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腎がん(腎細胞がん)
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎がん(腎細胞がん)の概要

腎がん(腎細胞がん)は、腎臓の細胞から発生する悪性の腫瘍で、腎臓にできるがんのなかでも多いタイプです。このがんは、腎臓の実質部分の細胞のがんへの変異で発生します。多くの場合、初期段階では自覚症状がほとんどなく、発見されるのはかなり進行した後か、ほかの健康診断での偶然の発見が多いといわれています。

初期症状が乏しいため、腎がんは発見が遅れがちであり、時として肺や骨、肝臓、脳などへの転移が先に発見されることも少なくありません。
これは、腎がんが体のほかの部位へ広がりやすい性質を持つためです。

腎がんの早期発見は大変困難ですが、定期的な健康診断による検査が有効であり、腎臓の異常を早期にとらえることが可能とされています。
また、腎がんが疑われる場合は、CTスキャンやMRIなどの精密検査が推奨されます。精密検査により、腎がんの存在および進行状況をより詳細に把握できます。

腎がん(腎細胞がん)の原因

腎がん(腎細胞がん)の発生原因には、複数の要因が関与しています。
なかでも、生活習慣に関連する要因が重要であり、喫煙、肥満、高血圧が主なリスクファクターとされています。これらの要因は、腎臓の細胞に慢性的なストレスや損傷を与え、がん化を促進する可能性があります。

また、長期間にわたる腎透析の経験がある人も、腎がんを発症するリスクが高まると考えられています。透析は腎機能障害を補う重要な治療法ですが、透析による慢性的な身体の変化が腎臓の細胞に影響を与えることが指摘されています。

さらに、遺伝的要因も無視できません。特定の遺伝子疾患、例えばフォン・ヒッペル・リンドウ病やバート・ホッグ・デュベ病は、腎がんと密接に関連しています。
これらの疾患は、特定の遺伝子の変異により発症し、腎臓の細胞ががん化しやすい状態になるといわれています。フォン・ヒッペル・リンドウ病では、VHL遺伝子の変異が腎細胞のがん化を促すことが確認されています。

その他、後天性嚢胞性腎疾患も腎がんのリスクを高める可能性があります。この状態では、腎臓に無数の嚢胞が形成され、腎組織の正常な機能が阻害されることから、がん化のリスクが増大します。

リスク要因を理解し、可能な限り予防策を講じることが、腎がんのリスクを低減するためには重要です。
喫煙の禁止、健康的な体重の維持、適切な血圧管理が推奨されます。また、遺伝的リスクが懸念される場合は、遺伝カウンセリングを受けることも一つの選択肢となります。

腎がん(腎細胞がん)の前兆や初期症状について

腎がん(腎細胞がん)は初期段階で特徴的な症状がほとんど現れないため、早期発見が困難ながんの一つです。多くの場合、がんが進行して初めて症状が表れ、その症状には血尿、背中や腰の痛み、お腹のしこりが含まれます。これらの症状は3大症状とされており、腎細胞がんの典型的な表れと考えられています。

しかし、明確な症状が現れる前に発見されるケースも多く、健康診断やほかの病気の検査の過程で偶然に見つかることがあります。現代の医療技術では、超音波検査(エコー)が腎がんを発見する有効な手段とされ、この検査により小さな腎がんでも発見されることが増えています。

また、腎がんが進行するにつれて、足のむくみや食欲不振、体重の減少、吐き気、便秘、腹痛などの全身的な症状も現れることがあります。全身的な症状はがんの進行による体の負担が原因であることが多いため、これらの症状が見られた場合は速やかに泌尿器科への受診が推奨されます。

腎がん(腎細胞がん)の検査・診断

腎がん(腎細胞がん)の検査および診断方法は、精密で多様なアプローチを要します。初期段階での疑いがある場合、多くの場合は超音波検査(エコー)が最初に行われます。この検査は、腎臓に異常がないかを素早く把握するのに役立ちます。
しかし、超音波検査だけでは限界があり、より詳細な情報を得るためにはさらに精密な画像診断が必要とされます。

そのため、腎がんの診断を確定させるためには、造影剤を使用したCT検査が実施されます。CT検査は、がんのサイズ、進行度、およびリンパ節やほかの臓器への転移の有無を詳細にチェックするのに有効とされています。
さらに、造影剤に対するアレルギーがある場合や、より詳細な情報が必要な場合は、MRI検査が推奨されます。

