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腎移植
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎移植の概要

腎移植は、腎臓を提供する人(ドナー)と受け取る人(レシピエント)の間で行われる手術のことです。
ドナーは、腎移植の条件を満たし、本人とその家族の善意により腎臓を提供します。
腎臓がうまく働かなくなり透析治療を受けているか、もうすぐ必要になる方であればレシピエントとして腎移植を受けられます。

腎臓移植には2つの方法があり、1つは親族などの生きている人から腎臓を提供してもらう「生体腎移植」、もう1つは亡くなった方から腎臓を提供してもらう「献腎移植」です。
健康な人の体にメスを入れる生体腎移植よりも、亡くなった方から提供してもらう献腎移植の方が理想的とされています。
しかし、日本では生体腎移植が全体の約85%です。
生体腎移植の多くは親から子への提供が一般的ですが、夫婦間での腎移植も増加しています。

家族から腎臓をもらう場合、話し合いのあと、ドナーとレシピエントの両方が病院で検査を受けます。
手術後は、ドナーとレシピエントどちらも定期的に健康チェックを受けないといけません。
腎移植の手術は健康保険が適用されます。

腎移植

腎移植の原因

腎移植が必要となる原因疾患は腎不全です。
腎不全は、腎臓が正常に機能しなくなる状態を指します。
腎炎などの病気により、血液を濾過する「糸球体」が詰まった場合、腎臓の機能が低下するため老廃物を十分に排泄できません。

腎臓の働きが正常の30%以下に低下した場合、腎不全と診断されます。
慢性腎不全になると腎機能は回復しないため、腎移植は腎不全を根本的に治療する唯一の方法です。

腎移植の前兆や初期症状について

腎臓が正常に機能しなくなると、体内の老廃物を十分に排泄できません。
その結果、体にとって不要な物質や有害な物質が蓄積してしまいます。

体内に水分が溜まりやすくなり、朝起きた時にまぶたが腫れたり、お風呂に入る時に足がむくんだりします。
また、腎機能が低下するため血圧が上昇したり、貧血になりやすくなることで、運動中に動悸や息切れを感じたりします。

老廃物が体内に蓄積すると、食欲不振や吐き気などが現れることもあります。
果物に多く含まれるカリウムが血液中に蓄積した場合には、心臓の働きにも悪影響を及ぼすことがあります。

腎移植の検査・診断

組織適合性検査として、血液型とHLA(白血球の血液型)を調べます。
HLAは、白血球などの細胞の表面に存在する分子です。

移植医療では提供者と受け取る方のHLA型を一致させることにより、移植後の拒絶反応を防げます。
また、抗HLA抗体が存在すると移植の成功率が低下する可能性があるため、抗HLA抗体の有無の確認も必要です。

腎移植の治療

腎移植ではドナーとレシピエントに手術を行います。術後は免疫抑制療法が行われます。

腎移植ドナー手術

ドナーは、健康な腎臓のうち1つをレシピエントに提供します。
手術前には手術やその後の生活に問題がないかを徹底的に評価し、適格と判断された成人のみが腎臓を提供することが可能です。
手術には、大きく皮膚を切る開放手術と、傷が小さい腹腔鏡手術の2種類があります。
日本では、負担が少ない腹腔鏡手術が一般的です。
この手術では、術後1週間程度で退院でき元の生活に戻れますが、腎臓が1つになるため、年に一度の定期検査が必要になります。

腎移植レシピエント手術

腎移植手術は、全身麻酔を使用して行います。
生体腎移植と献腎移植の手術方法には大きな違いはありません。
成人の場合、特別な理由がない限り元の腎臓は摘出されませんが、小児の場合は移植腎を置くスペースを確保するために元の腎臓を摘出することがあります。

生体腎移植術の場合は、血流が再開すると生体腎移植では数分後に尿が作られることが一般的です。
献腎移植では、腎臓への血流が長時間止まっていた場合、尿が正常に生成されるまでに数日から数週間かかることがあります。

免疫抑制療法

体には、ウイルスや細菌などの異物を排除する免疫システムがあります。
しかし、このシステムは、腎臓移植を受けた際に新しい腎臓を攻撃してしまうことがあり、それを拒絶反応と呼びます。
拒絶反応を防ぐために、腎移植を受けた方は免疫抑制薬を服用しないといけません。

腎移植を受けた人は、複数の種類の免疫抑制薬を少量ずつ服用します。
これにより、拒絶反応を抑える効果を維持しつつ、副作用を最小限に抑えられます。
免疫抑制薬は毎日決まった時間に服用することが重要であり、自己判断で中止してしまうと、移植された腎臓が拒絶反応を起こし再び透析治療が必要になる可能性があります。

移植後のフォロー

腎移植を受けると、腎不全による体調不良が改善され、透析の必要がなくなるため生活の質が大きく向上します。
ただし、安定するまでには、1〜3か月ごとに通院が必要です。
腎移植後の生活にはいくつかの注意点がありますが、基本的には健康な人と同じように日常生活を送れます。
移植後の状態が安定していれば、約1か月後には学校や仕事に復帰することも可能です。

移植後のフォローとして、定期的な血液検査や尿検査を行い、移植された腎臓の状態をチェックします。
移植された腎臓の機能が低下する場合は、拒絶反応だけでなく免疫抑制薬の副作用や腎臓病の再発なども考えられるため、場合によっては移植腎生検という検査が行われます。

腎移植後の合併症を防ぐためには、感染症の予防やがん検診の受診も重要です。
また、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病のリスクを管理することも大切になります。

腎移植になりやすい人・予防の方法

腎移植は腎不全の治療として行われるため、腎不全を予防する必要があります。
腎臓に負担をかけるものは高血圧、感染、過度な運動、アルコールやタバコなどです。

高血圧は腎臓に大きな負担をかけるため、血圧を正常に保つことが重要です。
降圧剤をきちんと服用し、定期的に血圧を測定しましょう。

感染症も腎臓に悪影響を与えることがあります。
風邪や膀胱炎などの感染症を予防するため、手洗いやうがいを徹底し常に清潔を保つことが大切です。

過度な運動や肉体労働、疲労の蓄積も腎臓に負担をかけることがあります。
適度な休息を取り、無理をしないように心がけましょう。
たばこは腎臓だけでなく、心臓にも悪影響を及ぼすため控えてください。


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