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尿管結石
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

尿管結石の概要

尿管結石は、腎臓で形成された結石が尿管に移動し、痛みや不快感を引き起こす病気です。結石は主にカルシウム、シュウ酸、尿酸などの結晶が集まって形成されます。尿管結石は、男性に多く見られ、特に30代から50代に多く発生します。尿管は腎臓と膀胱をつなぐ細長い管で、ここに結石が詰まると、激しい痛みや排尿困難が生じます。

結石の種類

結石の種類には、以下のようなものがあります。

カルシウム結石
最も一般的で、カルシウムとシュウ酸またはリン酸の結晶から形成されます。
尿酸結石
尿が酸性になることで形成され、尿酸が結晶化します。
ストルバイト結石
尿路感染症によって形成されることが多く、急速に成長します。
シスチン結石
遺伝性疾患によって形成され、シスチンというアミノ酸が尿中に多く含まれることが原因です。

尿管結石の原因

尿管結石の主な原因には、以下の要因が挙げられます。

水分不足
十分な水分を摂取しないと、尿が濃縮され、結石が形成されやすくなります。
食生活
シュウ酸を多く含む食品(例:ほうれん草、チョコレート、ナッツなど)の過剰摂取は、結石のリスクを高めます。
遺伝
家族に尿管結石の歴史がある場合、そのリスクが高まります。
代謝性疾患
甲状腺機能亢進症や尿酸代謝異常などの代謝性疾患があると、尿管結石のリスクが増加します。
薬剤
一部の薬剤(例:利尿薬、カルシウム補充薬など)は、結石のリスクを高める可能性があります。
生活習慣
長時間座り続けることや、運動不足も尿管結石のリスクを増加させます。

尿管結石の前兆や初期症状について

尿管結石の前兆や初期症状には、次のようなものがあります。

急性の腰痛や脇腹の痛み
痛みは突然発生し、大変強いことが多い傾向です。この痛みは結石が尿管を通過する際に発生します。
血尿
尿に血が混じることがあり、赤色やピンク色の尿が出ることがあります。
頻尿や排尿困難
結石が膀胱に近づくと、頻尿や排尿時の痛みが生じることがあります。
悪心や嘔吐
強い痛みが原因で、悪心や嘔吐が起こることがあります。

痛みの特徴

尿管結石による痛みは「疝痛(せんつう)」と呼ばれることがあり、波のように強弱が変わるのが特徴です。痛みはしばしば腰から脇腹、下腹部にかけて広がり、しばしば突然発生します。この痛みは大変強いです。

その他の症状

尿管結石のその他の症状には、以下のようなものがあります。

発熱
結石が尿管を塞ぐことで感染を引き起こし、発熱が生じることがあります。
悪寒
感染症による悪寒が生じることがあります。

尿管結石の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、泌尿器科です。尿管結石は腎臓で形成された結石が尿管に移動することで起こる病気で、泌尿器科で診断と治療が行われています。

尿管結石の検査・診断

尿管結石の診断には、以下のような検査が行われます。

尿検査
尿中の結晶や血液の有無を確認します。尿酸やカルシウムのレベルも測定されます。
画像診断
超音波検査、CTスキャン、X線などの画像診断で結石の位置やサイズを確認します。特にCTスキャンは、結石の詳細な位置や大きさを確認するのに有効です。
血液検査
腎機能や電解質のバランスを確認するために血液検査が行われることがあります。

画像診断

CTスキャンは、尿管結石の診断において最も詳細な情報を提供します。非造影CTスキャンは、結石のサイズ、位置、数を正確に把握できるため、治療方針の決定に大変役立ちます。超音波検査は放射線被曝がないため、妊娠中の女性や子どもにも安全に使用できます。X線は特にカルシウム結石の診断に有効で、簡便かつ迅速に結石の存在を確認できます。

尿検査

尿検査では、尿中の赤血球や白血球、結晶の存在を確認します。また、尿の酸性度(pH)や特定の化学物質の濃度を測定することで、結石の種類や原因を特定する手がかりとなります。

尿管結石の治療

尿管結石の治療は、結石の大きさや位置、症状の程度に応じて異なります。

自然排出
小さな結石は、自然に排出されることがあります。水分を多く摂り、痛みを和らげるための鎮痛薬を使用することが一般的です。
薬物療法
結石の大きさを小さくする薬や、結石を排出しやすくする薬が処方されることがあります。
衝撃波結石破砕術(ESWL)
体外から衝撃波を当てて結石を細かく砕き、尿と共に排出させる方法です。非侵襲的で、安全性の高い治療法とされています。
内視鏡手術
結石が大きい場合や、自然排出やESWLが効果的でない場合、内視鏡を使用して結石を取り除く手術が行われることもあります。
外科手術
とても大きな結石や複雑なケースでは、開腹手術が必要になることがあります。