画像診断だけでは確定が難しい場合、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で検査する病理検査が行われることがあります。病理検査により、採取された組織が悪性かどうかを正確な判断が可能となります。
また、血液検査を通じて、特定の腫瘍マーカーの有無ではなく、CRPやLDHなどの値の異常の確認も腎がん診断の一環です。

さらに、腎がんの進行状況や転移の有無をより詳しく調べるために、PET検査や骨シンチグラフィなどの特別な検査が行われることもあります。これらの検査は、がんの広がりを体全体で評価し、適切な治療計画を立てるために重要です。

このように、腎がんの診断にはさまざまな検査が組み合わされ、それぞれの検査が疑いを補完し合うことで、より正確な診断が行われます。

腎がん(腎細胞がん)の治療

腎がん(腎細胞がん)の治療は、がんの進行度や患者さんの状態に応じて多様な方法が選択されます。治療の基本は手術であり、がんが局限している場合には、腎臓の全摘出(根治的腎摘除術)または腫瘍部分のみの切除(腎部分切除術)が行われます。
腎部分切除術は腫瘍の大きさが4cm以下の場合に推奨され、腎機能の保存を目指しますが、腫瘍の位置や浸潤性の度合いによっては全摘出が必要な場合もあります。

進行がんや再発がんの場合、手術のほかに薬物療法が用いられることもあります。免疫療法や分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬などが治療オプションとして考慮されます。これらの治療は、腫瘍の成長を抑制するために特定の分子や細胞過程をターゲットに作用します。分子標的薬は腫瘍の血管形成を抑える効果があり、免疫チェックポイント阻害薬は体の免疫応答を強化してがん細胞を攻撃する作用があります。

また、腎がんの治療には、患者さんの全体的な健康状態や治療に対する希望も重要な要素として考慮されます。治療法は担当医と患者さんとの密接な協議を通じて決定され、個々の状況に合った治療計画が策定されます。場合によっては放射線治療が併用されることもあり、併用によりがんの制御と症状の緩和が図られます。

腎がん(腎細胞がん)になりやすい人・予防の方法

腎がん(腎細胞がん)になりやすい人や予防の方法を以下で解説します。

腎がん(腎細胞がん)になりやすい人

腎がん(腎細胞がん)になりやすい方の特徴は、いくつかのリスク要因によって明確にされています。特に、50歳代後半以降の年齢層で罹患率が高まる傾向にあり、男性に多く見られる病気です。
主な危険因子として、肥満、高血圧、喫煙が挙げられます。これらの要因は、腎臓の細胞に慢性的なダメージを与え、がん化を助長すると考えられています。

また、長期間の透析治療を受けている人も腎がんになりやすいとされています。透析は腎機能障害の治療に不可欠ですが、透析によって腎臓の細胞が長期間にわたって刺激され続けるため、がんへと進行しやすくなります。
さらに、フォン・ヒッペル・リンドウ病のような遺伝性の疾患を持つ方々も腎がんのリスクが高いとされ、特定の遺伝的要素ががん発生に関与していることが明らかにされています。情報収取によって、腎がんのリスクを理解し、予防や早期発見に努めることが重要です。

腎がん(腎細胞がん)の予防方法

腎がん(腎細胞がん)の予防には、主に生活習慣の改善が重要です。喫煙、肥満、高血圧が腎がんのリスク要因とされているため、これらを避けることが予防に寄与します。
まず、禁煙は腎がんだけでなく、多くのがんのリスクを減少させます。また、バランスの取れた食生活を心がけ、過剰な塩分摂取を控えることも効果的とされています。肥満を避けるためには、定期的な運動が推奨されます。

さらに、腎がんの予防には定期的な健康診断も有効とされています。腎がんは初期段階で自覚症状が少ないため、定期的な検査による早期発見が大変重要となります。手術を受けた後も、再発の可能性があるため、長期にわたり継続的なフォローアップが必要です。継続的なフォローアップにより、再発やほかの健康問題に早期に対応できます。予防策を通じて、腎がんのリスクを低減し、健康を維持するための努力が求められます。


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