

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
心因性頻尿の概要
心因性頻尿は、心理的な緊張が原因で引き起こされる頻尿です。成人の正常な排尿の回数は1日4〜7回程度であり、8回以上は「頻尿」とされています。
心因性頻尿が他の頻尿と異なるのは、尿道や膀胱などに器質的な異常がないことです。尿検査や超音波検査などを行っても異常は検出されません。
心因性頻尿は、子どもから大人まで幅広い年齢層で発生します。とくに幼児や小学校低学年の子ども、精神的ストレスを抱えている成人に多く見られます。
膀胱内の尿量が少なくても強い尿意を感じ、トイレに行っても少量しか排尿できないことが特徴です。また、何かに集中している時や睡眠中は症状があらわれにくいことも特徴の一つです。
子どもでも成人でも、頻尿自体が新たな不安やストレスの原因となり、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥ることがあります。

心因性頻尿の原因
心因性頻尿は心理的な緊張が原因で起こります。
心理的・精神的要因
ストレスや不安を感じると、自律神経が影響を受けます。自律神経は排尿のコントロールに関わっているため、これが乱れることで少しの尿でも強い尿意を感じるようになります。
子どもの場合は、新しい学校や幼稚園に通い始めたときの緊張や、友達関係の悩みがきっかけになることがあります。また、過去にトイレに間に合わなかった経験から、トイレを我慢することへの不安や恐怖感が生じ、心因性頻尿になるケースもあります。
成人では、仕事のプレッシャーや人間関係のトラブル、家庭内の問題などのストレスが頻尿の原因となり得ます。
過度なトイレへの意識
心理面の影響で排尿の回数が増えていくと、トイレのことが気になるようになり、常に尿意を強く感じるようになります。さらに「トイレに行けないかも」という不安が強いと、膀胱がより刺激を感じやすくなるという悪循環に陥ります。
心因性頻尿の前兆や初期症状について
子どもの場合は年齢相応の排尿回数を超えること、成人では1日8回以上が目安となります。排尿直後にまた尿意を感じることや、トイレに行っても少量しか出ないなどが特徴です。
家にいるときや夕方から就寝前までの特定の時間帯に症状が集中しやすく、学校や職場では軽減する場合があります。また、何かに集中している時や運動中、睡眠中は症状があらわれにくいことも特徴です。不安やストレスが強まると症状も悪化し、リラックスしているときには比較的症状が落ち着きます。
心因性頻尿の検査・診断
心因性頻尿の検査・診断は、問診から始まります。いつから症状が始まったのか、1日に何回くらいトイレに行くのか、どんな時に症状が強くなるのか、最近ストレスを感じることはないかなどを確認します。
また、数日間、トイレに行った時間や量を記録する「排尿日誌」をつけることで、排尿のパターンを記録し、診断の参考にします。とくに緊張する場面で症状が悪化したり、何かに夢中になっている時や寝ている間は症状がなくなっていたりする場合は、心因性頻尿の可能性が高いです。
次に、他の病気の可能性を確認するために、尿検査では尿中の細菌や糖などの有無を調べ、膀胱炎や糖尿病などの可能性がないかを調べます。また、超音波検査では膀胱や腎臓の形に異常がないか、排尿後に膀胱に尿が残っていないかなども確認します。これらの検査で異常が見つからなかった場合、心因性頻尿が疑われます。
心因性頻尿の治療
心因性頻尿の治療は、非薬物療法と薬物療法の2つに分けられます。
非薬物療法
心因性頻尿では、ストレスや不安の軽減が大切です。環境の調整や生活の見直しを行い、症状に対する不安を減らします。子どもの場合、親が過度に心配する態度を見せると、反対に排尿回数が増えてしまいます。そのため、過度に心配する様子を見せないことも大切です。
また、計画的な排尿訓練や深呼吸、筋弛緩法などのリラクゼーション方法を獲得することも効果的です。成人の場合は、とくにカウンセリングや認知行動療法が効果的だと言われています。専門家のサポートを受けながら不安やストレスの原因に向き合うことで、症状の改善を目指します。
薬物療法
心因性頻尿に対する根本的な治療薬はまだありません。しかし、症状が重度で日常生活に大きな支障をきたしている場合は、一時的な対処法として、抗不安薬や膀胱の過活動を抑える抗コリン薬などが使われることがあります。
心因性頻尿になりやすい人・予防の方法
心因性頻尿になりやすいのは、不安や緊張を感じやすい人、完璧主義の傾向がある人、ストレスに敏感な人などです。さらにリスクを高める要因として、環境の変化を経験している時期や、過去に排尿トラブルの経験がある子ども、高ストレスの職業の人や不安障害傾向のある人が挙げられ、当てはまる場合は注意が必要です。
心因性頻尿の予防には、規則正しい生活習慣を送りながら、ストレスの管理方法を習得することが有効です。子どもに対してはトイレに関する過度な心配や、無理なトイレトレーニングを避けましょう。
また、過度な水分制限は逆効果ですが、就寝前の大量の水分摂取はひかえ、カフェインやアルコールなど膀胱を刺激する作用のある飲料を摂取しすぎることも避けるべきです。
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参考文献




