

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
ふけ症の概要
ふけ症とは、頭皮から「通常よりも多くのふけ」が出る状態を指します。髪の毛や衣服に付着した「ふけ」が米ぬか(粃糠)のように見えることから「頭部粃糠疹(とうぶひこうしん)」と呼ばれることもあります。
ふけは頭皮の新陳代謝によって自然に生じるもので、健康な頭皮からも剥がれ落ちています。しかし、頭皮のトラブルなどによりふけが大量に発生することで、ふけ症となります。
ふけ症の症状は、ふけの発生と頭皮周辺のかゆみなどです。皮膚を強く描くと、さらに症状が悪化したり、傷ついた皮膚が炎症を起こすこともあります。
ふけ症は健康上の重大な問題を引き起こすことは少ないものの、髪や肩に付着して目立つほどになると、外見的なストレスの原因、あるいは社会生活上の障害になる可能性があります。また、適切に対処しないと、症状が長期化したり、悪化したりする可能性もあります。
ふけ症は、ホルモンバランスの乱れや皮膚疾患などをきっかけに発症することが多いです。中でもふけ症の原因になりやすいことで知られるのは「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」です。脂漏性皮膚炎は頭皮だけでなく、顔や耳、胸などの皮脂腺が多い部位にも発症する可能性がある皮膚疾患です。
症状が進行すると、ふけが増えるだけでなく頭皮の赤みやかゆみなどの炎症症状が強くなることもあります。
ふけ症は、洗髪の工夫などセルフケアにより治療することもできるとされますが、医療機関では薬物療法なども受けることができます。
頭皮にかゆみなどの症状がある場合、自分でふけの多さが気になる場合、あるいは家族などからふけについて指摘を受けた場合は、皮膚科を受診するとよいでしょう。

ふけ症の原因
ふけ症が発生する主な原因は、頭皮の健康バランスの崩れです。ふけのタイプは乾性ふけと脂性ふけに大別されます。それぞれに考えられる原因がいくつかあります。
乾性ふけの原因
乾性ふけの原因は頭皮の乾燥です。洗浄力の強いシャンプーを使用したり頻繁に洗髪したりすることで、必要な皮脂まで取り除かれて頭皮が乾燥します。頭皮が乾燥するとバリア機能が低下し、剥がれやすくなるためふけが発生します。
女性ホルモン、甲状腺ホルモンなど、ホルモンの減少により肌が乾燥しやすくなり、乾性ふけの原因となるケースもあります。
脂性ふけの原因
脂性ふけの主な原因は、頭皮における過剰な皮脂の分泌です。皮脂が多く分泌されると、皮膚常在菌である「マラセチア菌(カビの一種)」が増殖します。マラセチア菌は通常は頭皮の健康に影響を及ぼしませんが、皮脂が過剰に分泌されるとマラセチア菌も増殖し、遊離脂肪酸が生成されます。この遊離脂肪酸が頭皮を刺激し、ターンオーバーを早めてふけの量を増加させると考えられています。
また、洗髪が不十分な場合も脂性ふけの原因となります。洗い残された皮脂は時間とともに酸化し、ホコリや汚れを吸着します。これが髪の根元にベトベトした状態で付着して、脂性ふけとなる可能性があります。
ふけ症の前兆や初期症状について
ふけ症の症状は通常よりもたくさんのふけが発生することです。髪をとかすと細かいふけが落ちてきたり、肩や背中に白い塊のようなものが付着していたりすることで気づくことが多いです。
乾性ふけの初期症状
乾性ふけの場合は頭皮が乾燥し、細かくて白いふけが髪から落ちるようになります。髪をブラッシングしたり、頭を掻いたりすると顕著に現れます。
脂性ふけの初期症状
脂性ふけの場合は頭皮がベタついたり、髪の根元が脂っぽくなったりします。乾いたふけと比較して大きめの塊として髪の毛に付き、絡まって落ちにくい特徴があります。
症状が進行すると頭皮のかゆみが生じることがあり、かゆみを感じて頭を掻くと爪で頭皮を傷付け症状を悪化させる原因となるので注意が必要です。
