを整えたりする薬が使われることもあります。
ギテルマン症候群になりやすい人・予防の方法
ギテルマン症候群は両親ともにSLC12A3遺伝子の異常をもっている場合に発症する可能性があります。一部の研究では、アジア系の人でやや発症率が高いと報告されています。
予防法は現在のところ確立されていません。ギテルマン症候群と診断された場合は、定期的に病院を受診し、血液検査などでカリウムやマグネシウムの値を確認することが大切です。また、症状が出ている場合は、しっかり休養をとることも大切になります。
ギテルマン症候群を完治させることは難しいですが、定期的な検査や治療を続けることで日常生活の症状をコントロールできます。
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参考文献




