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非淋菌性尿道炎
前田 広太郎

監修医師
前田 広太郎(医師)

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2017年大阪医科大学医学部を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院で初期研修を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターに内科専攻医として勤務し、その後複数の市中急性期病院で内科医として従事。日本内科学会内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本医師会認定産業医。

非淋菌性尿道炎の概要

非淋菌性尿道炎は、尿道炎の約70%を占め、半数がクラミジアによる性感染症です。クラミジア以外の原因によるものは非クラミジア性非淋菌性尿道炎と呼ばれ、マイコプラズマユレアプラズマなどの感染により発症します。男性では排尿時痛や尿道口から透明な分泌物を認めますが、無症状の場合も多いです。尿検査や尿道分泌物に対する検査で原因を特定し、原因微生物に応じて抗菌薬の内服を行い治療します。耐性菌の増加により治療に難渋する例もあります。

非淋菌性尿道炎の原因

尿道炎は原因菌により淋菌性と非淋菌性に分類されます。非淋菌性尿道炎は、尿道炎の約70%で、半数がクラミジア・トラコマティスによる性感染症です。続いて、マイコプラズマ・ジェニタリウム4~22%、ユレアプラズマ・ユレアリティカムが6~17%と多く、その他にもトリコモナス・ヴァジナリス、髄膜炎菌、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスなど多くの原因生物が原因とされています。また、淋菌性尿道炎においてもクラミジア感染の合併率は20~30%とされます。オーラルセックスを含めた性交渉により感染します。

非淋菌性尿道炎の前兆や初期症状について

尿道炎の症状を呈するのは男性であり、性交渉から発症まで潜伏期間は1~3週程度です。軽度の排尿時痛、尿道灼熱感、外尿道口からの漿液性分泌物(透明~白色)を認めますが、無症状の場合も多く、症状のみでの診断は困難です。20歳代の無症状の若年男性における初尿スクリーニング検査ではクラミジアの陽性率は4~5%とする報告もあります。また、女性性器のクラミジア感染症の半数以上が自覚症状を感じないとも言われており、パートナーが無症状でも感染している可能性があります。クラミジア感染では精巣上体炎を発症する場合もあり、発熱や睾丸の軽度腫脹などが出現します。

非淋菌性尿道炎の検査・診断

男性のクラミジア検出法としては、初尿を検体とし抗原検出法拡散増幅法により検出します。男性尿道炎では高感度の検査法が使用できるため、感染時期や治療効果を反映しない抗体検査法は診断に用いません。マイコプラズマによる尿道炎は、尿からの核酸増幅法で検出可能ですが、淋菌やクラミジアが検出されない尿道炎は臨床的にマイコプラズマ・ジェニタリウム尿道炎と診断されることが多いです。ユレアプラズマ・ユレアリティカムは尿検体の核酸増幅法・培養法などで検出可能ですが、保険適応外です。トリコモナスは尿沈渣や尿道分泌物の鏡検、培養検査により診断を行います。男性では女性と比較してトリコモナス検出が困難であるため、陰性と判定されることもあり注意が必要です。核酸増幅法は鏡検と比較して感度は高いですが保険適用外です。

非淋菌性尿道炎の治療

抗菌薬での治療を行います。クラミジア性尿道炎に対しては、マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンの内服が第一選択となっており、他にはニューキノロン系、テトラサイクリン系の抗菌薬が使用されます。投薬2~3週後に核酸増幅法や抗原検査法を施行し、治療判定を行います。治療奏効率は90%以上とされますが、再感染や不十分な内服だと不完全治癒となりえます。非クラミジア性非淋菌性尿道炎では、トリコモナスが検出されなければ臨床的にマイコプラズマ・ジェニタリウムを原因菌と想定して治療を行うことが多いですが、耐性菌が問題となっています。マイコプラズマ・ジェニタリウムに対するアジスロマイシンの耐性が増加し、治療失敗率は70%以上となっています。クラミジア性尿道炎に準じて治療を行っても、有効率は30~40%程度で、テトラサイクリン系にも有効率は40~60%程度と低いとされます。シタフロキサシンやモキシフロキサシンといったニューキノロン系が80%程度と比較的抗菌活性が高いとされますが、本邦ではモキシフロキサシンは尿道炎に保険適応はありません。トリコモナス尿道炎に対してはメトロニダゾールチニダゾールの内服を行います。メトロニダゾールの経口投与で90~95%の治療奏効率とされます。

非淋菌性尿道炎になりやすい人・予防の方法

非淋菌性尿道炎は、基本的には男性が有症状となり、オーラルセックスを含めた性交渉時に感染予防具の装着(コンドームの使用)をすること、複数の性的パートナーを持たないこと、などが予防法として挙げられます。また、治療後の再感染を防ぐためにも、パートナーの治療を同時に行うことが重要です。

関連する病気

  • クラミジア感染症
  • マイコプラズマ感染症
  • 淋菌性尿道炎
  • 急性膀胱炎
  • 慢性前立腺炎
  • アレルギー性尿道炎
  • 外傷性尿道炎
  • 尿道狭窄

参考文献

  • 日本感染症学会(編): 性感染症 診断・治療ガイドライン 2020. 診断と治療社, 東京, 2020
  • 髙橋 聡:非淋菌性尿道炎. 臨床泌尿器科 69巻8号, 医学書院, 東京, 2015
  • 濵砂 良一:非クラミジア性非淋菌性尿道炎, 臨床泌尿器科 78巻 4号 pp. 39-41,医学書院, 東京, 2024.
  • Deguchi T, et al : Surveillance of the prevalence of macrolide and/or fluoroquinolone resistance-associated mutations in Mycoplasma genitalium in Japan. J Infect Chemother 24 : 861-867, 2018.
  • Up to date:Urethritis in adults and adolescents

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