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線状皮膚萎縮
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

線状皮膚萎縮の概要

線状皮膚萎縮(せんじょうひふいしゅく)は、皮膚の一部が帯状に陥没して萎縮する皮膚の状態をいいます。なお妊娠中に生じる「妊娠線」や、急激な体型変化に伴いみられる「肉割れ」なども線状皮膚萎縮の一種です。

おなかや胸、腰や太ももなどに現れやすく、程度によっては周囲の皮膚と比べて色調が変化することもしばしばあります。

妊娠によるおなかのふくらみや急激な体重増加がきっかけとなる場合が多く、これらによって皮膚の真皮や皮下組織のコラーゲンなどの繊維が断裂することが原因で起こります。

線状皮膚萎縮は外見上の変化だけでなく、皮膚が薄くなることで弾力性が失われ、触ると硬く感じることがあります。強い痛みやかゆみなどを感じることは多くありませんが、見た目の変化に気づいて受診することもあります。

線状皮膚萎縮は完全に元の状態に戻すことは難しいとされていますが、早期発見と適切な対処によって症状の進行を抑えたり、見た目を改善したりすることが可能です。

線状皮膚萎縮の原因

線状皮膚萎縮の原因は皮膚に過度な力がかかり、皮膚のコラーゲン繊維が断裂することです。本来皮膚にはある程度の伸縮性がありますが、急激な伸展によって皮膚の伸縮性の限界を超えると線維が切れ、線状の萎縮として表面に現れます。

きっかけとして多いのは、妊娠によるおなかの急激なふくらみです。とくに妊娠後期になると短期間でおなかが大きく膨らみ皮膚に強い力がかかります。

他にも、思春期の成長による急激な身長の伸びや体重増加も一因です。肥満の人が体重を急激に落とした場合も、伸びた皮膚が急に縮んで線状皮膚萎縮が発生することがあります。

また、副腎皮質にできた腫瘍からステロイドホルモンが過剰に分泌される「クッシング症候群」は、肥満になりやすくおなか周りが大きくなることから、線状皮膚萎縮が生じることがあります。

皮膚の弾力性や伸縮性、水分量には個人差があるため、同じような状況の場合でも、線状皮膚萎縮が発生する人としない人に分かれます。

線状皮膚萎縮の前兆や初期症状について

線状皮膚萎縮の症状は、皮膚の赤みや紫色の細い線が現れることです。症状の程度によっては軽度のかゆみやピリピリとした刺激を感じたり、くぼみや凹凸を感じたりすることもあります。

線状皮膚萎縮はおなかや胸、腰や太ももなど体型の変化が起きやすい場所に発生する傾向があります。

とくに妊娠している場合、体形が大きく変化するため、多くの人が経験するといわれています。成長期に急速に身長が伸びた場合や、急激に体重増加した場合も発症しやすいです。

赤や紫に変調した皮膚は時間の経過とともに色あせて、次第に白っぽい色の線になります。

線状皮膚萎縮の検査・診断

線状皮膚萎縮の診断は、主に視診によっておこないます。妊娠歴や成長期における急激な身長の伸びや体重の増加、既往歴などについて確認することもあります。

線状皮膚萎縮のように見える症状が別の疾患によるものであるかどうかを判別するため、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査をおこなうこともあります。

また、クッシング症候群など内分泌系の病気が疑われる場合は、血液検査をおこなうことがあります。

線状皮膚萎縮の治療

線状皮膚萎縮は完全に元の状態に戻すことは難しいとされているため、症状の改善や目立ちにくくすることを目的として治療をおこないます。

初期段階の線状皮膚萎縮に対しては、保湿成分を含んだ外用薬が有効とされています。線状皮膚萎縮は肌の乾燥が進んでいる場合においても発症しやすいため、十分な保湿が大切です。

白色化した線状皮膚萎縮に対しては、皮膚科や形成外科で、レーザー治療や皮膚再生治療が検討されます。これらの治療は萎縮した部分の見た目を改善する効果が期待できます。

治療を検討する際は専門医に相談し、自分に合った治療法を選択することが重要です。

線状皮膚萎縮になりやすい人・予防の方法

線状皮膚萎縮になりやすい人は、妊娠している人や急激に身長が伸びた人や体重が急増した人です。またクッシング症候群を患っている人もなりやすいといえます。

これらの要因に加えて、皮膚の水分量が少なく乾燥している人も線状皮膚萎縮が発生しやすいです。

これらを踏まえた予防法として、まずは皮膚の保湿が重要です。妊娠中や体重が増え始めた場合などは、あらかじめボディクリームやオイルで皮膚を十分に保湿し、乾燥を防ぎましょう。

線状皮膚萎縮はおなかや胸、腰や太ももなどの部位に発生しやすいため、これらの部位を中心に塗布しましょう。

また、バランスのよい栄養摂取も予防に役立ちます。皮膚の健康維持に必要な栄養素をバランスよく摂取することで、皮膚の保水力や弾力性を保つことができます。

妊娠や何らかの病気により、急激な体重増加が予想される人は体重管理も重要な予防策です。急激に体重が増加しないよう緩やかな変化にとどめられるよう気を付けることで、皮膚にかかる負担を減らせます。

線状皮膚萎縮は一度発症すると完全に消すことが難しいため、症状に気が付いたらできるだけ早くケアを開始して進行を遅らせることが重要です。

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