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腎臓がん
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎臓がんの概要

腎臓がんは、腎臓に発生する悪性腫瘍です。腎臓は腰やや上に左右に一つずつある臓器で、体内の老廃物を血液を介して尿にろ過して排泄しています。ほかにも血圧の調整や血液を作るためのホルモンの産生など、重要な役割を担っています。
最も一般的な腎臓がんは腎実質の細胞からできる腎細胞癌(Renal Cell Carcinoma, RCC)であり、成人の腎臓がんの約85%を占めます。
腎臓がんは血尿を生じることが最も一般的な初期症状ですが、進行するまで症状が現れないことも多く、進行して肺や肝臓、骨といったほかの臓器への転移を引き起こすこともあります。

腎臓がんの原因

腎臓がんの正確な原因は不明ですが、いくつかのリスクファクターが特定されています。これらのリスクファクターには、以下のようなものがあります。

  • 食生活
    赤身肉の摂取が多い方は腎臓がんを発症しやすいことが示唆されています。
  • 喫煙
    タバコの煙には数多くの発がん物質が含まれており、腎臓がんの発症リスクを高めます。
  • 肥満や高血圧といった生活習慣病
    体重過多や肥満は、腎臓に対する負荷を増加させ、腎臓がんのリスクを高めるとされています。
  • 遺伝的要因
    特定の遺伝子的な背景を持っていると発症リスクが高まることが示されています。
  • 環境要因
    有機溶媒を扱う方は腎臓がんの発症率が高かったことが報告されています。

腎臓がんの前兆や初期症状について

腎臓がんの初期段階では、特に明確な症状が現れないことが多い傾向です。そのため、早期に発見される腎臓がんは健康診断やほかの病気の検査のときに偶然発見されることが多いようです。転移した病変による症状、骨転移による痛みや肺転移による呼吸器症状などが先に出現し、検査で原因を探っている際に見つかることもあります。しかし、以下のような症状が出ることがあります。

  • 血尿
    尿に血が混じることが最も一般的な症状です。ただし、肉眼で確認できない微量の血尿もあります。血尿が出た際には早めに泌尿器科を受診することが重要です。
  • 腰背部痛
    一側性の腰背部痛や腹部痛が持続することがあります。
  • 腫瘍の触知
    進行した場合には腹部に腫瘍を触知することができます。
  • 全身症状
    体重減少、発熱、疲労感、食欲不振、吐き気や便秘などの症状が現れることもあります。

腎臓がんの検査・診断

腎臓がんの診断には、以下のような検査が行われます。特に画像検査は病気の進み具合であるステージを決定し、治療方針を検討する際に非常に重要な役割を果たしています。

  • 尿検査
    血尿の有無を確認するための基本的な検査です。
  • 血液検査
    腎機能やほかの臓器機能を評価します。今のところ腎臓がんに診断や治療効果の判定に有用な特定の腫瘍マーカーはありません。
  • 画像診断
    超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの画像検査が行われ、腫瘍の存在や広がりを確認します。基本的にはCT検査を行い、この際には造影剤を用いてより詳しく病変の特徴を調べることが多い傾向です。ほかにも血管など周辺の臓器との関係を調べ、治療方針を検討します。CTが何らかの原因でできない場合など、MRI検査を行う場合があります。
  • 生検
    画像検査で癌の診断が困難な場合にかぎり、細い針をもちいて腫瘍の一部を採取し、病理組織学的にがんの種類や状態を評価する場合もあります。

腎臓がんの治療

腎臓がんの治療は、腫瘍の大きさ、位置、進行度、患者さんの全体的な健康状態などによって異なります。主な治療法は以下の通りです。

手術療法

腎部分切除術
腫瘍とその周囲の一部の正常な腎組織を切除します。小さな腫瘍や腎機能を温存する必要がある場合に適しています。
腎全摘除術
腎臓全体を摘出する手術で、大きな腫瘍や腎臓全体に広がるがんに対して行われます。片方の腎臓を摘出しても、残った腎臓が機能していれば、生活に支障はありません。

凍結療法

身体の外から針を病変に直接穿刺し、アルゴンガスを用いて組織を凍らせてがん細胞を死滅させます。高齢者や手術が難しい合併症を持つ方、手術希望がない方に選択されます。

放射線療法

局所的な腫瘍や転移した部位に対して放射線を照射します。根治的な治療を目的にする定位照射や、転移した病変による症状を和らげるための緩和照射があります。根治的な定位照射は高齢者や手術が難しい合併症を持つ方、手術希望がない方に選択されます。

薬物療法

全身に薬を投与してがん細胞を攻撃する治療方法です。腎臓がんの種類などを考慮してどの薬剤を使うかを検討します。
化学療法
腎臓がんには通常の抗がん剤の効果は薄いことが知られています。
分子標的治療
がん細胞の特定の分子を標的とする薬物で、腫瘍の成長を阻害し、攻撃します。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫システムを強化し、がん細胞を攻撃させる治療法です。

腎臓がんになりやすい人・予防の方法

リスクが高い人には以下のような特徴があります。

  • 喫煙者
    前述の通り、喫煙は腎臓がんのリスクを大幅に増加させます。
  • 肥満者
    体重が多い人もリスクが高いとされています。
  • 高血圧のある人
    高血圧の管理が不十分な場合、リスクが上昇します。

提唱されている明確な予防方法はありませんが、ほかのがんや生活習慣病も含めて以下の方法が推奨されます。

  • 禁煙
    喫煙をやめることで、腎臓がんだけでなくほかの多くのがんのリスクも減少します。
  • 適正体重の維持
    健康的な食事と適度な運動を通じて、体重を管理します。
  • 高血圧の管理
    定期的な血圧測定と医師の指導の下での適切な薬物療法を行います。
  • バランスの取れた食事
    野菜や果物を多く含む食事を心がけ、過剰な塩分や脂肪を避けます。
  • 定期健診
    定期的な健康診断を受けることで、早期発見が可能な場合があります。

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