自然排出

小さな結石は、自然に排出されることがあります。この場合、患者さんは水分を多く摂取し、頻繁に排尿することが推奨されます。鎮痛薬や抗炎症薬を使用して、痛みや炎症を緩和することが一般的です。

薬物療法

結石の大きさや種類に応じて、以下のような薬物療法が行われることがあります。

アルファ遮断薬
尿管の筋肉を緩め、結石が通過しやすくする薬です。
尿酸結石溶解薬
尿酸結石を溶かすための薬です。
鎮痛薬
痛みを和らげるための薬です。

衝撃波結石破砕術(ESWL)

ESWLは、体外から衝撃波を結石に向けて発射し、結石を細かく砕く方法です。この方法は非侵襲的で、一般的には外来で行われます。治療後は、水分を多く摂取し、結石の破片を自然に排出するようにします。

内視鏡手術

内視鏡手術は、尿管に内視鏡を挿入し、結石を直接観察しながら取り除く方法です。レーザーを使用して結石を砕くこともあります。この手術は、結石が大きい場合や、ESWLが効果的でない場合に行われます。

外科手術

外科手術は、大変に大きな結石や複雑なケースで必要とされます。一般的には開腹手術が行われ、結石を直接取り除きます。この手術は、ほかの方法が効果を示さない場合の最終手段とされます。

治療後のケア

尿管結石の治療後は、再発防止のための生活習慣の見直しが重要です。医師の指導のもとで、適切な水分摂取、食生活の改善、定期的な運動などを心がけることが推奨されます。また、再発防止のために定期的な検診を受けることが重要です。

尿管結石になりやすい人・予防の方法

尿管結石になりやすい人には、次のような特徴があります。

家族歴
家族に尿管結石の経験がある場合、そのリスクが高まります。
食生活
高シュウ酸の食事と摂る人や就寝前3時間以内に食事をとる人ではリスクが高くなります。
水分摂取不足
十分な水分を摂取しない人もリスクが高まります。

予防のための方法

十分な水分摂取
1日に2〜3リットルの水分を摂取することが推奨されます。
バランスの取れた食生活
カルシウムやシュウ酸を含む食品を適量摂取し、バランスの取れた食事を心がけます。
適度な運動
定期的な運動を行い、身体を動かすことで結石のリスクを減らします。
定期検診
尿管結石のリスクがある人は、定期的に医師の診察を受けることが重要です。

生活習慣の改善

尿管結石の予防には、生活習慣の改善が不可欠です。特に、以下の点に注意すると良いでしょう。

食事の見直し
シュウ酸を多く含む食品(例:ほうれん草、ナッツ、紅茶など)の摂取を控えることが有効です。また、動物性たんぱく質の摂取量を適度に調整することも重要です。
水分摂取の習慣化
規則的に水分を摂取する習慣を身につけることが、尿管結石の予防につながります。特に、運動後や暑い季節にはこまめに水分補給を行うことが大切です。
適度な運動
運動は新陳代謝を促進し、尿管結石のリスクを低減させます。日常的に適度な運動を取り入れることが健康維持にも役立ちます。

食生活の具体例

予防のための食生活のポイントを具体的に示します。

シュウ酸の摂取を控える
ほうれん草、ナッツ、紅茶、チョコレートなどのシュウ酸を多く含む食品の摂取を控えます。
カルシウムの適量摂取
牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を適量摂取します。過剰な摂取は避け、バランスを考えた食事を心がけます。
動物性たんぱく質の調整
肉類や魚類の摂取量を適度に調整し、植物性たんぱく質を含む豆類なども積極的に摂取します。
果物と野菜の摂取
ビタミンやミネラルが豊富な果物や野菜を多く摂取し、健康的な食生活を維持します。

水分摂取のポイント

日常的な水分補給
水を一日を通してこまめに飲む習慣をつけます。特に、運動後や暑い季節には十分な水分補給が重要です。
アルコールとカフェインの制限
アルコールやカフェインを含む飲料は利尿作用があり、体内の水分を減少させるため、適度な摂取を心がけます。
尿の色のチェック
尿の色が濃くなった場合は、体内の水分が不足しているサインです。尿の色を薄い黄色に保つように水分補給を行います。

関連する病気

参考文献

  • 日本泌尿器科学会. 尿路結石症診療ガイドライン. 2019.
  • 国立がん研究センター. 尿路結石症. 2020.
  • 日本腎臓学会. 腎臓病に関するガイドライン. 2020.

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