目次 -INDEX-

尿道上裂
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

プロフィールをもっと見る
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

尿道上裂の概要

尿道上裂は先天性の泌尿器系異常です。
外尿道口(尿の出口)が正常の位置より上側に開口する状態を指します。

病型は近位型と遠位型に大別されます。
近位型では外尿道口が体の近くに位置し、尿失禁を伴うのが特徴で、男性の場合は陰茎恥骨型、女性では完全型と呼ばれます。

一方、遠位型は主に男児に見られ、女児ではほとんど認められません。
男児の遠位型は陰茎型と亀頭型に分類され、尿失禁や頻尿などの症状が現れることがあります。

尿道上裂の特徴的な合併症として膀胱尿管逆流症があります。
膀胱尿管逆流症は、尿道の走行異常によって膀胱から尿管や腎臓へ尿が逆流する状態です。膀胱尿管逆流症により、尿路感染が生じ、発熱や背部痛、嘔吐などの症状が現れることがあります。

診断は主に出生時の視診で行われますが、尿検査、画像検査(超音波検査やMRI検査など)、排尿時膀胱造影検査なども実施されます。
これらの検査により、尿道の形態異常や膀胱尿管逆流症の有無、程度を評価します。

治療の基本は尿道再建術や膀胱頸部形成術などの手術です。
手術の時期や方法は、患者の年齢、症状の重症度、合併症の有無などを考慮して決定されます。
膀胱尿管逆流症に対しては、抗生剤の予防投与が検討されます。

しかし、手術後も尿失禁や性機能障害などの問題が残る可能性があるため、長期的なフォローアップが必要です。

尿道上裂の原因

尿道上裂の正確な原因は現在も不明ですが、妊娠初期の胚発生過程における異常が関与していると考えられています。
特に、妊娠5週目ごろの腹部と骨盤の癒合不全が主要な要因の一つとして示唆されています。
この時期に生殖結節の排泄腔膜への正常な移動が妨げられることで、生殖器の奇形が生じている可能性があります。

詳細なメカニズムについてはさらなる研究が必要です。

尿道上裂の前兆や初期症状について

尿道上裂の症状は、型によってわずかに異なります。
近位型の場合、男児、女児共に尿失禁が主な症状となり、特に完全型である女児の場合は、尿失禁が生じます。
一方、遠位型は主に男児に認められ、尿失禁に加えて頻尿が生じやすくなります。

また、尿道上裂は大半の症例で膀胱尿管逆流症が合併し、尿路感染のリスクも高まりやすいです。
尿路感染が発生すると細菌が膀胱などに繁殖することによって、高熱や背部痛、側腹部痛、下痢、嘔吐、排尿時痛などが現れます。

これらの症状の有無や程度は、尿道上裂の重症度によって異なり、個々の患者によって現れ方がさまざまです。
早期発見と適切な治療介入が、合併症の予防と患者の生活の質向上に重要です。

尿道上裂の検査・診断

尿道上裂の診断は主に視診と画像検査によって行われます。
尿道上裂は先天性の奇形であるため、出生時や乳幼児検診の視診で診断されることが多いですが、軽度のものでは陰茎の成長とともに初めて気づかれることもあります。

画像検査では、超音波検査やMRI検査を用いて尿道の形態異常を詳細に評価し、合併症の有無を確認します。

膀胱尿管逆流症の合併が多いため、尿検査や血液検査で尿路感染の有無を調べ、炎症反応の上昇を確認します。
さらに、排尿時膀胱造影検査も膀胱尿管逆流症の重要な診断ツールです。
排尿時膀胱造影検査は、外尿道口からカテーテルを挿入して膀胱に造影剤を注入し、反射的に排尿が生じるか確かめる検査です。
膀胱尿管逆流症が起きている場合は正常な排尿反射が見られず、造影剤の逆流が確認されます。

これらの検査を総合的に評価することで、尿道上裂の診断と重症度の判定が可能となり、適切な治療方針を決定できます。

尿道上裂の治療

尿道上裂の主な治療法は外科的手術です。
尿道再建術や膀胱頸部形成術、陰茎海綿体の再配置などが行われ、自身で排尿コントロールができるように促します。
手術の時期や方法は患者の年齢、症状の重症度、合併症の有無などを考慮して決定されます。

また、膀胱尿管逆流症を合併している場合は、尿路感染を予防するために抗生剤の継続投与が検討されます。

尿道上裂は、手術後も尿失禁や頻尿などの症状が完全に治らない可能性があります。
尿失禁などの症状が残る場合は、日常生活で自己導尿などの管理が必要になる場合もあります。

また、成長するにつれて、性機能障害やうつ症状などの問題が生じる可能性もあるため、小児期だけでなく、生涯にわたって長期的なフォローアップが必要です。

尿道上裂になりやすい人・予防の方法

尿道上裂は原因が明確ではないため、発症しやすい特定の因子はわかっていません。
予防方法も確立されていませんが、出生後に診断された場合は定期的な受診を通じて適切な処置や治療計画を立てることが重要です。
患者とその家族への精神的なサポートも必要になります。

関連する病気

  • 膀胱尿管逆流症
  • 膀胱外反症
  • 総排泄腔外反症
  • 尿道索
  • 嵌頓包茎
  • 外尿道口狭窄
  • 尿道狭窄
  • 尿道弁
  • 尿道脱

この記事の監修医師