

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
腎硬化症の概要
腎硬化症は、腎臓の血管に動脈硬化が起こることで、腎臓の機能が低下する疾患です。
主な原因は高血圧とされており、長期間にわたって血圧が高い状態が続くと、腎臓の血管がダメージを受け、血液の流れが悪くなります。その結果、腎臓の働きが低下し、腎硬化症が進行すると考えられています。腎硬化症は、初期段階では自覚症状がほとんどなく、症状があらわれたときにはすでに進行していることが多いのが特徴です。
腎硬化症は、慢性腎臓病の原因のひとつであり、とくに高齢者に多くみられます。慢性腎臓病が進行すると、体内の老廃物や余分な水分が排出されにくくなり、むくみ、尿量の減少、倦怠感、貧血、食欲不振、吐き気などの症状があらわれます。また、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが高まることも明らかになっています。
さらに腎機能が著しく低下し、腎不全に至ると、透析や腎移植が必要になる場合もあります。腎硬化症は、透析治療を受ける主な原因疾患のひとつであり、その割合は年々増加傾向にあります。
腎硬化症の治療の基本は、高血圧の管理です。降圧薬を用いた薬物療法、食事療法、運動療法などにより、血圧を適切にコントロールする治療が行われます。
腎硬化症は自覚症状がないまま進行するため、定期的な健康診断で腎機能を確認し、早期発見することが重要です。
腎硬化症の原因
腎硬化症は、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などが原因で発症します。また、アルコールの過剰摂取や喫煙、肥満などの生活習慣も発症リスクを高める要因となります。とくに高血圧は、腎硬化症を引き起こす重要なリスク因子とされています。
血圧が高い状態が続くと、腎臓に血液を送る細い血管に強い圧力がかかり、血管の壁が厚くなったり狭くなったりして、血液の流れが悪化します。これにより、腎臓の細胞が徐々にダメージを受け、正常な機能を維持できなくなります。さらに血管が硬くなると、腎臓全体の機能が低下し、腎硬化症が進行していきます。
腎硬化症の前兆や初期症状について
腎硬化症は、初期段階では自覚症状がほとんどあらわれません。しかし、腎硬化症が進行し、慢性腎臓病になると、老廃物や余分な水分が体内に蓄積され、むくみ、尿の変化(尿量の減少、尿の泡立ち)、倦怠感、貧血、食欲不振、吐き気などの症状があらわれることがあります。慢性腎臓病が悪化すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まることも明らかになっています。
腎臓の機能がさらに低下し、回復が困難な末期腎不全に至ると、心不全や呼吸不全、不整脈などの深刻な症状が現れることがあります。また、傾眠(外部からの軽い刺激がなければ眠ってしまう状態)、過呼吸、意識障害、けいれんなどがみられることもあります。
一般的に、高血圧が原因で腎臓に障害が生じるのは、高血圧の状態が数年以上持続したあととされています。自覚症状があらわれたときには、すでに腎硬化症が悪化している可能性が高いため、定期的な腎機能の検査を受けることが重要です。
腎硬化症の検査・診断
腎硬化症の診断は、血液検査や尿検査、画像検査などの検査結果を総合的に判断して行われます。とくに、高血圧が主な原因となることが多いため、長期間にわたって血圧が高い状態が続いている場合は、腎臓の詳しい検査が必要になります。
血液検査では、血清クレアチニンや血中尿素窒素の値を測定し、腎臓が正常に機能しているかを確認します。血清クレアチニンの値や年齢、性別をもとに算出される「GFR(糸球体ろ過量)」は、腎機能を評価するうえで特に重要な指標となります。GFRが基準を下回る場合、腎硬化症の疑いが強まります。
尿検査では、尿中のタンパク質や血液の有無を調べます。腎硬化症の場合、尿検査に異常がみられないか、あっても軽度であることがほとんどです。
また、腎臓の形や大きさの変化も診断の手がかりになります。腎硬化症が進行すると、腎臓が小さくなる「腎萎縮」が起こることが多いため、超音波検査やCT検査を用いて腎臓の状態を確認します。高血圧の影響で腎臓の血管が細くなったり、損傷を受けたりすることがあるため、血管の変化についても詳しく調べます。
腎硬化症の診断では、腎機能の低下を引き起こす他の病気との区別も重要です。たとえば、糖尿病性腎症も腎機能が低下する病気のひとつですが、糖尿病性腎症では腎臓が小さくなりにくいという特徴があります。
より確実な診断を行う方法として、「腎生検」という検査があります。腎生検は、腎臓の組織の一部を採取して詳しく調べる検査ですが、体への負担が大きいため、すべての方を対象に実施されるわけではありません。そのため、血圧や尿検査、画像検査などの結果をもとに、腎硬化症の可能性が高いと判断された場合は、慎重に経過を観察しながら診断を進めることが一般的です。
腎硬化症の治療
腎硬化症の治療で最も重要なのは、主な原因である高血圧を適切に管理することです。血圧をコントロールすることで、腎機能の悪化を防ぐことができます。
高血圧の治療では、降圧薬を用いた薬物療法が行われます。尿中のタンパクの有無などによって適した降圧薬が選択されます。また、食事療法や運動療法も重要です。塩分の摂取を控え、バランスの取れた食生活や適度な運動が推奨されます。禁煙や適度な飲酒を心がけることも、腎機能を維持するうえで大切です。
腎硬化症が進行すると腎不全に至ることがあり、その場合は、腎臓の働きを補うために人工透析や腎移植が必要になることがあります。そのため、早い段階から血圧を適切に管理し、腎機能を保つことが重要です。
腎硬化症になりやすい人・予防の方法
腎硬化症は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症のある人に発症しやすいとされています。とくに、高血圧の人は注意が必要です。また、過度な飲酒や喫煙、肥満などの生活習慣も、動脈硬化を促進させる要因となり、腎硬化症のリスクを高める可能性があります。
腎硬化症を予防するためには、血圧を適切に管理することが必要不可欠です。血圧を安定させることで、腎硬化症の発症リスクを低減することができます。
腎硬化症は進行するまで自覚症状がほとんどないため、気づいたときにはすでに腎機能が低下していることも少なくありません。とくに、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病がある人は、定期的に健康診断を受け、腎機能の状態を確認することが大切です。
参考文献




