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黄色腫症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

黄色腫症の概要

黄色腫症(おうしょくしゅしょう)とは「泡沫細胞(ほうまつさいぼう)」という細胞が皮膚や粘膜に集まってできる腫瘤を指します。健康な人にもできることがありますが、特に「脂質異常症」を発症している人に好発することが分かっています。

泡沫細胞は、免疫細胞の一種である「マクロファージ」が体内の脂質を取り込むことで作られる細胞です。泡沫細胞には脂質が多く含まれるため、黄色腫症を呈する皮膚は黄色っぽく見えることが特徴です。

なお、黄色腫症は病態によって「結節性黄色腫」「腱黄色腫」「扁平黄色腫」「眼瞼黄色腫」「発疹性黄色腫」「疣贅状黄色腫(ゆうぜいじょうおうしょくしゅ)」などに分けられ、それぞれにしこりができる部位や症状が異なります。

一般的に、しこりは皮膚に一つのみ発生しますが、なかには複数認めるタイプもあります。

黄色腫症の治療では、原因となる脂質代謝異常に対する薬物療法がおこなわれます。薬物療法で効果が期待できない場合や整容上の問題がある場合には、外科的治療が考慮されるケースもあります。

黄色腫症の原因

黄色腫症は、脂質異常症などの脂質の代謝異常が原因で発症することがあります。

脂質異常症とは、血液中の「LDLコレステロール」や「HDLコレステロール」「総コレステロール」「中性脂肪」などの脂質の数値が基準値を外れる状態を指します。

脂質代謝異常は「動脈硬化」を促進させることで知られていますが、免疫細胞の機能を障害させることも分かっています。血液中の脂質の値が逸脱していると、免疫細胞の一種であるマクロファージが脂質を異物とみなして飲み込み(貪食)、その結果泡沫細胞という細胞に変化します。

脂質を豊富に含んだ泡沫細胞はまぶた(眼瞼)や肘、アキレス腱、お尻などの皮膚に沈着し、しこりのように硬く触れる黄色腫症の原因になることがあります。

しかし、まれな病型である口腔内の黄色腫は脂質異常症との関連性は低いと考えられています。

実際に口腔内の黄色腫の発症者を対象におこなわれた検査では、ほとんどの症例で脂質異常症は確認されなかったと報告されています。そのため、口腔内の黄色腫は他の病型とは異なるメカニズムで発症すると考えられ、一例として口腔内への局所的な刺激などが挙げられています。

黄色腫症の前兆や初期症状について

黄色腫症では、病型によって以下のような症状が見られます。

結節性黄色腫

肘や膝の外側や手足の関節に5mm〜数cm大のしこりができます。しこりは赤色から黄色っぽい色調をしており、硬く触れます。

腱黄色腫

アキレス腱など手足の腱が腫瘤状に膨らみます。腫瘤が関節に近い部位にある場合には、関節の可動域が制限されて動かしにくいケースもあります。

扁平黄色腫

他の病型と異なり、患部がしこり状に膨らまず、黄色く変色します。脂質異常症がある場合には、手の平の隆起線(掌紋)に一致して症状が出現することもあります(掌紋線状黄色腫:しょうもんせんじょうおうしょくしゅ)。

眼瞼黄色腫

上まぶたの内側に平たく盛り上がったしこりができます。まぶたを裏返すとしこりが黄色っぽく確認できることもあります。

発疹性黄色腫

手足の外側やお尻、肩などに小さく盛り上がった黄色い丘疹ができます。しこりは複数できることがあり、痒みを伴います。

疣贅状黄色腫

外陰部や唇、口腔内に黄色〜赤色の小さく盛り上がる結節ができます。

黄色腫症の検査・診断

黄色腫症の検査では、患部の視診や触診、血液検査や画像検査、病理組織学的検査などがおこなわれます。

血液検査では、総コレステロールやLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などの脂質に関連する値のほか、肝機能、血糖値、甲状腺機能など、代謝機能全般を評価します。

腱黄色腫など患部が深い部位にある場合には、超音波検査やMRI検査などの画像検査をおこない病変の深さや広がりなどを調べることもあります。

また、黄色腫の症状は悪性疾患などと似ていることもあり、他の疾患と鑑別するために病理組織学的検査が必要になります。

病理組織学的検査では、病変を一部採取して細胞の状態を顕微鏡で詳しく調べます。

黄色腫症の治療

黄色腫症の治療には、原因となる脂質異常症に対する治療と、外科的治療があります。

脂質異常症の治療

黄色腫症の原因として脂質異常症を認める場合には、目標とする脂質の値を目指して薬物療法や食事療法がおこなわれます。

脂質異常症で用いられる薬剤には「スタチン製剤」や「プロブコール」など多くの種類があり、基準値を外れる脂質の種類や数値に応じて薬剤が選択されます。

食事療法では、発症者の適性エネルギー摂取量に応じた食生活の指導がおこなわれます。具体的には、飽和脂肪酸やコレステロール、糖質を多く含む食品の摂取を控え、食物繊維を十分に摂取することが重要です。

外科的治療

薬物療法で効果が期待できない場合や、整容上の問題がある場合には、外科的治療が考慮されます。外科的治療では、局所麻酔を用いて患部を切開し、しこりを取り除きます。

黄色腫症になりやすい人・予防の方法

脂質異常症の人は黄色腫症になりやすい傾向にあります。そのため、脂質異常症の発症や悪化を予防することが黄色腫症の予防にもつながる可能性があります。

脂質異常症を予防するには、生活習慣を改善することが重要です。

食事では、魚卵や鶏卵、レバーなどの内臓類、鶏皮、肉の脂身、バター、飽和脂肪酸(ラードなど)やコレステロールを多く含む食品のほか、アルコール、ジュース、甘いお菓子などの摂取も避けるようにしましょう。

一方で、青魚や野菜、果物、大豆製品には血液中の脂質の値を下げる効果が期待できるため、積極的に取り入れると良いでしょう。

また、適度な運動を心がけ、肥満がある場合には減量することも重要です。

このほか、喫煙は悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増加させ、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を減少させることが分かっています。喫煙している場合は、禁煙に努めるようにしましょう。

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