ふけ症の検査・診断
ふけ症は、主に視診や問診によって頭皮の状態やふけの性質などを確認して診断します。
具体的にはふけの量や性状、頭皮の赤みや炎症の有無、かゆみの程度などをチェックします。脂漏性皮膚炎の場合、眉間や鼻の周り、耳の後ろなども皮膚トラブルが発生しやすいため、その部位も細かく観察して診断に役立てます。
「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」や「アトピー性皮膚炎」、「頭部白癬(とうぶはくせん:しらくも)」など、ふけ症と似た症状が出る病気と鑑別するために、ふけや頭皮の角質を採取して分析する場合があります。
適切な治療へつなげるためには正確な鑑別が求められます。
ふけ症の治療
ふけ症は医療機関での治療と同時に、セルフケアすることでも症状の改善が期待できます。
医療機関での治療
医療機関での治療は抗真菌薬の外用が一般的です。ふけの原因が脂漏性皮膚の場合、抗真菌薬などの外用薬を用いることが有効とされています。
必要に応じてステロイド外用薬が処方されることもありますが、長期使用による副作用のリスクがあるため医師の指示に従って使用しましょう。
かゆみが強い場合は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服薬が処方されることもあります。
セルフケアによる治療
乾いたふけが発生している場合は保湿成分を含む低刺激性のシャンプーを使い、頭皮を乾燥させないように注意しましょう。洗髪する際は熱すぎるお湯を使わないようにすることでも頭皮の乾燥予防につながります。
脂っぽいふけが発生している場合は、抗菌成分を含むシャンプーの使用が効果的です。毎日しっかりと洗髪することで頭皮の余分な皮脂を取り除き、頭皮の清潔を保つように心がけます。
場合によっては早期から症状の改善が見られることもありますが、完全に治癒するまでは継続的なケアが必要です。また、治療後も予防的なケアを続けることで、再発を防ぐことができます。
治療効果が見られない場合や症状が悪化する場合は自己判断で治療を中断せず、必ず医師に相談しましょう。
ふけ症になりやすい人・予防の方法
ふけ症は脂性肌や乾燥肌など、肌トラブルをかかえている人がなりやすいです。皮脂の分泌が多い脂性肌の方は脂性ふけが発生しやすく、乾燥肌の方は乾性ふけが出やすい傾向があります。
男性ホルモン「アンドロゲン」が過剰に分泌されることで、皮脂の量が増えることや、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が減ると乾燥肌になりやすいことなど、ホルモンバランスの乱れも、ふけ症の発症リスクを高める要因と考えられています。
食事内容も要因ななり得ます。油っこい食事を好む人は皮脂の分泌が過剰になりやすく、脂性ふけが発生するリスクが高くなります。
これらをふまえて、ふけ症を予防するためには食事のバランスを整えるほか、頭皮のケアが大切です。
食事のバランスを整える
食事面では、バランスの良い栄養摂取を心がけることが大切です。とくに皮膚の健康に関わるビタミンを多く含む食品を意識的に摂ることが効果的です。過剰な脂質や糖質の摂取も控えるようにしましょう。
頭皮をケアする
頭皮のケアとして基本的なのが適切な洗髪です。頭皮の状態に合わせて髪の毛を洗う頻度を調整しましょう。
また、シャンプーを選ぶ際も自分の頭皮の状態に合った製品を選ぶことが大切です。抗真菌成分を含むシャンプーを予防的に使用することもよいでしょう。
脂性肌における洗髪のポイントは、はじめに十分にお湯で予洗いしシャンプーをよく泡立てて頭皮を優しくマッサージするように洗います。
乾燥肌における洗髪のポイントはぬるま湯を使うことです。熱すぎるお湯は頭皮の乾燥を招くため、ぬるま湯を使用しましょう。すすぎは十分におこないシャンプーが頭皮に残らないようにすることも重要です。




